八犬伝のレビュー・感想・評価
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虚構が現実となった虚構
面白かったです。感動したというより、ロジカルな面白さというんでしょうか。素直な感想といえば単純に面白かったです。
現実を描くべきか空想を楽しむか。そんな派閥が小説なんかでもあったように記憶しているのですが、八犬伝といえば和製ファンタジーの大作、無論、非現実的な話で、劇中・葛飾北斎が仰るほどに、よくぞその頭で思いついた物だと言うほどのロマンあふれるストーリー。抜けば玉散る氷の刃、名刀・村雨に宝玉の戦士が集ってラスボス対決だなんて、持病の中二病がぶり返します。
この映画はその誕生秘話な訳ですが、その映像再現された劇中劇をかなり本気で作り込まれているのが素晴らしい。作者パートの現実と再現パートの虚構が、衣装やら立ち回りの違いで、ちゃんと区別がつきました。
劇中劇と言えば、あの怪談ミックス忠臣蔵の舞台裏での問答がキモだったんじゃないでしょうか。正直、この映画の本分をそこで理解したような気がします。八犬伝に比べて、忠臣蔵は現実のドラマ化な訳ですが、それもドラマのために手心を加えた虚構であるとも言える、などというロジカルな面白さに成る程と思った。
何が現実かと言えば、大事なのは悪態を付きながら稼ぎを要求しては炭を練り生活を支える作者・馬琴の妻、お百。生活を支える女房であるからこそ、これ以上無いほど現実に生きなければならない。非現実・虚構を追う夫に、息子の病気はお前のせいだと指を差す。なんか、身につまされる思いがします。その現実に生きる姿もまた、虚構との対比する重要なシーンだったのでしょうか。そして息子の嫁・お路さんもまた。
文字通り、絵空事のように宝玉の戦士が集いラスボスを倒して一件落着する虚構に比べ、苦しんで苦しみ抜いて藻掻くように夫の念願を果たそうとするお路さんの功績が素晴らしい。生活のために、子供の世話をして、竹林でタケノコを掘る、そんな日常の傍らで、字を書く暇も無く生きてきた彼女が漢字混じりの文章を口述筆記しようだなんて、私には自分から言い出すことも出来ない。この映画の話のフォーカスがそこに移るとは思ってもみなかった。でも、最後のテロップの通り、この奇跡は八犬伝を知る人にとって当然のエピソードだったのでしょうか。虚構とは違う、現実で何かを達成することの尊さを感じました。
このレビューのタイトルの「虚構が現実となった虚構」とは、ラストの八犬士に迎えられた作者・馬琴の昇天シーン。北斎に代わって訪れたお侍さんが仰られていた「虚構が現実となる」とはまさにこのことか。でも、このシーン、現実ではありえない虚構なんですよね。なんだか万華鏡のように虚構と現実がクルクルしてます。でも、ちょっとカーテンコールな感じもして良いエンディングだったと思います。カーテンコールのある映画が大好きです。
余談ですが「八犬伝」といえばやっぱり、薬師丸ひろ子さんの「里見八犬伝」ですよね。テーマソングを洋楽のロックを採用するとか、何て素晴らしいことか。あれは今でも聴けます。若き薬師丸さんの美しさ。そして、「里見版」の新兵衛訳、真田広之さんの若々しさ。真田さんと言えば、「里見版」侍に憧れる百姓から、「魔界転生」の若き忍者、「ラスト・サムライ」の侍頭等々、最新作は「将軍」様。ご立派になられたなぁって、ずいぶん余談がすぎました。失礼。やっぱり自分も虚構に生きてるなあ。さて、「里見版」も観てみよう。
優れた「虚」は「実」を孕む
物語世界と馬琴の実人生が交互に描かれる、というざっくりした情報を聞いて、2時間半で詰め込みすぎでは?と期待値が少し下がっていたのだが、意外と楽しく観ることができた。山田風太郎の原作が俄然読みたくなった。
キャスティングのよさが光る。メインキャストの役所広司と内野聖陽はいわずもがなの存在感と説得力。時々挟まれる強烈な寺島しのぶ。
