八犬伝のレビュー・感想・評価
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編集の勝利
創作物とその作者の人生を並行で描くとなると、どうしても「現実に起こったことを物語に反映させていく」といった展開にしたくなる。
「馬琴の生活のために妥協した結婚」と「伏姫の異種婚姻」、
共に恨み節を吐いてこの世を去っていった「お百」と「玉梓」、
「息子宗伯の夭折」と「五犬士の復活」、
「その犬士復活に力を貸した伏姫」と「八犬伝執筆を再開させたお路」、が
それぞれ対応していると読めなくもないが、そのような演出意図はない。
一方でお路の無筆に苛立って一度は続きを書くのをあきらめかけた馬琴を再び文机に向かわせたのは、架空のキャラや読者の要請等というよりはお百を無学と相手にしなかったことへの後悔だったように見えた。
つまり馬琴は、虚を虚、実を実としてキッチリ分けて生きている人物なのである。
また(これもよくあるが)、彼は現実の辛さから虚の中に逃げ込んでしまうといったタイプでもなかった。悪友の北斎がストッパーとなって現実世界にとどまり続けている。
そして鶴屋南北との邂逅で虚実は実際のところ表裏一体であることを知り、
最後は虚の世界のキャラクターが現実へ迎えに来ることで虚実が「冥合」する。
役所広司の演技がうまいので、馬琴が今何に悩んでいるのかが常に明確だった。
八犬士たちのキャラクター付けが現代の感覚からするとやや弱く、特に夜戦になると見分けがつかなくなってしまったのが残念だ、と最初は思った。たとえば八犬士の服や玉の色をそれぞれ設定して特徴づけるとかすればわかりやすくなっただろうが、あまりに後の世で量産された戦隊ヒーロー然となってしまうし、そもそも馬琴を絡めた映画全体の構成を考えるとあまり派手なCGバトルにしすぎず抑えた調子にしたほうが正解のように思えてきた。
同様に本来三部作で語られてもよいほどの大長編を芳流閣の戦いなどのハイライトだけ押さえてダイジェスト形式にしたのも、創作秘話と並行して150分に収めるためにはむしろよくまとまっていて飽きさせず、これは編集の妙が光る作品だと思った。
滝沢馬琴が語る虚構の物語と馬琴の現実世界が交差していくことへのワクワク感は大であっただけに、物足りなさも。
曽利文彦 監督の2024年製作(149分/G)による日本映画。
配給:キノフィルムズ、劇場公開日:2024年10月25日。
子供の頃から大好きの八犬伝の物語に、作者である滝沢馬琴と葛飾北斎を絡ませるストーリー・アイデアには凄くワクワク感を感じていたのだが(原作者の山田風太郎は凄い)、それだけにかもしれないが、面白い部分アリも全体的にはかなり今一つ感を感じてしまった。
滝沢馬琴(役所広司)と葛飾北斎(内野聖陽)の芸術家としての相互刺激、加えて渡辺華山(大貫勇輔)も絡んでのかなり濃密な交流が描かれていた。こんなの作り話と思っていたのだが、調べてみると歴史的事実の様で、凄く興味深かったし、創作活動の源泉としてとても面白くも感じた。
歌舞伎が上演され観客で賑わう江戸の街や中村座の描写にはとても感心するとともに、この時代に商業芸術が既に花開いていたんだと、いたく関心した。
ただ、四代目鶴屋南北(立川談春)作の「東海道四谷怪談」の「仮名手本忠臣蔵」と交互での2日にわたる初演(1825年)を劇中劇(悪玉主人公の民谷伊右衛門が中村獅童、お岩が尾上右近)として長々と見せられたが、視聴中は意図するところが理解できず、かなり退屈させられてしまった。
まあ、原作者である山田風太郎としては、虚構と実話を対比させた傑作「東海道四谷怪談」初演の更に上に行く、馬琴が話す虚構の物語と馬琴の実生活が相互作用していく新規創作の世界を際立てるために、敢えて劇中劇を設定したということだろうか。ただ映画では、脚本が今ひとつ(確かに劇中劇が面白いストーリーであることを知ったが、のめりこみ過ぎに思えた)で、それは十分には伝わってこない様に思えてしまった。
馬琴と南北の物語構成における勧善懲悪に関する議論は、原作にもあるらしいが、そのまま2人の会話として映画に移してきたのも大いに不満であった。創作者たる監督が南北にとても惹かれるのは分かるが、小説ではなく映画なんだから、映像で語らせろと。また、監督の意図を飛び越えて、主人公馬琴が主張する勧善懲悪がつまらないものに思えてしまった。
