国宝のレビュー・感想・評価
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横顔がとくに綺麗
前半少しだったのに永瀬正敏さん印象的でした。
芸姑さんの色気も心に残りました。
しゅんぼうは喜久雄をいじめちゃうの?とおもい、排他的なところを見る辛さを覚悟してしまってたのですが、そんなことなくてその点良かったです。
春江は彼女なりの理由があるんでしょうけど、したたかで黒く見えてしまいましたが…入れ墨ほるとき一緒にいるって言ってたのに…
テレビに3人家族で映ったとき奥さん然でドヤって語っておられて…いや、奥さんなんだけど…寺島しのぶさんの横にも普通に座ってるし…いや奥さんなんですけど…でも何その切り替え…わたしには無理で解せなかったです。
渡辺謙さんの晩年のやつれ具合は違和感なく、対して喜久雄は近年になったときの見た目の違和感を大きく感じました。体型もなにか入れてどうにかできなかったのかな(してたのかな?)。綺麗な顔は邪魔も邪魔、て、こういうことなのかな、とそのとき少し思いましたが
綺麗なしゅんぼうと喜久雄の、歌舞伎の演技を充分な時間堪能できて良かったです。
この景色を見せたかったのか…
『国宝』すごかった。
歌舞伎に人生を捧げた二人の青年、喜久雄と俊介の青春と対立、そして美の本質を描き出す壮大な芸道ドラマ。
冒頭、雪景色の中で父を失う少年・喜久雄。その父はヤクザの親分で、少年の人生はこのときからすでに“常識の外側“にあった。
血のつながりはないが、兄弟のように育った俊介とともに、二人は舞台の世界へと身を投じていく。
他の同級生たちが部活や恋愛に明け暮れる中、喜久雄と俊介だけはただひたすらに歌舞伎の世界に生きる。その姿はまさに青春であり、舞台稽古や川辺での語らい、橋の上でのやりとりが胸を打つ。
二人が語る、伝説の役者・万菊の「鷺娘」を見たときのセリフが印象的。
「こんなんもん、ただの化物やで」
「たしかに化物や。せやけど美しい化物やで」
この“美しい化物“という言葉は、物語全体を象徴している。芸の力は、常人には届かぬ狂気すらはらむ。その果てに、舞台の神が降りる。
師である花井半次郎は、俊介に「お前には血がある」、喜久雄に「お前には芸がある」と語る。
そして自らが舞台に立てなくなったとき、代役に選んだのは、血を分けた息子ではなく、芸を選んだ喜久雄。その瞬間から、二人の運命は狂い始めていく。
俊介は「すべて奪い去る気か」と叫びながらも冗談だと言う。喜久雄の才能と人柄を知っているがゆえに、恨みきれない。
喜久雄も苦悩する。上演前に震えながら言います。
「幕上がると思ったら、震えが止まらんねん……お前の“血”がほしい」
その後の舞台で、喜久雄は圧巻の演技を見せるが、俊介はその場を去る。
終盤、俊介は再び舞台に戻り、『曽根崎心中』で共演します。
俊介の脚は壊死し、二人の時間はもう戻らない。喜久雄は心中してもいいと言う――それは“芸”と“血”、二つの道を極めようとした者たちの、痛ましくも美しい結末。
喜久雄は人間国宝に。
「鷺娘」に挑みます。
舞台で雪が舞い散るなか、それは父が亡くなった瞬間、万菊の神々しい演技とも重なる。
この景色を見せるためにこの映画はあった…。圧倒されました…。
《歌舞伎》という世界の天国と地獄。
観た人にだけと話すように書いているので、未見の方は読まない方が良いです。
感想としては、先ず「ちゃんと原作を読みたい!」だった。こんな波瀾万丈な物語、本編では描かれていない部分(=本編の前後のエピソード)が相当有った筈だ。いや、無きゃおかしいw!つまり《本当のお話(=原作)は、この何倍かの文量》なのではないか、映画である以上、尺は3時間ぐらいが限界なので、『話を端折っているのではないか?』…と云う《何か喰い足りないような感覚》だった。
そうした(本当はもっと沢山の物語があるのに)『ダイジェスト版を観せられた様な感覚』が、最後まで抜けなかった(本当にそうだったら、李監督、超長尺のD.C.版を出してねw)。
これは即ち、それ程までに《物凄く芳醇な物語だった》と言うことだ。主演と助演のお二人は、あれだけの舞踊を憶えるまでの苦労と、それを感じさせない様なお芝居をして、本当に頑張ったと思う。これには拍手と賛美しか無い。売れっ子の二人が此処まで出来るように成る迄には、膨大な時間と大変な努力が必要だっただろうと思うからだ。
ただ個人的に、終映後一番強く感じたのは『映画としての感想』と云うより、日本の歌舞伎の世界の奥深さ、伝統芸術の底しれない芳醇さに“これでもか”と酔わされた様な心持ちだった。
舞台のシーンを観ていると《もっともっと歌舞伎が観たい!》と自然に想いが深まっていって、演じる側の地獄が描かれている作品だが、観る側も《その地獄に惹き込まれていく様な》気分だった。明日からでも、直ぐに歌舞伎を観に行きたい気持ちにさせてくれた。これは本当に一番誉め讃えたい点だ。