八犬伝パートはダイジェスト的な進行だが、キャラ立ちした八犬士たちのおかげで置いてきぼりになったり白けたりせずついていけた。
犬坂毛野を演じた板垣李光人は、登場の仕方が大河ドラマ「どうする家康」井伊直政の時とそっくりだったのだが、犬坂毛野は女装で育てられた女と見紛う美貌という設定らしいので、大河の演出が八犬伝犬坂にそっくりと言うべきだろう。
栗山千明の玉梓。黒クリ様やっぱり最高。ラスボスにふさわしい妖しい圧に満ちていた。
製作委員会方式ではなく、木下グループによるほぼ単独出資であることも、雑念のないキャスティングに一役買ったのかもしれない。
若干芝居がかった虚のパートだが、実際曽利監督は、実のパートとの違いを出すためあえて外連味のあるオーバーアクト気味な演技を俳優に求めたそうだ。
文字起こしされる前の馬琴の脳内世界と思って観ていると、その演出が意外と馴染んだ(ふらっとやってきた北斎に口頭で聞かせる構想という体で始まるので、まさに粗筋)。馬琴の半生を描く物語の中で「つくりごと」として出てくるのだから、これでよいという気がした。むしろ、ひとりだけ現代劇に近いリアクションをしていた河合優実が浮いて見えた(ファンの人すみません私も河合優実は好きです)。
正直「南総里見八犬伝」のストーリーをかなり漠然としか知らなかった私にとって、映画の中で同作の設定とあらすじを見せてくれたことは、馬琴のクリエイティビティの凄さを知る助けになった。そこが分からないと、馬琴の伝記を正しく理解できないだろう。
善なる一族への呪いを解くため、運命の絆と使命を持つ者たちが一人また一人と出会い、敵地に乗り込んでラスボスを倒す。そのあかつきに、彼らに使命を与えた姫君が現れる。これもう、ジャンプ連載作品でしょ。
今時の漫画なら、連載期間が28年にも及べば雑誌への掲載間隔もまばらになり、未完状態で事実上放置されたり作者が色々と描けない状態になる作品もままあるところ、馬琴は76歳になり視力を失ってもお路の助けを得て完成にこぎつけたのだからすごい。
書けなくなるのが駄目なのではなく、それだけ創作意欲を保ち続けられるのは稀有なことなのだと思う。
芝居小屋での鶴屋南北との対峙は、物語の見どころのひとつだ。薄暗い奈落で、馬琴は南北と、創作についての刃を交えるようなやりとりをする。舞台上から暗がりに逆さに頭を覗かせ、天井近くのスペースに貼り付いたまま会話する立川談春の姿と語り口が、絶妙に不気味で可笑しく、インパクトがある。
「東海道四谷怪談」と「仮名手本忠臣蔵」は、いわばシェアード・ユニバース歌舞伎だ。四谷怪談の登場人物は、忠臣蔵の登場人物の娘だったり孫だったりする。映画に出てきた中村座における初演では、この2作品を物語の時系列順に2日かけて上演した。
(このくだりで、中村獅童や尾上右近による歌舞伎、日本最古の芝居小屋である金丸座の様子が見られるのもいい)
この舞台を見た馬琴は、お岩の不幸話が忠義を果たす仇討ち物の合間に挟み込まれている様について「辻褄が合わない」と言う。馬琴は、正しいものは本来報われるべきと考える。一方、南北は四谷怪談を「実」だと言う。正義が報われる話など非現実的だと。
南北の意見に反発する馬琴だが、彼の舞台に惹きつけられたことも事実で、その後この時の会話が頭から離れなくなる。
創作物をただ享受する側から見れば、正しいものが報われる話も、報われない現実を描く話も両方あっていいと思うが、個々の創作者にはそれぞれ違う信念がある。そして、この信念があればこそ馬琴は、28年に渡り物語を紡ぎ続け、完成させることができたのだろう。
正しいと思うものを命尽きるまで貫けば、それが「実」になると華山は言った。息子の死や失明を乗り越えて彼が完成させた物語は、現在に至るまで時代を超えて人々の心を動かし続けている。インスピレーションを受けた後続の作品も数知れない。
その普遍性もまた「実」と呼んでいいのではないだろうか。
じいさんとじいさんがわちゃわちゃしている
じいさん(天才)と、じいさん(天才)が、バカ話をしている。
