国宝のレビュー・感想・評価
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修羅の道を突き進んだ先に見えた景色
ヤクザの息子喜久雄(黒川想矢のちに吉沢亮)は歌舞伎の才能を見い出されて半二郎(渡辺謙)の下で修業をする事になる。半次郎の息子で同い年の俊介(越山敬達のちに横浜流星)とは良きライバルとして兄弟のように育つ。事故に遭った半二郎の代役を喜久雄が任された事で、2人の関係性が変わってくる……
歌舞伎を観た事が無い人間からしたら、出演者の演技は最高でしかないです。素人が言うのもおこがましいですが、吉沢さんと横浜さん(あと少年期の2人も)があそこまで仕上げているとは期待していなかったので、気迫のこもった演技に驚き、ずっと観ていたいと思いました。
集客力の面でも、国宝級イケメン2人の共艶!なので必見です。2人とも男らしい顔立ちなのに化粧して衣装をつけた姿、所作が美しいんです。少年期の2人も魅力的でした。
キャスティングは大成功です。
喜久雄のキャラクターを梨園育ちの方が演じたら、逆に違和感を感じてしまいそうですし。
そして、田中泯さんの存在感が圧倒的でした。
一流の歌舞伎役者になれるなら他には何も要らないと言う喜久雄も、俊介の血筋が自分にあればと嘆き、俊介も喜久雄の才能に嫉妬します。でも2人の絆は失われませんでした。
挫折から立ち直った喜久雄は道を極め、ついに人間国宝の名誉を手に入れて、インタビューで、「皆様のおかげで」と答えます。
ひたすら自分の夢を追い求めた喜久雄は、他者を顧みなかったように見えます。
でも、ずっと支え続けると誓った春江も彰子も去り、春江は喜久雄との距離を感じて去ったと思うのに、俊介の妻となって戻ってきました。
妻でなく愛人でいいから支えさせてと言った藤駒は、たぶん娘に父親の不義理の恨み言を言っていたでしょう。(そうなるだろうなとは思いました)
結局は自分の息子が大事だった半二郎。
人間国宝となった喜久雄に、「順風満帆の人生ですね」と言ったインタビュアー。世間はあれだけ叩いた喜久雄の過去を忘れ、もはや興味は無いようです。
それらを呑み込んで、静かに佇む喜久雄……
本作を観て歌舞伎には大いに惹かれましたが、本作で描かれた歌舞伎界には興味は湧かないです。
血筋ってそんなに大事かなあ。我々はどこを見ていたんだろう。
凄い映画を観たと感じます。欲を言えば、もっと観たいところがあって、逆に要らないなと思ったところがありました。真面目に稽古をする喜久雄に対して俊介が遊び惚けていたのは、コンプレックスからなのかチャラい奴だからなのかが分からなかったし、客とのケンカの場面は長すぎでした。万菊さんのあの表情は何だったのか。後の人生ももっとドロドロしていたのではないかと思います。
本来なら先に公開されていたはずの「ババンババンバンバンパイア」は観るつもりをしていました。吉沢さんのギャグセンスは捨てがたいです。
ドキュメンタリーかと思うぐらいリアルな演技で泣きっぱなし
語彙力失うぐらい良かったです。なんで泣いたかわからんぐらい、めっちゃ泣いてましたw
吉沢亮ってこんなすごい役者さんだったっけ!??狂犬みたいな男かと思えば怯える姿や悲しみに包まれる姿や怒りにのまれてる様な雰囲気や、儚さとか、変幻自在に演じてるの!なにこれすごい。感情が怒涛のように流れ込んできて泣いた泣いた。
3時間近いのに結構はしょられてる感じあって、原作読みたくなる。
老けメイクがちょっとアレでスコア5.0付けなかったけど、脚本も音楽も、カメラワークとか、構成とか美術とか、何もかもクオリティ高いの。もちろんキャストは最強!怪物の時も驚かされたけど黒川くん天才子役すぎ。
邦画そんなに沢山見ない方だけど、こんなに素晴らしい邦画見たのいつぶりかしらってぐらい良かったです。
映画館の大きな画面で集中して観れたのほんと良かった。歌舞伎の舞台シーンなんて、息するのも忘れるぐらい、引き込まれた。映画の中の人と一緒に拍手したくなるw
とにかく美しいものをみたなぁ。エンドロールキャスト一覧や主題歌も善きでした。終わった瞬間ため息出るぐらい余韻が凄かった。
血筋の重圧を背負った男と、才能に狂わされる男と、この対比や複雑な想いが歌舞伎の舞台を通じて描かれてるシーンとか号泣もんよ。ほんとに。途中ちょっぴりBLドラマ観てる気分になってしまった貴腐人です。
