八犬伝のレビュー・感想・評価
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虚と実に向き合った馬琴
八犬伝の創作を元に馬琴の人生を描いた映画ですが、
映画の中にも虚と実が有る
人生を彩る物語と八犬伝を交互に描きながら進みますが、
馬琴の人生を書いた部分は虚なんですが実とも思える出来です。
周りを固めた役者さんが良かった。
馬琴の役所さん、寺島さん、磯村さん、黒木さんと馬琴さんの馬琴の家族に北斎の内野さんをメインの物語で進みますが、この方々がいいのはもとより少し出た方々の演技もいい。
実在したとはいえ数百年前であり完全な創作なんですが、近所で見ていたかの様な実としか思えないほど、
馬琴物語の間に挟まれた八犬伝の部分は........消化不良かな、
長い物語だし1つの映画に馬琴を書いて八犬伝も出したいと考えるのが無理ですね。
馬琴物語と対で組み込むには荷が重すぎたのかな、
他では名演の若手俳優の方もいたし、悪くは無いと思うけど作り話感が出ちゃってるかな、いい役者もいたけど...........固めきれてない。
せっかく虚実に苦悩しながら書かれた戯作が虚のままで終わってしまったのでマイナス1.5
八犬伝を合間に入れなければね。
私が感じた実になった馬琴物語と虚で終わった八犬伝が交互に織りなされた映画でした。
観て損は無し
編集の勝利
創作物とその作者の人生を並行で描くとなると、どうしても「現実に起こったことを物語に反映させていく」といった展開にしたくなる。
「馬琴の生活のために妥協した結婚」と「伏姫の異種婚姻」、
共に恨み節を吐いてこの世を去っていった「お百」と「玉梓」、
「息子宗伯の夭折」と「五犬士の復活」、
「その犬士復活に力を貸した伏姫」と「八犬伝執筆を再開させたお路」、が
それぞれ対応していると読めなくもないが、そのような演出意図はない。
一方でお路の無筆に苛立って一度は続きを書くのをあきらめかけた馬琴を再び文机に向かわせたのは、架空のキャラや読者の要請等というよりはお百を無学と相手にしなかったことへの後悔だったように見えた。
つまり馬琴は、虚を虚、実を実としてキッチリ分けて生きている人物なのである。
また(これもよくあるが)、彼は現実の辛さから虚の中に逃げ込んでしまうといったタイプでもなかった。悪友の北斎がストッパーとなって現実世界にとどまり続けている。
そして鶴屋南北との邂逅で虚実は実際のところ表裏一体であることを知り、
最後は虚の世界のキャラクターが現実へ迎えに来ることで虚実が「冥合」する。
役所広司の演技がうまいので、馬琴が今何に悩んでいるのかが常に明確だった。
八犬士たちのキャラクター付けが現代の感覚からするとやや弱く、特に夜戦になると見分けがつかなくなってしまったのが残念だ、と最初は思った。たとえば八犬士の服や玉の色をそれぞれ設定して特徴づけるとかすればわかりやすくなっただろうが、あまりに後の世で量産された戦隊ヒーロー然となってしまうし、そもそも馬琴を絡めた映画全体の構成を考えるとあまり派手なCGバトルにしすぎず抑えた調子にしたほうが正解のように思えてきた。
同様に本来三部作で語られてもよいほどの大長編を芳流閣の戦いなどのハイライトだけ押さえてダイジェスト形式にしたのも、創作秘話と並行して150分に収めるためにはむしろよくまとまっていて飽きさせず、これは編集の妙が光る作品だと思った。
滝沢馬琴の物語、江戸時代のファンタジーと物語が出来る様子を楽しめる
面白かった!
