八犬伝のレビュー・感想・評価
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八魂を 瞼で描く 虚実の姿!
昔、新八犬伝という人形劇をTVで見ていた記憶がある。プリンプリン物語よりも5年も前の事である。
”~ 仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌 ~ いざと成ったらタマを出せ!”
良く口ずさんだものだったな。
男は八つもタマは無いけど2コはあるw
各タマの呼び名が、
”エンザ-キ-イ-ガ-・リャンガ-コ-テ-”(王将)とよく似てるが
これらとは決して違うw (末尾だけやん似てるの)
今日は「八犬伝」を観に行きました。
でもこの映画は ”南総里見八犬伝”がメインでは無く、あくまでこの作品を書き上げた 曲亭馬琴(滝沢馬琴)の半生を追って綴っている。
28年をも歳月を掛けた大作の物語ではあるが、馬琴本人も途中で両目が全く見えなくなってしまい、手助けしていた長男を病で若くに亡くし、そして我が妻をも先立たれてしまうのである。亡き家族の中、息子宗伯の妻・お路が口述筆記を行う事で漸くこの大作が完成されたのである。
そうまでして成し遂げた思いに、きっと本人の心の中には
鶴屋南北との出会いが深く絡んで居たのかも知れないと思う。
真の正義とは何か。江戸後期に生きた馬琴に 長く続いた天下泰平の終わりを感じていたのかも知れません。
勧善懲悪をハッキリと描く事で人々の心の不安(安心)と真っ直ぐな生き方を照らしたかったのかもと思います。
監督・脚本:曽利文彦氏
--------豪華な俳優陣------
滝沢馬琴:役所広司さん
葛飾北斎:内野聖陽さん
宗伯(鎮五郎 病気の長男):磯村勇斗さん
お路(長男の妻):黒木華さん
お百(馬琴の妻):寺島しのぶさん
七代目市川團十郎:中村獅童さん
三代目尾上菊五郎(お岩):尾上右近さん
鶴屋南北:立川談春さん
(八犬伝 物語登場)
伏姫:土屋太鳳さん
浜路:河合優実さん
里見義実:小木茂光さん
玉梓(怨霊):栗山千明さん
仁:犬衛親兵衛:藤岡真威人さん
義:犬川壮助:鈴木仁さん
礼:犬村大角:松岡広大さん
智:犬坂毛野:板垣李光人さん
忠:犬山道節:上杉柊平さん
信:犬飼現八:水上恒司さん
孝:犬塚信乃:渡邊圭祐さん
悌:犬田小文吾:佳久創さん
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(特に感じた所)
・宝刀:名刀村雨の斬った後の露飛沫がもっともっと光る感じで欲しかったかもです。近頃 鬼滅の刃の見過ぎかも知れませんがw
・芳流閣の決闘が素晴らしい。見事な捉えたアングルに拍手。
犬塚信乃と犬飼現八の戦いが中々の見応え場面であった。
こう言う場面演出が、チャンバラでもまだまだイケルじゃんて思うのよね。
・宗伯(磯村勇斗さん)の 父の腕の中で死にゆく所。
迫真の演技に本当に死ぬのかと そう感じる程に。素晴らしい。
益々の磯村さんのご活躍を応援しております。
・”畜生~” 声上げて死す妻、お百(寺島しのぶさん)のその思い。
この心の奥底からの声は凄いものを感じた。
我が人生、妻として、女としての無念さを見事に表現していたと感じます。
総合的に、八犬伝側の物語進行と、馬琴側の創作進行とが 少しごっちゃに見えてしまう所がとても惜しい所でしょうか。
もう少し色目を変えた編集の方がメリハリ付いたかと感じます。
八犬伝側は十分に楽しめた内容と思いますが、流石に八人は誰が誰?に成ってしまってる感は否めない点でしょうね。
しかし 今をトキメク若い俳優陣の活躍、これはとっても見物ですね。
八つのタマタマに
ご興味ございます方は
是非劇場へ どうぞ!!
期待していたぶん、やや残念。馬琴と北斎の実話パートは豪華顔ぶれ、さ...
