八犬伝のレビュー・感想・評価
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エンタメ系クリエイターズドキュメント~再現ドラマと作品ダイジェストを添えて
タイトルから低評価のように感じるかもだが、誉めてます。
曲亭馬琴の創作人生と、その作品である南総里美八犬伝のパートとが、、虚、実、虚…と、ぶつ切り展開していくので、そこで没入感が阻害されて着いて行けない人は多いと思う。
また、八犬伝パートが結構雑で(自分は楽しんだけど) 且つ本家原作を変えている(山田版を未読なので、そちらで変えたのか映画で変えたのかわからないのだが)ので、原作ファンの方は不満だと思う。
だが、それらは正直、予告編を観れば容易に予想出来る事なので、折り込み済みの上で鑑賞に挑んだ。故に、どちらのパートもストレスなく楽しめた。
兎に角、馬琴パートが良かった。大まかな人生の流れは知っていたが、創作者としての、あるあるや拘り、晩年の苦しみ、北斎との爺同士の会話とか、色々興味深かった。
八犬伝パートが本家原作と微妙に違うのも、草案の段階で北斎に話した内容と思えば、そこまで不思議ではない。
虚と実にこだわった馬琴が虚の世界に溶け込んで微笑む姿に癒された。
あまり複雑に考えず、感動と爽快エンタメと両方素直に味わえば良いかなと思う。
虚も実も見ごたえあり
邑犬群吠
原作は膨大だそうで未読で映画でコンテンツ自体完全初見です。
かなり奇天烈な作りで人を選ぶ作品なのは間違いないですが、こう変わった感じの邦画って久々だなというところで楽しめました。
八犬伝の作者の滝沢馬琴の日常と八犬伝のストーリーを融合させた感じで現実と空想が入り乱れる特殊な進行をしていたので、どちらかと言うと現実パートの方が興味深かったので割合8:2くらいで進めていてもエンタメ作品としては十分面白かったんじゃないかなとは思いました。
その日常パートで馬琴と北斎がわちゃわちゃ会話をしているところが抜群に面白く、天才と天才の会話のはずなのにおじさん、お爺さんになっても変わらずそれぞれの夢や生活を語ったり、挿絵を描いてくれたのに捨てられて、挿絵を頼んだら断られてみたいな流れを延々とやっていて愛らしいですし、なんならこの会話劇をずっと見ていたいくらい良かったです。
八犬伝パートは歴史ものにファンタジー要素を加えた感じでだいぶ簡素化したのが今作に差し込まれる感じなのでなんとなく八犬伝を知れる感じで気楽に観るのがベストかなと思いました。
ドラゴンボールみたく8つの玉をそれぞれ持った剣士たちが集まって悪に立ち向かっていく王道物語で、時代背景的に姫様だったりがもっと絡んできそうなところを省略しているので今作だけでは物足りなさはありましたが本編自体は気になる作りになっていたのは良かったかなーと思いました。
CGやVFXは大作っぽい今作のような作品にしてはクオリティは高くありません。
初っ端のワンコの合成しましたよ感が強すぎて笑っちゃいましたし、殺陣で飛び回るシーンだったり、敵が煙状になったりするところも合成ってこうだろうって感じではめ込まれた感が否めない出来だったのは笑いましたが褒められるものではないかなと思いました。
演技面では皆々様素晴らしい方が揃っているのですが、ところどころ舞台よりのオーバーな演技と映画らしい繊細な演技がぶつかり合っての化学反応が起きずバランスが悪くなっていたのはもったいなかったです。
八犬伝パートではそれが特に顕著に見られ、殺陣のシーンがあったり、VFXとのぶつかり合いもあったり、血みどろな展開もあったりと大変だったとは思いますが、映画として1本筋の通った演技合戦にして欲しかったなというのが正直な感想です。
ラストの八犬士たちと出会えた馬琴の絵面は神々しくて結構好きでした。
評価するには難しい1本ですが、日本には昔からこんなエンタメがあったんだぞという証明にもなりましたし、創作の大変さが身に染みて感じられる作品でした。
鑑賞日 10/27
鑑賞時間 9:10〜11:50
座席 L-9
「美しさを引き出す」
今年253本目。
TOHOシネマズ六本木の舞台挨拶をめざましテレビで。役所広司さん、内野聖陽さんが自身をおじさん2人が圭祐の美しさを引き出す為に我々がいた。渡邊さん照れながら「ありがとうございます」。そしたら板垣李光人さんも自分の美しさを引き出して頂き恐縮です。女装良かった。若手の美しさが際立つ作品でした。
テーマは「虚実」。私は悪をなした事がない。そう言う人が世界に何人いるか、自分の周りにも数名いますが、自分もそう生きたい。中々難しいですけど。
悪をなした事がない者がこんな仕打ちを受ける、八犬伝の中だけは正しい事が正しいと書きたい、それは虚だが。虚も死ぬまで貫けば実になる。「虚実」でこんな深い言葉凄い。
みんな八犬伝育ち〜‼️(*^^*)スゴい〜‼️
滝沢馬琴と葛飾北斎がタッグを組むなんて、スケールが大き過ぎて嬉し過ぎる〜(*^^*)
更に、芝居小屋の南北迄登場〜‼️
南北と滝沢が闘わす劇作家の哲学論が、滝沢馬琴の生き方をも問い詰めてゆく。
果たして,28年もの長き年月を掛けて綴った物語に、
勧善懲悪、正義を貫き、心正しき努力を続けた者こそ報われるのだという理想を込める滝沢馬琴や如何に?