その会話が妙に心地よい。
虚と実を織り交ぜて映像に落とし込む、そのテンポも良い、
100冊以上の大長編になった里見八犬伝はこう書かれたのであろう、という話で、
おそらく冗長な部分を極力削りに削ったであろう脚本家の努力が思われる。
ちょっと気になった点がありまして、
四谷怪談と忠臣蔵のシーンで「四谷怪談は忠臣蔵の裏返し、忠臣蔵という実を虚があざ笑う」というニュアンスの言葉が出てきます。
この言葉に、ものすごく引っかかっているのです。
実はこの映画そのものが曲亭馬琴の「実」を、里見八犬伝という虚があざ笑うという仕掛けを施されているのではないか、という疑惑です。
でなければ、鶴屋南北のシーンそのものがいらなかったのではというくらいです。
里見八犬伝という勧善懲悪が、悪事を働かない(でも偏屈)馬琴とその子の実をあざ笑っているという意味なのかなと思っていましたが、なんかもう一歩後ろにありそうな気がしています。なんだろう。
ともあれ、この映画そのものも2時間を大幅に超える大長編です。
じっくり腰を据えて見られる力作だと思います。
ラストのシーン。
あの演出にするのはべったべただと思いますが、それでも泣けてしまいました。
現実とファンタジーの交錯を楽しむ
今年映画館で見た映画の中で一番面白かった。
2時間半長すぎるとビビっていたけど、虚と実が交互に展開するから飽きることがなかった。
馬琴と北斎二人の掛け合いが印象に残る。役所広司、内野聖陽が役にぴったりはまっていた。
お百が「じじぃ二人が昼までおしゃべりかね」「駄弁も仕事のうちかね」とか嫌味を言うシーンが言いたくもなるよねと共感。
真飛聖のお歯黒の怪しい雰囲気よかった。ミッドナイトスワンに出てた人なんだ。
八犬伝パートを配信連ドラか再度映画化して欲しい!
虚実を交互に見せていく方法はどうなの?と思ったけれど、実パートはこれがうまく行っていた。善因善果・悪因悪果にならない世の中だからこそ、創作の世界くらい勧善懲悪を描きたい、堅物の馬琴(役所広司)の想いが伝わってくる。対照的な風来坊的天才の葛飾北斎(内野聖陽)ぬらりひょんかネズミ男のような鶴屋南北(立川談春)、幸薄く真面目な息子(磯村勇斗)、嫌味なババア演技が最高な妻(寺島しのぶ)がピタッとハマり、馬琴の思いが伝わってくる。28年もかかったこと、お路(黒木華)が口述筆記で刊行させたことも初めて知り、やはり凄い作品と再認識。
一方、虚パートの八犬伝。やっぱり八犬伝て面白いー!!いざとなったら玉を出せ🎵が頭の中で鳴り響いてます。
夏木マリがこれまでならやるであろう玉梓の栗山千秋の恐ろしさ、犬塚信乃(渡邊圭祐)が相変わらずかっこいいし、良き演技。そして、犬坂毛野(板垣李光人)!君はやばい!話し出すまで完全にめっちゃ妖艶な女性と思っていた…未来の絶大なるバイプレーヤーと思っているけれど、本気で凄い役者さんだ。敵の殿様じゃなくてもぼーっとするわ。
若手の良い役者さんが集結し魅力的なキャラクターに命を吹き込む良い演技、凄いCG、美麗な衣装、だからこそ、このダイジェスト版は勿体無い!!! もっと八犬士個人個人のバックグラウンドを知りたいし、1人、また1人と見つかっていくワクワク感を楽しみたい。彼らの活躍をバーンと見たい!この端折りダイジェストは勿体なさすぎるので、配信連ドラかもう一本映画をお願いします。
待つ間、山田風太郎を再度読もう。
編集の勝利
創作物とその作者の人生を並行で描くとなると、どうしても「現実に起こったことを物語に反映させていく」といった展開にしたくなる。
「馬琴の生活のために妥協した結婚」と「伏姫の異種婚姻」、
共に恨み節を吐いてこの世を去っていった「お百」と「玉梓」、
「息子宗伯の夭折」と「五犬士の復活」、
「その犬士復活に力を貸した伏姫」と「八犬伝執筆を再開させたお路」、が
それぞれ対応していると読めなくもないが、そのような演出意図はない。
