「二つの映画にした方がいいのかな、でも気持ちは分かる」八犬伝 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
二つの映画にした方がいいのかな、でも気持ちは分かる
今年、曲亭馬琴の原著『南総里見八犬伝』全10巻を読んだ僕としては絶対に見逃せない映画が遂に公開です。
が、本作は、現実世界の馬琴と葛飾北斎の交流と、八犬伝の物語を交互に描く構成でした。役所広司さんの馬琴・内野聖陽さんの北斎の付かず離れずの関係の中で語られる「物語を作る」と言う事への情熱と苦悩が非常に重厚でした。特に、当時の歌舞伎の人気脚本家・鶴屋南北との虚と実・勧善懲悪を巡る会話には、切れば血が噴き出しそうな緊迫感が満ちていました。南北を演じた立川談春さんの外連味もとても生々しかったです。
そうした馬琴を描く以上は、彼が生み出した物語世界も見せねば彼の思いが伝わらないのでしょうが、10巻の物語を1時間程度で見せるのはやはりダイジェスト版にしか見えないのが残念です。僕の大好きなエピソードが完全に落とされていたのも悔しい。でも、それも仕方ないのかな。ただ、馬琴・北斎パートと比べると八犬伝パートの俳優さんに重厚さが欠けた事が物語にバランスを欠く結果になってしまいました。馬琴原作では八剣士はあんなイケメンのイメージじゃないんだよなあ。
二つを別の映画にした方がいいのだろうけど、二つを裏表としたい気持ちも分るし難しいなぁ。
個人的には八犬伝というタイトルですが、南総里見八犬伝自体は主題ではないと思うのでダイジェストでよかったと思います。
配役等々も、
・馬琴が作ったキャラクターしかいない世界=現実の有名人のいない世界
・キャラクターの美醜で物語は変わらない(ように記憶してる)ので、イケメンなら現代の映画視聴者目線でのフィクション感がでる
ことから下手に有名俳優で固めるよりよかったのかなと思います