期待していたぶん、やや残念。馬琴と北斎の実話パートは豪華顔ぶれ、さすがの役作りと熟練した演技で、深い会話劇にそれなりの見どころがあったが、それとギャップがあり過ぎたのが八犬士の虚構パート。2.5次元舞台のような表面的で派手な演技に、『ゴジラ-1.0』を見習って欲しい安っぽいCG。このギャップ、わざとなのか…?下手な演技がとくに目立ったのは水上恒司と小木茂光。若手男子俳優たちはこれからに期待するとして、小木さんて、こんな下手だったっけ?個人的には『きのう何食べた?』のケンジ(内野)とジルベール(磯村)の共演が、あまりにも2人の役柄が違っていて面白かった。
「虚」と「実」
馬琴と北斎の「実」の部分と、八犬伝の「虚」からなる話。
馬琴は「虚」の為に様々な「実」を犠牲にする。「虚」に取り憑かれた男。
圧巻はやはり鶴屋南北とのやり取り。何が「虚」で、何が「実」か?この辺りは「ジョーカー フォリア・ドゥ」や「ルックバック」とも繋がる。
そして、年老いてなお、溢れる創作意欲。こな辺りは胸に迫る。
しかし「八犬伝」パート。「虚」の為、敢えて大きな芝居をしているのは良いとして、何だか安っぽい。本来人を魅了すべき物語が端折ってるのは仕方ないとしても、魅力を感じない。
また、八犬士がシュッとした二枚目とゴツいパワーファイターの2種類しかおらず、皆同じ様で見分けが付かない。それも盛り上がらない理由のひとつか?
そもそも、正義と悪をしっかりと描くという馬琴だが、里見が正義に見えないのも問題か?既にそこで揺らいでいる。
そして、何と言っても、時間が長い。
#八犬伝
面白かった
《虚》と《実》が入り交じる近世文学アクションファンタジー。
《虚》パートの映像は個人的には迫力を感じて好きでした。展開に関しては、元々が江戸時代の文学なので現代人の価値観で色々言うのは違うかな、当時はこれがめちゃくちゃ面白かったんだろう、という感じです。
《実》パートでは、家庭のことや読者の声に振り回されつつ、強い意志で筆を持った馬琴の心の揺らぎが上手く表現されていたと思います。
玉梓と信乃が対峙した場面から移った《実》パートが少し長く、その後の《虚》パートであっさり玉梓が倒されてしまうのは少し物足りない感もあります。しかし、最後の場面は馬琴が失明してからお路が筆を執って二人三脚で書き上げたものであり、この一場面を書くのにもきっと途方もない苦労があったんだと思わせられました。
私は俳優さんにはあまり詳しくなく、キャストに関する事前情報もあまり調べていなかったので、わあすごい可愛らしい方〜と思って見ていたら板垣李光人さんだったのが一番驚きました。
《虚》パートと《実》パートが入れ替わることで2つの物語が同時並行で進む形の作品となっていましたが、それぞれに別の面白さがあったことで終始飽きることなく観ることができました。
阿波?南総じゃないの? ラスト フランダースの犬かよ( ̄▽ ̄;)
実の滝澤馬琴と虚の馬琴の描いた里見八犬伝の映像をうまく織りまぜながら、描かれていて特に実の方の役者さんたちやはりというか素晴らしかったなあ。
八犬伝の方にもう少し味のある役者さんが出てればなぁ。
しかしあのラストはないわー( ̄▽ ̄;)
壮絶な死にかたしてないからむつかしいんでしょうが、あれならナレ死の方がよかったんじゃないかなぁ 残念です。
あと里見八犬伝って南総(千葉)じゃなかったっけ? 阿波がずっと引っかかって没入できなかったです。
ドラマとしては面白かったのでなんか残念です。
虚と実、監督が違う?と思うくらいの落差
まず、虚のパートは学芸会か?と思うほどひどい出来だ
若手のアイドルかと思うような、演技力皆無の役者さんたちと
ベテラン勢(と言えるのか?)の芝居も若手に引きずられて悲惨この上ない
八犬伝物語の魅力が全然表現できていないので虚のパートに入るたびに苦痛の修行を強いられた
役所さんや内野さん、黒木さんに寺嶋さん、いい役者さんは皆「実」側に配置されているからこちらは観るに堪えうる
「実」のほうは、北斎と南北と馬琴の会話が見どころでありこの部分は存分に楽しめた 南北の虚と実の解説がこの映画の一番の肝じゃないかな
「実」の方もわざわざ義理の娘さんの晩年の馬琴を助けたエピソードを字幕にして説明する必要性も感じないし、ラストシーンの虚の世界の八犬士が馬琴を冥土に連れていく光のシーンも、作品を「虚」側へ引っ張っていくイメージで終わらせることになっていて思わず「止めろ~」と声が出てしまった