一方でお路の無筆に苛立って一度は続きを書くのをあきらめかけた馬琴を再び文机に向かわせたのは、架空のキャラや読者の要請等というよりはお百を無学と相手にしなかったことへの後悔だったように見えた。
つまり馬琴は、虚を虚、実を実としてキッチリ分けて生きている人物なのである。
また(これもよくあるが)、彼は現実の辛さから虚の中に逃げ込んでしまうといったタイプでもなかった。悪友の北斎がストッパーとなって現実世界にとどまり続けている。
そして鶴屋南北との邂逅で虚実は実際のところ表裏一体であることを知り、
最後は虚の世界のキャラクターが現実へ迎えに来ることで虚実が「冥合」する。
役所広司の演技がうまいので、馬琴が今何に悩んでいるのかが常に明確だった。
八犬士たちのキャラクター付けが現代の感覚からするとやや弱く、特に夜戦になると見分けがつかなくなってしまったのが残念だ、と最初は思った。たとえば八犬士の服や玉の色をそれぞれ設定して特徴づけるとかすればわかりやすくなっただろうが、あまりに後の世で量産された戦隊ヒーロー然となってしまうし、そもそも馬琴を絡めた映画全体の構成を考えるとあまり派手なCGバトルにしすぎず抑えた調子にしたほうが正解のように思えてきた。
同様に本来三部作で語られてもよいほどの大長編を芳流閣の戦いなどのハイライトだけ押さえてダイジェスト形式にしたのも、創作秘話と並行して150分に収めるためにはむしろよくまとまっていて飽きさせず、これは編集の妙が光る作品だと思った。
滝沢馬琴が語る虚構の物語と馬琴の現実世界が交差していくことへのワクワク感は大であっただけに、物足りなさも。
曽利文彦 監督の2024年製作(149分/G)による日本映画。
配給:キノフィルムズ、劇場公開日:2024年10月25日。
子供の頃から大好きの八犬伝の物語に、作者である滝沢馬琴と葛飾北斎を絡ませるストーリー・アイデアには凄くワクワク感を感じていたのだが(原作者の山田風太郎は凄い)、それだけにかもしれないが、面白い部分アリも全体的にはかなり今一つ感を感じてしまった。
滝沢馬琴(役所広司)と葛飾北斎(内野聖陽)の芸術家としての相互刺激、加えて渡辺華山(大貫勇輔)も絡んでのかなり濃密な交流が描かれていた。こんなの作り話と思っていたのだが、調べてみると歴史的事実の様で、凄く興味深かったし、創作活動の源泉としてとても面白くも感じた。
歌舞伎が上演され観客で賑わう江戸の街や中村座の描写にはとても感心するとともに、この時代に商業芸術が既に花開いていたんだと、いたく関心した。
ただ、四代目鶴屋南北(立川談春)作の「東海道四谷怪談」の「仮名手本忠臣蔵」と交互での2日にわたる初演(1825年)を劇中劇(悪玉主人公の民谷伊右衛門が中村獅童、お岩が尾上右近)として長々と見せられたが、視聴中は意図するところが理解できず、かなり退屈させられてしまった。
まあ、原作者である山田風太郎としては、虚構と実話を対比させた傑作「東海道四谷怪談」初演の更に上に行く、馬琴が話す虚構の物語と馬琴の実生活が相互作用していく新規創作の世界を際立てるために、敢えて劇中劇を設定したということだろうか。ただ映画では、脚本が今ひとつ(確かに劇中劇が面白いストーリーであることを知ったが、のめりこみ過ぎに思えた)で、それは十分には伝わってこない様に思えてしまった。
馬琴と南北の物語構成における勧善懲悪に関する議論は、原作にもあるらしいが、そのまま2人の会話として映画に移してきたのも大いに不満であった。創作者たる監督が南北にとても惹かれるのは分かるが、小説ではなく映画なんだから、映像で語らせろと。また、監督の意図を飛び越えて、主人公馬琴が主張する勧善懲悪がつまらないものに思えてしまった。
一方、大好きなはずの八犬伝の物語だが、ちゃっちく見えて期待外れ。まず出だしのでかいイヌのVFXが、人工的でリアリティに欠く。そして、城の上での格闘VFXは良かったが、八犬伝の武士達、化物化し里見家に復讐する栗山千秋、加えて里見家の殿様役小木茂光の演技も、監督の演出の問題なのか、今一つに感じた。