主演二人の数奇な(と言ってよい)人生については、逆に「こんな波瀾万丈な人生にしなくても良いのに…」とすら感じた。二人とも一回ずつドン底まで堕ちる部分は、不要なエピソードと言っては失礼だが、『わざわざこんなややこしい話にしなくても…』と何度も思った。
その分、女優陣のエピソード、例えば森七菜ちゃんは結局どう成っちゃったのか(実家へ帰ったの?)、見上愛ちゃんは(娘が成人するまでに)どんな苦労をしていたの?、(流星君が)行方不明期間の高畑充希ちゃんの苦労話(元々は吉沢くんの彼女だったのに…)は…?、等と考えると、そういうところも端折られている気がして、これらも強いモヤモヤ感の一因だ。
まぁそもそもこんな堕ち方をしたら(二人共)、幾ら当時の歌舞伎界でも、そうおいそれとカムバックなんて出来ないだろうし(最後のインタビュアーの『順風満帆な人生…』ってのは何かの嫌味かw?)、まして《人間国宝》にまで…と云うのは、冒頭に書いた『原作で確認したい』と感じた一番だ。
大変雑駁な感想で申し訳無いが、纏めとして言えば、N.C.でもD.C.でも良いし、シッカリ前,後編で分けても良いから『完全版』を観たいという事、(松竹じゃなくて東宝だから)上方歌舞伎だったのねという事、その歌舞伎をもっともっと今後は観てみたいという事、序盤のシーン(永瀬さんの長崎ヤクザ抗争部分)はそんなに重要だったかという事、フクロウの彫り物に関して(そんなに丁寧に描く)必要性はあったか?という事、二代続けて糖尿病で死ぬのは(学びが無くて)ヒドいねという事w、そして結局は『チャンと原作読んでから観に行けば良かった』ということに尽きる、という事だ。
役者陣が贅沢な分、それぞれの芝居の時間が足りなくて、3時間も有るのにアッと言う間で《観客を喰い足りない気分》にさせる、本当に深い深い井戸のような作品だった。
でもこんなに《邦画らしい邦画》を観たのは久し振りだなぁとも感じたのだから、これはこれで高評価としたい。
まぁそもそも吉田修一の小説って、『怒り』もそうだったけど《回りくどい》所が難点なんだよねぇ…。
追記:思い入れたっぷりで原作を読んだのだが、本編と違い《笑いあり涙ありの大長編》だったので、当初はややつんのめってしまったが、登場人物全員、しっかり書き込まれていて、過不足無くとても楽しめたので、未読の方は直ぐに読まれることをお奨めする(役柄の顔と名前を忘れない内にねw)。
そんな訳で原作は原作の面白さがあり、細かい部分で違いは有るものの、納得のゆく素晴らしい小説だった。あまりの面白さに一晩で読破してしまったのだから、コレはスゴい!映画と原作で2度楽しめるのは滅多に無いことだ。吉田修一、見直したぞ!!!
芸の極み…
極めるというのはこういうことか。他人を結果的に追いやっても、利用しても、どんなに非難されても、蔑まされても、あるいは賞賛されても、ただひたすら鍛錬を積み、研鑽を重ね、上を目指していく。何かに取り憑かれたように、そう、悪魔に魂を売ったように、そうでないと国宝と呼ばれるまでにはいかないと言いたかったのだろうか。またそこに行き着いた者しか見れない景色があるのだろう。吉沢亮、横浜流星の迫真の演技、相当歌舞伎の稽古をしたと伝わってきた。1人の男の波乱の人生と、それに翻弄された周囲の人々を描き、長時間を感じさせなかったが、単に極めるとは、歌舞伎とは…そういうものかと感じただけで、ストーリーに面白さや、人物に共感を感じなかった。
秀逸な作品
本作品の魅力は大きく三つに集約される
1. キャスティング
①寺島しのぶ:
この役にはまさにこの人しかいないという存在感を放っている。
どこまでが演技なのかまたは、私情なのか分からなくなるほどです。
キャスティングした方のセンスが際立ち、彼女を選んだことに深い感銘を受けました。
②三浦貴大:
本作品のために肉体改造を行った様子。
主人公との出会いは最悪で最終的には彼の予言通りになった。
しかし、最後まで主人公に寄り添う姿勢に深い感銘を受けた。
③森七菜
一皮も二皮も向けた印象を受ける。
笑顔のないシリアスな表情を通じて、内面が見えるよう。
今後の、作品の幅に期待できる。
2.時代背景とディテールの美しさ
歌舞伎座の非常口の照明が、現代の正方形の小さなものから、時代背景に合わせた長方形の大きなものに変わっているなど、細部にわたる時代背景の表現が非常に精緻です。
その他にもディテールが、作品に自然に溶け込んでおり、違和感なく作品に没頭できます。
3.ストーリーの魅力
約3時間という長丁場ながら、全く飽きさせない構成が見事・
途中に踊りや驚きの展開が散りばめられ、観る者を引き込んでいく。
蛇足であるが
寺島しのぶが「家柄を守る」(=孫に継がせる)ために渡辺謙に対し工作を図った
と見てしまったら、物語にミステリーの要素を加えてしまい、
考え過ぎだろうか…
キャスティング、ディテール、ストーリーが見事に融合し、観る者の心を捉えて離さない作品です。
面白かった。
歌舞伎に疎いけど面白く観れました。
まずは役者さんが凄いと感じました。
吉沢亮さん、横浜流星さんは特に役を演じるのに相当な苦労があったと思われる。
コレはW主人公と言っていいのかな?
