国宝のレビュー・感想・評価
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非常に質の高い人間劇
素晴らしいの一言。
題材の歌舞伎にまつわるシーンも素晴らしいが、人間劇の見せ方演技から役者の空気感から何もかも素晴らしかった。シーンの構成も冗長にならず、次次進んで視聴者に想像の余地を与えており、長時間の映画にも関わらず間延びは殆ど感じさせなかった。
主人公喜久雄の華やかな部分も暗い部分もそこに集積するいいことも悪いことも離れていくことも全てが喜久雄という人を魅せている。
また演者が完璧にセリフにコメられた感情、意図をこちらの想像を上回る演技の巧さで表現してきて、過剰さや作り物感がない。
一番心に残ったのは、途中曽根崎心中の代役を任され、本番前、眉を引くのに手が震えてうまく引けない後のシーン。複雑な立ち位置で切羽詰まった喜久雄の溢れ出た感情から出る台詞を見事に表現できていたと思う。このシーンは下手な役者が演じていたら絶対うまくいかなかっただろうと思う。
歌舞伎のお芝居は、すごかったけれども、、
正直レビューです。
まずこの作品に出演され歌舞伎を演じられた俳優陣の皆様には敬意を表します。
それを踏まえた上で申します。
歌舞伎のシーンではなく、その他のセリフの掛け合いや間、流れに若干フワッと感があり割と多くのシーンでこれは自然なやり取りではないな、と作り物感を感じてしまう部分がありました。
また後半になればなるほど内容的に重複しているシーンがあり、もう少し簡潔にまとめられるなと思った部分もありました。
また、渡辺謙さんや渋みのある名脇役さんをもう少し色々なシーンで立てられる部分もあったのでは、、と思います。(偉そうにすみません)
あと、暗い中サクラがキラキラするシーン?が劇中何度もあるのですが、あれがなんだったのか、、も???で、視聴者にそれは想像させたかったのか分かりませんがなんだかフワッと感がありました。
演者さんが素晴らしいだけに台本がちょっともったいない感じが残念でした。
あと一歩深いところに到達してほしいなという感覚がありながらエンドロールとなりました。
血筋の地位がほしい愛憎劇
と思って鑑賞したら全く違う。
愛憎は確かにあるし、ドロドロと言えば確かにそうなんだけどお父さんが撃たれるとこから、最初からずっと綺麗だった。
個人的には社長の付き人っぽくしてたひとが社長に昇進してたのがクスりとしたし、本音でぶつかったからこそずっと3代目と居たんだろうなと思う。
吉沢亮がひたすら美しかった。
劇場で見てよかったぁ!
「上達」を観客に腹落ちさせる表現にうたれた
見終わったあとに残っていた喉に魚の小骨がひっかかっているような違和感は、劇中で、渡辺謙さん演じる花井半二郎の役が、『曽根崎心中』のお初なのですだったこと。
謙さんが、お初を?