こんなに辛いのに、舞う姿は痛々しくも美しい。これドキュメンタリーじゃなくって?てぐらいリアルでいっぱい泣いてしまった。
【パンフレット 34頁A4 1100円縦書きなので右綴じ】
エンボス加工の国宝のタイトルが表紙のシンプルで丁寧な雰囲気の装丁。作品紹介、あらすじ、劇中写真、相関図、キャストインタビュー、監督と歌舞伎指導の中村鴈治郎さんインタビュー、続けて原作者、監督、脚本家、音楽、撮影、振付・舞踊指導、美術監督と、かなりたくさんのスタッフインタビュー。もうすごい物量のプロダクションノートみたいで読み応えありあり。早稲田大学演劇博物館館長の歌舞伎解説。劇中の演目の解説。曾根崎心中しかわかんないから助かるwで、主題歌紹介、スタッフロール掲載。これ地味に好き。
映画の内容を思い起こさせるインタビューの数々や写真がとても良かった。鑑賞後に見るほうが良いかも。
気持良い緊張の3時間
信念を貫いた一人の男の人生を見せられました。
人生が違っていたら別の「血筋」で生き抜いていたはずの彼だったからこそ、というところも面白かったです。
先代からの教えと観客からの歓声を背に、限られた人にしか観られない景色を求めて、何があっても女形として踊り続けた、だからこそ最後に、これ以上ない名誉にも負けないほどの「ご褒美」を思いがけず手にできたんだと思います。それは数多くの犠牲を払ってきた彼の救いにもなったんではないでしょうか。
少年期を過ごした長崎ではあまり観ることのなかった?雪景色、それは時折脳裏にちらちらと浮かぶ景色と重なり、最後の紙吹雪につながりましたね。
「どんなに歌舞伎が憎くても舞台に立ち続けるんだ」って言葉は何だか印象に残りました。
そして、3時間続いた緊張のなかでも、緊張で化粧できずにいる東一郎に対して半弥が手を差し伸べる場面では、緊張が伝わって涙が漏れるということを初めて経験しました。
終始ストーリーを昇華させる映像でしたが、中盤と後半の2回、二人の男の人生と「曾根崎心中」をシンクロさせる場面は特に見事でした。
「怒り」で最後の一瞬で強烈な印象を残した高畑充希さんが今作でも、大切な役回りを抑えたトーンで上手に演じられていました。
これまで吉沢亮さんの出演作はあまり鑑賞する機会がなかったですが、他の作品も観てみたくなりました。
そして、歌舞伎が鑑賞したくなりました。
Luminance
どっしり構えた3時間の上映時間もなんのその、日本伝統の歌舞伎を存分に味わえる濃厚な邦画でした。
歌舞伎の知識はほとんどない身での鑑賞でしたが、歌舞伎、そして歌舞伎に生きる人々たちの想いがストレートに伝わってきて心震えまくりでした。
大変な日々を過ごしながら歌舞伎に出会う少年時代、血筋と才能に飢える青年時代、運命の分かれ目を体験する大人時代、徐々に狂い出してくる時代ととにかく波瀾万丈という言葉が似合うくらい休まらない展開の連続でした。
成功につながっているはずなのにどちらも満足できず、少しずつ狂ってしまい、すれ違ってしまいという展開は良い意味でヤキモキしますし、
印象的な歌舞伎の演目が何度も出てくるのですが、未熟な若い頃に演じた演目を、様々な経験を得て培ってきたものをぶつけて演じる演目とでしっかり成長が感じられるというのもとても良かったです。
歌舞伎での着物の擦れる音、手足の動きの細かな音、無音の中集中して観つめれる空間が贅沢でした。
個人的には絶望に絶望を叩きつけられながら、酒に飲まれながらも屋上で踊り狂う喜久雄の姿が儚くも美しくて印象的でした。
今作は役者陣が素晴らしすぎました。
吉沢亮さんと横浜流星さんの歌舞伎に身を投じて生きるその姿は美しく、それでいて見ていて辛くなるような身の削り方をしており、歌舞伎ならではの女形での声での表現や立ち振る舞い等々、素人でもこれはエゲツないものを観ているとバシッとした空気にさせられて鳥肌が立ちまくりでした。
少年時代の2人を演じた黒川想矢くんと越山敬遠くんもこれまた素晴らしく、繊細な年頃の変化だったり歌舞伎にのめり込むキラキラだったりの表現にやられてしまいました。
脇を固める面々も素晴らしく、渡辺謙さんと寺島しのぶさんは緊張感を引き締めてくれますし、最初はヤな奴だったのにめっちゃ協力的になってくる二世を三浦貴大さんが演じているのも良いですし、幸せにはなれない女性陣を高畑充希さん、見上愛さん、森七菜さんが演じているのでバシッと決まっていますしで隙のない布陣でした。