部屋子、跡取り、双方に葛藤があり上手く描けていたのではないかと思う。
実際に歌舞伎を観せられるシーンが何度もあるが、妙な緊張感に包まれました。
歌舞伎用語を知らないので調べながら書いてるので間違ってたら申し訳ないけど、衣装を一瞬で変える「引き抜き」というものがあって、ソレをやるためにはタイミングやそれに合わせての準備も舞台上で行われていて大変な苦労の上に成り立ってるなと感じた。
ただ、自分の理解力が乏しいのか今ひとつ「何」に重きを置いて描きたかったのかが分からなかった。
どちらかと言うと人間ドラマの方が強かった。
原作小説を全て表現するのは難しいから仕方ないですね。
あとよく分からなかったのが、長崎から喜久雄を追って来た春江の心理がよく分からない。
そりゃ、喜久雄も一層歪むわなって思う。
喜久雄の一番が歌舞伎で自分は2番になるからって思ったからなのか?
そんで一番になれなかった者同士が惹かれ合ったというか半ば傷の舐め合いみたいな関係に思えた。
そこが描かれないせいで春江の戦犯度数が上がってると思う。
でも求婚時に断った時のセリフからは春江自身が歌舞伎界に影響を持ってないので、そんな自分と結婚しても何もできないからっていうのもあったのかな?
でも後に何食わぬ顔で戻ってきて(映画では描写がないだけ?)平然としてる節があって面の皮が厚いとしか言えない。
あと、二代目半次郎が血吐いて倒れたとき最初奥さんが毒盛ったのかと思った。
〜ここから余談〜
歌舞伎界に対して、あまり良い印象を持っていないが少しだけ変わった気もする。
言葉は悪いけど、観たあとの感想の1つに「呪い」みたいなものと感じた。
そしていつの世も、子供は小さい頃は親のやってる事に翻弄される犠牲者なんだなと思った。
この映画を観たからと言っておいそれを良い印象まではならかった、そして歌舞伎を観てみたいと言う気持ちも生まれなかった。
純粋な少年が「主体性」を獲得する旅
主人公の喜久雄は、主体性のない少年である。任侠の家に生まれて、父・権五郎の男ぶりに憧れて自らも背中に彫り物をしてしまう。やくざ稼業に対する冷めた目や批判的な目をまったく持ち合わせていないのだ。さらには、母親の道楽に付き合って、素人歌舞伎の女形の訓練も熱心にやり、父を訪ねてきた歌舞伎俳優・花井半二郎に「なかなかのもの」と認めさせてしまう。昭和の九州で、女の姿になれといわれて素直に従う精神は、母への依存的な愛が存在することを前提にしなければ、理解できないだろう。
喜久雄は父母に対する反抗などがない少年だが、父の死で任侠への憧れは中断してしまった。そのとき、半二郎に引き取られ、今度は憧れの的は義父である半二郎に変わる。同じく父・半二郎に憧れる御曹司の俊介と、競い合う兄弟付き合いを始める。ただ、二人の憧れを比べると、喜久雄の憧れ方は我が身を投げ出すような強いそれであり、跡目が約束されているはずの俊介の憧れは、そこまで高まっていない。
半二郎の代役を立てなければならなくなったとき、半二郎は喜久雄の献身的な憧れ方に懸けてみようと思ったのだろう。それは一度限りかもしれない代役ならば、熱量にまさる喜久雄のほうが、観客を落胆させないかもしれないと考えたのか。
俊介はショックを受け、喜久雄の幼なじみ・春江とともに旅に出る。春江も喜久雄に憧れてともに入れ墨をした仲だったが、自らが芸道にいないだけに、半二郎へ身をささげる喜久雄よりも、目標を失って苦しむ俊介に自分の姿を投影したのかもしれない。俊介はドサ回りで、跡目を約束されているから歌舞伎をやるのではなく、自分が歌舞伎を好きだからやるのだと気づき、帰ってくる。
一方、喜久雄は半二郎に憧れて襲名し、いよいよ半二郎の後を追っていこうとしたときに、半二郎が亡くなり、憧れる対象を失い、おそらく芸の光も失われて端役へと落ちていく。大御所・吾妻千五郎に近づき、大御所の娘・彰子を自分のものにして、足がかりを得ようとするが、憧れることが原動力の喜久雄が、安っぽい上昇志向のテクニックを使っても、うまくはいかない。
そして、喜久雄も彰子とともにドサ回りをするが、そこで喜久雄も憧れのあるなしと関係なく、歌舞伎と向き合うことになる。そのなかで、人間国宝の女形・小野川万菊と再会し、孤独な老後を送る万菊を見て、その姿に憧れるのではなく、好きな歌舞伎と向き合う自分と同じ気持ちを読み取り、はじめて主体的に歌舞伎に取り組む決意をして、芸の世界に戻っていく。
喜久雄は、かつて芸者に産ませた娘と思わぬ再会を果たす。憧れに近づきたくて「悪魔と契約したんや」と娘に話した父のままであったら、娘は今の喜久雄を許せなかったかもしれないが、そうした取りつかれた姿をすでに捨てて、正面から歌舞伎に向き合っている父を見て、娘は許す気になれたのだろう。むしろ、誇りに感じたのかもしれない。