曲亭馬琴「南総里見八犬伝」の物語は、勿論面白くて、想像の世界を美しい映像で楽しめました。
そして、作品が何年もかけて紡がれていく様子と、滝沢馬琴の生き様を楽しむことが出来きました。
葛飾北斎との交流、妻との関係、息子とその奥さんなど。
物語と現実の生活が交互に進むストーリー、それぞれのキャラクターが個性的で、やり取りが本当に面白い。
滝沢馬琴が語る虚構の物語と馬琴の現実世界が交差していくことへのワクワク感は大であっただけに、物足りなさも。
曽利文彦 監督の2024年製作(149分/G)による日本映画。
配給:キノフィルムズ、劇場公開日:2024年10月25日。
子供の頃から大好きの八犬伝の物語に、作者である滝沢馬琴と葛飾北斎を絡ませるストーリー・アイデアには凄くワクワク感を感じていたのだが(原作者の山田風太郎は凄い)、それだけにかもしれないが、面白い部分アリも全体的にはかなり今一つ感を感じてしまった。
滝沢馬琴(役所広司)と葛飾北斎(内野聖陽)の芸術家としての相互刺激、加えて渡辺華山(大貫勇輔)も絡んでのかなり濃密な交流が描かれていた。こんなの作り話と思っていたのだが、調べてみると歴史的事実の様で、凄く興味深かったし、創作活動の源泉としてとても面白くも感じた。
歌舞伎が上演され観客で賑わう江戸の街や中村座の描写にはとても感心するとともに、この時代に商業芸術が既に花開いていたんだと、いたく関心した。
ただ、四代目鶴屋南北(立川談春)作の「東海道四谷怪談」の「仮名手本忠臣蔵」と交互での2日にわたる初演(1825年)を劇中劇(悪玉主人公の民谷伊右衛門が中村獅童、お岩が尾上右近)として長々と見せられたが、視聴中は意図するところが理解できず、かなり退屈させられてしまった。
まあ、原作者である山田風太郎としては、虚構と実話を対比させた傑作「東海道四谷怪談」初演の更に上に行く、馬琴が話す虚構の物語と馬琴の実生活が相互作用していく新規創作の世界を際立てるために、敢えて劇中劇を設定したということだろうか。ただ映画では、脚本が今ひとつ(確かに劇中劇が面白いストーリーであることを知ったが、のめりこみ過ぎに思えた)で、それは十分には伝わってこない様に思えてしまった。
馬琴と南北の物語構成における勧善懲悪に関する議論は、原作にもあるらしいが、そのまま2人の会話として映画に移してきたのも大いに不満であった。創作者たる監督が南北にとても惹かれるのは分かるが、小説ではなく映画なんだから、映像で語らせろと。また、監督の意図を飛び越えて、主人公馬琴が主張する勧善懲悪がつまらないものに思えてしまった。
一方、大好きなはずの八犬伝の物語だが、ちゃっちく見えて期待外れ。まず出だしのでかいイヌのVFXが、人工的でリアリティに欠く。そして、城の上での格闘VFXは良かったが、八犬伝の武士達、化物化し里見家に復讐する栗山千秋、加えて里見家の殿様役小木茂光の演技も、監督の演出の問題なのか、今一つに感じた。
馬琴と嫁(黒木華)の共同作業による口述筆記は、お互いの苦労が偲ばれ、それなりに心が動かされた。しかし、文句ばかりを言っていた馬琴妻のお百(寺島しのぶ)が、口述筆記を務める嫁への嫉妬の言葉だけを残して、あっけなく死んでしまう脚本は、唐突すぎると思ってしまった。その前に、嫉妬に苦しむシーンをきちんと入れておくべきでしょうと思ってしまった。あの名優が全く活かせてないと、不満が大。
最後の虚構の物語と馬琴の現実世界が交わるラストも、とってつけた様な映像で、平凡すぎると思ってしまった。映像化が難しそうな山田風太郎の原作に敢えて挑んだ心意気は買いだが、完成度は残念ながら高いとは自分には思えなかった。
監督曽利文彦、原作山田風太郎、脚本曽利文彦、製作総指揮木下直哉、エグゼクティブプロデューサー武部由実子、プロデューサー葭原弓子 、谷川由希子、撮影佐光朗、照明加瀬弘行、録音田中博信、美術佐々木尚、装飾佐藤孝之、衣装デザイン西原梨恵、ヘアメイクディレクター酒井啓介、技髪荒井孝治、カラーグレーディング星子駿光、VFX白倉慶二、編集洲﨑千恵子、音楽北里玲二、助監督副島宏司、 松下洋平、アクション監督出口正義、記録山本明美、ラインプロデューサー坪内一、制作担当坪内一。
出演
滝沢(曲亭)馬琴役所広司、葛飾北斎内野聖陽、伏姫土屋太鳳、犬塚信乃渡邊圭祐、犬川荘助鈴木仁、犬坂毛野板垣李光人、犬飼現八水上恒司、犬村大角松岡広大、犬田小文吾佳久創、犬江親兵衛藤岡真威人、犬山道節上杉柊平、浜路河合優実、里見義実小木茂光、丸山智己、真飛聖、忍成修吾、塩野瑛久、神尾佑、玉梓栗山千明、民谷伊右衛門中村獅童、お岩尾上右近、鎮五郎/宗伯磯村勇斗、鶴屋南北立川談春、お路黒木華、お百寺島しのぶ。
幾つか気にはなるけれど…