が、『国宝』原作上巻を読んで納得。
花井半二郎は『河庄』の治兵衛や、『廓文章』の伊左衛門のような、つっころばしと呼ばれる商家の若旦那を当たり役としている役者だそう。
坂田藤十郎さんはじめ、つっころばしの役者が、お初や夕霧のような女形を演じることは少なくない。
つまり、その芸の系譜にある人物としての花井半二郎なら、お初を演じても違和感はない。
この「見えない補助線」をひくことで、映画の中での配役に対する納得感がぐっと深まった。
舞台の仕組み、演目の背景、役者の流儀、そして歌舞伎という文化の重層性。どこをとっても濃密で、一度観ただけでは処理しきれないほど。
だからこそ、もう一度観たいと思った。
無意識に涙が零れた
歌舞伎というものは何も知らずに観ましたが、圧倒的な演技力、映像美に魅了されました。
特に感動シーンがあった訳では無かったはずなのに、鬼気迫る演技に自然と涙が溢れました。この映画の良いところは、死別や喧嘩別れの仲直りなど、そういう以下にも泣けるシーンを作らず敢えてカットされていることでした。「ここ感動するでしょ?」みたいなのではなく、ほんとに歌舞伎役者としての人生を描いていることにとても好感的に感じました。部屋子である喜久雄に役を取られた俊介の悔しさ、登りつめてもまた地に落とされる喜久雄の虚しさ。そして堕落しても歌舞伎を続けるしかないという無力さ。屋上での舞は圧倒的でした。終盤、俊介が自分を守ってくれる血によって命を落とすのもまたえも言われぬ哀しさがありました。最後の最後の求めていた景色を見た喜久雄の「綺麗や…」がとてもストンと心に落ちました。映画が終わる頃には顔も涙でびしょびしょでした。
今まで見た中で最も凄い映画でした。表す語彙力が無いのが悔しいくらいです。
絶品。芸に賭けた者たちの生き様。
映画「国宝」鑑賞。
⠀
話題の邦画作品、圧巻でした。
レビュー良く期待値高めで行きましたが素晴らしい美しさ。
まず色彩豊かな映像美、空気感、役者の放つ立ち振舞いの極め方、声色‥。静けさのある作品の流れで、この世界への没入感があります。
W主演のお二人、各配役は素晴らしかったです。中でも生ける人間国宝として登場する女形の万菊役の田中泯さんの圧倒的な存在感、瞳の力が本当に凄まじい。ダンサーでもあるのですね。
「はい」の一言だけであんなにも緊張感があるのかと息を飲む。
引退してからも女の哀切や振る舞いを繊細に表現されていて。
引退前に俊介に「(女性に)成り切ってないからよ」と指導する場面もじぃっと魅入ってしまう。
俳優配役が豪華。全てを見逃したくないくらいの唯一無二な存在感、色があります。
歌舞伎内以外の台詞自体は案外少ないのですが、要所要所に芸事、芸術に関わっている方々には響きすぎる台詞もあり。観る側も励まさるるものがありました。
本番の息飲む瞬間はもちろんのこと、準備の段階のプレッシャー、舞台袖の緊張感まで見事でした。監督をはじめ演出・監修役の方々の意気込みを感じました。
熱がそのまま伝わってくるような映像の距離感。
吉沢亮さんの役の喜久雄、横浜流星さんの役の俊介も、少年時代を演じた役者お二人の雰囲気も色香が凄く、まあ綺麗で驚きました。
楽屋での吉沢さんの横顔はなんて美しいのかしらと。
少年時代の役者2人の演技も魅力的。
霧のような儚さ、喜久雄役の黒川想矢さんの独特な雰囲気の泥くささと艶めかしさにも見惚れる。ライバルとして、兄弟としての描き方の葛藤も垣間見えて切ない。
成人期の二人へのバトンタッチも違和感なく、約1年半準備したとパンフレットには記載がありましたが、歌舞伎の踊りや所作、「生まれついての女形」というセリフに納得。
喜久雄に対し複雑な思いを持っているであろう俊介に「守ってくれる血がほしい」とプレッシャーに震えていたそんな喜久雄の感情、横浜さんの俊介の心情や感情演技的な泣き姿にも感情移入してしまう。