一つだけ、この作品に注文があるとすれば、歌舞伎の上達具合をガイドするせりふが少なかったことである。心情的によりそった観客は喜久雄と俊介がなんとなくうまくなっていくことに納得したかもしれないが、例えば半二郎の弟子たちに「〇〇ができるようになったら、大したもんや」と言わせて、喜久雄や俊介がそれを達成していく姿を見せてほしかった。アクション映画で主人公が肉体を鍛える場面を入れることで、強くなったことに納得させられるのと同じだ。
わかりやすくする演出は、名作よりも単純な娯楽作品に近づけてしまう欠点があるのかもしれない。でも、わたしは敵を倒した主人公がそっと去っていく深い演出よりも、主人公が群衆から喝采を受けながら、恋人と口づけを交わすような演出が好きである。それだけのことだ。
絶品。芸に賭けた者たちの生き様。
映画「国宝」鑑賞。
⠀
話題の邦画作品、圧巻でした。
レビュー良く期待値高めで行きましたが素晴らしい美しさ。
まず色彩豊かな映像美、空気感、役者の放つ立ち振舞いの極め方、声色‥。静けさのある作品の流れで、この世界への没入感があります。
W主演のお二人、各配役は素晴らしかったです。中でも生ける人間国宝として登場する女形の万菊役の田中泯さんの圧倒的な存在感、瞳の力が本当に凄まじい。ダンサーでもあるのですね。
「はい」の一言だけであんなにも緊張感があるのかと息を飲む。
引退してからも女の哀切や振る舞いを繊細に表現されていて。
引退前に俊介に「(女性に)成り切ってないからよ」と指導する場面もじぃっと魅入ってしまう。
俳優配役が豪華。全てを見逃したくないくらいの唯一無二な存在感、色があります。
歌舞伎内以外の台詞自体は案外少ないのですが、要所要所に芸事、芸術に関わっている方々には響きすぎる台詞もあり。観る側も励まさるるものがありました。
本番の息飲む瞬間はもちろんのこと、準備の段階のプレッシャー、舞台袖の緊張感まで見事でした。監督をはじめ演出・監修役の方々の意気込みを感じました。
熱がそのまま伝わってくるような映像の距離感。
吉沢亮さんの役の喜久雄、横浜流星さんの役の俊介も、少年時代を演じた役者お二人の雰囲気も色香が凄く、まあ綺麗で驚きました。
楽屋での吉沢さんの横顔はなんて美しいのかしらと。
少年時代の役者2人の演技も魅力的。
霧のような儚さ、喜久雄役の黒川想矢さんの独特な雰囲気の泥くささと艶めかしさにも見惚れる。ライバルとして、兄弟としての描き方の葛藤も垣間見えて切ない。
成人期の二人へのバトンタッチも違和感なく、約1年半準備したとパンフレットには記載がありましたが、歌舞伎の踊りや所作、「生まれついての女形」というセリフに納得。
喜久雄に対し複雑な思いを持っているであろう俊介に「守ってくれる血がほしい」とプレッシャーに震えていたそんな喜久雄の感情、横浜さんの俊介の心情や感情演技的な泣き姿にも感情移入してしまう。
「曽根崎心中」は大変有名ですが実際に生の歌舞伎を観てみたくなる、源流に触れるきっかけになるような映画でした。日本の文化、歌舞伎もますます盛り上がると良いですね。
歌舞伎役者としての業、魂からの役づくりの在り方は、舞台は違っても、この作品を演じられている俳優の方々にも通ずるものがあるからこそ、その精神や強さがいつのまにか重なって見えてくるものがありました。
祭りの神社で自分を悪魔に売ってまで祈願する喜久雄の場面も印象的。
芸以外のいろいろなものを犠牲にして這い上がる歌舞伎、ひいては世界への愛と憎しみ、執着、身の捧げ方。
何でも使ってくださいという懇願にも見える。
周りの人間からは何でも盗っていってしまうと言われてしまうが、喜久雄(吉沢亮)という人間の生い立ちを考えれば、もはや失うものは何もないからこそできたのかもしれないとも感じる。
その家に生まれた者の苦悩もあれば、その家や血がない故の苦悩もあるのだと。対照的な構造です。
渡辺謙さんの役の醸し出す覚悟の問い方にも痺れました。
死を覚悟した者の焦りと入れ込み方、師弟としての愛の鞭と情けの場面。
「本物の芸は刀や鉄砲より強いねん」
それを受けて応える喜久雄の覚悟の生き様、舞台は本当に良かった。泣かずにはいられませんでした。
先日市川団十郎さんが感想コメントをあげていましたが、本物の稽古はもっと厳しいそうですね。
何のため、芸を突き詰めるのか。それぞれの境遇。
歌舞伎関係者の方が配役や監修に入っているだけに、リアルなんじゃないかと。
時に孤独と共に進む道、時に蔑まれても芸の真髄を追い求め、国宝として突き詰めていった先に観る景色も…。
見たい景色があり、そんな想いが報われるような瞬間に一緒に立ち会えたような。終始静かな興奮を抱えながら鑑賞できました。