馬琴と嫁(黒木華)の共同作業による口述筆記は、お互いの苦労が偲ばれ、それなりに心が動かされた。しかし、文句ばかりを言っていた馬琴妻のお百(寺島しのぶ)が、口述筆記を務める嫁への嫉妬の言葉だけを残して、あっけなく死んでしまう脚本は、唐突すぎると思ってしまった。その前に、嫉妬に苦しむシーンをきちんと入れておくべきでしょうと思ってしまった。あの名優が全く活かせてないと、不満が大。
最後の虚構の物語と馬琴の現実世界が交わるラストも、とってつけた様な映像で、平凡すぎると思ってしまった。映像化が難しそうな山田風太郎の原作に敢えて挑んだ心意気は買いだが、完成度は残念ながら高いとは自分には思えなかった。
監督曽利文彦、原作山田風太郎、脚本曽利文彦、製作総指揮木下直哉、エグゼクティブプロデューサー武部由実子、プロデューサー葭原弓子 、谷川由希子、撮影佐光朗、照明加瀬弘行、録音田中博信、美術佐々木尚、装飾佐藤孝之、衣装デザイン西原梨恵、ヘアメイクディレクター酒井啓介、技髪荒井孝治、カラーグレーディング星子駿光、VFX白倉慶二、編集洲﨑千恵子、音楽北里玲二、助監督副島宏司、 松下洋平、アクション監督出口正義、記録山本明美、ラインプロデューサー坪内一、制作担当坪内一。
出演
滝沢(曲亭)馬琴役所広司、葛飾北斎内野聖陽、伏姫土屋太鳳、犬塚信乃渡邊圭祐、犬川荘助鈴木仁、犬坂毛野板垣李光人、犬飼現八水上恒司、犬村大角松岡広大、犬田小文吾佳久創、犬江親兵衛藤岡真威人、犬山道節上杉柊平、浜路河合優実、里見義実小木茂光、丸山智己、真飛聖、忍成修吾、塩野瑛久、神尾佑、玉梓栗山千明、民谷伊右衛門中村獅童、お岩尾上右近、鎮五郎/宗伯磯村勇斗、鶴屋南北立川談春、お路黒木華、お百寺島しのぶ。
タイトルを馬琴にすべき
内容は八犬伝ではない。作者の馬琴の話である。
なので、タイトルは変えた方がいいと思った。
虚と実の区別をするためなのか、
虚の世界観がうすっぺらくて、CGも雑、演技が学芸会なみの棒読み、、、こんなにも現実味を除く必要ないのにと思うほど全てがへた。見ていて共感性羞恥を覚えるほどだった。
実の世界では役所さんと内野さんが重厚な演技で、心理描写もしっかりしており、シーンが虚から実にかわると安心して見れた。
馬琴が長い年月をかけて書いた事や、書くにあたって大事にした事など、知らない点が多かったので、馬琴のストーリーはおもしろかった。
もっと馬琴中心にした脚本であれば、本来のターゲットである中高年の観客が増えたのでは。
今回、馬琴に関心を持ったので、八犬伝を読み始めた。馬琴の心情を考えながら読むとおもしろい。
良くも悪くも
すごく良い面もダメな面もある映画だと思います。原作に比較的忠実でその面白さをベースに小気味よく映像化していると思う。セリフは独白ばかりでユーモラスではあるけどクスッとするくらい。
犬士はイメージぴったりでもっと活躍シーンをみたいって思うし凌雲閣も今まで見た八犬伝の中で一番好きだし。
原作のいいところはきちんと出せているとは思うけどこれだけのキャストを勢ぞろいさせてもっと突き抜けた傑作に出来なかったのかなあ。
犬畜生八房ももっと恐ろしい化け物としても伏姫にしてもとか望んでしまう部分はたくさんあるから。
とはいうものの、山田風太郎の残した作品でエンタメ映画をもっとたくさん作って欲しい。
それくらいの宝の山だとは思うから。
お路伝
薬師丸ひろ子さん主演の「里見八犬伝」がとても好きな映画だったので興味深く鑑賞。
八犬伝を書き上げるまでの滝沢馬琴の物語だったので劇中の八犬伝は大味でした。
滝沢馬琴の軸の物語は、同時代の画家や作家との交流が描かれているところが面白かったです。
ただ感動するところは少なく、最後に黒木華さん演じたお路が美味しいところを持っていったかも。
葛飾北斎のイメージはだいぶ違ったなぁ〜。
虚であれど、それを真実と思い貫けは実となるby渡辺華山
兎に角、面白かったの一言です。あっと言う間の二時間半でした。流石役所広司!
