国宝のレビュー・感想・評価
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人生いろいろ♪ ★3.4
約3時間の長尺、私は趣深く面白く楽しめました。とはいえ「心震わす域」にはあらずでした。
歌舞伎の世界を知らなくても楽しめるとの書き込みを多いようですが、私的には少なくともTVのワイドショーを見ていた世代でないと世界観が掴めず楽しめないのではと思いました。更に「人生なんてものは、いい時も悪い時もあるものだと」思える年齢であることも楽しむための条件かもしれません。
映像 ★★★ もっともっと鮮烈な画が欲しかった
音 ★★★ もっともっと美しい「静」の間(ま)が必要だったのでは
物語 ★★★★ ワイドショー見てた世代には楽しめる
役者 ★★★ 悪くはないし、どちらかと言えば良いのだが、素晴らしいとは言えない
編集 ★★★★ 少年期から老年までの人生の出来事をうまく3時間の尺に納めている
粗さ ★★★ 問題なし
総合 3.4 何かが惜しい・・・
画も音も演技も、全体を通して何かがちょっとづつ足りない。もしくは数秒の1シーンでも良いから「心震わす」ものが欲しかった。「国宝」と言う題名の重みに対して、ちょっと仕上がりが軽く感じました。十分楽しめはしたが★4や5の評にはならず。
ただただ吉沢亮と横浜流星を楽しみたいという人には素晴らしい仕上がりかもしれません。
超速の3時間。 観る前は敷居と格式ちょっと高いか?と思ったが 過剰...
王道プロットだが、圧倒的なビジュアルで魅せる力技
これは喜久雄が悪魔との契約で常人では到達できない、あるいみ怪物的な存在になってしまう話となっている。
李監督の作品は一貫して映像が美しい。「悪人」も「怒り」もあらゆる構図、カットがバランス良く心地良い。
とにかくビジュアルに徹底的にこだわって作品を作っている監督だと思っている。
それが本作ではビジュアルそのものがテーマになっているように感じた。
プロット自体は王道で、ライバル2人が成り上がっていく友情あり愛憎ありのサクセスストーリー。「さらば、わが愛/覇王別姫」か、そこに日本の伝統芸を舞台にしたところでいうと1番近いのは「昭和元禄落語心中」だろうか。さらに引き取った子が実の息子より才能がある話等であればディズニー「ライオンキング ムファサ」だろう。
歌舞伎を題材にした映画でいうと溝口健二監督の「芸道一代男」や、小津安二郎監督のドキュメンタリー映画「鏡獅子」がありますが、どちらも実在の歌舞伎役者を代材にしていました。ちなみに本作の原作である吉田修一の「国宝」は溝口健二監督の短編「残菊物語」という歌舞伎役者の菊之の話に影響を受けて執筆されたとのこと。喜久雄の名前もモロに影響が出てますね。
他、Sgt. Kabukiman N.Y.P.D.(邦題:カブキマン)というアメリカのおふざけB級映画があります。大きな声では言えませんがyoutubeでフル視聴可能です。ニューヨークの警察が歌舞伎役者の連続殺人に巻き込まれてる途中、ひょんなことから偉大な歌舞伎役者の力を手に入れカブキマンに変身し悪を懲らしめていく話です。日本の伝統芸能である歌舞伎を題材にした映画というと怒られる映画です笑
本作はそんな王道プロットの上で、今現在メジャー作品では長らく扱われてこなかった"歌舞伎"をテーマに、ある意味国宝級イケメンである吉沢亮君と横浜流星君を主役に抜擢というさすが李監督といえるキャスティング。2人とも大河ドラマを経験して脂が乗ってきた最適なタイミング。
とにかく歌舞伎の女形の美しさを切り取った映画で、「二人藤娘」、「二人道成寺」、「曽根崎心中」、「鷺娘」の演目を通して2人の人間ドラマを描いている。
特に最後の国宝になった上で演じる「鷺娘」は圧巻のビジュアルで、孤独な主人公に唯一救いとしてある人物との再会も重ねる演出にすることで後腐れなくカタルシス抜群になっている。
3時間近い長編だがそれでも拾い切れていないところも多々ある。喜久雄を引き取る経緯や喜久雄の歌舞伎復帰の話は端折りまくり、特に寺島しのぶ演じる俊介の母 幸子との関係は最後拾って欲しかったところ!