今作の惜しいところは年月の繋ぎの部分が描かれないのでモヤモヤするところです。
歌舞伎の腕がいつ上達したのか、復讐はどうなったのか、復活と衰退はどのようにしてなったのかなどなど描かれてないものが多すぎましたし、3時間ある尺ならばそこも余すことなく描いてほしかったです。
あと実の娘との再会はあまりにも都合が良すぎますし、私情を仕事に持ち込みまくって感動エピソードに繋げるというのもなんだかなぁって感じです。
あとスパッと終われそうなところでも引き伸ばしにかかるのはちょっと焦らしすぎだなと思いました。
原作が膨大すぎるので駆け足になってしまうのはしょうがないので高望みなのかもしれませんが、ほんのちょっとのモヤモヤが心残りでした。
圧倒的スケールでお届けされた邦画でした。
映画館でこそ味わうべき日本の伝統文化、歌舞伎への導線にもなってくれそうですし、日本アカデミー賞はもちろん、本家オスカーへのノミネートも期待しています。
鑑賞日 6/7
鑑賞時間 19:25〜22:25
コップ一杯の血が欲しい
3時間があっという間でした。
梨園に血筋がなく、稽古に稽古を重ね人間国宝にまでなった女形といえば、
五代目坂東玉三郎を思い浮かべますが、その生涯とはまったく別な物語。
とはいえそこで舞われる演目には、玉三郎の十八番も随所に登場します。
ただ、歌舞伎を深く知らなくても、エンターテイメントとして
十分に練られ見応えある作品にしているのが李相日のさすがな手腕。
吉沢亮が苦しくも美しい才ある歌舞伎役者になりきり、いったいどこまでいってしまうんだろうか、そんな不安を抱かせるほどに狂おしい演技を見せています。
初の大舞台の前の楽屋、花井半弥(横浜流星)にすがり「コップ一杯の血(梨園の血)が欲しい」と泣きつく場面のなんと切なく悲しいことか。
そして人間国宝になった後の半二郎(吉沢亮)が最後に舞う「鷺娘」。玉三郎がその圧倒的な美の世界を演じきり、世界的に称賛されたこの演目を、吉沢亮は歌舞伎役者としてではなく、人間・吉沢亮として静かに演じ自分をその舞の中に沈めていきます。そこには、歌舞伎役者になれずとも、同じく演じることの「業」を抱える俳優の生き様も、幾ばくか見られたような気がしました。
長いエンドロールの後、ひとりの老人が手をたたき喝采していました。
自分も歌舞伎にならい少し叫んでもよかったかも「丹波屋!」と……
そんな気持ちを抱きながら、よい映画の後ならではの高揚感を胸に、劇場を後にしました。
悪魔に魂を売った男の生き様
吉沢亮と横浜流星の演技が素晴らしい。歌舞伎版、ガラスの仮面のよう。歌舞伎一家の血と才能の勝負かと思われたが、その他の要素により、二人の人生は二転三転する。それでも演じることをやめられない二人の生き様を見るのが苦しくなるときもあるが、一生をかけて自分の生き方を貫く姿を羨ましくも思う。
次はどうなるのかと、3時間を感じさせないが、エピソードが多すぎて、あれはどうなっていたのかと思う所もある。父の敵討ちの場面や、春江との関係とか、あまり描かれていないので想像するしかない。映画より連続ドラマにした方が、展開に無理は無かったが、それでも、演技のためなら悪魔に魂を売る男の生き様を見せられた。今年度ベスト級の作品。
「100年に1本」は言い過ぎ
吉沢亮さんと横浜流星さんの演技を見るだけで料金分の価値はあると思いました。何気に三浦貴大さんも良かった。でも、途中から綻びが見えてきて、あまり集中できなかったのも確か。まずは渡辺謙さんが代役に喜久雄を指名した理由が不明瞭だった点。原作には描かれているのでしょうか?かなり大きな決断である故に、気になって仕方なかったです。あと、終盤の瀧内公美さんのシーンは興醒めでした。「急に現れて何を綺麗にまとめちゃってるの?」と突っ込みそうになりました(笑)。いくら何でも不自然だし。それ以外にも「謙さんが女形?」とか、「極道上がりで人間国宝になれちゃうの?」とか。まあでも日本アカデミー賞は総ナメするのでしょうね(皮肉)。これは好みだと思いますが、李監督の演出は過剰な気がします。やたら無音になったり。
逃げられない宿命
役者とは何かという、神髄を見れたような気がした。私生活からその役を...
