劇場公開日 2024年10月25日

「生涯を通して正義を貫いた苦悩「滝沢馬琴」物語と、軽い今どきCGアクションもの「八犬伝」の両者のダイジェストを交互に編集した総集編?で、本編は??」八犬伝 ITOYAさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0生涯を通して正義を貫いた苦悩「滝沢馬琴」物語と、軽い今どきCGアクションもの「八犬伝」の両者のダイジェストを交互に編集した総集編?で、本編は??

2024年10月27日
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鑑賞方法:映画館

里見家の呪いを解くため、運命に導かれた8人の剣士たちの戦いを描く「南総里見八犬伝」。
その作家・滝沢馬琴の生涯をかけた創作の過程と芸術家としての苦悩を描く。

八犬伝と言えば薬師丸ひろ子・真田広之の角川映画「里見八犬伝」ではなく、子供の頃に毎日見ていたNHKの連続人形劇「新八犬伝」を思い出す。
当時は、一大ブームが巻き起こり、書店には「南総里見八犬伝」の数々のバージョンがずらりと並んでました。
「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」が今でも空で言える人が多いのではないか?
「玉梓が怨霊~」の決め台詞も脳裏に焼き付いてます。

滝沢馬琴は、生涯を通して正義を信じる物語を描き続けながらも、そうはいかない現実との差に苦悩し続ける。
何も悪をなしていないのに、わが身に降りかかる不幸を嘆き苦しむ様は、さすが役所広司、内野聖陽、見ごたえがあります。
脇を支える寺島しのぶ、黒木華も良かったのですが、いかんせん、他の者との関係を描くシーンが少なすぎてもったいない。
黒木華が夫と心を通わせ支える話がほとんどない。

なかなか面白かったのですが、「滝沢馬琴」物語と、「八犬伝」の両者のダイジェストを交互に観ているようで残念。
ダイジェスト?予告編?で、本編は?と言いたくなる。
どっちも中途半端。

特に「八犬伝」部分。
せっかく真田広之が米国で時代劇を頑張ってるのに、日本の時代劇がこんな軽量級でいいのだろうか。
ワイヤー・アクションやCGを見せ場にしてもいいけれど、数々の名寺等でせっかく撮影しているにもかかわらず、全シーンが超軽いのは、演出のせい?俳優?美術?撮影?
特に特に玉梓の正体の超超超チープな煙CGはずっこけた。
なんと、発想が貧弱な。
いくらCGが発達してもクリエイターの発想がこれではお話にならない。
栗山千明の方が怖い!正体が煙では明らかにグレードダウンしてる!

ちなみに、八犬士は八房と伏姫の子供たちとずっと思ってたのですが(随分とエグイ話だと)、WikiPediaを読むと、そこにもいろいろあったのですね。
あと、「あっぱれ八犬士!」みたいなこと言うけど、どの口が言うか。
そもそも全ては、義実が玉梓の助命の言を翻したり、八房に「景連の首を取ってきたら娘の伏姫を与える」と軽口を言ったことから始まったことなのに。

最後にさらに許せない点。
劇中の歌舞伎のシーンの扱いが雑なこと。
戸板返しの場面(ですよね?)なのに、戸板返しの驚きシーンを映さなかったり、
お岩の登場を歌舞伎なのに合成で出現させたりするのは、ひどい。

あと、山田風太郎の原作だから仕方ないのかもしれないが、クレジットに「南総里見八犬伝」「滝沢馬琴」または「曲亭馬琴」の文字が無いのは納得いかない。

ITOYA