これから海外でも評価されていく思いますが、この作品も日本を代表する映画になるといいなと感じながら帰りました。
喜久雄たち二人の成長と葛藤を見守ってきた歌舞伎興行側の竹野が、死を覚悟しながら演ずる姿を眺めながら
「あんな風にはなれねぇよな…」と呟くのですが、何かを掴みものにするため稽古稽古稽古…と舞台側で作品を届ける命がけの姿の方に共感してしまった。
後半の歌舞伎場面では、1回目に鑑賞した時にはハンカチを口元にあてて嗚咽し涙なみだ。
死と隣り合わせでも命懸けで演じる生き様に、演技ということを忘れるほど没頭させてくれました。
国宝の映画パンフレットもボリュームのある濃いインタビューでした。インタビュー数も多く、写真もなんとも美しく…。ちょっとした雑誌並みの量で大満足。裏話は描ききれないほど多そうです。
行住坐臥、佇まい、踊りの作法、眼差し、姿勢、普段の習慣から作られる内側から滲む品格、色香の放ち方などなどなど。これらをたった1年で身に付けようとすること、身に付けることの凄さ。
実際、この作品の前後では、雰囲気も違うのでは。
道とつくもののお稽古ごとに通じる在り方も描かれている。
何より近接撮影用と舞台表現どちらの表現も必要で、映像寄りの繊細な心理描写が満載。
通常であればこうだけど、今回はこういう風に新しい解釈にしていると言う話も。
涙で化粧が落ちても直さずにそのまま撮影していたり、お歯黒ではないようにしたなどあり、撮影風景の裏側の映像も見てみたくなります。
様々な方の仕事が活きて素晴らしい尽力をされていて、歌舞伎の世界をのぞかせていただきました。
この時代の厳しい世界の中にある芸にまつわる人間模様の話でもありますが、1回目はインパクトがすごく、血の話が交差してくる中盤からは2回以上見ても細かい部分を楽しめます。
それぞれの俳優陣の役の軸なる色は違っても約1年以上の集中稽古の間、舞の形を覚えた頃に、実際に三越劇場の舞台で踊る体験をしたそうでその経験からも自然になっていたような。
物語自体が幾重もメタ構造になっていたのも素敵でした。
歌舞伎の世襲、家に生まれたが故のあれこれ。
寺島さんの演技もしっくりとはまっています。うまいなぁと唸ってしまう。
この方も歌舞伎の世界での生まれや境遇がいろいろとあるそうですね。パンフインタビューでは、「本家を差し置いて外の人を起用することは現実には無い」というようなこともあり、女性だったことも含めて、様々なしがらみも感じていたのではないか…。
あの鋭い睨み、心の内に思う表情、忘れられません。
今の時代はこの伝統が新しく変化してきている節目だと感じます。
他にも役と俳優の見事なリンク、逆の立場などあり、そのあたりを踏まえると、掘り下げが楽しく見応えがありすぎます。
原作ある中で脚本が素晴らしく、映画を通じて日本の文化の歌舞伎の世界がますます盛り上がると良いですね。
製作陣の方々、制作ありがとうございました。
と思わず鑑賞後に頭が下がりました。
また、映画を見て何週間か経っていますが、作品の中での美しい鈴の音が耳に残っているくらい、静けさの中に際立つ音の余韻があります。
耳の奥から、心で鳴り続けるあの風景と音。
成年期頃から喜久雄の内側で浮かび見続けた未来の景色とあの音が、私たちの胸の中へもそっと渡され、残してくれるような素敵な余韻があります。
映画館で3時間は長く感じそうですが、展開がよくあっという間です。ぜひ。
歌舞伎の生々しさを伝える
歌舞伎ファンから観ても、シネマ歌舞伎を観ているのかと思うくらい、二人は歌舞伎役者になりきっていた。
ここまで歌舞伎の口舌を修得するのは大変だったろうし、凄い。
失敗の許されぬ舞台の緊迫感、一つ一つが息をつかせぬ美しさを持ち、あっという間の三時間。愛憎まみえる二人の人生のクライマックスは、やはり俊介が糖尿で壊死する足をつと差し出す、曽根崎心中でしょう。
浮き世を忘れて己のことだけを考えていればいいのは幸せなのか、それとも逃げ場のない牢獄なのだろうか。田中民の「あなた、歌舞伎が憎くてたまらないのでしょう」と。でもそれでいいのよ、というセリフがすべてを物語っているのかもしれない。
『世襲』という制度は芸の世界において、後ろ盾にも枷にもなる。その世界の光と闇を、描ききったなぁと。色々なエピソードが、様々な実話を彷彿とさせました。
ただ気になったのが、いくら先達の娘とねんごろになったからといって、三代目を襲名した人間をあそこまで落ちぶれさせることはしないかと。また、俊介が歌舞伎から遠ざかっている間に、別の成功をおさめて意趣返しするものだと期待していたら、そうじゃなくあっさり戻ってきただけだったのが残念。原作ではやはり成功してから戻って来るそうです。やっぱりねー。三時間あってもそこは描けなかったのか…?