一方、大好きなはずの八犬伝の物語だが、ちゃっちく見えて期待外れ。まず出だしのでかいイヌのVFXが、人工的でリアリティに欠く。そして、城の上での格闘VFXは良かったが、八犬伝の武士達、化物化し里見家に復讐する栗山千秋、加えて里見家の殿様役小木茂光の演技も、監督の演出の問題なのか、今一つに感じた。
馬琴と嫁(黒木華)の共同作業による口述筆記は、お互いの苦労が偲ばれ、それなりに心が動かされた。しかし、文句ばかりを言っていた馬琴妻のお百(寺島しのぶ)が、口述筆記を務める嫁への嫉妬の言葉だけを残して、あっけなく死んでしまう脚本は、唐突すぎると思ってしまった。その前に、嫉妬に苦しむシーンをきちんと入れておくべきでしょうと思ってしまった。あの名優が全く活かせてないと、不満が大。
最後の虚構の物語と馬琴の現実世界が交わるラストも、とってつけた様な映像で、平凡すぎると思ってしまった。映像化が難しそうな山田風太郎の原作に敢えて挑んだ心意気は買いだが、完成度は残念ながら高いとは自分には思えなかった。
監督曽利文彦、原作山田風太郎、脚本曽利文彦、製作総指揮木下直哉、エグゼクティブプロデューサー武部由実子、プロデューサー葭原弓子 、谷川由希子、撮影佐光朗、照明加瀬弘行、録音田中博信、美術佐々木尚、装飾佐藤孝之、衣装デザイン西原梨恵、ヘアメイクディレクター酒井啓介、技髪荒井孝治、カラーグレーディング星子駿光、VFX白倉慶二、編集洲﨑千恵子、音楽北里玲二、助監督副島宏司、 松下洋平、アクション監督出口正義、記録山本明美、ラインプロデューサー坪内一、制作担当坪内一。
出演
滝沢(曲亭)馬琴役所広司、葛飾北斎内野聖陽、伏姫土屋太鳳、犬塚信乃渡邊圭祐、犬川荘助鈴木仁、犬坂毛野板垣李光人、犬飼現八水上恒司、犬村大角松岡広大、犬田小文吾佳久創、犬江親兵衛藤岡真威人、犬山道節上杉柊平、浜路河合優実、里見義実小木茂光、丸山智己、真飛聖、忍成修吾、塩野瑛久、神尾佑、玉梓栗山千明、民谷伊右衛門中村獅童、お岩尾上右近、鎮五郎/宗伯磯村勇斗、鶴屋南北立川談春、お路黒木華、お百寺島しのぶ。
タイトルを馬琴にすべき
内容は八犬伝ではない。作者の馬琴の話である。
なので、タイトルは変えた方がいいと思った。
虚と実の区別をするためなのか、
虚の世界観がうすっぺらくて、CGも雑、演技が学芸会なみの棒読み、、、こんなにも現実味を除く必要ないのにと思うほど全てがへた。見ていて共感性羞恥を覚えるほどだった。
実の世界では役所さんと内野さんが重厚な演技で、心理描写もしっかりしており、シーンが虚から実にかわると安心して見れた。
馬琴が長い年月をかけて書いた事や、書くにあたって大事にした事など、知らない点が多かったので、馬琴のストーリーはおもしろかった。
もっと馬琴中心にした脚本であれば、本来のターゲットである中高年の観客が増えたのでは。
今回、馬琴に関心を持ったので、八犬伝を読み始めた。馬琴の心情を考えながら読むとおもしろい。
良くも悪くも
すごく良い面もダメな面もある映画だと思います。原作に比較的忠実でその面白さをベースに小気味よく映像化していると思う。セリフは独白ばかりでユーモラスではあるけどクスッとするくらい。
犬士はイメージぴったりでもっと活躍シーンをみたいって思うし凌雲閣も今まで見た八犬伝の中で一番好きだし。
原作のいいところはきちんと出せているとは思うけどこれだけのキャストを勢ぞろいさせてもっと突き抜けた傑作に出来なかったのかなあ。
犬畜生八房ももっと恐ろしい化け物としても伏姫にしてもとか望んでしまう部分はたくさんあるから。
とはいうものの、山田風太郎の残した作品でエンタメ映画をもっとたくさん作って欲しい。
それくらいの宝の山だとは思うから。
お路伝
薬師丸ひろ子さん主演の「里見八犬伝」がとても好きな映画だったので興味深く鑑賞。
八犬伝を書き上げるまでの滝沢馬琴の物語だったので劇中の八犬伝は大味でした。
滝沢馬琴の軸の物語は、同時代の画家や作家との交流が描かれているところが面白かったです。
ただ感動するところは少なく、最後に黒木華さん演じたお路が美味しいところを持っていったかも。
葛飾北斎のイメージはだいぶ違ったなぁ〜。
虚であれど、それを真実と思い貫けは実となるby渡辺華山
兎に角、面白かったの一言です。あっと言う間の二時間半でした。流石役所広司!
