「【第二次世界大戦直前のプラハ。669名のユダヤ人の子供の命を救った英国人の物語。ラスト、老いた男がTVに出た際に男の後ろの席に座っていた人達が次々に立ち上がるシーンには、思わず嗚咽した作品である。】」ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【第二次世界大戦直前のプラハ。669名のユダヤ人の子供の命を救った英国人の物語。ラスト、老いた男がTVに出た際に男の後ろの席に座っていた人達が次々に立ち上がるシーンには、思わず嗚咽した作品である。】
■1938年のプラハ。
ナチスの迫害から逃れたユダヤ人たちが集まっている難民キャンプを訪れたニコラス・ウィントン(ジョニー・フリン)は子供達だけでも英国に避難させようと決意し、チェコのボランティアたちや英国難民委員会自動課の仲間の協力の基、子供達の里親を英国内で探し、次々に子供達の里親を決め英国に送り出していた。
だが、開戦後、最後の9番目の英国行列車はナチスに妨害され、乗車していた子供達250人は親元に返されてしまう。
◆感想
・物語は1938、1939年のプラハと現在の英国に住むニコラス・ウィントン(アンソニー・ホプキンス)とを交互に映し出しながら、物語は進む。
・大戦前夜の混乱を極めるプラハ。難民の子供達にチョコレートの欠片を渡しながら、ニコラスは資金集め、里親探しでチェコのボランティアたちや英国難民委員会自動課の仲間と多忙な日々を送っていた。
ー ここで印象的なのは、ニコラスの気丈な母を演じたヘレナ・ボナム=カーターと、ニッキーの友人で、支援仲間を演じた久しぶりに観たジョナサンプライスである。ー
■今作は、英国BBCが制作に大きく関わっている事もあり、抑制したトーンで物語は進む。私は過剰な演出をしない英国BBC製作の映画が好きである。佳品が多いからである。
勿論、今作もその一作である。
・現在のニコラス・ウィントンの部屋は多数のメモ、雑誌の切り取りで一杯である。そして彼の古びた鞄に入っていたスクラップブックに記され、貼られていた数多くの子供達の写真。里親が決まった子の上には印が付いている。
彼は、このスクラップブックをやや後悔の表情を浮かべつつも大切に身の傍に置いているのである。
■今作で最も感動的なのは、英国のTV番組”ザッツ・ライフ”に登場した老いたニコラス・ウィントンが若き日にプラハで行った人道支援が、彼のスクラップブックと共に紹介されるシーンである。
当初、彼は救えなかった250人の子供達の姿を思い出すのか、浮かない顔をしている。
だが、ニュース・キャスターがニコラスの隣に座っていた人物を紹介するシーンから、観ていてグッと胸が詰まって来るのである。
その人物はニコラスが且つてプラハで救った子であったからである。
更に、キャスターが”ニコラスに助けて貰った方は、ご起立願います。”と言った後に次々と立ち上がるニコラスの後ろに座っていた人たち。
ニコラスは後ろを振り返り、驚きの表情を浮かべつつ、隣の婦人と抱擁するのである。
このシーンには、思わず嗚咽が出てしまったよ。
そして、その婦人の子供達や孫を自宅に招くシーン。女の子から”プールがあるんだね!”と言われて、嬉しそうなニコラスの表情。
ニコラスが助けた669人の子供達は”ニッキーの子供達”と呼ばれ、その孫たちを含めると6000人の命を救ったというテロップが流れた際には、もう本当に嬉しかったな。
<今作は、一人の英国人ニコラス・ウィントンが仲間達と危険極まりない状況下、669人のユダヤの子供達を助け、その50年後の間に6000人の新たなる命が産まれたという事実を描いた実話に基づいた作品なのである。
目の前の、餓えや恐怖に怯える子供達を、身命を賭して助けた英国人男性の尊崇な姿を描いた作品でもあるのである。>