正直もっと観たいと思った。
それだけ主役2人の演技、ビジュアルが素晴らしい。
歌舞伎の舞台に飛び込むカメラ、2人の顔面にクローズアップするカメラ、良い!
一度は逃げた俊介が最後は命懸けで演目「曽根崎心中」のお初に挑むというドラマも良い!
(ちなみに「曽根崎心中」の舞台といわれているのは大阪のお初天神(露天神社)で、記念碑もある。近くに住んでいたら聖地巡礼したかった。)
来年のアカデミー賞国際映画賞にもノミネートされるか?日本アカデミー賞は最優秀作品賞受賞確実だろう。
※この題材なら松竹配給だろ!と思ったらまさかの東宝配給。そんなことがあるのか。後で調べたら本作で歌舞伎監修をしている四代目中村鴈治郎さんはかつて東宝が歌舞伎に進出した唯一の東宝歌舞伎時代の公演メンバーの1人である二代目中村扇雀(四代目坂田藤十郎)さんの息子さんであることがわかった。東宝で歌舞伎を題材にしてこれだけの規模の映画を撮るのは色んな意味で大変だったんじゃないかと思う。松竹の歌舞伎座は当然借りれないよね笑 逆に松竹が絡まなかったから色々と自由に出来たのか。
ヤクザの組長の元に生まれた青年が歌舞伎役者として成り上がって行く半生を描いた作品。 本年度ベスト!!
これは映画館の大きなスクリーンで観るべき作品!
吉沢亮&横浜流星さんの歌舞伎に圧倒された作品だった!
2人の歌舞伎の姿に0.5を加点。
鑑賞前、歌舞伎の化粧で誰が誰なのか?解らなくなる不安要素があったけど全然大丈夫だった(笑)
大物歌舞伎役者の子供として生まれた俊介(横浜流星さん)と、ヤクザの組長の子供の喜久雄(吉沢亮さん)。
この2人が切磋琢磨しながら歌舞伎役者として成長していくストーリー。
この2人の絆が終始素晴らしく、相手を思う姿が印象に残る。
俊介の歌舞伎役者としての血筋。
喜久雄の歌舞伎役者としての才能。
俊介の父親、大物歌舞伎役者の花井半次郎(渡辺謙さん)がどちらに名前を継承するのかが見所だった感じ。
とにかく歌舞伎のシーンが圧巻だった!
でも現代用語で喋ってもらった方が心に刺さったかも(笑)
吉沢亮&横浜流星さんがどれだけ歌舞伎の練習をしていたのか気になる。メイキング映像も見たい!
歌舞伎は男の世界と言うことは知ってたけど女方を演じる役者の動きが美しい。
然り気無い女性キャスト陣も本作を盛り上げていた感じ。
映像や音楽も素晴らしく映画としての完成度はかなり高めな感じの作品だった!
糖尿病を甘くみてると大変な事になる事が勉強になりました( ´∀`)
国宝
感想
一日本人として恥ずかしい話なのかも知れない。歌舞伎という伝統芸能に今までそれ程深く関知した事がなく、また深く知ろうとする事が無かった。しかし今回李相日監督の本作を鑑賞して感じたのは歌舞伎は17世紀頃から始まり歌舞伎の名跡ごとに得意とする演目がありそれぞれの時代にそれぞれの演目を得意とする役者の個性が重層的な文化として積み重なり現代にまで継承されてきている事。各演目の話の素晴らしさ、舞台上でのひきぬきの華やかさ、照明演出などの色彩の素晴らしさ、そして全て血筋が最優先する梨園の常識は現代社会の常識とは掛け離れる事もあるのたという事だった。
稀代の歌舞伎役者である花井半二郎に天賦の才能を見込まれ女形役者になるという道を選んだ長崎の任侠の遺児、立花喜久雄。彼が最終的に芸そのものが重要文化財に相当する以上の人間国宝となるまでの間には芸一筋を優先した余りに関わりあった多くの人間に迷惑を掛け、立場が失墜し地べたを這いつくばる様な巡業と修行の日々など人生の栄枯盛衰を繰り返す事もあったがそのような自身の生き様をも芸の肥やしとして全てを昇華させ創出された女形の数々の芸術的所作、指先の払いひとつまでに拘りを持つという深淵な心理と醸し出される優雅な品格、正当な継承権が無い中で芸そのものを己の力で更に磨き上げ、血統をも凌駕する事を体現し到達していく孤高とも言える精神と心理を描いており人間国宝推挙後、物語の最後に描かれた演目「鷺娘」での見事な舞は自分の内では鳥肌が立ち震えが止まらない程の感動を引き起こした。