残念。
馬琴が友人の北斎に八犬伝の物語を語るという形式で、創作に賭ける馬琴の人生(実)と八犬伝の物語(虚)が交互に描かれるのだが、この二部構成が全くうまくいっていない。どちらも中途半端になってしまった。
特に八犬伝の物語パートが残念。映像のチープ感は否めないし、八剣士の描き方が薄すぎて、それぞれのキャラクターが立ち上がってこない。せっかく力のある若手俳優を起用しているのに、彼らのよさが活かされていなくてなんだか可哀想だった。
八犬伝自体がそれだけで素晴らしく面白い物語なのだから、正面から正攻法で新しい八犬伝を見せて欲しかった。残念。
短いね
虚と実を過不足なく絡め映画的な統合を図るのだとすると時間が圧倒的に足りない。南総里見八犬伝は28年間を費やし私生活の苦労を抱えまた戯作の意味を繰り返し問いかけながら作り上げた超大作であるということが実の部分で強調されながら、本作で映像化されている虚の部分があまりにダイジェスト過ぎて作中で自己矛盾を起こしている。小説は未読だが、映像化にあたり実の部分を掘り下げてドキュメンタリーをやりたいのか、虚の部分のアクション大作を語りたかったのか。曽利監督の経緯から推察するに後者だったのでは。
マタゾウは薬師丸ひろ子と同学年、NHKも深作版も知っている世代。CGIの進歩はあろうが虚の部分のスケールが小さく、アクション映画としても本作が勝てたとは言えない。出演者各位にとっても残念だったのではないだろうか。
舞台挨拶会をライブビューイングで鑑賞。
追記 「ヤッチマイナー」はGOGOの出演とともにオマージュ?
フランダースの犬
面白かった。
虚(フィクション)と実(現実)の問答。
四谷怪談が掛け算でも足し算でもない、引き算ではないか!と激昂するシーンが最高に面白かった。
八犬伝と四谷怪談の関係など考えたこともなかった。
虚は実となり、実は虚となり、反転する、虚実の哲学。
主人公は現実の無情さに生涯苦しみぬく。
そして、この「八犬伝」という物語そのものが、虚を実でくるんだ構造になっている上、さらに最後の最後でさらに虚でくるむという構造は素晴らしい(フランダースの犬のように)。
改めて我々にとって虚(フィクション)とは何なのか、深く考えるきっかけになった。
現実はつまらぬ、無情の世界。
しかし我々は現実だけに生きているわけではない。
むしろ何をもって生きるのか、ということの中に真実があるのかもしれない。
江戸川乱歩の「うつしよは夢、夜の夢こそまこと」にも通じる。
虚と実、動と静
現実と虚構が入り乱れた作品、150分の尺から「大丈夫か?」という一抹の不安があった。しかし、推しの役所広司が主演となれば、観ないわけにはいかない。というわけで、おっかなびっくりで初日のレイトショーへ行ってきた。
鑑賞し終わって最初に感じたことは、150分があっという間だったということ。
つまり、それだけ作品に没入できた。実と虚の世界の時間配分のバランスがよく、違和感なく、自然に見ることができたからだと思う。
推しの役所広司(馬琴)の演技はやはり流石。言うことなし。
内野聖陽の北斎も、内野らしさ、北斎らしさ、が出ていて、二人の掛け合いがよかった。
実のパートでのクライマックスは、中盤の鶴屋南北(立川談春)と馬琴の問答だったように思う。実と虚、正義と悪をどう描くかの問答だったが、大衆文芸である偽作、歌舞伎にそれぞれメッセージを込める二人の創作者としての矜持がぶつかり合う場面だった。ここ見どころ!(南北が終始天地逆さまで話し続けるのは、馬琴と真反対の考えを持っているということのメタファーかな)
虚のパートは、ダイジェスト的にまとめないと実のパートの邪魔になるので、かなりの中途半端感は否めない。いや、それでも、よく1本の映画にまとめたものだと思った。
実のパートが動きがない「静」の映画とすると、虚のパートは完全に「動」。実と虚、静と動。相反するものを1つにまとめた制作陣の手腕はすごい。
ただ、全編通して馬琴の執念は伝わってきたが、残念ながら心を揺さぶるものがなかった。馬琴が失明してお路(黒木華)が代筆して作品を完結させる場面や、八剣士が玉梓(栗山千明)と戦う場面なども、平板な印象で、観る者の心を動かすような演出・演技ではなかった(わざとそうしたのかもしれないが)。
豪華俳優陣の力が十分発揮されていないように感じたのが残念(下記に簡単な感想を)。
※栗山千明はやっぱりダークな役が似合うと思います。
※河合優実どんだけ働いてるの?
