国宝のレビュー・感想・評価
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若き喜久雄(黒川想矢)にMVPを
公開3週目だし、既に語り尽くされ気味な話題作なので、気になった細かい雑感だけ列挙します。
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1. 魂を売る前から悪魔に魅入られていた天才
主人公の台詞にあるし、最終盤に娘からも投げ付けられるので、本作は悪魔に魂を売った喜久雄(吉沢亮)の物語にも見える。しかし、少年時代に趣味で演じた女形で、プロの歌舞伎役者(渡辺謙)を惹きつけてしまう程、ほどばしっていた才能こそが全ての始まり。部屋子になった後も、厳しい鍛錬が楽しくて仕方ないと嬉しげ。天賦の才を持つ者に、惜しまず努力されてしまったら、最強すぎて太刀打ちできない。少年・喜久雄の才と歌舞伎愛に説得力を与えたのは、間違いなく黒川想矢の眼差しと立ち振舞。「怪物」(2023)でも爪跡だらけだった黒川君の今後に、期待しかない。
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2. 天才は何処でも輝く、ただ輝きの意義が解る観客は必須
最も印象的だったのは、彰子に手を出して歌舞伎界を追放された喜久雄が、ドサ回り先でボコられる件。彼がどこまで本気で演じていたか、多少は手を抜いていたか、定かではないが、あんな環境でも喜久雄は、観客の一人の目を惹きつけ恋心さえ抱かせる。歌舞伎に関心がなくても、女形の意味を理解していない観客でも惹きつけてしまう、喜久雄の才は本物だろう。
加えて、ボコられてボロボロになって屋上に佇んでいても、自然と体が舞始める。公演の予定などなくても、日々の鍛錬を止められない。「歌舞伎嫌いでしょ」と万菊(田中泯)に指摘された俊ボンとは真逆に、喜久雄には歌舞伎しか居場所がない。役者を極める道しか、目の前に延びていない。
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3. 順風満帆っっって!?
最終盤、最年少で人間国宝になった人生を、順風満帆と称される。苦しい場面中心に観させられた観客としてはツッコミ処。ただ、同じ様な雑なまとめ方は、我々も普段からやっていそう。成功した結果だけみると、億万長者の実業家も、売れている芸能人も、「順風満帆」な人生を羨ましく思えるが、人には言えない苦難を経験して来た者もいるだろう。他人の人生の一断面を聞き知っただけで、その人の人生を総括できると思い込むのは、愚かなのだろう。
本作でも、万菊は人間国宝になってからの姿しか描かれない。引退後の狭い借家が、万菊も歌舞伎の上達につながる事以外は切り捨ててきた役者バカだった事を彷彿とさせる。とは言え、万菊に人生も喜久雄以上に波乱万丈だったのかもしれない。質素な老後だけから、淋しい人生だったと決めつけるべきではないんだろう。少なくとも、狂気を秘めた田中泯の演技は、何らかの賞で報われて欲しい。
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4. ほぼ満点な前半(青春篇)、徐々にテンションが落ちる後半(花道篇)
語るべきテーマが後半に詰まっている事は分かる。それでも、自分は喜久雄と俊介の絆が深まっていく前半が楽しくて仕方なかった。師匠の交通事故で代役を勤め上げるまでか、名跡を襲名するぐらいの処で映画が終了していたら、満点評価だったかもしれない。後半も、義兄弟の絆を感じるシーンは堪らなかった。
しかし後半に入って、「昭和元禄落語心中」と重なる展開(a-c)が相次ぎ、名人の最期まで似ていた事で少し冷めた。
a. 切磋琢磨する幼馴染Aが、幼馴染Bの恋人と疾走し、子を儲ける
b. 人気が出てきた若手が背中の入れ墨(元任侠)報道で失速
c. 年を重ね名人に成長した主人公が、公演中に倒れて絶命
※八雲は漫画では主要人物だが、ドラマでは主人公
パクリだなんだと責めるつもりはないが、ありガチな定番展開を面白くは感じなかった。
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5. 血筋に拘るなら...