壮大なスケールで描いた葛飾北斎の富獄八景には、時を超えて胸に迫る圧巻の光景が躍る。
「八犬伝」で、育ったという青年絵師は、人生の生き方を教わったと、馬琴に胸を張ってみせる...
先の見えない時代を生きる若者に、昔もこれからも日本人の生き様はこれだ‼️
意外と悪くない。
まずは予告編に苦言を。大屋根の上で戦うVFX丸出しのシーンと、土屋太鳳が犬に袖をくわえられているシーン(あんみつ姫かと思った)。どちらも八犬伝では重要な場面なので、ここがこんな感じだったら全体はどうなるの、嫌だなと思ってしまった。逆宣伝です。予告編の編集も本編のディレクターに任せないとね。木下映画さん。
江戸での滝沢馬琴らの姿(実の世界)、馬琴が語る八犬伝のイメージ(虚の世界)にパートが分かれている。役者に恵まれた「実」が良いのは当然。問題は「虚」の出来レベルだと思っていた。ただ実際に映画を観てみるとそうも言い切れないところもある。「南総里見八犬伝」は江戸の戯作者が描く関八州(江戸から見れば大田舎、アウトランドです)の伝奇ロマンであって、粋な教養人が、血生ぐさく、善も悪もギラギラしている世界を描いているところに面白みがある。これを「実」と「虚」を組み合わせることによって構造的に上手く再現、強調することに成功したのが山田風太郎の原作です。
映画も「実」と「虚」を映像的に質感を変えることもなく、時間的経過を自然に流し、説明的な表現もほとんど加えず、原作の空気感を上手く再現しているとは思います。VFXも抑え気味であまり安っぽい感じはしない。
だけど、やっぱり「実」の方では、役所広司も内野聖陽も素晴らしい演技だけど、江戸者らしい瀟洒で知的で、でも軽みはあってというところまでは感じさせない。役所広司は何を演らせても平山さんになるっていうところはあるけどね。ただし鶴屋南北と渡辺崋山のくだりが素晴らしく全体のクオリティを押し上げている。
さて「虚」の八犬伝の映像化の方。予想通り「南総里見八犬伝」世界観に対する認識不足が見受けられる。南総里見八犬伝は水滸伝を下敷きにしている。水滸伝の108人の登場人物は同じ星の下にある義兄弟であり、時の権力、支配者に歯向かう侠客である。南総里見八犬伝は水滸伝のスケールをうんと小さくし、でも濃密にしたいわば箱庭。だから南総里見八犬伝は水滸伝と同じように男の世界を描いていることをおさえておく必要がある。義理と不義理という価値軸、そして馬琴がこだわった善悪の強烈な対比。実感できていればただのファンタジーにはならない。要するに男と男のぶつかりあいと汗臭さが足りないのです。悪の強烈さが足りないのです。
いろいろ書いてしまったけれど、予想を超えて面白く楽しめる作品です。VFX屋の曽利文彦がここまでの作品をつくれるとは思ってなかった。
最後に一つ。土屋太鳳だけはミスキャストですね。あの伏姫だけは本当に勘弁してほしかった。
人間ドラマとその作品の絶妙なバランス
作者と八犬伝を同時に知れるお得な映画
滝沢馬琴と葛飾北斎が狭い部屋で雑談するだけの場面が何回もあるんですが、そこの会話が面白い。嫁との短い会話の中でも、馬琴の人柄や家族関係が分かるようになっていて上手いなぁと思いました。
「八犬伝」パートも名場面集になっていて、あれで良かったと思います。「八犬伝」自体は様々なところでオマージュされていて、飛び散った玉を集めるとかドラゴンボールやんとか、迫ってくる壁を2人が犠牲になって食い止めるのはFF4だったり、元ネタが使われまくっている故に今さら感が強いんですよね。