それをとりまく人々の演技に吸い込まれて行きます。物語と現実を交互に行き渡り
ますが、違和感が全くなくスムーズに流れていきます。正義がまかり通らない世の中
物語の中だけでも全正義が勝つでいいではないか?自分もそう思います。
出演者の中にも沢山の俳優さんたちが良いスパイスで登場します。北斎の内田さんと
奥様役の寺島さんは最高でした。より馬琴(役所)さんをきわださせていました。
もう一度見たいと思う映画でした。
面白く観ました
(完全ネタバレなので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
結論から言うと面白く観ました。
今作の映画『八犬伝』は、「南総里見八犬伝」の劇中劇と、「南総里見八犬伝」を執筆する滝沢馬琴(役所広司さん)の物語が同時進行する物語です。
「南総里見八犬伝」の劇中劇は、犬塚信乃(渡邊圭祐さん)などの八犬士のそれぞれの描き分けがそこまで深くなく似ていて、ストーリー的にも登場人物の多さの割に時間的制約の短さもあり、迫力や画面の美しさがありながらやや単調の感想は持ちました。
一方で、滝沢馬琴や葛飾北斎(内野聖陽さん)との現実の場面は、それぞれの人物描写が際立っていて、特に滝沢馬琴と葛飾北斎のやり取りは見ごたえがあったと思われます。
しかしこの映画が俄然面白くなるのは、鶴屋南北(立川談春さん)が、四谷怪談の方が「実」で、忠臣蔵の正義の方が「虚」であると、滝沢馬琴の(忠臣蔵にも共感する)正義の考えを否定するところからだと思われました。
滝沢馬琴は、「南総里見八犬伝」を正しいことをしている者が最後に報われる物語として執筆を続けているのですが、鶴屋南北によって滝沢馬琴の正義の考えが根底から否定され、滝沢馬琴はショックを受けます。
ただ渡辺崋山(大貫勇輔さん)によって、例え「虚」の正義であってもそれを貫けばその人の人生は「実」になると、滝沢馬琴は励まされます。
葛飾北斎も滝沢馬琴を勇気づけます。
しかし、滝沢馬琴の息子・鎮五郎/宗伯(磯村勇斗さん)が身体を悪くすると、滝沢馬琴の妻・お百(寺島しのぶさん)は、息子の鎮五郎/宗伯が身体を悪くしたのは滝沢馬琴の息子に対する教えのせいだと、滝沢馬琴を責め立てます。
そして、滝沢馬琴はまたもや自身の正義の考えが揺らぎショックを受けるのです。
今作の映画『八犬伝』は、劇中劇の「南総里見八犬伝」のやや単調さも感じる勧善懲悪の物語やその正義を信じたい筆者の滝沢馬琴と、その正義の物語は「虚」(偽物)だと責め立てる鶴屋南北や妻・お百との、対立の構成作品になっていると思われました。
一見、妻・お百は、夫・滝沢馬琴が大切にしている正義の信念を破壊しようとする悪女に見えなくもないですが、一方で、妻・お百の背後には日常と関係しながら生きる現実があることがうかがえ、その日常の現実から目を逸らしてると彼女からは映っていただろう夫・滝沢馬琴が責め立てられているのは、1観客の私には非常に理解が出来る夫婦間の描写だったとも思われました。
この映画が面白く秀逸だと思われたのは、鶴屋南北や妻・お百を通して、滝沢馬琴の正義に対する疑念をちゃんと制作側が自覚しているところにあると思われました。
個人的には、鶴屋南北や妻・お百による、現実からの滝沢馬琴の正義に対する疑義の方に共感があります。
しかしだからこそ、(渡辺崋山が言うように)滝沢馬琴が生涯を貫いた正義は、一方でそんな私を含めた観客読者からも、劇中劇の「南総里見八犬伝」の終盤のストーリー展開も含めて、「実」に転換する感動があったと思われました。
滝沢馬琴が日本で初めての原稿料で自活できた著述家だと言われるのも、正義を貫いたからこそ得られた読者の感動に理由があるように感じました。
個人的には、劇中劇の「南総里見八犬伝」の八犬士の描き分けなどがもう少し深くあればもっと面白くなったのではと、僭越ながら思われましたが、歌舞伎シーンも含めた現実場面の描写の分厚さなどから、十分面白い作品に仕上がっていると感じられました。
NHKの坂本九さん語り手の人形劇の頃からの八犬伝のファンです。とて...