芸の世界の凄みを体感!
前評判がかなり高いので、期待していきましたが、見応えありました~。
出番前の緊張感、本番中の息遣い、かなりリアルな演出ですので、見終わった後はぐったりです。舞台の上の緊張感が(もちろん実際の比ではないでしょうが)味わえます。裏方目線のカメラワーク、すごいとおもいました。
私は歌舞伎は観たことありませんので、通の人からしたらどうなのかわからないけれど、役者さんたち、かなり凄かったと思います。子役も、渡辺謙も、横浜流星も、吉沢亮も圧巻の演技です。どれだけ稽古したのか、それを想像するだけで役者の世界の凄さを感じるし、それが歌舞伎の世界の凄みの表現に繋がっているとおもいます。
命を削って舞台に立つ。それがまったく大げさな表現ではなく、ほとんど狂気に近い、究極的には才能も血筋も超越した世界。「あんな風には生きれないよな」と三浦貴大がつぶやくシーンがありますが、選ばれた人だけが到達する世界なんだと思います。それがとっても美しく描かれていました。
惜しむらくは高畑充希演じる春江の描かれ方。二人にとって重要な人物で、高畑充希という演技派を使ってながら、ちょっと生かしきれてなかった感じがしました。少女の頃からかなり喜久雄(吉沢亮)寄りだった気がしましたので、俊介(横浜流星)にいってしまったのが、唐突な感じがして、「え?なんで?」という違和感が否めませんでした。たぶん、自分がいないとダメな方にいってしまう尽くすタイプの女性なのでしょうが、結局梨園の奥様におさまってしまうし、中途半端な人物像だと思ってしまいました。
あと、人間国宝のお許しが出て、喜久雄が歌舞伎に戻れるシーンがありましたが、それもなんか唐突な気がしました。だって、人間国宝なのにもう権力もなさそうだったし、「今さらなんで?」でした。原作ではその辺がもっと詳しく描かれてるのかもしれませんね。
まあ、でもこういう些細な違和感は歌舞伎のシーンの凄絶さで吹っ飛びましたので、それだけでも必見です!
ゲイがあるやないか。
監督「若手の人気俳優使って撮りたいんだが良い企画ないかな」
プロデューサー「ゲイがあるやないか」
のようなやり取りはここではなかったようでゲイの映画ではありませんでした。
監督とキャストで、すごく期待していた作品だけれど、「100年に1本の壮大な芸道映画」という、まさかの原作者による100年に1度くらいの仰天な賛辞にちょっと引いてしまったので観るのが遅くなった。(10年に1本というならわかりますよ。100年に1本て。映画自体の歴史がまだ130年なのに。さらばわが愛覇王別姫からでも30年。ホントに作家さんの言葉なのか疑ってしまう。)
元々、歌舞伎役者嫌いだし。
壮大な映画には違いなかった。
出だしと、お初徳兵衛の道行きに重ねた俊介と春江の道行きあたりは面白かったけれども、後半はいつ終わるのかいつ終わるのかと思いながら観ていた。
美形には違いないが吉沢亮と横浜流星の女形・着物姿での踊りよりも、マーガレット・クアリーがレオタード着けてエクソサイズしてる方がきれいだな、ワクワクするなぁて思っちゃう私にはこの映画を語る資格がないのかもしれませんが。
あんなに厳しい歌舞伎の世界なのに歌舞伎役者さんじゃない俳優さんたちが演じて大丈夫か、というより演じ切った吉沢亮と横浜流星がすごい。
そのすごさと尺の長さは、ファイナルレコニングのトム・クルーズのノースタントのアクションみたいで、称賛と感謝に値する。ただ作品としてはどうか。
クライマックスは音楽にごまかされた感はありましたが、映画を観た〜という満足感は充分味わえました。
吉沢亮と横浜流星と近松門左衛門はすごい。
(追記)
すごい映画だとは思いますが、絶賛のレビューがこれほど多いとは。
歌舞伎俳優ってそんなに偉いのか?