方や血統を有している事だけを拠り所として芸の習得に励むも目に見えない「芸は名を助く」の本意を理解出来ずライバルである喜久雄が放つ渾身の一芸を目の当たりにしてその芸域に達する事は不可能では無いのかという不安が心理的な抑圧に繋がりその重圧に耐えられなくなり一度は現実逃避してしまう。しかしその連綿と続く歴史的大名跡と代々役者であるその血統が自己を再び奮い立たせ大成していく大垣俊介(花井半弥)。彼の人生の中で一命を賭しても関わりたいとした代々の名跡が受け継いできた演目である「曽根崎心中」を半半コンビとしてのお初を俊介、徳兵衛を喜久雄が17年振りに演じた最後の共演はまさに命懸けで全うしようとする姿が感動し涙を誘う。大垣俊介(花井半弥)はかねてより療養中であった糖尿病という不慮の病に倒れ片足を切断。活躍の余地を残しながらも早逝する。
その後16年の歳月が流れ三代目花井半二郎(喜久雄)は我が国最年少の人間国宝に推挙される。人間国宝となりイメージする風景を記者に尋ねられた瞬間、漠然と眼前に広がる漆黒の空間に粉雪が舞い降りる映像が広がる。喜久雄は眼前に浮かび上がるそのイメージが何なのか暫くは解らなかった。
時が経ち演目「鷺娘」をかつて小野川万菊が披露した時と同様に今度は人間国宝三代目花井半二郎として自らが今迄生きてきた自分の人生を振り返りながら全力で舞い踊り舞台に伏し倒れこんだ時にそれは起った。次に目を開いた時にそれまで舞台に降り注いでいた紙吹雪は本物の雪となり喜久雄の眼前に降り注いでいる。そこでスポットライトに照らされる喜久雄。その周りは漆黒の空間が広がる。優しく舞い降りてくる粉雪。
優しく舞い降りる粉雪ー。それは喜久雄の過去の消し難い記憶に始まり、歌舞伎という一芸道に孤高の存在を晒し身を削りながら捧げてきた苦労。その結果日々の精進が報われ、栄誉を得る事が出来て現在スポット浴びているという、一連の想いの全てが集約されている世界であった。その世界を感動し見つめている喜久雄。「この世界を見たかった!」笑顔になる喜久雄のアップ映像でエンドロールを迎える。
生涯に渡り歌舞伎道に邁進しその芸をそれぞれの立場で運命が変わりつつもその道を極める事となった立花喜久雄(花井東一郎)と大垣俊介(花井半弥)。このライバルとも言える両者の流転の人生を歌舞伎を通じて各自の芸の習得とその実践を克明に描き出す一大人生譚の作品となっている。
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配役
立花喜久雄/三代目花井半二郎:吉沢亮
とにかく役作りが気合いが入っており素晴らしい。歌舞伎役者として追求する芸の奥深さに悩む姿や人間として過ちもあるが全てを受け入れる姿勢や芸の高みを目指すひたむきな姿に感動。◎
大垣俊介/花井半弥:横浜流星
大名跡の御曹司役だか芸の奥深さに恐怖を感じ逃避してしまう俊介の役を好演している。死に際の「曽根崎心中」のお初の役作りは素晴らしく、こちらにも◎をあげたい。
二代目花井半二郎:渡辺謙
上方歌舞伎の大名跡を継ぐ歌舞伎役者を演じていた。流石!ハリウッド俳優。喜久雄の女形の才能に役者としての勘が働き立花組崩壊後貴久雄を大阪に引き取り息子の俊介と同様に厳しい稽古を付けて二人を大成させる礎を創り上げる。
小野川万菊:田中泯