個人的にミスリードだったのが、序盤のド派手な父の死が、喜久雄の人生に殆ど影響しなかった事。任侠の家に生まれなければ、彫り物を背負わなかった可能性は高いが、それ位しか彼の後半生に活かされないのは肩透かしだった。
血統を重んじる歌舞伎界で、血統の拠り所がない不安を語るシーンは印象的だが、血統をテーマにするなら、任侠エリートの息子に生まれた血が、喜久雄の人生に与える影響も描いてほしかった。無論、殺人犯の子も殺人を犯すだとか、反社の子も必ず反社になるみたいな偏見は好きじゃない。ただ、性格や行動傾向にある程度遺伝的基盤があるのも事実なので、任侠の親分に上り詰めた父の精神的特徴が喜久雄にも現れ、彼の人生を後押ししたり、邪魔したり、みたいな描写が欲しかった。
舞台上の女形の優美さに圧倒されました
原作未読。ストーリーは喜久雄という人物がひたむきに日本芸能へ注力した人生を描いた作品です。
舞台上の演者は俳優さんであることを忘れてしまうほど優美な動きで、一長一短でできるものではないことは一目瞭然であり、素晴らしかったです。
印象に残ったシーンは数多くありましたが、わたしは人間国宝の万菊と菊久雄の初対面のシーンが印象的でした。菊久雄を手招きする万菊の手の動き、声色とカメラワークに只者では無さが現れていて背筋がひやりとしました。
作中音声は息遣いまで鮮明に拾われていて、俳優さんの、それこそ心技体すべての演技を注いで作られた作品だと感じ幾度となく胸が熱くなりました。
予告で国宝を知って以来、観る事を楽しみにしていました。しかし3時間の超大作を暫く観ていなかったため若干ひるんでいましたが、実際観たら体感2時間。ずっと惹き込まれていました。ストーリーもカメラワークも、衣装も演技も素晴らしく記憶に残る作品でした。観て良かったです。
圧巻。
1年半稽古が必要だったというのもわかる、歌舞伎俳優としての、「女形」としての、舞踊、演技。
3時間も必要なのか?と半信半疑で観に行ったけど、3時間あっという間どころか、もっとくれ、もっと見せてくれという気持ちで映画館を後にした。
「血筋」と「才能」というシンプルにして永遠のテーマのような題材を予告で見せていたが、そもそも予告の部分は本作の半分にも満たないのでは?それくらい、後半の展開はうねりにうねっていた。
少年・喜久雄を演じた黒川想矢がどこかで観たことがあると思ったら『怪物』の主人公だったとは。冒頭、彼の女形が魅力的で、惹きつけられた。
花井半二郎(渡辺謙)の稽古シーンのパワーが凄い。
吉沢亮、横浜流星の二人それぞれの舞踊の違いがあって面白かった。
吉沢亮の「死ぬる覚悟が…」のシーン、あの声、良かったなぁ。
また彼のダークサイド的な一面を本作で見られるとは思いもしなかった。
そして、田中泯の圧倒的な強さ。素の会話のシーンのほうが多かったが、そこが強かった。(あのバァさん、いやジィさんか、と言われていたところは笑った)
これは、シネマ歌舞伎の需要が増えるだろうなぁ……いやいやそもそも歌舞伎ファンが増えるだろう。
撮影がソフィアン・エル・ファニという外国の方だった。「Pachinko パチンコ」で李監督と仕事をした縁で本作に参加していたらしい。気になっていたドラマだったので、「Pachinko パチンコ」を観てみたい。
凄い作品観させてもらいました。 歌舞伎の事は全くの素人ですがこの作...
歌舞伎を観たような…
原作のタイトルだが『国宝』には違和感がある。と言いつつ、じゃあ何が相応しいのかは解らない
いや、驚いた。
ビッグネームの渡辺謙はともかく、以前から吉沢亮と横浜流星の上手さは知ってはいたが、ここまでとは。
この映像づくりに、凄まじい情熱と鍛錬を注ぎ込んだことがわかる。
日本映画も、最近はものすごいものを観せてくれる。
なまじ歌舞伎ファンじゃないほうが楽しめるのかもしれない。何でもそうだが、特定の領域にマニアックな人たちは、その領域が映画化されると、作品の出来自体よりも見当違いなディテールやらご自身の違和感やらでディスりがち。それはちょっと見苦しい。
しかし僕のような「素人」からすると細かいことなんか気にならない。むしろ、本当のようなウソを見せるべき壮大な「物語」というのは、まさにこういうものなんだろうと驚嘆至極である。
二転三転する物語の脚本も巧みだし、演出も優れていると思う。カメラワークも良い。
金曜平日昼からの部でほぼ満席。