春江、喜久雄から俊介にさらっと乗りかえたけど、それは喜久雄に取り残された者同士の共感からか? しかし結局俊介が亡くなっても息子が跡取りになるので、後見人として喜久雄と二人で花井家の中心に据えられることになりますよね。ここまで、春江の計算なのか?!と思ったら、したたかなんもんだと思ったのでした。
あとね、任侠の世界で、余興で子供に歌舞伎をやらせるということがあるのかな…?と。ただ、両者に日常から遠い世界としての共通点は、あるのかもしれない。
いやぁ、細々したことはさておき、演者の憑依系演技、こちらも力が入り、どっと疲れました。
それにしても邦画は相変わらず老けメイクは下手だね。
国宝
この映画は努力の結晶だと感じる作品でした、役者も歌舞伎も演じることは一緒のように思えるが奥が深いのだなとわからない部分がわかるように描かれてる。
また血のつながり、世襲の大切さなど天才の才があっても超えられそうで超えられない難しい壁というものを感じました。また恋愛模様も複雑で悪魔と契約する場面があるがそれほど演じる女形など見るものを魅了する魔力は凄まじかった。年齢的に関係なく楽しめる作品。
あそこまでなるまでに相当な練習をしたと聞いたが素晴らしいとしか言えない言葉にできない。
血に翻弄された人生
血に翻弄された人生。ヤクザの子に生まれたこと。芸事の世界では正統の嫡子でないと超えられない壁があること。
血には勝てないと壁にぶち当たりながらも、それを芸で乗り越えていく。
ただその道の途中で、どれだけの人が泣いてきたか。
気になったこと。
親を殺したヤクザに復讐しに行って、失敗して、その後生きていけるの?あと少年院に入ってたの?少年法だと銃刀法違反と殺人未遂でも1年で出てこられるの?
春江(高畑充希)は元々何?同級生?幼馴染?いつの間にか出てきたな。
親分(永瀬正敏)がちょっと軽かった。髪型も似合ってないし。
彰子(森七菜)は離婚したんだよね。最後の娘の言葉にあった「あなたがここまで来るまでに、どれだけの人が辛い思いをしたか」(正確で無くてすみません)の1人だよね。まさか出てこなくなっただけということはないよね。
喜久雄の「景色を見たかった」はもう少し早く出てきても良かったのでは。あのセリフが出てから、ラストまでが早かった。
メイクが崩れた状態で、屋上で踊っていたシーンはジョーカーを思い出した。
なるほど、松竹ではなく東宝だったわけ
吉沢亮と上方歌舞伎の四代目中村鴈治郎出演のNHK番組SWITCHインタビュー達人達を観てからの鑑賞となりました。長年ライバル関係にあった同い年の二人。二人三番叟で息の合った同い年の二人(花柳寿々彦と藤間直三)みたいななライバル関係は想像していました。
師匠花井半二郎が実父の俊介:花井半彌(横浜流星)と部屋子の喜久雄:花井東一郎(吉沢亮)。
部屋子のほうが先に大抜擢されたり、名跡を継ぐことになる話で、なんとなく予想できる内容で、上映時間が長いので尻込みしたせいもあり、公開から1カ月後の鑑賞になってしまいました。ババンババンバンバンバンパイア(松竹映画)を先に観てしまったので、「お前の血をコップ一杯飲みたい」が一番印象に残ってしまいました。
興行主の社長役の顔のながーい 嶋田久作のセリフにあるように前半は「 眼福 眼福 」でしたし、まるで中国の京劇映画の名作 「さらば、わが愛 覇王別姫」をみているような感じでしたが、後半はあまりいいとは思いませんでした。
吉田修一の同名小説「国宝」が原作とのことで仕方ありませんが、人間国宝の女形·小野川萬菊(田中泯)が晩年、市松人形が隅に飾られた狭い木賃宿(簡易宿泊所)でひとりで死を待つ場面には強い違和感。セリフも美輪明宏みたいで、なんだかねぇ。しかし、「その美しい顔に食われなさんな」みたいな予言めいたセリフに、もしかしたらオレのことかもと思ってしまいました。
半彌は8年も失踪していたのに、出てきたら、すぐに円満復帰。しかも、怪物の名子役想矢君と刺青彫れた仲だった春江(高畑充希)と子供まで作って帰って来たのに、東一郎はなにも言わない。寺島しのぶも孫にチヤホヤするだけ。
戦前の昭和の長崎から始まったのに、中村鴈治郎の娘役の森七菜が出てくるとまったく昭和にはみえないし、なんで一番大事な時にいい歳して若い子に手を出すかねぇ? 鴈治郎さんの芝居もなんだか妙に大げさで、二人だけで大衆演劇以下の銭湯の休憩所をどさ回り。因縁つけてくるヤクザも馬鹿まるだし。
高畑充希と森七菜は従来のイメージからの脱却を狙ったのか???
