国宝のレビュー・感想・評価
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それでも彼は舞台に立つ
その舞台に立つことで自分自身を表現し、自分を輝かせることが出来る
自己表現であり己という存在証明であり喜びであると同時にそこには深い業とそれゆえの責任、そして計り知れないほどの犠牲が潜んでいる
人間国宝、そう称され讃えられる裏でどれだけの血の滲む覚悟が潜んでいるのか
そしてどれだけの狂気を持たねばならないのか
それを妥協なく丁寧に丹念に描ききった一作だった
主演の2人は経験もない中舞伎を演じる ということで、ともすれば作品全体の説得力すら失いかねないにも関わらず、果敢にその重圧に挑み見事な表現力を見せていた
細部に至るまで表現されたビジュアルや音響の重厚さ、見事な迫力と繊細さで映し出すカメラワークとスタッフ陣の洗練された技術も作品の価値を二重も三重も引き立てている
洋画においては教皇選挙が重厚かつ深いテーマ性と一片の隙もない徹底的な美術に対する拘りを見せつけ映画というものの価値を改めて見せつけているが、今作もまた日本に根付く文化を掘り下げることで邦画という角度から映画とは、劇場作品の価値とは というものを示してみせたと思う
本年度ベスト級であろう邦画作品になることは間違いない
心に残る作品
劇場で観るべき映画
過去最高の映像作品のひとつ
映画館で見るべき映画
世間の反響と自分の感性
一言でいえば、どうにも腑に落ちない。その違和感が作品内容に向くのか、世間の評価との感性ギャップに由来するのか——現時点では判断が揺れている。
とはいえ、映画そのものの魅力は確かだ。まず歌舞伎の場面はどれも圧巻。静と動の所作の美しさと張り詰めた緊張が、歌舞伎に明るくない自分にもまっすぐ届く。「役者は何にでもなれる」という可能性を、同じ日本人俳優から感じられたことが何より嬉しく、誇らしい。
その演技を支える演出もとても良い。日本の舞台特有の“空間”と“色彩”をきちんと際立たせ、緊張を増幅させる。劇場で一度は体験すべき臨場感があるし、時代がパッと移り変わるたびに前のめりにさせる構成も巧みだ。
一方で物語は、いまだに腑に落ちてこない。喜久夫が一度“地の底”まで落ちるまでは、「この先どう転ぶのか」という期待が続いたが、終盤の畳みかけは早足に感じられ、ラストの感動へと十分に収束しきれていない感じがした。
特に後半はここまで紡いできた物語の線が面にならず、感情の導線を歌舞伎の演出でどうにか繋いでいる印象だった。
春江についても、なぜ俊介を選び、最後まで平然とあの場に居続けられるのかという疑問が勝り、映るたびにノイズになってしまった。
突き詰めれば、喜久夫以外の感情を慮るための描写が不足しており、長尺の作品であってもなお足りない——それほど原作が濃密だという裏返しかもしれない。
多くのレビューや感想動画を当たってみたが、腑に落ちる解釈には出会えなかった。自分が乗り切れないのは、洋画的な視点に慣れたせいか、細部のニュアンスを取りこぼしているのか。何か見落としているのではという不安が残り、いまの感性に強くは自信を持てない。それでも率直な感想としてここに置いておく。
田中泯の演技はバケモノ!
陰と陽
歌舞伎と映画が織りなす感動の芸術体験
歌舞伎の世界
観る者を惹き込む圧倒的完成度:奇跡の作品
「素晴らしい作品だと噂に聞くけど、歌舞伎にまったく興味ないし、知らないしな…しかも3時間もあるし。」
自分もずっとそう思って敬遠していた。
もし同じような気持ちで観ることをためらっている人がいれば、その気持ちを乗り越えてぜひ観てほしい。
3時間という凝縮された時間の中で、壮絶な男の人生を擬似体験できる。
何も知らない自分の歌舞伎のイメージだと、おごそかで緊張感のある雰囲気、姿勢を正して静かに観る…みたいなものだと思っていて、映画自体の雰囲気もそういうテイストかなと思っていた。
だが、冒頭のシーンでそのイメージは崩された。
「え?いきなりそういう展開!?」
思わず身を乗り出さずにはいられなかったが、思い返せばそのシーンを境に物語に引き込まれていったのだと思う。
先ほど「擬似体験」できると言ったが、この作品、気づけばまるで文字通り自分がその場に居合わせているような感覚に陥るのだ。
BGMが流れ始めて、「あ、今自分は映画を観ているんだった」と我に返るシーンが多々あった。
そのくらい物語の中に引き込まれる、いや惹き込まれる、か。まるでスクリーンの向こう側の世界に行っていたかのように。(この不思議な感覚は「没入感」みたいな言葉では表しきれない)
ここまで惹き込まれる作品となっているのは、シナリオや出演者の演技、音楽、美術など、作品におけるすべてにおいて高い完成度を誇っているからに他ならない。
演技と言えば、主演の吉沢亮、横浜流星が役作りを完成しているのは言うまでもないが、人間国宝を演じる田中泯の演技には圧倒された。
これは歌舞伎を演じているシーンの話だけではない。
何でもない普通の会話のシーンがとてつもなく重みを持っているのだ。
その沈黙や間合いに、言葉以上のものが伝わってくる。まさに人間国宝。
観ている自分は唾を呑むことすらできなかった。
そして国宝のタイトルバックに合わせて流れてくるテーマ曲にも鳥肌が立った。
またシンメトリーな引きの映像が挟まる箇所も、まるで美しいスチール写真を見ているかのようだった。
登場人物それぞれの気持ちの揺れる様が、痛いほど伝わってきた。
これ以上はもうやめておこう。
本作を観終えた今、「歌舞伎を観に行こう」とまでは思わないものの、「歌舞伎についてもっと知りたい」という好奇心が自然と湧いてきた。歌舞伎に詳しい人はもちろん、まったく知らない人でも物語に引き込まれ、十分に楽しめるのは間違いない。むしろ、知らないからこそ新たな世界への扉が開かれる感覚を味わえるかもしれない。
圧倒的な完成度と深い余韻を残す、まさに“国宝”の名にふさわしい、奇跡の作品と呼ぶべき傑作。
期待値が高すぎたか?