※板垣李光人はやばいわ。誑かされそうになった。
※寺島しのぶは、めちゃくちゃいい味出てました。
(2024年映画館鑑賞29作目)
物語の筆を置いてはならない
八犬伝の冒頭はなぜーか知ってます。何がキッカケだったか思い出せないのですが。
作り手にそんな人生があったのか、と胸熱。
年老いていく姿と目が見えなくなっていく姿。人生をかけて作品を生み出す美しさ。
「ルックバック」「ブルーピリオド」のように美術芸術分野の映画が多いような気がして、生成AI時代への何らかのメッセージかなと感じています。
良い作品。だが、映画界の役所広司依存症は危険水域。
緊張と緩和のバランスがよく、最後まで没入できました。
しかしながら、映画界、テレビ界、の、役所広司依存症は、危険水域。
役所広司さんの声は、他の作品で聞き慣れているので、声を聞くたび「『陸王』だなぁ」と、思いながら観てしまいました。
若い俳優さん、病に伏す磯村勇斗さん、滅私奉公の黒木華さん、当人にしか見えない、素晴らしい演技でした。
愛とロマンはあまり感じられなかったかな
子供の頃に角川映画の『里見八犬伝』を見ていたので、その後に教科書に出てきた滝沢馬琴と南総里見八犬伝の事は良く記憶していた。
『八犬伝』には、薬師丸ひろ子が『里見八犬伝』で演じていた静姫は出てきません。
簡単に言うと角川映画の『里見八犬伝』は、愛とロマンの大スペクタクル映画。
そして『八犬伝』は、滝沢馬琴が南総里見八犬伝を書き上げるまでの映画。
愛とロマンはあまり感じられなかったかな。
実在の滝沢馬琴が八犬伝を書き上げるまでの話がメイン。
交互に展開される実(現実世界)と虚(八犬伝の世界)の構成は良い、実の役者達の存在感のある演技も良い、気になったのは虚の映像の撮り方(演出)。
舞台のような照明、緻密に背景を描かず、名前の知らない若い男優の心に訴えかけない軽く感じる演技。
八犬士は、すべて同じような年齢設定なのかだろうか?