見上愛の藝妓との娘とお参りのエピソード。
悪魔とトレードしたロバート・ジョンソンのクロスロードかよ❗って、突っ込んでました。
吉田修一は小説の準備のために中村鴈治郎に弟子入りしたとのこと。李相日監督とはそれまでに何本かタッグを組んでいて成功しているので、映画化を前提に書いた小説なのかと勘ぐってしまいます。
横浜流星もとても綺麗🤩
池上季実子みたい。
眼福、眼福。
しかしあの体型でまだ若いのに、糖尿病壊疽で義足とは。お相撲さんじゃあるまいに😎
何度か繰り返される半分壊死しかかった半彌の右足に頬寄せる三代目半二郎の喜久雄のシーンには倒錯的なエロを感じてしまいました。
渡辺謙クラスなら、少しは歌舞伎実演のシーンも欲しかった。襲名披露でまさかの。
歌舞伎界は血筋の世襲のみではない。玉三郎も愛之助も。それより主役を張れる主流派とそうでない派のヒガミや派閥争い、忖度みたいなほうがむしろエグいような。
やはり凄い!
まず、長い時間でした。
主人公も二番手もビジュアル良いからで終わらず
芸の道にのめり込む姿はなかなか入り込みました
最初の攻防の親分さん
あの方がちゃんと親という役柄お似合いで
後半の襲名無念やったね
でも、血筋がまとわりつくのね
芸の道を歩む人生
親を亡くしたヤクザの息子が歌舞伎の女形として人生を捧げる話
喜久雄は歌舞伎の家に生まれた俊介と競い、先に襲名するも血筋を重んじる世界で挫折する。再起し、俊介と再び同じ舞台に立つが、俊介は病で亡くなる。すべてを失った喜久雄はやがて人間国宝となり、父が亡くなった雪景色に芸の道でたどり着く。
張り詰めた空気感があり、時間を感じずに物語に引き込まれた。出てきた歌舞伎の演目について知っていればもう少し理解が進みそう。
2人の関係が壊れなくて良かった。
役不足
吉沢亮も横浜流星もがんばりました!
しかし田中泯、渡辺謙、寺島しのぶが印象強いね〜
歌舞伎の場面が多すぎたかな、ストーリー的にはもう少しキクオの運命的なものが欲しかった、週刊誌の記事だけでは説明つかない最初の敵討ちのシーンがあやふやだし最後の景色と親の敵討ちはまた別物かなと思います😅
重苦しい作品ですがまだ観たい
まず吉沢亮の少年時代の役者さんが綺麗。
吉沢亮も美しすぎる。
横浜流星も綺麗だと思っていたが、女方で見るとやっぱり男。でも吉沢亮の女方はひたすら美しかった。
1年半歌舞伎の練習をして臨んだだけあって2人の歌舞伎のシーンは圧巻でした。歌舞伎役者だっけ?と思ってしまう迫力があり歌舞伎をフルでやってもらい映画を撮っても良いんじゃないかと言うくらい引き込まれました。
重厚感ある映画だし、楽しい気分になる映画ではないけど、また観たい。そんな作品でした。
長いのでトイレ注意です。
前方席の人が中座したりしてとても気になりました。
せめて画面を遮らないよう屈もうとする姿勢くらいは見せて欲しいものです。
あと数隻隣の外人と日本人カップルの私語うるさすぎました。この映画は静かに観てほしいかな…。
「見てみたい景色」とは
歌舞伎の家柄の血筋にない人間が、才能だけでその世界を登り極めるには多くの代償を払わなければならない、という本筋がしっかりと描かれていた反面、おそらく原作を3時間弱の尺に収めなければならないという制約ゆえ細かな部分で唐突な展開が感じられ、話の内容を咀嚼しきれない点がいくつかあった。
ただなんといっても吉沢亮の歌舞伎の女形の演技は圧巻で鬼気迫るといっても過言ではない。吉沢さんの容姿はあの役にうってつけで彼の代表作になることでしょう。
作品の終盤、歌舞伎をやっているのは「見てみたい景色があるから」とインタビューに応えていて、それがラストシーンでわかる描写があるが原作を読んでいない自分には今一つ何なのかはっきりわからなかった。
後で考えると、人間国宝に上り詰めた歌舞伎役者の境地になり初めていつもの客席がその景色になるということかもしれない。
物語終盤で久しぶりに再会した娘から家族を捨てて歌舞伎一筋の生き様を批判されるのかと思いきや最後は彼の舞台を称賛する言葉。それがなんとなく物語として出来すぎな印象で少し冷めてしまった。
娘からどれだけ恨まれようが全うしてきた歌舞伎の道、という救いどころのない辛辣さを残してこそ、この作品はもっと引き締まると思う。
国宝
本当に吉沢亮と横浜流星始め、俳優さんたちの演技力の高さに度肝を抜かれました。とても薄い感想のように聞こえると思うのですが、冗談抜きで今まで見てきた映画の中で本当に1番と言える映画でした。