「曽根崎心中」は大変有名ですが実際に生の歌舞伎を観てみたくなる、源流に触れるきっかけになるような映画でした。日本の文化、歌舞伎もますます盛り上がると良いですね。
歌舞伎役者としての業、魂からの役づくりの在り方は、舞台は違っても、この作品を演じられている俳優の方々にも通ずるものがあるからこそ、その精神や強さがいつのまにか重なって見えてくるものがありました。
祭りの神社で自分を悪魔に売ってまで祈願する喜久雄の場面も印象的。
芸以外のいろいろなものを犠牲にして這い上がる歌舞伎、ひいては世界への愛と憎しみ、執着、身の捧げ方。
何でも使ってくださいという懇願にも見える。
周りの人間からは何でも盗っていってしまうと言われてしまうが、喜久雄(吉沢亮)という人間の生い立ちを考えれば、もはや失うものは何もないからこそできたのかもしれないとも感じる。
その家に生まれた者の苦悩もあれば、その家や血がない故の苦悩もあるのだと。対照的な構造です。
渡辺謙さんの役の醸し出す覚悟の問い方にも痺れました。
死を覚悟した者の焦りと入れ込み方、師弟としての愛の鞭と情けの場面。
「本物の芸は刀や鉄砲より強いねん」
それを受けて応える喜久雄の覚悟の生き様、舞台は本当に良かった。泣かずにはいられませんでした。
先日市川団十郎さんが感想コメントをあげていましたが、本物の稽古はもっと厳しいそうですね。
何のため、芸を突き詰めるのか。それぞれの境遇。
歌舞伎関係者の方が配役や監修に入っているだけに、リアルなんじゃないかと。
時に孤独と共に進む道、時に蔑まれても芸の真髄を追い求め、国宝として突き詰めていった先に観る景色も…。
見たい景色があり、そんな想いが報われるような瞬間に一緒に立ち会えたような。終始静かな興奮を抱えながら鑑賞できました。
これから海外でも評価されていく思いますが、この作品も日本を代表する映画になるといいなと感じながら帰りました。
喜久雄たち二人の成長と葛藤を見守ってきた歌舞伎興行側の竹野が、死を覚悟しながら演ずる姿を眺めながら
「あんな風にはなれねぇよな…」と呟くのですが、何かを掴みものにするため稽古稽古稽古…と舞台側で作品を届ける命がけの姿の方に共感してしまった。
後半の歌舞伎場面では、1回目に鑑賞した時にはハンカチを口元にあてて嗚咽し涙なみだ。
死と隣り合わせでも命懸けで演じる生き様に、演技ということを忘れるほど没頭させてくれました。
国宝の映画パンフレットもボリュームのある濃いインタビューでした。インタビュー数も多く、写真もなんとも美しく…。ちょっとした雑誌並みの量で大満足。裏話は描ききれないほど多そうです。
行住坐臥、佇まい、踊りの作法、眼差し、姿勢、普段の習慣から作られる内側から滲む品格、色香の放ち方などなどなど。これらをたった1年で身に付けようとすること、身に付けることの凄さ。
実際、この作品の前後では、雰囲気も違うのでは。
道とつくもののお稽古ごとに通じる在り方も描かれている。
何より近接撮影用と舞台表現どちらの表現も必要で、映像寄りの繊細な心理描写が満載。
通常であればこうだけど、今回はこういう風に新しい解釈にしていると言う話も。
涙で化粧が落ちても直さずにそのまま撮影していたり、お歯黒ではないようにしたなどあり、撮影風景の裏側の映像も見てみたくなります。
様々な方の仕事が活きて素晴らしい尽力をされていて、歌舞伎の世界をのぞかせていただきました。
この時代の厳しい世界の中にある芸にまつわる人間模様の話でもありますが、1回目はインパクトがすごく、血の話が交差してくる中盤からは2回以上見ても細かい部分を楽しめます。
それぞれの俳優陣の役の軸なる色は違っても約1年以上の集中稽古の間、舞の形を覚えた頃に、実際に三越劇場の舞台で踊る体験をしたそうでその経験からも自然になっていたような。