ただし、ここ渋谷のTOHOシネマズは今いち劇場環境が良くない(ドアのすぐ外が通路だったり売店が狭くて異常に混んだりする)ので、改めて日比谷で観てみたいとも思うが、さすがに丸々3時間というのが昨日の『地獄の黙示録ファイナルカット』に続いて満腹感が半端ない。
とは言え、この作品もやっぱり映画館の大スクリーンと良質な大音響でないと堪能できないだろう。
喜久雄、俊介の少年時代を演じた黒川想矢、越山敬達がともかく見事だった。その後の成長した姿である吉沢や横浜に自然に繋がるほど良かった。
てっきり歌舞伎界のあまり有名ではない御曹司を使っているのかと思ったが(それほど所作がすごい)、まるきり未経験者、というより役者とモデル。それも15歳と16歳とは。
僕はほとんど事前情報を見ずに観に行くし、顔をぱっと見てすぐに名前や出演作がわかるタイプではないのだが(「どこかで見たことがある」程度w)、そうか、黒川は『怪物』の、越山は『ぼくのお日さま』の主人公だったか。
黒川も越山も、前作では内向的な子どもを演じていたので印象ががらりと変わってしまい、まったくわからなかった。
ところでこの作品はカンヌで上映されたらしいが、どうも向こうではあまり高い評価を受けていないように漏れ聞こえる。
恐らくエキゾチシズム(ゲイシャ、フジヤマのレベル)で通じたかもしれないけれど、日本人のわれわれが知る歌舞伎界の「世襲」「血」という凄絶でおどろおどろしい呪縛がこの映画の大きなモチーフなので、そんなことは欧米人にはまったくわからないだろうし、到底この作品の深みには触れられない。
それがわかるとすれば、たぶんマッカーサーの副官だった「歌舞伎を救った男」フォービオン・バワーズと、稀代の日本通ドナルド・キーンくらいだろう。
(2025.7.4追記)
フォービオン・バワーズについては、Wikipediaでは「歌舞伎を救っていない」「マッカーサーの副官ではなかった」という近年の批判的評価が記されている。フェアな判断のために追記しておきます。
なお、Wikipediaの日本語ページのURLをコピーするとこの映画.comの投稿フォーマットで弾かれる文字が含まれるため、リンクを張りません。
呪いだ
呪いだよ
魅せられてしまったらどうしようもない
恋人とか家族なんかは視野にも入らない
人生の全てを捧げないと到達できない物
芸の道は魔物のような魅力があるんだろう
選ばれた人間だけが挑戦できる高み
羨ましくもあり、恐ろしくもある
同じく、この作品に挑戦した2人も見事でした
大スターだった田村正和のように自分はテレビだけの俳優と身の丈を語っていたが、あれは例外
ほとんどの役者は、あえて舞台に挑戦する
自分を追い込んでいくストイックさがある
役者としてやりがいのある仕事だったでしょう
見事成し遂げましたね
きっと、今頃はエクスタシーに震えているんだろうな
田中泯の舞踏が怪しく、美しかった
歌舞伎風にアレンジしたのだろうが、カメラワークでなんとか誤魔化した吉沢亮のラストの歌舞伎とは、やはりものが違った
あれ、同じ演目だったと思ったけど(違ったらごめん)、さすがに対比すると本物の舞踏家は違う
天才ですね
血が優先する歌舞伎界の人間国宝を孤高のダンサーの彼が演じたのも興味深い
言っときますが、吉沢亮は素晴らしかった
ただ、田中泯が凄すぎて、凡庸に見えただけ
そして横浜流星
映画だから仕方ないけど、最後のシーンは化粧がとれて顔がぐちゃぐちゃすぎる
あんな歌舞伎はないでしょう(笑)
2人とも良かったけど、歌舞伎役者としては吉沢亮が主役で正解でしょう
とても見応えのある作品でした
さすが、男の世界、歌舞伎を題材にした作品というか
高畑充希の行動も、サラッと流し、寺島しのぶも見上愛も森七菜も、まるで背景のように通り過ぎて行った
このあたりは、時代錯誤映画というか、コンプライアンスなんか無視の狂気の作品です
まあ、最近は子煩悩な中村獅童なんて、少し前には考えられない面を見せる歌舞伎界ですけどね
少年時代の喜久雄を演じた、黒川想矢って、怪物に出てた子やね
いい感じに成長していましたね
序盤の女形の演技、可愛かった
期待したほどではなかった
これは 彼らじゃないと もたない!
血統と実力
とんでもない
とんでもないものを観たというのか直後の感想
少しの時間席を立てませんでした
劇場の真ん中の席で見たのですが、舞台を観ている観客のように、歌舞伎のシーンが見れたのは嬉しかった。真ん中側の席おすすめです!