お能や狂言、文楽は伝統芸能だから文化伝承の意義から人間国宝って解るけど、歌舞伎ってもう好き勝手やってるじゃないか。横浜流星と吉沢亮はすごい俳優だけど、それでも歌舞伎の血筋でもない二人が映画とドラマの撮影の合間に稽古すれば素人にはわからないほど見事に演じられる歌舞伎って所詮は政治家と一緒で能力がなくても跡を継ぐことができるような世界じゃないか。(ホントは一番能力が必要な世界なのにね) と常々思っている私は、ヤクザに生まれて歌舞伎の世界に入って苦労して云々というお話よりも、歌舞伎の家に生まれた男(女でもよいね)がヤクザになって任侠の世界に生きるって話の方が感動したかもしれません。
横浜流星と吉沢亮はすごい俳優だな。
青年、壮年、女形を演じ分けるW主演の才能
今を時めく吉沢亮と横浜流星の新たな才能とオーラを見せつけられる3時間でした。
劇中劇とも言える「曾根崎心中」は圧巻の一言。
悪魔との取引を伏線回収してくれた娘役の女優さんは、わずかながら強い存在感でした。
ただ、喜久雄の激動の人生に感情移入しきるにはやや盛り込みすぎとも言える内容。
特に、喜久雄と俊介が再共演に至るまでがあっさり時間経過で流されてしまったのは勿体ない。
作品としては覇王別姫の「超えられない壁」にも思いを馳せたのでした…。
酷法と果報
世襲より、実力主義より、世襲が当たり前の世界での実力主義が最も酷だった。
俊介には血が、喜久雄には跡目を奪ってしまったことが、それぞれ呪いとなり役者に取り憑かれたか。
途中まではそうだっただろうが、最期はそうでなかったと思いたい。
演者のこの上ない表情芝居を、じっくりたっぷり見せてくれるため、心情の描写はとても丁寧。
しかし些か丁寧過ぎた気もする。
反面、描ききれてない部分はかなり多い。
春江が俊介を選んだ理由や竹野が助勢に回るきっかけ、藤駒とは籍を入れてたかすらも不明。
彰子に至っては想像する材料すらなくフェードアウト。
喜久雄と俊介の関係修復の流れも一切が省かれ、終盤の娘の愛憎は瀧内公美の芝居でギリギリ成り立ってた。
仇討ち失敗とかその時の相棒とかはその後にまったく関わらないので、あの辺は省いてよかったのでは。
とは言え、画面の切り取り方や抑えた演出、無音の使い方なんかは非常に巧みで見応えは抜群。
歌舞伎のことはまったく分からないが、素人目には所作も発声も違和感ゼロ。
役者の演技は文句のつけようもなく、吉沢亮と横浜流星は鬼気迫る熱演。
今年は何故か“予告に出ない女”化してる森七菜は、色気も醸す新境地。
田中泯は今まで好みでなかったが、声も高く口調も荒げないのに迫力と説得力を感じて素晴らしい。
黒川想矢と越山敬達も末恐ろしいほどの奥行きを見せた。
吉沢亮なら表情だけで伝えられるハズなので、最後の一言は完全に余計だった。
監督が役者や脚本や観客をもっと信用できていたら…そのぶん脇の補足が行き届いてたら…
名作だけど、傑作には半歩届きませんでした。
ハイカロリーにヤられる
映画そのものから受けた印象は★4つ。
ただ、約3時間観客をスクリーンに釘付けにしたその熱量に★0.5をオマケした。
役者が役者を演じ、カメラは彼らの半生を追いつつ、我々は劇中劇の観客として観劇する。
映画館の客席と歌舞伎座の舞台はシームレスに繋がっているのだ。
物語の軸は、歌舞伎の名家に身寄りもなく引き取られた若き才能を主人公に、その師匠の御曹司という、地位の約束されたライバルとの争い。
ありふれたスポ根の様に見えて、描かれる人生はそんなに簡単なものではない。
歌舞伎という「血脈」が絶対的な価値を持つ世界で、他者が名前を継ぐということの意味。
「血」による栄光と呪い。
その「血」を持たぬが故の主人公喜久雄の苦しみと孤独。