物語自体が幾重もメタ構造になっていたのも素敵でした。
歌舞伎の世襲、家に生まれたが故のあれこれ。
寺島さんの演技もしっくりとはまっています。うまいなぁと唸ってしまう。
この方も歌舞伎の世界での生まれや境遇がいろいろとあるそうですね。パンフインタビューでは、「本家を差し置いて外の人を起用することは現実には無い」というようなこともあり、女性だったことも含めて、様々なしがらみも感じていたのではないか…。
あの鋭い睨み、心の内に思う表情、忘れられません。
今の時代はこの伝統が新しく変化してきている節目だと感じます。
他にも役と俳優の見事なリンク、逆の立場などあり、そのあたりを踏まえると、掘り下げが楽しく見応えがありすぎます。
原作ある中で脚本が素晴らしく、映画を通じて日本の文化の歌舞伎の世界がますます盛り上がると良いですね。
製作陣の方々、制作ありがとうございました。
と思わず鑑賞後に頭が下がりました。
また、映画を見て何週間か経っていますが、作品の中での美しい鈴の音が耳に残っているくらい、静けさの中に際立つ音の余韻があります。
耳の奥から、心で鳴り続けるあの風景と音。
成年期頃から喜久雄の内側で浮かび見続けた未来の景色とあの音が、私たちの胸の中へもそっと渡され、残してくれるような素敵な余韻があります。
映画館で3時間は長く感じそうですが、展開がよくあっという間です。ぜひ。
歌舞伎の生々しさを伝える
歌舞伎ファンから観ても、シネマ歌舞伎を観ているのかと思うくらい、二人は歌舞伎役者になりきっていた。
ここまで歌舞伎の口舌を修得するのは大変だったろうし、凄い。
失敗の許されぬ舞台の緊迫感、一つ一つが息をつかせぬ美しさを持ち、あっという間の三時間。愛憎まみえる二人の人生のクライマックスは、やはり俊介が糖尿で壊死する足をつと差し出す、曽根崎心中でしょう。
浮き世を忘れて己のことだけを考えていればいいのは幸せなのか、それとも逃げ場のない牢獄なのだろうか。田中民の「あなた、歌舞伎が憎くてたまらないのでしょう」と。でもそれでいいのよ、というセリフがすべてを物語っているのかもしれない。
『世襲』という制度は芸の世界において、後ろ盾にも枷にもなる。その世界の光と闇を、描ききったなぁと。色々なエピソードが、様々な実話を彷彿とさせました。
ただ気になったのが、いくら先達の娘とねんごろになったからといって、三代目を襲名した人間をあそこまで落ちぶれさせることはしないかと。また、俊介が歌舞伎から遠ざかっている間に、別の成功をおさめて意趣返しするものだと期待していたら、そうじゃなくあっさり戻ってきただけだったのが残念。原作ではやはり成功してから戻って来るそうです。やっぱりねー。三時間あってもそこは描けなかったのか…?
春江、喜久雄から俊介にさらっと乗りかえたけど、それは喜久雄に取り残された者同士の共感からか? しかし結局俊介が亡くなっても息子が跡取りになるので、後見人として喜久雄と二人で花井家の中心に据えられることになりますよね。ここまで、春江の計算なのか?!と思ったら、したたかなんもんだと思ったのでした。
あとね、任侠の世界で、余興で子供に歌舞伎をやらせるということがあるのかな…?と。ただ、両者に日常から遠い世界としての共通点は、あるのかもしれない。
いやぁ、細々したことはさておき、演者の憑依系演技、こちらも力が入り、どっと疲れました。
それにしても邦画は相変わらず老けメイクは下手だね。
国宝
この映画は努力の結晶だと感じる作品でした、役者も歌舞伎も演じることは一緒のように思えるが奥が深いのだなとわからない部分がわかるように描かれてる。
また血のつながり、世襲の大切さなど天才の才があっても超えられそうで超えられない難しい壁というものを感じました。また恋愛模様も複雑で悪魔と契約する場面があるがそれほど演じる女形など見るものを魅了する魔力は凄まじかった。年齢的に関係なく楽しめる作品。