あと3時間長いと思って、食べ物、飲み物たくさん買うのは、おすすめできません。余ります
歌舞伎の舞台シーン等、実話のような感じがする映画ですが、再現ドラマではないので、あそこが実際の歌舞伎と違う!ここが原作と違う!等と観るのは、勿体ないです
評判は高いし、素晴らしい映画と私は思いますが、みんなが良いと言ってるからと言う視点で観るのも、みんな良いと言ってるけど、足りない所がある、描ききれてない部分があると言う視点で観るのも、この映画の魅力を狭めてしまうかも。
良い意味で先入観をいかに無くして観ることが出来るか?がポイントの作品です
三十代最後の夜に
映画の力を感じた。
唯一無二な作品
東野幸治さん絶賛につき鑑賞 結論からいうと原作も読んでなく歌舞伎も...
東野幸治さん絶賛につき鑑賞
結論からいうと原作も読んでなく歌舞伎もよく知らないけど十分楽しめます
とにかく見応えがあった
冒頭の永瀬正敏をスクリーンでみるのはションベン・ライダー以来でしたが
本当にいい役者さんになったなぁと宮澤エマも徳次や喜久雄、春江役の子役たちも少ししか
登場しませんでしたが強烈にインパクトに残りました
歌舞伎を知らないので吉沢亮さんや横浜流星さんの歌舞伎のシーンの仕上がりや出来不出来はわかりませんが本編にいくつかでる歌舞伎のシーンよりラストの藤娘の歌舞伎のシーンが段違いの出来、これだけで成功なんじゃないでしょうか?
3時間という長丁場とはいえ細かな部分ではいくつか端折っているところもあり
原作を知らないと各キャラクターの心情の変化など解説が必要になってくる部分もあり、特に春江の選択や彰子のその後、スキャンダルは誰が流したのかどうやって復帰したのか・・
見る人がある程度追いつけない部分もあります
個人的には徳次のその後や春江や彰子、竹野あたりのキャラクターや心情の変化を細かく見たかったなというのがあります
とにかく余韻が凄いので本編終わっても誰も席を立たないです
原作を読みたくなる、歌舞伎を知りたくなる映画 大成功です
映画館で観るべき映画「国宝」
◇血に焼き付けられた「演技」
人間国宝は、日本の文化財保護法に基づいて重要無形文化財の保持者として認定された人物を指す通称です。芸能、工芸技術等の無形の「わざ」を体得している人。
日本文化における「わざ」は身体の中に刻み込まれている所作の上に成り立っているように感じます。それは長い年月の試行錯誤と切磋琢磨によって何重にも折り返され積み重ねられた身体のリズム。
身体のリズムを形作るのは血です。血の流れの中に、「わざ」の動きの一つ一つが書き込まれて記録され巧みに再現されるのです。
歌舞伎界を巡る二人の役者の人生の浮き沈みを人間喜劇さながらに描くこの作品。秀逸なのは、幼い頃からずっと芸を鍛錬してきた歌舞伎役者のごとく、しなやかに動く身体の美しさです。
身体に刻み込まれた歌舞伎の動きを役者として身体の血に染み込ませて演じているように感じました。もはや演じているというよりは演技そのものが憑依しているようでした。
身体の奥に感じる血のリズムが共鳴し始めるとき、感動の渦が深淵からじわりじわりと湧き上がってくるのを止められませんでした。
圧巻
吉沢亮の「芸」を見る映画
吉沢亮の演技が素晴らしい、この一言に尽きる映画。
脇を固める俳優陣も錚々たるメンツで、吉沢亮を引き立たせるのが上手い。
映画の内容自体も原作の重厚さを表現できるほどの時間がないこともあり、ストーリーや歌舞伎という世界観を見せるというよりは、いかに吉沢亮の演技で観客の心を掴むかのほうに振り切っている。
そんな吉沢亮の芸一つでどう転ぶかという映画内容ながらも、喜久雄の喜怒哀楽・芸への執念をしっかりと演じ切っており、一つ一つのシーンや演目に見応えがある。
ライバル役の横浜流星もそうだが、ここまで良い演技ができる若い男性役者がいたのか…と息を呑むほどに作品に見入った。(さすが大河主演俳優)
幼少期を演じる黒川想矢も立つだけで存在感があり、所作の美しさが際立った。
肝心の映画自体の総評としては、見せ方・演出に目新しさがなく残念に感じた。
特に似た題材ゆえに仕方ないものの、ところどころチェン・カイコー監督の「覇王別姫」がちらついた。(特に中盤の演出は、個人的にかなりその要素を感じる)
とはいえ全体的に見応えのある作品で、特に役者力が感じられる素晴らしい映画だったように思う。
ぜひ劇場に足を運んでいただきたい作品だ。
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