『里見八犬伝』では、子供から中年男性、女性の八犬士もいた。
『八犬伝』は原作に近くて、角川映画の方がいろいろ脚色したんでしょうね。
屋根の上で戦うシーンなんかは見どころなんだろうけど、CGなのがバレバレの映像なんすよね。
この映画は、実パートがメインで、虚の八犬伝シーンは付け足しという感じになってしまっているのが残念。
ネタと構成が良いだけにオシイとは思う。
ただ、この惜しいという感覚、たまに感じる感覚なのだが、そこからが難しいんでしょう。
最近だと『僕は、線を描く』でも感じた。
題材、役者がよければ、後は監督の問題になるんだろうけどね。
そして、ラスト。
実と虚が結びついたという事なのだろう、ただ、ちゃちい演出だと感じてしまった。
良いところは役所広司と内野聖陽の演技、土屋太鳳の伏姫も良かったかな。
虚の八犬伝パートの里見八犬伝との違い
・時代設定
里見八犬伝は伏姫没後100年、八犬伝は没後20年
・静姫(薬師丸ひろ子)の存在
八犬伝には静姫は存在せず
・八犬士の年齢と性別
八犬伝は全員が若い男性、里見八犬伝は女性(志穂美悦子)と子供もいた
・浜路の設定の違い
里見八犬伝は、岡田奈々が演じ京本政樹演じる八犬士の義妹で体中が毒の闇の軍団となる
八犬伝では、河合優実が演じ、メインの八犬士の犬塚信乃に想いを寄せる役どころ
・主題歌の有無
里見八犬伝はバラードの洋曲が良かった、『八犬伝』は無い
『里見八犬伝』は、長すぎるキスシーンなどの話はありますが、同じ時代の戦国自衛隊と並んで、私は大好きな映画です。
映画レビューを始めてから思うのは、この二つの映画は評価が低すぎる。。
特撮技術はともかく、今見ても十分楽しめる映画だと思うんですけどね。
私の中で『里見八犬伝』と『八犬伝』を比べると、『里見八犬伝』に軍配が上がるかな。
子供の頃に見たので美化されてるとは思いますが。。
それにしてもなんですが、見たのは土曜日の最終回(19:30~)。
観客は5~6人でした。
今年の日本映画界でも注目の作品だと思うんですが。。
田舎の映画館だから仕方ないのだろうけど、興収を心配してしまう私でした。
長いけど飽きはしない
エンターテインメントとしては面白かったと思います
実パートは本当に良かった
役所さんと内野さんの掛け合いがいい
鶴屋南北との会話も良かった
虚と実の考え方の違いに二人が熱くなって、でも大人だからちゃんと謝る
八犬伝パートは、あくまで虚を脳内再生という感じなので、あれでよかったと思います
それなりに楽しめました
最後城の前で八犬士が揃うところはグッときました
でも……
八房、あんなに変だとは……
本当に作り物だった
影だけでもよかったんじゃないかな
村雨の水がでるところが微妙
ビチャビチャって感じで名刀に見えない
「玉梓が怨霊」の本性の表現は微妙
まず煙にする必要がない
そう怨霊じゃなくてただの煙
そこに禍々しさが感じられない
目や口いらないし、煙ならもっと赤くして怖さが欲しかった(首切られた時は赤かった)
なんなら船虫みたいにヒトガタのままでよかった
船虫のお歯黒は良かった
玉を呼ぶ順番が「仁義礼智忠信孝悌」だったところはエモい
これがエモいと思うのは55歳以上65歳以下かな(人形劇世代)
実の世界
お百目線で見ると
「私の人生っていったい……」と思ったのかも
今際の際の言葉の
「ちくしょう」が耳に残っている
北斎や息子や嫁のポジションに自分も入りたかった
一緒に物語について話をしたかった
おしどり夫婦になりたかった
素直じゃないからそれも言えなくて
結婚して思っていたのと違う人生で
息子を失ってからは本当に寂しくて寂しくて仕方がなかったんだろう
馬琴の頭の中は物語と侍再興しかなくてお百への愛情を感じられない
(家を変わったのも息子のため孫のため)
馬琴は旦那としては最低
今なら離婚案件(笑)
虚構パートの「南総里見八犬伝」の物語が面白かった。
八犬伝の内容をよく知らず、知ってるのはあちこちに飛び去った8個の玉を持つ剣士(犬士?)が戦うこと、タマズサが怨霊という悪霊が出てくることだけだった。
僕は今回の映画を、馬琴が八犬伝を完成させるまでの実話を元にした馬琴の伝記みたいな映画だと思っていた。