わたしにとって歌舞伎という存在は遠い、教科書に載っているものという認識しかなく、歌舞伎俳優さんたちがドラマや映画で出ていると演技すごいなあという感想しかなかったです。ただ、この映画ではその歌舞伎俳優たちが何を目指し、何を想いながら演じ、何を叶えるのか、何を犠牲にするのか、など描かれていました。特に、喜久雄がお初を演じたシーン。師匠である半二郎のお初の代役を任せられた覚悟、化粧する時の手の震え、本当に自分にお初が勤まるのか、俊ぼんでなくていいのかの葛藤、台が上がっていくときの沈黙、観客が見えた時の緊張感、そのシーン全て全てに臨場感があって気づいたら息をするのも忘れ、目に焼き付けていました。幕が上がる瞬間、まるで自分が喜久雄の立場に立っている感覚に陥り、心臓が口から出そうなほどでした。化粧しようとしても震えが止まらなくなっているときに俊ぼんがきて、喜久雄の「怒らんで聞いてくれるか」という言葉に微笑みながら紅を指し、「今、1番俊ぼんの血がほしいねん」(セリフ曖昧でごめんなさい)のシーン、胸が苦しくなりました。その後の俊ぼんの「芸があるやないか」という言葉でさらにやられました。血筋はないけれど天性の女形の才能を持つ喜久雄に対して、大きな血筋と地位はあるけれど喜久雄に芸は劣る俊ぼんという対照的な描写が本当に苦しかったです。良くも悪くも「血」でした。半二郎が糖尿病にかかり、舞台の上で吐血し、最期であろうときに口にしたのは「俊ぼん」だったのも、その俊ぼんが戻ってきて2人で道成寺をやったときに倒れて同じく糖尿病になったのも、舞台の上で倒れたのも、結局血でした。喜久雄には極道の「血」が流れていて、周りを全て犠牲にしてでも不幸にしてでも人間国宝になっていくのも、息子ではなく娘(綾乃)がいたのも、病気にかからなかったのも全てが血だということを感じました。
屋上のシーンはアドリブだと聞いて震えました。彰子が泣きながら「どこ見てんの?」と言って離れていったあと「どこ見てんねやろ」と泣きながら笑い、舞うシーン、本当に辛くて虚しくて、ただただ美しかったです。
吉沢亮の演技を見ている、というより喜久雄の人生をぎゅっと纏めたもの、いわば走馬灯のような3時間でした。役者というのはこんなに汚く美しいものなのか、これほどまでに残酷で虚しくやるせなく、美しい世界があるのかというぐちゃぐちゃな感情になりました。
本当に素晴らしい作品だったのですが、何個か気になった点がありました。森七菜演じる彰子はどこに行ってしまったのか、藤駒も舞台を見に来たりしているのか(綾乃が舞台を見て気づいたらめいっぱい拍手をしていたと言っていたため)、なぜ最初抗争が起きてしまったのか、春江はどんな気持ちで俊ぼんのところへ行ったのか、どうやって俊ぼんと喜久雄は仲直りしたのか、などというところが細かいのですが気になる点でした。
わたしなりに春江が俊ぼんのところに行ったのはきっと喜久雄の演技をずっと傍で見ていたかったからなのかなと思いました。喜久雄の結婚しよっかに対して、「今は喜久ちゃんの役者としての上り坂やねん。今よりいっぱい稼いで1番のご贔屓さんになろ。(略)ペルシャ絨毯買うたろ」とやんわり断ってそれを理解した喜久雄が家を出ていき、春ちゃんが泣いてるシーン。きっと、春江的には喜久雄の奥さんになりたかっただろうけれどこれからどんどん歌舞伎に夢中になって自分のことをいつか見てくれなくなるのでは無いのだろうか、という気持ちでいたときに喜久雄のお初を見て劇場を抜けた俊ぼんの「逃げるんとちゃうで、本物の役者になりたい」という言葉に同じ気持ちを見出して2人で逃げ出す=心中したのではないかと思いました。血筋がない喜久雄と結婚したとしてもどうやったって歌舞伎の血は流れず跡継ぎはできないから、それならば確実に血が流れていて、地位のある俊ぼんの丹波屋に嫁いで喜久雄を入れることでずっと喜久雄の演技を見ることができると判断したのかなあと。映画終盤の喜久雄が演じた鷺娘のシーンの春江の表情はきっと、昔の喜久雄を見てる時と同じ表情をしていると思いました。喜久雄と同じように背中に刺青を入れた春江は、大好きな喜久雄の夢を叶えるためなら、離れていようが、自分も喜久雄のためになんだってする、という気持ちがあったのではないのでしょうか。
という本当に感情がぐちゃぐちゃになる素晴らしい映画でした。今年の色んな賞を総なめするでしょう。楽しみです。
あまりにも凄くて、こわかった
素晴らしかった。初めから終わりまで鳥肌がたち、涙が出てました。
吉沢亮さん、本当に本当にお疲れ様でした。
目や表情が凄くて終盤はもう怖かったです。悪魔と取引してましたね。
また、喜久雄の幼少期を演じた黒川想矢さんの出てきた時の色っぽさにギョッとしました。
個人的に見上愛さんが好きなんですが、演技もとても良かったです!
というか、みなさん凄かったです…、お疲れ様でした…。
人間国宝とはいったい
悪魔と取引をしてあらゆるものを犠牲にして、人間国宝まで上り詰めないと見れないあの景色はいったいどんな景色だったのか。
万菊さんの「歌舞伎が憎くて憎くて仕方ないんでしょ?でもそれでいいの。それでもやるの」って言うセリフや寝た切りの状態で「やっともういいと言われた心地がした」って言うセリフを聞くと人間国宝はすごく孤独で芸に取り憑かれた人間なんだと感じた。竹野の言う通り本当に芸だけ残して死んで行ったのか。万菊さんも悪魔と取引してたのかな。
て言うか田中泯さんは劇中でも言われてたけど、現実でもバケモンであり人間国宝だと思うw
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