私の普段の映画鑑賞時は「期待値を上げずに鑑賞」ってのが基本なのですが、「国宝」はラジオ・テレビ、いろんな媒体で高評価すぎてそれに踊らされてしまいました(歌舞伎なだけに)。
…で私の評価は「中の下」です。3時間近くもあったにも関わらず、登場人物のバックボーンと行動原理の描写が浅く、どうにも映画にのめり込むことができませんでした。
また、冒頭で永瀬正敏と渡辺謙の並んでの画角がありますが、ガタイが良すぎて顔が大きい渡辺謙が「稀代の女形」には見えません。女形という設定であれば、どうみても、永瀬正敏の方が「女形」です。(渡辺謙の演技は絶品でしたが…)それ以降も「女形」という芝居はないままでした。
出ていた役者さん達の演技が素晴らしかっただけに残念な映画でした。
歌舞伎を間近で観たくなる
近年の邦画あんまり観てないのですが(予告で大体分かっちゃうのが多い&母国語なのに聞き取れないことが多くて)、これは予告編から観たくなりました。
感情的に叫んだりわざとらしい演技やBGMがなかったのがとても良き。
基本音楽も歌舞伎の伴奏だけ、クライマックスは静かに燃え上がるような、映像(これまた撮り方が美しい。)にマッチしていて素晴らしかったです。
代役に抜擢されて「俊介の血が欲しい」と震えるシーンが一番引き込まれた。
その血がまさか父子の役者人生を早くに終わらせることになる因果もすごい。
子役の役者二人もすごく良かったし、時代時代の服装の変化も楽しかったな。
映画の後、近くの駅ビルのトイレに並んでたら、殆どの人が国宝を見た人たちで、個々の感想が聞こえてきて面白かったんだけど、春江は途中から俊介に惹かれていて、喜久雄のことは推し活にシフトチェンジしたのよー、って聞こえてきて(ほう、そうかー)と思いました。確かに俊介の妻になることで特等席で喜久雄を応援できてたな…(原作読んでないので見当違いだったらスミマセン)
歌舞伎は昔、日本を訪れたアメリカ人を連れて末席で観ただけですが、舞台というより、お客さんの合いの手とか黒子の動きとか全体を楽しんだ感じでした。
映画では舞台からの視点はもとより、舞台近くの客席からのカメラワークが迫力があって、これはこんな近い席で見たら絶対印象変わるなぁ!今度観る時はケチらないで良い席で観たいな!
追記:友人おすすめの「僕が住んでる、ふたつの世界」観ました。吉沢亮くん、改めてめちゃ良いですね!
周りの評判が良すぎて…
最近の邦画で一番面白かった。
日本文化と人生
スクリーンで観るべし
役者の凄み、作品のパワー。
芸事を極め「国宝」にまで辿り着く男の半生を描いた映画。
極道の跡取りとして生まれ、親を亡くし、才能を見出され、歌舞伎の世界に飛び込む。血筋が重んじられる世襲の世界にあって、芸を極めるため、全てのものを犠牲にする覚悟で悪魔と契約を結ぶシーンが象徴的。歌舞伎という身近なようで縁遠い世界。人としての生業。血統というお守りと呪い。色んなものを背負いながら、舞台に立ち続ける姿を見ることになる。
印象に残るのは、圧倒されるような映像美。鳥肌が立つ場面が序盤からたくさんある。見たことのない映像や構図。感情を盛り上げる効果的な音楽。役者の表情。さすがの李相日という感じ。
個人的に特に印象に残ったのは、少年時代の主人公を演じた役者のキラキラした表情。そして、人間国宝の女形役者を演じた田中泯の人間離れしたような存在感。
主演の吉沢亮や横浜流星の舞台上での所作についても、正直歌舞伎の演技の良し悪しは素人には分からないが、多くの鍛錬を積んだことが伺えた。
個人的に好きなシーンは、代役の本番前、1人緊張で震えが止まらない主人公の手を握り、代わりに化粧を施す控室の場面かな。映画全体で舞台裏を映す場面がとても多く、知られざる歌舞伎役者の素の顔を垣間見ることができる。
そして何よりも、ショート動画や倍速再生が受けるこの時代に、3時間を超える映画を劇場でじっくり鑑賞する体験の貴重さ(さすがに最後は疲れてきたが、観る価値は十分にあった)、それをこれだけヒットさせる作品の持つパワーに驚いた。
無常
知り得ない世界の中に人間らしさを感じました。
生まれた血筋。見つけられた才能。
なりたい自分になりたくて、欲しいものを掴もうとすると得られず、欲しいものを得ると大切なものを失う。
華やかな世界だからこそ光と影がより濃くあることを改めて感じました。
努力し何かを手にすることが出来ても満たされない。
満たされてしまうとそこが最終地点になってしまう。
鍛錬の積み重ねが極みを求めること。
それが形となって表せたとき何かが大きく変化する。
継承というものに感銘を受けました。
そして自分の表現の素晴らしさを感じました。
人は孤独です。
何者かになりたくてもがき、精進して極みに近づく者、才に恵まれ突き進む者は特にそうなのではないかと感じました。
人生とは運命とは残酷だが奥深い。
全1625件中、561~580件目を表示
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