「NHK人形劇『新八犬伝』の印象の強さと原作者描写の効果」八犬伝 てつさんの映画レビュー(感想・評価)
NHK人形劇『新八犬伝』の印象の強さと原作者描写の効果
やはりNHK人形劇『新八犬伝』の印象が強く、序盤の犬塚信乃に重点を置いた展開は、共感できた。
原作者滝沢馬琴氏と友人の絵師の葛飾北斎との遣り取りになり、分野が違っていても、偉大な芸術家同士の相互の影響力の大きさを感じた。物語だけの展開でないところに、中弛みを防ぐ効果も感じた。
『四谷怪談』と『忠臣蔵』との関連性についての知識はあって、そこは違和感はなかったが、鶴屋南北氏との論争には感じ入った。渡辺崋山氏との遣り取りも良かった。
最後の犬士の登場のように、個々の犬士の背景描写の少なかったところがやや不満だった。人形劇では、浜路は薄幸の女性という印象だけしかなかったけれども、意外な素性が判明した。これでは犬塚信乃とは、叔母と甥の関係になるのではないかと思った。抜け穴を通るのが窮屈そうな場面では、犬に変身しないのかと思った。玉梓の妖力には犬士たちも圧倒され、分断されることで弱められるのかと思ったが、珠だけが八つ集まることで、怨霊を首尾良く倒したが、3人が命を落としていた。そのとき、伏姫降臨と3人の蘇りが起こり、『ドラゴンボール』のようでもあった。人形劇の結末では、犬士たちが犬の姿になって珠とともに空を飛んで行くということとはだいぶ違っていた。
合間に出てくる原作者の滝沢氏の年齢や居住環境もだいぶ違っていて、かなりの年数をかけて執筆が続けられたことがよくわかる。滝沢氏が晩年視力をなくしたという知識もあったものの、口述筆記を引き受けた人物が、漢字の読みも難しい嫁で、その遣り取りの努力の過程もよくわかって良かった。