女形人間国宝小野川万菊。歌舞伎に全てを人生の全てを賭けている大歌舞伎役者。門弟から大出世した孤高の役者であり二代目花井半二郎亡きあと、歌舞伎界に隠然たる影響力を持ち続け、三代目(喜久雄)に自分と同類の香りがあると本能的に感じ取り、更なる試練を与えるように距離を取り、花井半弥(俊介)の梨園復帰の後楯となる。その後三年、万菊は齢九十歳を超え自身の死を意識した時、歌舞伎界の将来を予期する様にそれまで路頭に迷う程に困窮していた喜久雄を突然呼び出す。歌舞伎からも引退し全てを投げ打ち、何もない伽藍堂の様な部屋に死を待ちながら起居する万菊。「この何も無い部屋で目醒めると全てから赦され解放された気持ちになる。」と喜久雄に素直な自分の気持を吐露する。徐に扇子を差し出し「踊りなさい。踊って見せて欲しい。」と喜久雄に語りかけ、万菊の前で「藤娘」を舞う喜久雄。
万菊は喜久雄を初めて本物の歌舞伎役者であるとお墨付きを与え、梨園への復帰も認められる。万菊は全てを投げ打ち失っても継続し自己の芸そのもの質をあげる精進をする事が芸事の真髄で有る事を喜久雄に身をもって自覚させる。この復帰のお墨付きがきっかけとなり喜久雄は人間国宝を目指すことになる。
少年立花喜久雄/黒川想也
任侠の一門に生まれるも上方歌舞伎界の大名跡二代目花井半二郎に女形の天賦の素養を見出される。「積恋雪関扉」の遊女墨染の姿にビジュアル的に感動するだけではなく所作がとても素晴らしく感動。◎
他オールスター豪華俳優陣でその演技は全員素晴らしかった。
監督:李相日
脚本:奥寺佐渡子
歌舞伎の舞台シーンは勿論の事、人間関係の緻密な演出手法にアングルを含め感嘆するシーンの連続であった。特に印象的なのは手、足の払いや振りを丁寧に画に取り込んでいて監督らしい素晴らしい描写と感じる。◎
脚本としても原作を良くこなしていて貴久雄と俊介の青春ストーリー展開が素晴らしかった。◎
美術:種田陽平
長崎の料亭シーンはタランティーノばりでワクワクする。舞台シーンがとにかく素晴らしい。俯瞰したアングルも全体を見渡せて上手下手が意識出来る映像となっていて素晴らしい。
撮影:ソフィアン・エル・ファニ
視点的に肩肘の張っていない自然な画が撮れていた。
音楽:原摩利彦
幻想的で印象に残る音楽であった。
想像以上の素晴らしい出来映え。
⭐️4.5
2025.8.30再観賞追記
吉沢と流星は◎◎なのに…脚本が雑すぎて歌舞伎シーン以外は👎
本当は☆5付けたいほど主役2人は圧巻でした💯なのに脚本が台無しにしてます😔以下は気になった点①歌舞伎の描写が上っ面すぎる、稽古シーンこそ多少あるが実話なら松竹や黒衣、鳴り物たちとの人間ドラマがない②各ターニングポイントも手抜きすぎで◯吉沢を代役にする渡辺の葛藤無い◯流星が戻る克服の心理描写も無い◯万菊→なぜ人間国宝が場末宿?もあるが、そこから一気に一線復帰ってタイムリープですか👊③何で突然人間国宝ですか?成田屋が怒りますよ😆
以外にもドサ回りでの絡まれ方、流星の息子を正式跡取りとして嬉々としてる母の描写は陳腐すぎるし、ラス前都合よく登場した娘の許せぬ父でも役者として惹かれるくだり、あのキモをあんな場面でセリフとして喋られて一気に人間国宝のありがたみが失せる
これが2時間なら文句言いませんが3時間😱
でもラストの曽根崎心中はすごいです✨
主舞台の南座、花街の何れかの歌舞練場など背景もとても良いので行ったことない方は行くことオススメ、特に南座の緞帳はホンモノ作ったのかなぁ→すごい金かかる😆それとも合成かな
映画でなく、主役二人を見に行くのがオススメです😁
タイトルに恥じない映画だった メインの2人ももちろん良かったけど、...