大変面白かった。八犬伝中の見せ場、例えば芳流閣の戦いや、名刀村雨の奪い合い、犬村大角の化け猫退治などはキチンと織り込められていて、物語が“虚”と“実”の間を行き来しながら、それぞれに破綻することもなく、一気に見られる。何度も見直したいと思った。
ただ、何度も見直したいのは、作品の面白さだけではない。“虚”の主役である犬塚信乃の渡邊圭佑ははあの美丈夫だから、すぐ見分けがつく。犬坂毛乃の板垣李光人は女と見紛うばかりの美貌だから、これも良い。犬飼現八の水上恒司はヒゲ面で、誰かわからなかった。犬山道節の上杉柊平もヒゲ面。犬川荘助の鈴木仁、犬田小文吾の佳久創、犬村一角の松村広大は、プロフィールを見て“あっ、あの人か!」と分かるくらいの知名度で、その上顔が汚れている場面が多く、判別がしづらい。犬江親兵衛の藤岡真威人は、あまりに出番が少なすぎる。
玉梓の栗山千明はピッタリだったが、最後の戦いの時、“呪いの炎”というCGではなく、キチンと顔を見せて欲しかった。
CGと言えば、八房はCGでなく.本物の犬でやって欲しかった。それにあの解釈では“妖犬”扱いで、“里見家を守る守り神”とするのが正解だと思う。心配した土屋太鳳の伏姫は、ちゃんとお姫様然としていて、良いキャスティングだと思った。丶大法師も名前は忘れたが、いいキャストだった。浜路に河合優美をアテたのはちょっと驚いた。
“実”の部分、滝沢馬琴の役所広司、北斎役の内野聖陽が、作品の重しになって、南北役の立川談春との掛け合いも、作品のテーマを語っているようで、“虚”と“実”、“裏”と“表”のバランスがとても良い。悪妻として知られる馬琴の妻・お百を演じた寺島しのぶ、きっとこういう人だったんだな、と思わせる。
一人だけミスキャスト、と思うのは宗白役の磯村優斗で、病弱な馬琴の子より、八犬士の一人として活躍して欲しかった。
あの長大な物語を、どう映画化するのか楽しみだったが、とてもバランスの良い、再見再々見にも耐えられるような、まとまった作品だと思う。次見る時は、誰が誰だか、注意して見よう。
ここ数年の中で1番好きな映画かも
4月ごろに陰陽師0にハマって、そちらにも出ていた板垣李光人くん目当てで観に行きました。
他にも藤岡真威人くんなど注目の若手さんが出ていたので、正直にイケメン八犬士目当てで行きました。
ですが、滝沢馬琴と葛飾北斎のやりとりが絶妙に心地よくてそちらにも食い入る様に見てしまいました。
自分も江戸時代の、滝沢馬琴さんの部屋に溶け込んで一緒に過ごしてるような感覚にワクワク。
そして虚のパートの八犬士のほうも、ため息が出るほどに良かったです。
芳流閣での決闘シーンは最高でした。
屋根瓦の色と空の色と、コントラストもすごく良くてさすが魅せ方がうますぎるとまたまたワクワク。
個人的に父親との対峙があった犬村大角が1番好きです。
剣さばきもとても良かった。
南総里見八犬伝はまだ読んだことがないのでネットで調べましたが、なるほど今回の映画の中ではかなりコンパクトにまとめられていたのですね。
でも分かりやすくて私は良かったです。
実のパートと虚のパート、どちらも面白過ぎたので別々に2時間の映画にしてほしいなと思いました^ ^
タイトルを馬琴にすべき
内容は八犬伝ではない。作者の馬琴の話である。
なので、タイトルは変えた方がいいと思った。
虚と実の区別をするためなのか、
虚の世界観がうすっぺらくて、CGも雑、演技が学芸会なみの棒読み、、、こんなにも現実味を除く必要ないのにと思うほど全てがへた。見ていて共感性羞恥を覚えるほどだった。
実の世界では役所さんと内野さんが重厚な演技で、心理描写もしっかりしており、シーンが虚から実にかわると安心して見れた。
馬琴が長い年月をかけて書いた事や、書くにあたって大事にした事など、知らない点が多かったので、馬琴のストーリーはおもしろかった。
もっと馬琴中心にした脚本であれば、本来のターゲットである中高年の観客が増えたのでは。
今回、馬琴に関心を持ったので、八犬伝を読み始めた。馬琴の心情を考えながら読むとおもしろい。
何も無いところから始めて28年間良く頑張った
今年はこういう映画が多い、アニメ「ルックバック」が絵とストーリーでゼロスタートから4コマ漫画を起こすが、本棚には絵を描いたことがある人は気がつくように誰もが読んだことのある絵の参考書が並んでいる。
滝沢馬琴の八犬伝はマネする物がない時代、インスパイヤされる物も少ない時代に自分の頭の中の妄想を28年間も維持して虚構の小説を書き上げるのはもの凄い苦労の連続であったと思う。
ゼロスタートでは無く、マイナススタートのこの時代の書き手は少年ジャンプのようなビジネスモデルもなく、編集もいない、校正も息子にやってもらう。