それをとりまく人々の演技に吸い込まれて行きます。物語と現実を交互に行き渡り
ますが、違和感が全くなくスムーズに流れていきます。正義がまかり通らない世の中
物語の中だけでも全正義が勝つでいいではないか?自分もそう思います。
出演者の中にも沢山の俳優さんたちが良いスパイスで登場します。北斎の内田さんと
奥様役の寺島さんは最高でした。より馬琴(役所)さんをきわださせていました。
もう一度見たいと思う映画でした。
面白く観ました
(完全ネタバレなので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
結論から言うと面白く観ました。
今作の映画『八犬伝』は、「南総里見八犬伝」の劇中劇と、「南総里見八犬伝」を執筆する滝沢馬琴(役所広司さん)の物語が同時進行する物語です。
「南総里見八犬伝」の劇中劇は、犬塚信乃(渡邊圭祐さん)などの八犬士のそれぞれの描き分けがそこまで深くなく似ていて、ストーリー的にも登場人物の多さの割に時間的制約の短さもあり、迫力や画面の美しさがありながらやや単調の感想は持ちました。
一方で、滝沢馬琴や葛飾北斎(内野聖陽さん)との現実の場面は、それぞれの人物描写が際立っていて、特に滝沢馬琴と葛飾北斎のやり取りは見ごたえがあったと思われます。
しかしこの映画が俄然面白くなるのは、鶴屋南北(立川談春さん)が、四谷怪談の方が「実」で、忠臣蔵の正義の方が「虚」であると、滝沢馬琴の(忠臣蔵にも共感する)正義の考えを否定するところからだと思われました。
滝沢馬琴は、「南総里見八犬伝」を正しいことをしている者が最後に報われる物語として執筆を続けているのですが、鶴屋南北によって滝沢馬琴の正義の考えが根底から否定され、滝沢馬琴はショックを受けます。
ただ渡辺崋山(大貫勇輔さん)によって、例え「虚」の正義であってもそれを貫けばその人の人生は「実」になると、滝沢馬琴は励まされます。
葛飾北斎も滝沢馬琴を勇気づけます。
しかし、滝沢馬琴の息子・鎮五郎/宗伯(磯村勇斗さん)が身体を悪くすると、滝沢馬琴の妻・お百(寺島しのぶさん)は、息子の鎮五郎/宗伯が身体を悪くしたのは滝沢馬琴の息子に対する教えのせいだと、滝沢馬琴を責め立てます。
そして、滝沢馬琴はまたもや自身の正義の考えが揺らぎショックを受けるのです。
今作の映画『八犬伝』は、劇中劇の「南総里見八犬伝」のやや単調さも感じる勧善懲悪の物語やその正義を信じたい筆者の滝沢馬琴と、その正義の物語は「虚」(偽物)だと責め立てる鶴屋南北や妻・お百との、対立の構成作品になっていると思われました。
一見、妻・お百は、夫・滝沢馬琴が大切にしている正義の信念を破壊しようとする悪女に見えなくもないですが、一方で、妻・お百の背後には日常と関係しながら生きる現実があることがうかがえ、その日常の現実から目を逸らしてると彼女からは映っていただろう夫・滝沢馬琴が責め立てられているのは、1観客の私には非常に理解が出来る夫婦間の描写だったとも思われました。
この映画が面白く秀逸だと思われたのは、鶴屋南北や妻・お百を通して、滝沢馬琴の正義に対する疑念をちゃんと制作側が自覚しているところにあると思われました。
個人的には、鶴屋南北や妻・お百による、現実からの滝沢馬琴の正義に対する疑義の方に共感があります。
しかしだからこそ、(渡辺崋山が言うように)滝沢馬琴が生涯を貫いた正義は、一方でそんな私を含めた観客読者からも、劇中劇の「南総里見八犬伝」の終盤のストーリー展開も含めて、「実」に転換する感動があったと思われました。