NHKの坂本九さん語り手の人形劇の頃からの八犬伝のファンです。とても豪華なキャストでしたが、本編と馬琴の生涯の2部編成ということもあり、それぞれストーリーか少し中途半端で荒削りで深みがないように感じました。また、ストーリー展開で、八犬伝というタイトルなのに、八房の扱いが雑でリスペクトが感じ取られませんでした。ラストも伏姫と共に登場するくらいの扱いがあっても良いように感じました。キャスティングでは、里見の殿様の演技が私的には軽薄に感じ取られ残念でした。
集中力が必要です
八犬伝が完成するまでの物語りと八犬伝の内容を映像化した物語りが交差するので油断して観ていると「あれ?今どっち?」となります。
予備知識ゼロで観るとそんな感想になってしまう映画です。
このシーン長いな?とか、ここは必要なのか?というシーンも沢山あります(あくまでも個人の感想です)。
キャストの皆さんの演技も良かったし、CGの使い方も良かったと思います。
八犬伝のストーリーを映画化して欲しいと思った人は多いと思いますね。
「虚」と「実」の間で迷う
八犬伝は子供の頃に一度読んでなんとなくあらすじは覚えている程度。
現実?パートは役者や演出、美術も含めて非常にレベルが高い。役所広司の滝沢馬琴はザ・主人公。という感じで王道のキャラクターに感じたが、馬琴の目が見えなくなったあたりからその実力が目に見えてくる。
内野聖陽がとても素晴らしい。飄々としているけれど、その奥に芸術的なセンスを根底とする言い回しや態度がとてもカッコ良かった。
寺島しのぶのキャラクターは少々キツイが振り切った演技が素晴らしく、黒木華もこういう健気な女性を演じたら右に出る者がいないと思える程ハマっていた。
「虚」の八犬伝パートもかなりのダイジェストだろうが、ツギハギが解けて崩壊しない程度にはなんとか上手く纏めているとは思う。こちらは若手スター候補を引っ張る栗山千明が素晴らしかった。
映像も綺麗かつ、恐らく敢えて色彩やCG色を強め「虚」の世界であることがわかる様になっていて見やすかった。
正直な印象としては、「実」が重厚で見応えのある演出がされるのと「虚」側で壮大なファンタジーが描かれるのと、お互いがそれぞれの方向へ進むにつれて見ている側はその間で迷子になってしまう印象の映画だった。
八犬伝側は子供には楽しいが、大人には少々キツい。ダイジェスト感も相まって、夏休みのヒーローショーを見ている気分になる。
逆に馬琴側は大人には良いが、子供には虚実問答とか少し難しいだろうし、寺島しのぶはずっと怒っているし八犬伝側が見たいだろう。
交互に挟まれているのでリンクしながら進んでるのかとも考えたが、そういう部分もありそうだ。という程度でしっかりとは読み取れなかった。
またお互いの枠を取り合うことでそれぞれがしっかりと描ききれていないのも惜しいと感じる部分ではある。
最後の馬琴が八犬士に見送られる?シーンは感動的なんだろうが、なんかちょっと見ていてキツいな。というのが鑑賞後の余韻として残った。
伏姫1人に迎えさせるか、八犬士の後ろ姿だけ見せるなどさり気なく送り出してた方が良かった様にも勝手ながら思えたりする。
大河ドラマと仮面ライダーが交互に観れますよ
もう半世紀以上昔になるのか子供のころに観たNHKの人形劇ドラマで「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」の8つの玉を持った8人のファンタジードラマに魅了された記憶が蘇り、タイトルだけでほとんど出演者などの事前知識なしで観させてもらった。
滝沢馬琴のストーリーと彼から生み出されたファンタジーが交互に出てくる構成となっているが、演技力達者な俳優陣のリアルストーリーの方が重いのに比べ、若者たちのファンタジー部分がまさしく御伽草子であり、大河ドラマと仮面ライダーを交互にチャンネルを切り替えてみるような感覚だったのは私だけだろうか。