だけど、虚構パートの「南総里見八犬伝」の物語も織り込まれていて、僕はこの八犬伝の物語がすごく面白かった。超かけ足のあらすじだけの内容だけど、物語の発端から最後の伏線回収込みのハッピーエンド迄とても楽しかった。
八剣士の俳優は誰も知らない人だったが、土屋太凰さんと河合優実さんが重要な役どころだったのも良かった。
一番気に入ったのがタマズサが怨霊の栗山千明さん。
実話パートには寺島しのぶさんと黒木はるさんも出てて、こうみると女性陣が結構豪華である。
寺島しのぶさん演じる馬琴のこわい妻がいい味出してた。
鑑賞後に調べたら、北斎が36景を描いたのと、八犬伝が完結したのが70才過ぎであることに感動した。
江戸時代の平均寿命はたぶん40才台だろうから、かなり元気で精力的なおじ-ちゃんだ。
滝沢馬琴の物語
私もジュサブローさんの人形劇を楽しんで視た世代だ。八犬伝と聞くだけで、コレは観なくてはと、待ってましたとばかりに映画館へ。
でも、コレは滝沢馬琴の映画だった。
八犬伝のお話よりも役所さんや内野さん、寺島さん、黒木華さん、磯村さん、そして談春さんに気持ちが持って行かれた。馬琴も北斎も本当にこんなに普通のお爺さんだったのかと思いつつも、奇天烈ではないその姿を役所さんと内野さんが良い塩梅で演じられていて、逆に心をうたれた。寺島さんの女の業だったり華さんの強さだったりも良かった。息子役の磯村勇斗さんや八犬伝の方の塩野瑛久さんも、このところ様々なタイプの役を演じておられて、これからも観て行きたい俳優だ。
しかし八犬伝のお話に、もう少しワクワクしたかった。あまりにも簡単に8人が揃っちゃってビックリした。
我が人生をかけて創(か)く
『里見八犬伝』は1983年の角川製作作品は見た事あるのだが…、
今となっちゃあほとんど話は覚えておらず。ましてや誰かに説明なども出来やせず。漠然と妖術とアクションとロマンスの時代劇ファンタジーだったような…くらい。
現代技術を駆使して新たに映画化。これはちょうどいい…と思っていたら、一捻り。
『里見八犬伝』の物語=“虚”のパートと、作者である滝沢馬琴がいかにして『里見八犬伝』を書き上げたか=“実”のパートが交錯して展開。
大胆な構成で描かれる、“シン・里見八犬伝”であり、名作誕生秘話。
名作誕生秘話に著作が挿入されるのはそう物珍しくはないが、こうも堂々と双方を打ち出して描くのはそうそうない。大抵、どちらかに比重が置かれる。
ならば、一本で二本分の…と言いたい所だが、ちょっと惜しい気がした。『里見八犬伝』はダイジェスト的であり、馬琴のドラマもぶつ切りエピソードを並べ立てたようにも…。
“虚”と“実”が巧みに入れ替わるが、人によってはそれが物語やテンポを鈍らせたかもしれないし、純粋にVFXエンターテイメントを楽しみたかった、馬琴の創作のドラマをじっくり見たかった…という声もあるかもしれない。
でも、私のように『里見八犬伝』をほぼ忘れてしまったり、創作秘話に少なからず興味ある者としては、やはり贅沢な2時間半なのである。
見る前は2時間半は身構えるが、終わってみれば意外とあっという間の感。まんまとこの“虚”と“実”の物語に引き込まれてしまった訳か。
監督・曽利文彦にとっても『ピンポン』以来の上々作。
“虚”のエンターテイメントと“実”のドラマなので、それぞれの感想を語っていこうかなと。
まず、“虚”。『里見八犬伝』。
見ていく内に話を思い出した。呪いをかけられた里見家。呪いからの解放を願い、息絶えた姫君縁の八つの珠を持つ八人の士が導かれるようにして集い、邪悪な存在と闘う…。
演劇・映画化・ドラマ化は数知れず。『指輪物語』が洋ファンタジーの原点なら『里見八犬伝』は和ファンタジーの原点。
1983年版はたっぷりの製作費と当時の特殊技術を駆使して描いた娯楽活劇だった事を記憶している。さすがに今回は全編『里見八犬伝』ではないのでちとスケールなど物足りなさはある。
しかし、現代VFX技術を駆使したケレン味たっぷりの世界観。若いキャストも多く、何だか映画というより2.5次元舞台のよう。最近『推しの子』を見たばかりなのでそれはそれで楽しませて貰った。
若いキャストの中には名も知れた注目株もいるが、ちと実力不足も…。今年最大のブレイク・河合優実も勿体ない。栗山千明は怪演。