滝沢馬琴が日本で初めての原稿料で自活できた著述家だと言われるのも、正義を貫いたからこそ得られた読者の感動に理由があるように感じました。
個人的には、劇中劇の「南総里見八犬伝」の八犬士の描き分けなどがもう少し深くあればもっと面白くなったのではと、僭越ながら思われましたが、歌舞伎シーンも含めた現実場面の描写の分厚さなどから、十分面白い作品に仕上がっていると感じられました。
タイトルなし(ネタバレ)
NHKの坂本九さん語り手の人形劇の頃からの八犬伝のファンです。とても豪華なキャストでしたが、本編と馬琴の生涯の2部編成ということもあり、それぞれストーリーか少し中途半端で荒削りで深みがないように感じました。また、ストーリー展開で、八犬伝というタイトルなのに、八房の扱いが雑でリスペクトが感じ取られませんでした。ラストも伏姫と共に登場するくらいの扱いがあっても良いように感じました。キャスティングでは、里見の殿様の演技が私的には軽薄に感じ取られ残念でした。
集中力が必要です
八犬伝が完成するまでの物語りと八犬伝の内容を映像化した物語りが交差するので油断して観ていると「あれ?今どっち?」となります。
予備知識ゼロで観るとそんな感想になってしまう映画です。
このシーン長いな?とか、ここは必要なのか?というシーンも沢山あります(あくまでも個人の感想です)。
キャストの皆さんの演技も良かったし、CGの使い方も良かったと思います。
八犬伝のストーリーを映画化して欲しいと思った人は多いと思いますね。
「虚」と「実」の間で迷う
八犬伝は子供の頃に一度読んでなんとなくあらすじは覚えている程度。
現実?パートは役者や演出、美術も含めて非常にレベルが高い。役所広司の滝沢馬琴はザ・主人公。という感じで王道のキャラクターに感じたが、馬琴の目が見えなくなったあたりからその実力が目に見えてくる。
内野聖陽がとても素晴らしい。飄々としているけれど、その奥に芸術的なセンスを根底とする言い回しや態度がとてもカッコ良かった。
寺島しのぶのキャラクターは少々キツイが振り切った演技が素晴らしく、黒木華もこういう健気な女性を演じたら右に出る者がいないと思える程ハマっていた。
「虚」の八犬伝パートもかなりのダイジェストだろうが、ツギハギが解けて崩壊しない程度にはなんとか上手く纏めているとは思う。こちらは若手スター候補を引っ張る栗山千明が素晴らしかった。
映像も綺麗かつ、恐らく敢えて色彩やCG色を強め「虚」の世界であることがわかる様になっていて見やすかった。
正直な印象としては、「実」が重厚で見応えのある演出がされるのと「虚」側で壮大なファンタジーが描かれるのと、お互いがそれぞれの方向へ進むにつれて見ている側はその間で迷子になってしまう印象の映画だった。
八犬伝側は子供には楽しいが、大人には少々キツい。ダイジェスト感も相まって、夏休みのヒーローショーを見ている気分になる。
逆に馬琴側は大人には良いが、子供には虚実問答とか少し難しいだろうし、寺島しのぶはずっと怒っているし八犬伝側が見たいだろう。
交互に挟まれているのでリンクしながら進んでるのかとも考えたが、そういう部分もありそうだ。という程度でしっかりとは読み取れなかった。
またお互いの枠を取り合うことでそれぞれがしっかりと描ききれていないのも惜しいと感じる部分ではある。
最後の馬琴が八犬士に見送られる?シーンは感動的なんだろうが、なんかちょっと見ていてキツいな。というのが鑑賞後の余韻として残った。
伏姫1人に迎えさせるか、八犬士の後ろ姿だけ見せるなどさり気なく送り出してた方が良かった様にも勝手ながら思えたりする。