リアルストーリーでは息子役の”中村幸也”は相変わらず上手いなあって思って帰って調べたら”磯村勇斗”だったのですね。ずっと勘違いしており失礼しました。
浜地役の河合優実も最初は”森田望智”なのか?って思っていましたが、これも違ってました。
年取るとだんだん区別がつかなくなってきますわ。
嫁役の黒木華は間違えることなくしっかりとした演技は素晴らしかったです。
全編退屈せずに観終えましたが、2番組をチャンネルガチャガチャして観続けたような、何か別の世界をつなぎ合わせた違和感が残りました。
虚と実の対比が面白かった
正しいものが報われるという「虚」を描く馬琴が、「実」では決して報われているとは思えない生活を送っており、正しいことだけを書き続けるのがほんとにそれで良いのかと悩むところは面白かった
また、なんで黒木華さんがこんな端役と思ったけど、最後の方はある意味主役になっており、やっぱり黒木華さんで良かったと思いました
もう書くまでもないけど、役所広司さんと内野聖陽さんの老人の交流シーンの掛け合いはほんとに面白くて楽しめました
少し長い映画ですが、とても良かったです
若手俳優が良かった
勢いで観に行ってしまい、八犬伝の映画だと思っていたら、
そういうタイトルの小説の映画化で滝沢馬琴がメインだった。
あとから原作をざっと見てみたら原作が虚実という作りだったので
この形式は忠実に映画化しているのだろうが、
それにしても冗長過ぎると思う。
半分くらいの脚本に詰めたらもう少し面白く感じたと思うのだが。
大元の八犬伝がそういう話だから仕方ないのだが、義実が駄目過ぎる。
玉梓の言うのは尤もだし、これは映画版が特に酷いのだが
八房に娘を嫁にやりたくないならまず感謝と謝罪と代替案を出せよと思う。
一つもなく殺しに行くのが驚きだし、ひたすら八房が可哀想だ。
八房は言われた通り武勲を立てたのだから、褒美をもらえこそすれ
そんな目に合わされる理由がない。
馬琴を初め虚実どの登場人物もいまいち好きになれなかった。
馬琴は身勝手過ぎる。
ラストシーンも随分チープだなと思った。
八犬伝パートを感動的に完結させて、馬琴は八犬伝を完結させられたのだな、
と視聴者に投げるくらいで丁度良いだろうに、
虚実ないまぜだからああしたのだろうが中途半端に思う。
大角の松岡広大さんが礼儀正しく真っ直ぐな感じが出ていて良かった。
舞台では犬坂の役をやっていた塩野瑛久さんが敵方である定正を演じるのも
それはそれで面白いし、
塩野さんの声の響きが特徴があって好きだ。
大河にも出ておられるが、和の役も悪役も出来る方なので
印象的な悪役になっていて非常に良かったと思う。
この映画は「滝沢馬琴物語」
まず「八犬伝」を求めてこの映画をみると「あれ?」って思うかもしれません。
タイトルは「八犬伝」ですが映画の内容はどちらかといえば「滝沢馬琴物語」といった方がしっくりくる映画だと思いました。
他の巨匠で例えるなら宮崎駿先生がいかにしてナウシカやラピュタやトトロを生み出し、映画として世に送り出したのか。みたいな流れを時々映画のワンシーンを交えながら描いていく。みたいなものでしょうか。
そういう形式で言えばエヴァの庵野監督やDBやアラレちゃんの鳥山明先生バージョンでもこういう形の映画を是非見てみたいなあと思ってしまいました。
そして葛飾北斎がラフ画を描いては破って捨てる天丼ギャグは始終笑ってしまいました。
滝沢馬琴と葛飾北斎のバディものとしても観れるのでブロマンス好きな方にもおすすめ。
2人の会話劇のパートがめっちゃ面白かったので、葛飾北斎目線バージョンの映画も見て見たいなあと思ってしまいました。
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