師匠半次郎は、名前に「一」の文字をもらった喜久雄を羨ましがる息子半也に言う。
「半次郎と半也で『一つ』やないか」
この時点では、喜久雄の才能を見込んだ半次郎の思いの様に見えるが、血縁のない喜久雄は、ここでは自分一人で生きていくしかないということを暗示していた。
それでもお互いに「役者として生きていく」ことしかできないライバル二人が、共に学び、遊び、助け合い、奪い合い、舞台に上がり続ける姿を、吉沢亮と横浜流星が熱演している。
本編スタート前に「ババンババンバンバンパイア」の予告が流れた。
私の中では吉沢亮って「そういう役者」というカテゴリーだったが、本作に登場する、まさに命を削って舞台に立つ彼の姿は私の知っている彼とはまったく違った。
(もちろんそもそも私の偏見なんだけど)
とにかく綺麗だし。
また、その師匠半次郎演ずる渡辺謙の、舞台に未練を残しながら、それでも枯れていく演技、そして慣習に反して喜久雄に名を継がせることへの複雑な胸中もまた、真に迫るものだった。
歌舞伎なんて私にはよく分からない芸能だと思っていたが、ここでは決して小難しいモノではないことが分かるし、全編通して、その熱量に圧倒される。
彼らの経験する栄華と凋落、ステージの上と舞台裏、とにかくものすごい熱量がスクリーンから溢れ出してくる。
上映時間は長い。決して「あっという間」とは思わない。しかし、スクリーンからのメッセージをたっぷり浴び続ける濃密な約3時間。
歌舞伎の演目もしっかり見せてくれる。その中身もちゃんと登場人物たちの境遇と重ねられている分、退屈もしない。ただ、疲れることは間違いない。
最後の「鷺姫」も素晴らしかった。
若い人が観たらどんな感想になるんだろう。
吉沢亮と横浜流星という若手トップの人気俳優が演じることで、若い観客もたくさんおられるはず。
今もなお続く、血縁絶対主義や女性は歌舞伎役者になれないという独自の文化などには、現代社会のモラルの中では違和感を感じる方もいるだろう。
その「良い」「悪い」はともかく、だからこそそこにしか生まれ得ないドラマを堪能して頂きたい。
見応え十分
原作未読
晴れ晴れした気持ちで見終わる映画ではない
日本の伝統芸能では脈々とある不条理の中で外から入った役者、生を受けた時に芸能を背負う事を義務付けられた役者のドロドロとした社会の中で役者の高みに到達する迄の物語ですが、
令和の時代でも名跡の格、役者経緯(歌舞伎の実子(生まれ順)、部屋子、弟子)、親等のの後ろ盾(大大名跡は例外)が物を言う世界で昔は顕著に出た時代
国宝にに登り詰めるには喜久雄の様に色々と捨てて演じる事にだけ突き詰めないとダメな世界だったのかな
同じ役者として近くで見てきたとはいえ吉沢(子供時代の黒川)さん、横浜(子供時代の越山)さんの名演があったからこの映画が成り立ってると思います。
周りの役者も重厚で終始重く客が息をつく時間が少ない映画で客の心をずっと揺さぶらせ続けます。
原作と吉田修一さんの作品を読んでないので小説の空気感は分かりませんが、
娯楽映画と言うよりは舞台演劇に映画のダイナミックさを与えた作品で2時間55分見続けるのは体力がが必要です(特に心、脳疲労は注意)
この頃の映画で2時間55分もの大作は無いですし見続ける内に頭が疲れた寝てしまう方がいると思います。
最後の言葉が物語としてはいい場面で役者として人生を全振りした喜久雄に手向ける言葉としていいとは思うけど………
最後に喜久雄が見てた風景(イメージ)も
私にはなんかモヤモヤが残る映画でしたが名作、傑作だと思うので星5です
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