大河ドラマと仮面ライダーが交互に観れますよ
もう半世紀以上昔になるのか子供のころに観たNHKの人形劇ドラマで「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」の8つの玉を持った8人のファンタジードラマに魅了された記憶が蘇り、タイトルだけでほとんど出演者などの事前知識なしで観させてもらった。
滝沢馬琴のストーリーと彼から生み出されたファンタジーが交互に出てくる構成となっているが、演技力達者な俳優陣のリアルストーリーの方が重いのに比べ、若者たちのファンタジー部分がまさしく御伽草子であり、大河ドラマと仮面ライダーを交互にチャンネルを切り替えてみるような感覚だったのは私だけだろうか。
リアルストーリーでは息子役の”中村幸也”は相変わらず上手いなあって思って帰って調べたら”磯村勇斗”だったのですね。ずっと勘違いしており失礼しました。
浜地役の河合優実も最初は”森田望智”なのか?って思っていましたが、これも違ってました。
年取るとだんだん区別がつかなくなってきますわ。
嫁役の黒木華は間違えることなくしっかりとした演技は素晴らしかったです。
全編退屈せずに観終えましたが、2番組をチャンネルガチャガチャして観続けたような、何か別の世界をつなぎ合わせた違和感が残りました。
虚と実の対比が面白かった
正しいものが報われるという「虚」を描く馬琴が、「実」では決して報われているとは思えない生活を送っており、正しいことだけを書き続けるのがほんとにそれで良いのかと悩むところは面白かった
また、なんで黒木華さんがこんな端役と思ったけど、最後の方はある意味主役になっており、やっぱり黒木華さんで良かったと思いました
もう書くまでもないけど、役所広司さんと内野聖陽さんの老人の交流シーンの掛け合いはほんとに面白くて楽しめました
少し長い映画ですが、とても良かったです
若手俳優が良かった
勢いで観に行ってしまい、八犬伝の映画だと思っていたら、
そういうタイトルの小説の映画化で滝沢馬琴がメインだった。
あとから原作をざっと見てみたら原作が虚実という作りだったので
この形式は忠実に映画化しているのだろうが、
それにしても冗長過ぎると思う。
半分くらいの脚本に詰めたらもう少し面白く感じたと思うのだが。
大元の八犬伝がそういう話だから仕方ないのだが、義実が駄目過ぎる。
玉梓の言うのは尤もだし、これは映画版が特に酷いのだが
八房に娘を嫁にやりたくないならまず感謝と謝罪と代替案を出せよと思う。
一つもなく殺しに行くのが驚きだし、ひたすら八房が可哀想だ。
八房は言われた通り武勲を立てたのだから、褒美をもらえこそすれ
そんな目に合わされる理由がない。
馬琴を初め虚実どの登場人物もいまいち好きになれなかった。
馬琴は身勝手過ぎる。
ラストシーンも随分チープだなと思った。
八犬伝パートを感動的に完結させて、馬琴は八犬伝を完結させられたのだな、
と視聴者に投げるくらいで丁度良いだろうに、
虚実ないまぜだからああしたのだろうが中途半端に思う。
大角の松岡広大さんが礼儀正しく真っ直ぐな感じが出ていて良かった。
舞台では犬坂の役をやっていた塩野瑛久さんが敵方である定正を演じるのも
それはそれで面白いし、
塩野さんの声の響きが特徴があって好きだ。
大河にも出ておられるが、和の役も悪役も出来る方なので
印象的な悪役になっていて非常に良かったと思う。
この映画は「滝沢馬琴物語」