あそこまでなるまでに相当な練習をしたと聞いたが素晴らしいとしか言えない言葉にできない。
芸の道を歩む人生
親を亡くしたヤクザの息子が歌舞伎の女形として人生を捧げる話
喜久雄は歌舞伎の家に生まれた俊介と競い、先に襲名するも血筋を重んじる世界で挫折する。再起し、俊介と再び同じ舞台に立つが、俊介は病で亡くなる。すべてを失った喜久雄はやがて人間国宝となり、父が亡くなった雪景色に芸の道でたどり着く。
張り詰めた空気感があり、時間を感じずに物語に引き込まれた。出てきた歌舞伎の演目について知っていればもう少し理解が進みそう。
2人の関係が壊れなくて良かった。
重苦しい作品ですがまだ観たい
まず吉沢亮の少年時代の役者さんが綺麗。
吉沢亮も美しすぎる。
横浜流星も綺麗だと思っていたが、女方で見るとやっぱり男。でも吉沢亮の女方はひたすら美しかった。
1年半歌舞伎の練習をして臨んだだけあって2人の歌舞伎のシーンは圧巻でした。歌舞伎役者だっけ?と思ってしまう迫力があり歌舞伎をフルでやってもらい映画を撮っても良いんじゃないかと言うくらい引き込まれました。
重厚感ある映画だし、楽しい気分になる映画ではないけど、また観たい。そんな作品でした。
長いのでトイレ注意です。
前方席の人が中座したりしてとても気になりました。
せめて画面を遮らないよう屈もうとする姿勢くらいは見せて欲しいものです。
あと数隻隣の外人と日本人カップルの私語うるさすぎました。この映画は静かに観てほしいかな…。
血とは。
予告編から熱量が伝わったので、ぜひ観てみたいと思っていた。吉沢亮さん、すごかった。気迫を感じました。横浜流星さんはあえて吉沢さんを引き立てようとする感じの演技だったように思う。
2人の絆はとても濃い。しかし「血」には勝てない。「血」によって2人は振り回され、翻弄され、苦しめられる。序盤菊久雄の実父が撃たれて真っ白な雪が真っ赤な血で染められるが、あれがメタファーなのだろう。終盤孤独な菊久雄を唯一救ったのは内縁の娘というこれまた「血」。なんとも言えない気持ちになった。
菊久雄は優しすぎるからもう子ども(特に男の子)は作らないんだろうなぁ…とぼんやり思った。
カメラワークも美しく、李監督の芸術性が光った。
原作を読んでないので何とも言えないが、個人的には森七菜のくだり、必要だったかな?と思っている…。その後本妻になったのかもよくわからないままだし…。私だけかな?
タイトルなし(ネタバレ)
原作を読んでいなければ満点をつけていたかもしれません。
それ程に、俳優陣の演技が素晴らしかったです。
特に主演の吉沢亮さんと横浜流星さん、そして圧倒的存在感の田中泯さん。皆さん大変素晴らしかったです。繊細な指先の動き、眼差し、呼吸、芸に生きるしかできない人間の悲哀と歓喜。スクリーン越しでなくそれらを目の当たりにしたようで、心を揺さぶられました。
勿論、現実の歌舞伎世界と比べれば色々と差異はあるでしょうけれど、映画作品としての歌舞伎の世界と、そこに生きる人間の生き様を充分に堪能させていただきました。それも鴈治郎さんの全面的なご協力があってこそでしょうか。
しかし、如何せん原作からの改変がとても多く、映画作品として三時間に纏める必要があったとはいえ、重要人物とも言える徳次の描写も僅かですし、何より「その台詞をここでその人物に言わせるのか?」と感じるシーンもあり、個人的には脚本に納得がいかない部分が多くあったのは否めません。
喜久雄の人生にスポットを当てた展開・構成とした意図は理解しているつもりですが、だとすればここは不要では?と思えるシーンもあったりと、原作を愛する身としては要所要所でがっかりしてしまったというのが正直な気持ちです。
それでも、素晴らしい俳優陣が相当な努力と表現力でもって各人を演じ、「国宝」をこのような美しく生々しい映像作品として鑑賞できた事、とても嬉しく思います。