タイトルに恥じない映画だった
メインの2人ももちろん良かったけど、
万菊やその他の役の、
描き方もキャスティングも、
みんな良かった
ただ、ちょっと駆け足感が否めないので、
もう少しじっくりと作りこんで、
前半後半に分けても良かったかも
映画だから、私でも歌舞伎に触れる事ができた
上り詰めた先に、彼は何を見たのか
とにかく、美しかった。
吉沢さんは大河ドラマ終了後に、横浜さんはこれから大河ドラマを控える中で、1年半にも及ぶ稽古を積み重ね、この作品を作り上げたことを思うと、心から尊敬の念を抱かずにはいられません。
実際の歌舞伎の舞台は、これまで数えるほどしか見たことがありませんが、本物以上に鬼気迫る熱演に完全に引き込まれてしまいました。特にお二人による「曽根崎心中」、そして吉沢さんの「鷺娘」は本当に見事でした。
中でも、渡辺謙さん演じる半次郎の病室で稽古するシーン。あの憂いを帯びた喜久雄の表情が何とも言えず、その後に続く「曽根崎心中」の世界へと、自然と引きずり込まれていきました。
喜久雄が目指した歌舞伎の頂点。芸を極めるために、全てを犠牲にしてでもみたかった景色。私には、彼が見上げたその先に、雪が舞い散る映像が重なって見えました。あれは、父親が殺された雪の日から始まった彼の運命と、どこかでつながっているいるのではないかと想像しています。
そして、数分の出演ながら強烈な印象を残した瀧内久美さん。お見事でした。
田中泯さんに至っては、もはや別格です。手の動き、話し方、座っている姿さえも存在感に満ちており、異次元の世界観を体現していました。
歌舞伎を見に行きたくなりました
歌舞伎の舞台は客席から見上げるものであるため、映画のカメラワークに...
歌舞伎を観たことがない。でも引き込まれる圧倒的熱量と説得力
歌舞伎を観たことがない。歌舞伎役者の出演する映画やテレビ番組を見たことがある。あとは名女優・松たか子が歌舞伎の家系に生まれたことを知っているくらいである。
そんな僕のような歌舞伎素人であっても、歌舞伎の世界にどっぷりと浸らせてくれるすごい映画であった。
冒頭で、歌舞伎は大衆芸能として江戸時代に生まれ、あまりの庶民の熱狂から風紀維持のために女性が舞台に立つことを禁じられ、女形が生まれたことが説明される。
そして歌舞伎の世界では、血縁関係で親から子に芸が受け継がれていくが、この映画の主人公・喜久雄のように、血縁でなくても学ぶチャンスがあることも冒頭で示される。
どうやら彼はヤクザの息子のようだから、それを受け入れた歌舞伎の世界が寛容なのか、あるいは芸能や興業の世界ゆえなのかはよくわからない。
ここまででわかるのは、歌舞伎の世界の構造の複雑さや葛藤が非常に大きなものであるということだ。
現在では、伝統芸能としてある程度の保護・保存の対象となっているが、もともとはカタルシスを求める大衆のエネルギーを向けられる先であり、それゆえ時代に合わせた進化と革新があったはずだ。
それが今は「伝統芸能」として、ある種の権威化のなかで行われている。
後継者についても、完全に民主化されているわけではない。伝統を守る血筋の家系があり、その家に生まれた男児は芸を継ぐことを求められる。芸の世界だから能力の優劣で評価されるが、その血筋に生まれたからといって、最高の能力を獲得できるとは限らない。そもそも、歌舞伎の世界で生きることを、宿命づけられており、本人が主体的に選択したわけでもない。
伝統を守る家系の血筋の者にとって、これは恐怖だろう。No.1であることを運命づけられているが、そうなれる保証はない。さらに問題なのは、その世界で芸を磨きたいという動機が不明瞭というか、主体的に選択していないことだ。そうなると、喜久雄のように心底から芸を磨きたいという動機を持った外部の人間は、恐怖の対象でもあるだろう。
吉田修一の原作は、その歌舞伎界の構造を人物設定と物語の構造に取り込んでいる。だがら、こちらもリベラルな現在の価値観、能力主義的な見方では割り切れない世界に感情的に翻弄されてしまう。
あと、この映画で見事だったのは、かなりの長時間にわたって映される歌舞伎の舞台の場面だ。
たとえば、『二人藤娘』や『二人道成寺』などが登場する。先達の人間国宝の演技は、これぞまさに国宝だと直感的に感じさせるものがあった。その後のさまざまな舞台演出でも、芸の見事さに鳥肌が立つ瞬間が何度もあった。