先述の通りダイジェスト的だが、サクッと『里見八犬伝』を知るには充分。確かにこんな感じで1983年版のように長尺で見てみたかった気も…。
“虚”も悪くなかったが、個人的に“実”の方が好みだったかな。
ラストでも説明あるが、執筆期間は28年…! 全98巻。48歳の時に書き始め、人生の後半を費やしたほど。まさにライフワーク。
創造した『里見八犬伝』を話聞かせる。相手は、葛飾北斎。
知ってる人もいるのだろうが、馬琴と北斎が親交あったとは、私ゃ知らなかった。
馬琴が話を聞かせ、北斎が挿し絵を描く。それを糧に馬琴はまた物語を創造していく。だけど北斎はせっかく描いた挿し絵をすぐ丸め捨ててしまうんだけど…。
そんな二人のやり取りをユーモラスにも。馬琴のうるさ妻曰く、ジジイ二人で何やってんだか。
ものを書く/描く者同士、才能を認め合っている。あんな石頭からどうしてこんな奇想天外な物語が創られるのか、あんな偏屈からどうして躍動感たっぷりの画が描けるのか。
馬琴と北斎は北斎の方が年上なので、馬琴=役所広司、北斎=内野聖陽の配役はちと違和感あるが、そこは演技力でカバー。不思議としっくり来る。
実パートは豪華演技派揃いで、その点は虚パートと比較にならないほど。磯村勇斗や黒木華も好助演で見せ場あり。寺島しのぶはオーバー気味だったかな…?
創作秘話には苦悩が付き物だが、馬琴のそれはちょっと違う。物語の創造に於いて壁にぶち当たる事はなく、想像力は無限。馬琴と関わる人間関係や馬琴の身体のある部分が馬琴を苦しめる…。
馬琴はある時北斎に連れられ、芝居を観に行く。
一見『忠臣蔵』。そこに怪談話が絡む。深作欣二監督作でも知られる『忠臣蔵外伝 四谷怪談』。
馬琴は作者・鶴屋南北の独創性は評価するが、ある疑問が。何故、“実(忠臣蔵)”に“虚(四谷怪談)”を…?
南北にとっては『四谷怪談』こそ“実”で『忠臣蔵』こそ“虚”。『四谷怪談』に恐怖を感じたならそれはもう“虚”ではなく“実”。
馬琴は『里見八犬伝』で勧善懲悪を描くが、南北はこの世は必ずしも正義が勝つ訳ではない。
馬琴と南北の問答の凄みと、立川談春の存在感。
『里見八犬伝』を勧善懲悪の“虚”として描く馬琴にとってはカルチャーショック。
妻・お百は物書きの夫を理解出来ない。口を開けば悪態悪態悪態…。息子・宗伯は父を尊敬しているが、馬琴は厳しく向き合ってくれない。それでも父の執筆を手伝う宗伯だったが、身体が弱く、やがて…。
良き息子に恵まれ、孫にも恵まれるが、真に家族として幸せだったのか…? もっと家族と…。
息子が亡くなり、妻も亡くなり、それでも書き続ける馬琴。長い歳月をかけて『里見八犬伝』も終盤に差し掛かった時、馬琴に病魔が…。失明。
これは物書きにとっては致命的。見えない=紙に文字を書けないも同じ。
物語の創造が出来ないのも苦だが、書きたいものがあるのに書けないのも苦。その歯痒さ、もどかしさ。
そんな時助力を申し出たのが、息子の妻であったお路。
読み書き出来なかったお路が馬琴に一文字一文字教えを乞い、叱責受けながらも、完成させる。知らなかったが、これも実話。
ラストシーン。『里見八犬伝』を書き上げ、力尽き果てたように命絶えた馬琴の元に現れたのは…。
昨今、原作者問題が何かと物議になるが、作者にとって生み出した作品やキャラは我が子。作品やキャラにとって作者は生みの親。
和ファンタジーの原点。
善と悪が入り乱れる世界で貫いた勧善懲悪の信念。
様々な人間関係、苦楽の果てに。
我が人生をかけて創(か)く。
“虚”は“実”となる。
作家の伝記としてはいいけど。。
八犬伝そのものの実写映画を期待すると、話が5〜6回?ぶつ切りにされるので没入感はありません。
でも滝沢馬琴という作家が語りながら、書いた作品を説明している、という体なので作家の伝記モノとしてはそれなりに面白い。。かな?というところです。
(役所広司さんと板垣李光人君は好きな役者さんなので甘い評価かも。。)
葛飾北斎は、田中泯さんが晩年の北斎を演じたほうの作品はとても良かったですが、今回の北斎も旅好きで90歳まで長生きした芸術家の味が出ていて、こちらの北斎さんも良かったです!