歌舞伎に取り憑かれた男
【印象に残ったシーン】※覚え書き
◼️代役の本番前、震えて身動きがとれない喜久雄に俊介が化粧を施すシーン
お互いの血と芸が羨ましいと言い合う2人。2人の葛藤や感情が痛いほど伝わってきて泣けた。
◼️喜久雄が落ちぶれてぐちゃぐちゃになりながらも、屋上でただただ踊り狂っているシーン
美しくも歌舞伎に取り憑かれ狂気を感じる様子がとても印象的だった。吉沢亮圧巻の演技。
◼️片足を失いながらも曽根崎心中を演じる俊介の半分壊死した片足を喜久雄が涙目で抱えるシーン
共に切磋琢磨し、衝突も和解も乗り越えてきた2人の絆とやるせなさが伝わってきた。
他にも俊介の子供を喜久雄が指導していたり、胸が熱くなる場面が沢山。
シーンの切替や話のテンポがよく、3時間の長尺でありながらあっという間に感じた。
とにかく俳優さんの熱演が凄い。歌舞伎のシーンも存分にあったけど、どれだけ練習を重ねたんだろう。
画面の迫力や舞台の臨場感など、是非映画館で観てほしい作品。
映画観た後、小説読むと深みマシマシ
花井東一郎が花井半二郎の代役で舞台に上がった時、「俺は逃げるんじゃない、逃げるんじゃない」と言いつつ、8年も行方をくらました跡取り息子、半弥。
でもね、その気持ちよくわかる。
血でもなく、どんなに努力しても敵わない相手がいることに絶望したんだよね。
幼馴染で恋人だった福田春江が東一郎に「結婚しよう」と言われた時に、「喜久ちゃんは立派な役者だから私はタニマチになる(私の中でセリフは変換してます)」と言った時の彼女の気持ち。東一郎が芸に魅了された芯からの歌舞伎役者だと見抜いていたからだろう。
だから春江は半弥と手に手を取って逃避行。二人の間には東一郎への羨望が絆となって結ばれた。この辺りは原作を読んで噛み締めてみたいと思う。
かたや、人間国宝になるも、90歳を超えて長屋の4畳半一間の布団に横たわる万菊の姿に、芸を極める人は本当に他に何も要らないのだと納得がいった。実際、いろんなことにお金がかかるのだろうけどね。少なくとも投資とか蓄財には興味がないのだろう。
カメラワークが素晴らしく、歌舞伎座で見るよりも様々な角度から迫るように鋭いカットもあり臨場感でいっぱいだった。
ストーリーを追うのもいいが、この監督の世界観に身を任せるのも楽しみ方の一つだろう。
ここから追記
上下巻読みました!
この原作をよくまとめて描いていたとまた感動!ぜひぜひお読みいただければと思うところでございます。←小説をちょっとパクった
単調に続く
カメラがずっと寄ってるしグラグラ動くしで、
歌舞伎の舞台の面白さを全く感じなかった。撮影で演技の受け手の顔をアップで撮影する。その顔で前の場面がどう評価されてるかを説明する。それの繰り返しがずーっと続く。説明演技が多すぎて見ているのが苦しかった。音楽もここでそんなわかりやすいピアノが鳴る?と、気持ちが下がってきた。
歌舞伎舞台の演目をいくら鍛錬して作り上げても、画面いっぱいに顔が映ることで、国宝感は見えなかった。義足になったあとの曽根崎心中での観客一同が一斉に全員が拍手するところなど、「はたしてそうか?」と疑問だった。涙と汗でぐちゃぐちゃに化粧が取れ、いわゆる見苦しさある舞台を全員が全員好感を持って受け入れるだろうか?賛否両論ある客席であってしかるべきで、それを大いにこえる2人の心の中の交感がみえてくるのがよかったと思うのだけど。ラストの鷺娘、もっと全体を見たかった。歌舞伎の俳優の人が脇をもっとゴリゴリに固めて、その中で違う出自の俳優・吉沢亮がどう魅せていくかということになっても面白かっただろうなぁ。と、思いました。
それはおいておいて、、
吉沢亮はとても良かった。鬼気迫る振る舞いや、演目の演技など素晴らしかった。
上出来の日本映画だけどモヤモヤ