まず「八犬伝」を求めてこの映画をみると「あれ?」って思うかもしれません。
タイトルは「八犬伝」ですが映画の内容はどちらかといえば「滝沢馬琴物語」といった方がしっくりくる映画だと思いました。
他の巨匠で例えるなら宮崎駿先生がいかにしてナウシカやラピュタやトトロを生み出し、映画として世に送り出したのか。みたいな流れを時々映画のワンシーンを交えながら描いていく。みたいなものでしょうか。
そういう形式で言えばエヴァの庵野監督やDBやアラレちゃんの鳥山明先生バージョンでもこういう形の映画を是非見てみたいなあと思ってしまいました。
そして葛飾北斎がラフ画を描いては破って捨てる天丼ギャグは始終笑ってしまいました。
滝沢馬琴と葛飾北斎のバディものとしても観れるのでブロマンス好きな方にもおすすめ。
2人の会話劇のパートがめっちゃ面白かったので、葛飾北斎目線バージョンの映画も見て見たいなあと思ってしまいました。
滝沢馬琴ストーリーかも。それと深作欣二監督を思い出した。
「八犬伝」の話しとともに、滝沢馬琴と家族、仲間の生涯を描いた作品だと思う。役所さん、内野さんが、いい味出している。磯村さん、寺島さん、黒木さんも良かった。河合さんの着物姿は、なんか違和感がありました。(←「あんのこと」「ナミビアの砂漠」の印象が残っていた為かしら?)鶴屋南北との虚と実の論議は、現代社会にも通じる点が有り、納得させられた。馬琴(役所)が「忠臣蔵が好きだ」というセリフの時に、実の世界で、役所さんが「最後の忠臣蔵」という映画に出ていたことを思い出して笑ってしまった。昔の作品の深作欣二監督、真田広之、薬師丸ひろ子の「里見八犬伝」とは違う面白さがあった。映画の中で上演される歌舞伎四谷怪談は、同じ深作監督が佐藤浩市、高岡早紀主演で撮った「忠臣蔵外伝 四谷怪談」と通じるものがあり、深作欣二監督を思い出してしまった。😅
NHK人形劇『新八犬伝』の印象の強さと原作者描写の効果
やはりNHK人形劇『新八犬伝』の印象が強く、序盤の犬塚信乃に重点を置いた展開は、共感できた。
原作者滝沢馬琴氏と友人の絵師の葛飾北斎との遣り取りになり、分野が違っていても、偉大な芸術家同士の相互の影響力の大きさを感じた。物語だけの展開でないところに、中弛みを防ぐ効果も感じた。
『四谷怪談』と『忠臣蔵』との関連性についての知識はあって、そこは違和感はなかったが、鶴屋南北氏との論争には感じ入った。渡辺崋山氏との遣り取りも良かった。
最後の犬士の登場のように、個々の犬士の背景描写の少なかったところがやや不満だった。人形劇では、浜路は薄幸の女性という印象だけしかなかったけれども、意外な素性が判明した。これでは犬塚信乃とは、叔母と甥の関係になるのではないかと思った。抜け穴を通るのが窮屈そうな場面では、犬に変身しないのかと思った。玉梓の妖力には犬士たちも圧倒され、分断されることで弱められるのかと思ったが、珠だけが八つ集まることで、怨霊を首尾良く倒したが、3人が命を落としていた。そのとき、伏姫降臨と3人の蘇りが起こり、『ドラゴンボール』のようでもあった。人形劇の結末では、犬士たちが犬の姿になって珠とともに空を飛んで行くということとはだいぶ違っていた。
合間に出てくる原作者の滝沢氏の年齢や居住環境もだいぶ違っていて、かなりの年数をかけて執筆が続けられたことがよくわかる。滝沢氏が晩年視力をなくしたという知識もあったものの、口述筆記を引き受けた人物が、漢字の読みも難しい嫁で、その遣り取りの努力の過程もよくわかって良かった。
滝沢馬琴=尾田栄一郎と仮定して…
なんでこういう構成にしたのだろうか?