パトロンはいたが馬琴の性格から原稿料だけで生活しているのがわかる。
映画もドラマもアニメも、どこかで見たようなまるで生成AIで作ったような足してくっ付けてマネて、なんとなく形になっている作品が増えてきているし、これからももっと増えてくるだろう。
この映画は無い時代に学べと言っているように思える。
生成AIから教えてもらうのではなく、無い時代に学んで生成AIを利用していい作品がこれからも生まれることを祈る。
きっと、八犬伝が無ければ鳥山明のドラゴンボールは生まれて来なかったと思う。
誰もが痛快な虚を見たいがそれだけでは成立させてくれない現代よ
名作「ピンポン」でデビューした曽利文彦は1964年生まれで1973年から始まったNHKの人形劇「新八犬伝」は小学校3~6年のドンピシャ世代なのだろう。「ゴジラ-1.0」の山崎貴も同世代でやはりこれをやりたかったと語っており辻村ジュサブローのワイヤーもろばれ人形劇ファンタジーを最新VFXでどう見せてくれるのかが最大の関心事であった。そして予告編にも使われている伏姫の着物を咥えて引っ張るモフモフの八房が素晴らしくそこにこの映画の本領を見た。ゴジラは実在しないからリアルなのだけれどちょっと大きい犬は誰もが見て知っているのでここのCGが一番難しいと思うのだ。ピンポンの球をCGで描いたようにそのものを見世物にしない(観客に意識させない)VFXが曽根監督の持ち味で、根底に流れている大阪人気質のユーモアも合わせて好感度が高い。滝沢馬琴と鶴屋南北の奈落での「虚実」論争がそのまま映画制作に懸ける監督自身のメインテーマと合致しており水面下で必死に足をバタバタさせながらもスマートに一級のエンターテインメント作品に仕上げた力量に拍手!観ていて気付いたのは滝沢馬琴は剣士と犬士を掛けていたのか!ということである。
南総里見八犬伝未読での感想
南総里見八犬伝未読なので、純粋に2つのストーリーを楽しんで鑑賞しました。
現実パートは、寺島しのぶ演じるお百の言動がうっとおしく感じました。お百が没するシーンで、ようやくそれまでの【デフォルトで愚痴こぼしモード】の理由がはっきり裏付けられた感じ。もうちょっと丁寧な猫写があれば、これほど嫌な印象は受けなかったのかも。磯村勇斗と黒木華の演技が、とても良かったです。
物語パートは、原作の読者の方には、端折りすぎて物足りないのだろうなと思いつつ、未読の私には、ストーリーがコンパクトにまとまっていて、とても楽しく鑑賞しました。ただ…少し前から応援している、河合優実の無駄遣い感が…。せっかく良い役者さんなのに、その演技力を全然活かせていないというか、「それだけですか!?」と突っ込みをいれたくなりました。
ともあれ、エンターテイメントとして、楽しい時間を過ごせたと思います。
八犬伝パートが薄味
八犬伝パートが微妙。八人が集まって戦う理由がさっぱりわからん。彼らは玉を持ってるだけで姫やその父親に何の恩義もない。まあ、姫に対して忠誠心があったとしても、少なくとも父親は約束を破って姫を死に追いやった男だ。なぜそんなやつのために命をかけて戦う?
馬琴&北斎パートがなければ見てられなかった。
一番心に残ったのは鶴屋南北との対論。あれはよかった。「忠臣蔵が虚で四谷怪談が実だ」という解釈はなるほどという感じ。しかもそれが今回の話にオーバーラップしてるという構造、ここはよくできてる。
屋根の上の戦闘シーンのCGもよかった。
そのくらいかな。あ、栗山千明を忘れてた。彼女もよかった。
ただまあとにかく八犬伝パートが薄味なのは否めない。動機づけの部分を作り込んでくれてないので八犬士が奮闘したり、斬られたりしてもハラハラしないんだよ。モブキャラが暴れてるだけに見えてしまう。
虚と実があるから
良くも悪くも
すごく良い面もダメな面もある映画だと思います。原作に比較的忠実でその面白さをベースに小気味よく映像化していると思う。セリフは独白ばかりでユーモラスではあるけどクスッとするくらい。
犬士はイメージぴったりでもっと活躍シーンをみたいって思うし凌雲閣も今まで見た八犬伝の中で一番好きだし。
原作のいいところはきちんと出せているとは思うけどこれだけのキャストを勢ぞろいさせてもっと突き抜けた傑作に出来なかったのかなあ。
犬畜生八房ももっと恐ろしい化け物としても伏姫にしてもとか望んでしまう部分はたくさんあるから。
とはいうものの、山田風太郎の残した作品でエンタメ映画をもっとたくさん作って欲しい。
それくらいの宝の山だとは思うから。
それでも正義は勝つ物語があってほしい
馬琴と北斎
才能を描ききって欲しかった
ひと粒で2度おいしい映画
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