本気で凄い「南総里見八犬伝」を作ったとしても、斬新な感動は与えられないと個人的には思います。
物語の中で「忠臣蔵」が出てきて、北斎は「あんな誰でも知ってる話の何が面白いんだ」と言い、馬琴は「忠臣蔵・・・あれはいい」と言うのですが、対照的な意見を言った二人の作品はちゃんと現代の芸術や、漫画やゲームの中にも生きているのが面白いと思いました。
しかし里見家のお殿様が悪霊に呪われて、子々孫々までの危機を救う物語なのに、肝心のお殿様にあまり同情できないんですよね。
行方不明だった姫が河合由美だったから、悪霊と戦う八剣士を応援できたけど、姫がいなくて殿様だけだったら、何でそこまで必死に戦うのか理解できなかったかも・・・
演者はゴージャスなんだけどな〜ぁ
ほんまに良かった昔は凄い
丁寧に作り込まれた一つ一つのピースを組み合わせたような作品。戦隊ヒーローものの原点を知った!
作中に様々な要素とストーリーが
パズルのピースのように散りばめられていて
全体がビミョーなバランスで
まとまっているようないないような…
ちょっとチャレンジャーな作品だった
しかし!
その一つ一つのピースの作り込みは
すばらしい
まず、江戸時代パート
馬琴の作家として作品を生み出す苦悩や
北斎との交流はもちろん軸だが
江戸時代の人々の暮らしや市中の様子
歌舞伎の芝居に至るまで
当時の生活感を違和感なく再現していて
見事だった
そして、八犬伝パート
VFXを駆使した映像がよかった
城の屋根での乱闘シーンは迫力あり!
どちらのパートもしっかり作り込まれて
いるだけに
集中して見ていると
パッと話が切り替わってしまう
そこで、盛り上がった気持ちが
リセットされてしまうのは
ちょっと残念だった
八犬伝の完成度の高さには
今更ながら、馬琴の実力と情熱を感じた
八犬伝、おもしろい!
日本の戦隊ヒーローものの原点ここにあったー!
また
八犬士の若手俳優陣と役所広司、内野聖陽、寺島しのぶといったベテラン年配俳優陣の
演技の対比も新鮮だった
特に寺島しのぶ!
文字も読めず、夫の仕事の価値もわからず
夫と一緒にできることもない
嫁が夫の手伝いを始めたのを見て
「チキショー」と言い残して死ぬ
哀れな下町の女をうまく演じていて印象的だった
虚文の功罪
本家本元を観たくなる
数十年前に原作を読んでいたけれど、八犬士の大冒険と玉梓が怨霊の怖さの方に注目して読んでいた。馬琴と北斎のやり取りは記憶になく今作品を観られて良かった。八犬士の活躍場面はワクワク感があり、出来ればも少し観させて欲しいと思うほど。物語の虚の雰囲気がとても良いと思った。馬琴と北斎の実の場面は生々しい夫婦と親子の関係が描かれる。息子役の磯村優斗が着物の上からでも分かるほどで病身がリアルに映った。馬琴の八犬伝にかける執念と家族の想いは想像を超えていた。伏姫役土屋太鳳さん今作でアクションシーンがない(当然だが)のは残念。
フィクションとリアリズム Fiction and Realism
映画は
曲亭馬琴と葛飾北斎のやり取りが中心になる。
「虚」と「実」が
物語の根底にあり、
登場人物は、その間を揺れ動く。
戯作者として「虚」を紡いでいく意味とは?
絵師として「実」描いていくこととは?
その生活は「実」なのか「虚」なのか?