話のネタとしては興味深い。
八犬伝を後世に残した滝沢馬琴の物語。
それに葛飾北斎や鶴屋南北までが参戦する。
虚と実の話が何回も出てきて、構成もそれに準じるものではあったけれど、どうにも噛み合わせが悪い。
「八犬伝」の内容は虚であるが、戯作自体は実である。で…今作が語る滝沢馬琴の生涯は虚ではないかと思うのだ。いや、学がないからこその見解であって、滝沢馬琴研究家が「これぞ!」と唸る程、ご本人の人物像に沿っていたのかもしれないが。
実際、馬琴のプライベートがアレだと仮定すると、劇中劇の八犬伝のウェイトが重過ぎるような気がする。
長いと言うか、くどいというか。
ご丁寧に八犬伝の筋は分かる。
けど、馬琴の生涯を知る事で相乗効果が出てると思えず…なんなら滝沢馬琴物語を見せてくれた方が充実感を得られたような気がしてる。
北斎や南北のようなキャラも出てくる訳だし、ラストのエピソードも効いている。
八犬伝と馬琴が喰いあってる気がしてならないのだ。
それと、八犬伝パートの色味をもうちょい変えて欲しかったかなぁ…。
思うに馬琴の脳内映像ながら演出的には時代劇をやろうとしている。芝居もなんだかコッテリしてる感もある。逆に…この色味を変えない事がテーマと直結してて、虚と実の境目をワザと付けなかったのだとしたら、八犬伝とは馬琴にとっては何だったのだろうか。
そうなると途端に哲学じみてくる。
虚と実の話をすると、他人なんか全部「虚」に分類される。他人が見てる世界と自分が見てる世界の解釈は違うからだ。
確かなものは、自分が感じるものだけである。それが間違っていたとしても嘘でも想像でも推察でもない訳だから。北斎が馬琴の頭ん中が分からないのと同様、他人の頭ん中を100%理解するのは不可能だ。
馬琴にとって、八犬伝執筆は実であって、それを創作する過程も実であるってのが色味を変えなかった意味なのだろうか?
では虚とは何を指すのか。家庭であり世間であろうか。驚く程、馬琴から見た家族の描写は少ない。その代わりに妻や息子から見た馬琴は同一人物かと頭を傾げる程に両極端だ。そして、馬琴が家族に想う事にも溝を感じるような状況も多々ある。
かと言って八犬伝執筆に没入してる馬琴を描くでもなく、苦悩を描くでもない。周りが馬琴を評価する原因が悉く描かれてはおらず、馬琴自体もそこを気にかけてる素振りもない。
…いや、そんな小難しい事を描いてるような作風でもないとは思うので、ここらでやめとこう。
劇中で興味深い台詞があった。
「物語は虚でも、その精神を貫けば、それは実になるのでないですか」とかなんとか。
素直に「だよね」と思う。
が、ここに待ったをかけるのが南北で…出来もしない理想を掲げるのは無意味だとか何とか。
「正義は必ず勝つ」このありもしない幻想を流布し浸透させたのが滝沢馬琴なのかと思うと戦慄さえ覚える。
八犬伝以前にはそう言うファンタジーに分類される戯作はなかったのだろうか?
八犬伝以降、現代に至るまでその思想を拠り所にする精神論が蔓延ったとするなら恐怖でもある。
実際、俺もそんな事を考えながら日々降り注ぐ理不尽に対処してるような気にもなる。
いや、これも本作のテーマではなかろう。
どうにも居心地が悪いのだ。
思わせぶりな台詞が多すぎるのかしら?
単純に八犬伝誕生秘話でも良いのだけれど、そうなると馬琴の境遇が不憫で、と言うか不憫なエピソードしか語られずで…執筆者のプライベートとか違う世界過ぎて知りたくもないのだ。
明石家さんまさんが「TVで泣かないのは、お客さんが笑ってくれへんくなるから」という信念を持ってらっしゃるらしい。
そう言う事だと思うのだ。
読者は我儘だ。
本作を見ながらに思うのはONE PIECEを執筆中の尾田栄一郎先生の事である。
連載が終わるまでは死んでほしくないし、彼のプライベートを知りたいとも思わない。
どんな人物でどんな境遇なのか知る術もないけど、知る事で作品に対する雑味となってしまうなら、それこそ本末転倒ではなかろうかと思うのだ。
乱暴な言い方をすれば、執筆者の境遇などどうでもいい。そのぐらい執筆者と読者の間に距離があってもいいと思うのだ。
だから、本作の切り口はよく分からなかったのだ。
滝沢馬琴物語なら俄然興味はある。
それも八犬伝執筆の裏話なら。
