「タイトルは「クマのチョンシー」だった方が良かったかもしれない」イマジナリー Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルは「クマのチョンシー」だった方が良かったかもしれない
2024.11.14 字幕 TOHOシネマズ二条
2024年のアメリカ映画(104分、G)
子どもにだけ見えるイマジナリーに翻弄される一家を描いたホラー映画
監督はジェフ・ワドロウ
脚本はジェフ・ワドロウ&グレッグ・アーブ&ジェイソン・オレムランド
原題の『Imaginary』は「想像力」という意味
物語の舞台は、アメリカのどこかの田舎町(ロケ地はニューオーリンズ)
ミュージシャンのマックス(トム・ペイン)と結婚した絵本作家のジェシカ(ディワンダ・ワイズ、幼少期:リーサム・ハード)は、夜な夜な奇妙な夢に悩まされていた
マックスには前妻サマンサ(Alix Angelis)との間に14歳の娘テイラー(テイゲン・バーンズ)と幼いアリス(パイパー・ブラウン)がいて、これからはジェシカが母親役を務めることになっていた
彼らはジェシカの生家に引っ越すことになっていて、それはジェシカの父ベン(サミュエル・サラリー)の療養も兼ねてのものだった
ベンは精神的に衰弱し、今では施設の世話になっているが、ジェシカは時折父の元を訪れては、自分が描いた絵本を読み聞かせていた
物語は、家を探索していたアリスが、地下室で一体のクマのぬいぐるみを見つけるところから動き出す
アリスはクマにチョンシーという名前をつけて大事にしていて、常に肌身離さないほどに溺愛していた
ジェシカは子どもの頃によくあることだと思っていたが、その愛着ぶりは異常のように思えてしまう
そんな折、ジェシカのベビーシッターをしていたというグロリア(ペティ・バックリー)という老女は訪ねて来た
彼女はジェシカも同じようにクマのぬいぐるみに執着を持っていたことを告げ、5歳の時に突然この地を去っていったという
ジェシカには当時の記憶が全くなく、この地で何が起きたのかとか、ここを離れることになった理由を思い出せなかった
映画は、隣人の青年リアム(マチュー・サトー)とテイラーが仲良くなるとか、いきなりサマンサが家を訪ねてくるなどのエピソードがあるものの、イマジナリーそのものが恐怖対象となる過程は意外とざっくりとしていた
かなり回り道をしている感じになっていて、クマのぬいぐるみが「アリスにしか見えないはずのイマジナリーフレンド」と気づくまでに相当な時間が掛かっている
タイトルは「イマジナリー」で「想像力」という意味なのだが、イマジナリーフレンドを連想させてしまうのが難点だったと思う
むしろ、クマのぬいぐるみにつけられた名前の「チョンシー」だった方が製作陣の狙いがうまくハマったように思えた
また、イマジナリーフレンドならば、ジェシカにも見えるというおかしさがあるはずで、それを起点とした会話の噛み合わなさというものが生まれてくる
だが、ジェシカに見えていることがおかしいとわかるのはソト医師(ヴェロニカ・ファルコン)が来てからであり、それまでにずっと一緒にいたテイラーやマックスが何の疑問も持たないのは不思議だった
テイラーあたりに「最近のアリスはおかしい」と言わせるだけで、「クマはアリスとジェシカにしか見えていない」ということを示せるので、そのあたりを端折ったのは微妙だったのではないだろうか
いずれにせよ、子ども向けのホラーとしては及第点なのかもしれないが、大人が見るとアラがありまくるという内容だったと思う
怖がらせ方が単調で、イマジナリーフレンドだったとわかる部分でもハッとするものがないのは、イマジナリーフレンドが一般化しすぎているからなのかもしれない
かと言って、イマジナリーフレンドの存在や概念を知らないと意味不明の内容なので、このあたりの線引きは難しい
想像力が怖さを生み出し、それが自分を助けるというものなのだが、解決策が「封印」という行動になっているので、それはちょっと違うんじゃないかな、と思った