ただ、映画としては余程八犬伝ファン、滝沢馬琴ファン、役所広司ファンじゃないと盛り上がりとかは無いタイプの映画なので少々つまらないかも。
滝沢馬琴が晩年に目が不自由となったことは知らなかったので、後半〜完結までを文字に興したのは亡き息子のお嫁さんだったというのはシンプルに凄いな、と思いました。夫から「父さんの作品、八犬伝のことを頼む」と言われて本当にあそこまで協力するとは、、嫁の鑑。
*****
ちょっと気になったこと。
八犬伝そのもののあらすじは敢えて予習しないで映画に臨みましたが、この映画だけ見ると申し訳ないけど怨霊に祟られたあの大名、ぶっちゃけ自業自得だと思いました。だって、「この者を許せ、縄を解け」と言った2分後くらいには、部下からの進言があったとはいえ「やはり打ち首じゃ!」って。。。それは捉えられたほうも怒るって。
殿様とか、権力のある身分の高い人がそんなにコロコロ話を変えるな、っていうのは怨霊のほうに理がある。と思えてしまった(汗)
そもそもこの大名、飼い犬にも「敵の大将の首を取ってきてくれたら娘の伏姫を嫁にとらす」なんて簡単に約束しちゃって、ちゃんと犬は大将首取ってきてくれたのに娘は嫁にしようとしなかったとかさ、、そりゃあ犬も反発するさ。飼い主なら守れる約束だけにしなきゃ駄目じゃん。
まぁ、とりあえず八犬伝のほうはお話、ということで目をつぶりますが。
最終的には鋼の錬金術師でグリードだった渡邊圭祐さんがカッコ良かったので、一応良しとしますが。。ちょっと残念な映画でした。
虚も貫けば実
八犬伝(南総里見八犬伝)
曲亭(最近は滝沢とは言わない)馬琴により
1814年から28年かけて106巻が刊行された
今でいうライトノベル「戯作(げさく)」
室町時代を舞台とし
安房里見家の伏姫の因縁によって八つの玉に
導かれたアザをもつ若者が里見家に結集し
古賀公方を討つ
そのプロットは後のファンタジー
漫画や小説に与えた影響は計り知れない
また馬琴は恐らく日本初の
原稿料だけで食っていた作家である
今作は山田風太郎の小説をベースとし
武家奉公を悲願しつつ偏屈な性格が
災いして戯作に甘んじる曲亭の葛藤を
葛飾北斎との関係と共に
曲亭の人生をたどりながら
二元的に八犬伝の世界と
行ったり来たりする内容
どうだったか
曽利文彦監督は
漫画実写化映画の傑作「ピンポン」
で度肝を抜かれ
フルCGムービー「アップルシード」など
数作見たことはあるが久しぶりに聞いた名前
どんなもんかと思っていたがこれが良かった
曲亭の暮らす江戸の世界の文化的描写が
素晴らしく歌舞伎座のシーンは
見入ってしまった
逆に八犬伝のシーンは
かつて平成初期の角川の
実写ファンタジー映画のような
どこかチープな雰囲気が漂い
ここの出来が悪いという感想も
よく見かけるが
現実と戯作としての対比であえて
そう作っている感じがした
八犬伝が人気作になって
お武家にもファンがいて籠を持って
迎えに来ても紹介がなければ会わん
という偏屈さを役所広司さんならではの
クセのある演技も見事
栗山千明・中村獅童
寺島しのぶの過不足ない安定した
演技で最後まで楽しめた
曽利さん映画はそんなに
しょっちゅう撮らないけど
やっぱいいね
原田眞人さん的で
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