が、本作はそうでもなさそうなのが難点で…本作が語る「滝沢馬琴」自体が虚、つまりは創作である匂いがプンプンする。
八犬伝パートがもっと凝縮されてて、続きが見たいと思うくらいでも良かったんじゃなかろうかと思う。
実際、前半は壮大なスケールだった。
後半になりCGに逃げたというか安直になったというか…おざなり感が強かったのが残念だ。
驚いたのが原作「山田風太郎」のコールがあった事だ。
実際、原作は読んでないのだけれど、角川映画の「里見八犬伝」の原作も山田風太郎だったように記憶している。
いや、角川の方は「南総里見八犬伝」だったかしら。
※調べたら角川の方は「新・里見八犬伝」で原作者は鎌田敏夫さんだった😅
ともあれ角川の里見八犬伝は大好きで、今尚、生涯ベスト3の1本には入ってる。
監督、深作欣二が偉大なのか、脚本家が偉大だったのか分からんけど和製ファンタジーの最高峰だと今でも思う。
まぁ、ともあれ、役者同士の掛け合いは面白くて、特に寺島しのぶさんの役所はとても重要だった。
彼女1人が虚を実に繋ぎ留めていたと言っても過言ではない。
ネタ的には面白かったのだけど、配分が好みではなかったなぁー。
よかった
八犬伝にはなじみがないので、どんな話なのか興味があってワクワクしていたのだけど、劇中劇はダイジェストだ。球を持った人物が発見されて集まっていくのは面白い。殿様の発言がブレブレで災いを招く、発言には責任を持とうというメッセージを感じる。しかし、あの女だったら発言がぶれていてもいなくても目一杯恨んできそうだ。どっちでも結果は同じだったと思う。
当時は殿様は絶対だったのかもしれないけど、里見家に無関係な若者が球を持っているからと言って命がけで忠義を尽くす。いいのか。
滝沢馬琴パートはまあまあで、歌舞伎を見に行った時に鶴屋南北を不真面目だと批判する。物語作家なのにえらく真面目だなと思ったせいで、八犬伝をつまらなく感じる。今も昔も同じだと思うけど、現実の方が絶対にふざけているし理不尽がまかり通っている。四谷怪談も忠臣蔵もよく分からないけど、ふざけて表現していると言う鶴屋南北の方が面白そうだ。
奥さんの寺島しのぶがいいところ一つも描かれない。息子には厳しくしつけをするのに奥さんは野放しだ。今なら普通だけど当時としては変ではないだろうか。いまわの際の言葉が「ちくしょう」、あまりに悲惨だ。
本当に真面目な人が作っている感じがするのだけど、葛飾北斎が描いた絵をいちいち丸めて馬琴が恨めしそうに見ているやりとりが面白い。
役所広司はナニモノなんだ
《PERFECT DAYS》でも思ったけど役所広司すごいね。
「そこの筋肉は、どうやったら動かせるの?」という感じで表情を作ってくる。
合わせる寺島しのぶもすごいんだよ。
役所広司と寺島しのぶでやり合ってるところに磯村勇斗が絡むんだけど、磯村勇斗をもってしても敵わない。格下に見えちゃう。
話は、物語《八犬伝》の世界と、それを描く馬琴の世界で交互に進むのね。
《八犬伝》パートはわざとだと思うけどちょっとちゃちっぽいというか作り物っぽい描き方なのも面白い。
玉梓役が誰か気になって「こんな顔した女優さんいたよな」って感じで、深津絵里っぽいのかな。エンドロールで栗山千明と分かって、なるほど綺麗だわと思ったな。
《八犬伝》面白いよね。一大スペクタクル爽快活劇じゃん。
木下グループが「黒澤映画みたいなのを撮ろう」と思ってやったのかな。角川映画にも似てた。
話は無茶なんだけど『主君の言葉の重さを知れ』っていう教訓が入ってたりすんの。
「実は大鳥にさらわれたお姫様でした」ってところは「ギリシア神話かよ」って感じなんだけど、いまこういう大仕掛けないね。
あまりにやりすぎて「さすがに作り物っぽすぎる」と思われちゃうんだろうな。
でも、いまは作り物にみんな慣れてないから、今こそまたやって欲しい。
実の世界ではなりたたない善因善果、悪因悪果を虚の世界で描いて、でもそれを貫けば虚も実となるのだみたいな話があるんだよね。馬琴の人生がそうであればいいってことだと思うんだけど。
だからラストに八犬士が馬琴を迎えにきたときは泣いた。
知っていそうで知らない八犬伝だから、歴史的名作を知る意味でも、観たほういい作品だと思ったよ。
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