個人的に一番、鳥肌が立ったのは
実パートの
奈落での鶴屋南北と馬琴のやり取り。
時代を超えて、
物語を創作する意味を問う内容で、
馬琴の意見も、南北の意見も
一理あり、
その中で迷いがなく、
はっきり意思を示した
立川談春による鶴屋南北の怪演が際立った。
山田風太郎の原作本「八犬伝」を見ると
この部分は、ほぼそのまま採用されている。
もちろん、「実」とはいえ、この二人のやり取りは
創作だろうけれど、ひょっとしたら
と感じる迫力だった。
この映画だけでなくすべての作品は
「虚」を紡いでいるのだけれど、
その「虚」が果たす役割ってなに?
物語(フィクション)と実生活(リアル)とは?
と創る側も観る側も
問いかけられたような心持ちになった。
The film centers around the interactions between Kyokutei Bakin and Katsushika Hoku
At its core, the story revolves around the ideas of “fiction” and “reality,” with the characters wavering between the two. What does it mean for a fiction writer to spin “fiction”? And for an artist to paint “reality”? Is their daily life itself “real” or “illusory”?
The scene that gave me the strongest chills was the exchange between Tsuruya Nanboku and Bakin in the understage area during the "reality" segment. This scene explores the significance of creating stories across time, presenting both Bakin’s and Nanboku’s viewpoints, each of which has its own merits. Among them, Tsuruga Nanboku, played by Danshun Tachikawa, stood out with his uncanny and unwavering portrayal, firmly expressing his conviction without hesitation.
Looking at Yamada Futaro’s original work, The Eight Dog Chronicles (Hakkenden), this part appears to have been adopted almost as is. Of course, though we may consider this exchange between the two as “real,” it is likely a work of fiction. However, the intensity made it feel almost plausible.
Not just in this film but in all works, we are weaving “fiction,” but what role does that “fiction” fulfill? What is the relationship between story (fiction) and real life (reality)? It felt as though both the creators and the viewers were invited to reflect on these questions.
八犬伝を創り出した滝沢馬琴の作家としての信念と生き様
予告編で大好きな八犬伝という言葉を見て蘇った過去の記憶に導かれて鑑賞した。
本作は、八犬伝の作者である主人公・滝沢馬琴(役所広司)の八犬伝創作活動パートと、八犬伝物語パートが同時進行していく。地味な実の創作活動パートと派手な虚の物語パートがバランス良く同時進行できるか心配になったが杞憂だった。実と虚を見事に融合した壮大で奥深い作品に仕上がっている。
創作活動パートは、演技巧者の俳優を揃え主人公の作家としての生き様に迫っている。主人公が八犬伝の原稿を友人の葛飾北斎(内野聖陽)に見せ興味を持った北斎が挿絵原案を書くというスタイルで進行する。生真面目で緻密な主人公、豪放磊落な北斎という性格の異なる二人の作品の実と虚の議論は原稿の進行とともに深まっていく。特に鶴屋南北も加わった作品の実と虚の議論は印象深い。現実に起きないからこそ勧善懲悪を虚として描く主人公と、どんな辛い現実でも直視しようとする鶴屋南北の激論は、読み手に何を伝えるかという作家としての信念のぶつかり合いであり迫力がある。見せ場だった。
主人公の創作活動は28年に及ぶが、創作意欲は衰えず最後は失明しながらも息子の妻・お路(黒木華)が口述筆記して完成に至る。なぜ、そこまでして彼は八犬伝を完成させたのか。それは八犬伝が彼の作家としての信念である勧善懲悪という虚の世界を描いた最高傑作であると確信したからである。八犬伝を通して読み手に実際には経験できない勧善懲悪の醍醐味を味わって生きる糧にして欲しかったからである。
物語パートは最新映像技術を駆使して見応えがある。運命の珠に導かれた八犬士の出会い、そして里見家の滅亡を企てる怨霊との壮絶な戦いは圧巻の迫力。八犬士は若手俳優構成なので、新感覚のアクション時代劇の雰囲気が爽快。尺の都合でダイジェスト版になっているが、詳細追加すれば単独作品としても一級品だろう。
しかし、本作は敢えて創作活動と物語を一つに纏め、物語は作家の渾身の創作活動と信念によって生み出されることを強調している。今まで観てきた八犬伝より心に響く作品になっている。
虚と実の並走
エンタメ的には楽しめた
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