知り合いが「圧倒されます!」と薦めてきたので鑑賞。確かに歌舞伎の上演シーンは素晴らしくて、普通なら客席からしか見れないものを演者の背後から撮ったり、顔面アップで表情を見せたり、照明と演者の動きの踊りを見せたり、音もよくてとても美しかった。客席から見ることこそが真の鑑賞なのかもしれないが、娯楽としての歌舞伎のイメージが爆上がりする映画ということは間違いない。物語もアダルトで優雅なスポ根という感じで、主人公たちの芸への真面目さが「国宝」レベル。何かにひたむきに取り組む真面目な人ほど共感するのではないかと思う。
しかしモヤモヤが残る。
まず、長編小説を3時間におさめるためだったのかもしれないが、女性キャラの物語に空白がありすぎて意味が分からない。キクオが女性キャラ達にかけた苦労こそが、芸の道をきわめるために払った犠牲の大部分なのだから、女性キャラに共感できるような形にしないと「悪魔との取引」の重みが全然伝わらないのではないかと思う。だからキクオが払った犠牲がよくわからないというか、シュンスケが命を削ってまで舞台に立ったのに比べると、キクオ自身は何もしていないように思える。キクオが苦しむ表現も、ボコられて絶望してる感じになるだけで、あまり深みを感じない。
あと子役の撮り方が搾取的でいただけない。これが歌舞伎の女形ではなく、女性アイドルの高みを目指す物語だったら、15歳くらいの女子の子役がアイドル養成学校とかで薄着で汗かきながら振付を練習したりしている姿を舐めるように撮っていい訳がないだろう。またもし何かエロティシズムを表したかったというなら、なぜ大人になった2人にはそれが表されないのか?キクオの化粧をしてあげたり曽根崎心中で足を触ったりするのは確かに印象的だけど、その他は全部スポ根で2人の関係は全然発展しない。ストレートの男性同士が互いに優しくて親密なのは素晴らしいことだけど、ならば子供時代の半裸の練習シーンの撮り方は文脈に合っていない。それに子役がかわいそう。
歌舞伎をぶっ壊してはいけないとは思うけど、週刊誌報道のせいで心中を図った役者が実際にいるし、そういう社会的な側面を上手く扱って歌舞伎界の改善に寄与する映画だったらいいのにと思う。この映画は歌舞伎の舞台が魅力的に見えるというだけにとどまっていて、話自体はあまり尖ってなくて面白くない。原作を読めばのめりこむのかもしれないが。
役者魂
喜久雄がずっと探していた風景。
父親が雪の降りしきる中、「よく見ておけ」と自分の目の前で凶弾に倒れる。
喜久雄は空から降りしきる雪を見上げる。
命がけで芸に生きて最後の鷺娘で父親も見たであろう降りしきる雪を見上げてただ一言
「きれい…」と言う。
血が無い故に苦しみ、血がある故に苦しみ、それでも芸を追求し執着し生きる様に圧倒されました。
吉沢亮さん、横浜流星さんの役者魂が画面から痛いほど伝わってきて苦しいほとでした。
人はここまで何かに没入できるのか…
凡人の私にはたどり着けない領域です。
だからこそ圧倒されます。
もう一度映画館に観に行こうと思います。
鬼気迫る
吉沢亮、横浜流星の鬼気迫る演技に尽きる作品。
映像も美しく、主演ふたり以外のキャストの演技も素晴らしい。
後半の「曽根崎心中」は命を賭した情念に圧倒される。
李監督は情念を映像で表現することができる監督。
劇場で観るべき作品。
原作未読なので、人物間の関係性、年月の経過について、もう少し掘り下げてほしかった印象はあるが、3時間の作品なので、そこまで望むのは難しいか…
キャスト、シナリオを含め、たくさんの賞を受賞するのではないかと思う。
全520件中、261~280件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
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