でもよく考えれば、歌舞伎を見たことのない僕に、伝統芸能の価値を読み取るスキルも知識もない。それに、この映画では歌舞伎役者ではない俳優(吉沢亮、横浜流星)が演じている。
彼らの演技力は非凡であり、徹底的なトレーニングを積んでいることは感じ取れるが、それが歌舞伎の文脈でどれほどすごいのかは僕にはわからないはずだ。
また、登場する演目がどれほど感動的な物語なのかも、正直よくわかっていない。
ただ、この映画の見事な演出と役者陣の名演が、それを「感じさせて」くれるのだ。
この物語で描かれる歌舞伎役者たちの人生は、まさに山あり谷ありである。芸の世界だから、そこでの力量があればある程度は安定するのかと思いきや、気まぐれな世間の評判で浮き沈みする様子は、キャンセルが跋扈する今の芸能界を描いたようにも見える。
実際の歌舞伎の世界でも、これほどのトップスターとなった者が、温泉旅館やスナック巡りをするような落ちぶれ方をすることがあるのだろうか。また、それが武者修行の旅となって、芸に深みを加えることがあるのだろうか。
先達の人間国宝の最晩年も、「本当にこんなことあるのかな」と思うほど、あまりに質素で孤独な暮らしであった。
“国宝”に到達するには、役者としての能力だけでなく、血筋に入り込む運や政治力、野心、そして何より、この理不尽なゲームを今さら降りられないという執着──そういったものの総合力が必要なのだと感じた。
歌舞伎を知らない僕でも、その世界を存分に味わわせてくれる見事な大作映画。長尺でもあるから、この新作の時期に、スクリーンで観るべき一本だと思う。
役者魂のぶつかり合い!
歌舞伎は全然知らないのですが、それでも没入できました。吉沢亮さん、横浜流星さんは喜久雄と俊介としてまた歌舞伎役者として役を生きていました。
終盤の曽根崎心中はもう言葉では言い表せない程に心揺さぶられました。
吉沢亮さんは主演として本当に素晴らしかった。
特に横浜流星さんは喜久雄を引き立て尚且つ自分の俊介としての葛藤や生き様を見事に生きていたと思います。
おふたりの役者魂のぶつけ合い映画館で観るべき作品です!
歌舞伎のシーンがかなり多いので、事前に演目の解説を見ていった方が良いと思います。。
歌舞伎の世界を描いた映画。
歌舞伎のシーンが全体の半分ちかくあったんじゃないでしょうか?
演目は、「二人藤娘」「二人道成寺」「曽根崎心中」「鷺娘」など。
これらの演目については公式サイトで解説があるらしい。。
私は何も調べずに見に行ってしまった。
特に「曽根崎心中」は内容を見ていった方が良いと思います。
地方に住んでいる私は歌舞伎は見た事がありません。
2年ほど前に映画館でシネマ歌舞伎を見ただけ。
だから、歌舞伎の知識はほとんど無かった。
映画の中の歌舞伎シーンは、なんとなく演技は素晴らしいのだろうと感じたけど、あまり分からずイマイチ感動が薄くなってしまったかな。
歌舞伎のシーンは時間を掛けて撮ったのが分かる感じの重厚なシーンばかり。
吉沢亮と横浜流星の二人もかなり練習したのでしょう。
血と芸の実力。
どっちも大事なのが歌舞伎の世界なんだという事がよくわかりました。
上映時間は3時間近くの大作。
李相日監督は『悪人』、『怒り』など重い映画を作る人というイメージ。
子供時代から老人になるまでの壮大な歌舞伎役者としての人生が描かれていました。
描いた期間が長いので、詳しい説明が無いまま通り過ぎていく話も多々あった。
歌舞伎のシーンが全てという感じの映画。
吉沢亮と横浜流星の二人は、おそらく、厳しい演出で知られる李相日監督から散々ダメ出しされながらの撮影だったのだろう。
この二人には拍手を送りたい気持ちになる映画でした。
飲酒トラブルもあったけど、吉沢亮には頑張ってほしい。
昨年見た彼が出ている『ぼくが生きてる、ふたつの世界』は、私の中では2024邦画No1でした。
(ちなみに全体1位は『きっと、それは愛じゃない』、私の劇場鑑賞映画67本の中からです。)
また、シネマ歌舞伎を見に行ってみるかな。
シネマ歌舞伎を見る上でのアドバイスがあります。
アプリを事前にダウンロードしておくと上映中に解説を聞く事が出来ます。
事前にアプリをスマホに入れて、イヤホンを持っていくと分かりやすく見れるんです。
行く方は事前に調べてみてください。
歌舞伎初心者の方は絶対に解説を聞きながらの方が良いと思う。
長かったけど、もっとあってもよかったかも?
上映時間が約3時間で、膀胱は耐えられるのか?!と心配になりつつも、表情管理ならぬ"膀胱管理"してたのでだいじょうぶでした。笑
主人公/喜久雄の上方歌舞伎人生50年を描くし、随所に歌舞伎の名シーンがありますので、この長さはしかたないんです。なんならもう少し喜久雄の人生観ていたかった。(原作小説のラストはもう少し先まで書かれてるって聞いたのですが、それホント?!)※原作未読です
歌舞伎を知らずに観てもいいけど、どうせなら少し予習した方が楽しめると思います。オフィシャルサイトの解説がちょうどよかったなと思うので、これからの方は読んでみてくださいね。
それにしてもだ、吉沢亮くんはいつからあんなにうつくしかったんだい?もう、その余韻がすごくて、夜中に目が覚めました。笑
舞台上の所作や声も、とてもうつくしくて、ほんとに女形向いてると思いました。歌舞伎はつまむ程度にしか観てないけど、これで終わりにするのはもったいないなと思いました。芸事を極めて欲しい…
その他、気になるシーンもいくつかありますけど、そこは目をつぶろうと思わせるパワーのある作品だとわたしは思いました。
ほんとはもっといろいろ書きたいんだけど、これから観る人もいらっしゃるし、ネタバレはしたくないたちなのでこのへんにしときましょうか。
でも、ほんとに吉沢亮くんがうつくしいです。ぜひ映画館で観てください…!
心揺さぶられる大傑作!
原作未読。
ここまで完璧だと何書けばいいのか困りますね。脚本、演技、演出、テンポ、音楽、衣装、舞台セット、照明に至るまで全てが最高でした。まさに至福の175分。……え、そんなに長かった?体感2時間くらいでした。
なんと言っても吉沢、横浜両氏の演技に尽きるのではないでしょうか。歌舞伎役者の挫折、葛藤、苦悩を見事に体現しており、スクリーンに釘付けにされました。個人的には横浜流星がちょっと凄すぎてなんかヤバかった(語彙力…)。歌舞伎は全く観たことないのですが、横浜が舞台上で演じるシーンはどれも美しく、感情豊かで、時に可愛らしく、時に鬼気迫るほどの迫力で、どれも心に深く刻まれました。もちろん!吉沢も凄かったです!
序盤からの意外な展開に驚きましたが、歌舞伎の華やかな表舞台と、芸と世襲が入り混じる複雑な裏の顔をテンポよく見せていくので、全く飽きることなく観れました。吉沢、横浜以外の俳優陣も素晴らしかったですしね。寺島しのぶ演じる母の複雑な心境は見てて苦しくなります。あ、「横浜、吉沢」の順の方がいいのかな?俊介くん?😁
音楽は原摩利彦。この方の音楽は初めて聴きましたが、主題歌含め本当に素晴らしかったです。歌舞伎の舞台では実際には流れないであろう音楽が流れるわけですが、そこは非常に映画的というか、エンターテイメント作品における音楽の役割を最大限に活かせていたのではないでしょうか。
歌舞伎に精通する方が本作を観てどう感じたかも気になるところですが、映画というエンターテイメント作品としてはこれ以上無いほどの完璧な作品。エンドロールが流れ、溢れる涙と共に深い余韻に浸る…。本当に素晴らしい作品でした!
全1630件中、1441~1460件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。