国宝のレビュー・感想・評価
全2150件中、1501~1520件目を表示
二度にわたる「曽根崎心中」
あれこれ賛辞したいことは、多々ありますが、二度にわたる「曽根崎心中」について感想を綴りたいと思います。
映画の中盤、半二郎が怪我をして、代役に息子の俊介では無く、喜久雄(東一郎)を指名し、喜久雄が「曽根崎心中」のお初を演じることになります。半次郎から厳しい稽古をつけられ、舞台への不安から、俊介の血を渇望する喜久雄。「喜久ちゃんには芸があるやないか」と励ます俊介。
そして、いざ舞台が始まるや圧巻の演技を見せる喜久雄。とりわけ、縁の下に匿った徳兵衛に、お初が足を踏み鳴らしつつ、「死ぬる覚悟が聞きたい」と問い詰める姿は鬼気迫るものがあり、足を踏み鳴らす音がだん、だんと腹に響きました。
圧巻の演技を見せつけられた俊介は、いたたまれなくなり席を立ち、それに気づいた晴江も俊介を追いかけます。はじめは、何で俊介に、と解せなかったですが、喜久雄のためにうんと稼いで劇場を建ててやる、と夢を語らいでいた晴江にとって、目の前で完璧にお初を演じる喜久雄を見て、喜久雄は遥か遠くに行ってしまい、もはや自分がしてあげることは何も無いのだと悟ってしまったのかと、思い直しました。
その後、喜久雄、俊介は、それぞれ絶望に近い経験の後、また、二人揃って舞台に立つことが叶います。が、それも束の間、視力を失い吐血して亡くなった実父半次郎と同じ糖尿病を俊介も患い片足切断を余儀なくされます。これまで自分を守ってくれ、喜久雄から飲みたいと渇望された、歌舞伎の名門の血によって皮肉にも苦境に立たされることになります。
義足となった俊介は、「曽根崎心中」のお初を演りたいと喜久雄に(心中相手の)徳兵衛を演じてほしいと頼みます。
私が、劇中、最も心に刻まれたのは、この喜久雄、俊介による「曽根崎心中」でした。
俊介演じるお初が、義足をだん、だんと踏み鳴らし、縁の下に匿った徳兵衛に「死ぬる覚悟が聞きたい」と問い詰める姿は、あたかも俊介が自分自身に問うているかのように聞こえました。歌舞伎の解説では、徳兵衛はお初の足を刃物のように喉に当て(死ぬる覚悟に)同意を示すとのことですが、義足でない方の既に壊死して真黒になった俊介の生足を目の当たりにし、その腐臭漂う(であろう)足先に頬を寄せる徳兵衛(吉沢)の姿は、もう二度と舞台に立てないであろう俊介の片足を慈しんでいるとしか見えず、この一幕は映画史に残る名シ―ンだと思いました。
映画を鑑賞したこの日の午後は、時折、このシ―ンが蘇り、その度に涙が溢れてきて参りました。
他の方のレビューによると、原作ではこの二度目の「曽根崎心中」は、別の演目とのことで、脚本家奥寺さんなのか李監督の発想なのか、この2度にわたる「曽根崎心中」の舞台を取り入れたことは、彼らの実人生と相まって映画の中で見事に結実していたと思いました。
その後、映画は一気に、喜久雄が人間国宝になった後の話しになりますが、俊介の死後、看板役者として花井一門を担い、俊介と晴江の息子を跡継ぎとして仕立て上げていく喜久雄の人生は、語らずとも理解でき、ラストの人間国宝喜久雄による「鷺娘」に結実していました。その客席に俊介の母幸子は居らず、舞台を見つめる晴江の顔は、いまは熱心なファンのひとりとして喜久雄の芸を見守る穏やかな顔に見えました。
なお、ラストの「鷺娘」の音楽ついて、長唄と鳴物による伴奏だけでよく、踊り終盤の劇伴に否定的なコメントも目に止まりましたが、私はあの急峻にして圧倒的なボリュームの劇伴に痺れましたし、映画でしか成し得ない感動の高みに連れていってもらいました。グッジョブ!
歌舞伎をみたいと思う映画でした
映画は極道から始まるので、「んっ??」と私は間違った映画を見に来た?と思うんだ。
だけど、そういう極端なところから歌舞伎役者になりあがることもあるのかな?と、そういうあり得るかもしれない世界に入り込んでいく感じだった。
およそ3時間、スクリーン3はほぼ満席だったけど、この3時間、誰もトイレに立ち上がる人がいない、沈黙のシーンでさえ、誰も音を立てずにじっとすましシーンに集中。
たまたま日曜朝8時50分開始からの映画だったから、暇つぶし人間がいなかっただけなのかもしれない。
いやたぶん違う。 この映画をマジメに見たいと思う人間が集まったんだろうね。
スゴイなぁ。ほんと映画だけじゃなく、トータルで良かったなぁと思いました。
惜しい…
吉田修一さんの上下二巻の小説「国宝」を映画化。任侠の家に生まれながら、歌舞伎役者として芸の道に人生を捧げた男の激動の人生を描いた人間ドラマ。原作は800頁に及ぶ大作なので、上映時間も約3時間近い邦画としては珍しい大作であった。
みなさんの評価はすこぶる高い。映画館も月曜日の昼間というのに8割方埋まっていた。近頃なかなか無い人気ぶりである。映画コムでも4.3という高い評価。
でも私はそんなに高得点とは思わない。確かに大作だし、主演の吉沢亮くんも横浜流星くんも頑張っているのだが、ねえ。
ネタバレになるが、話は上方歌舞伎が舞台。吉沢くんは東京の出身、横浜くんは神奈川の出身。二人の関西弁はやはり関西人としては違和感が否めず、演技が臭くなった感じを覚えて、嘘くさく、そこも惜しかった。私の評価は★3.8。
願わくば関西出身の男前を使って、原作通りの筋立てで、Netflixかどこかで配信ドラマを作ってほしいね。
すごいものを見てしまった
すごいものを見てしまいました。
歌舞伎を見たことが一度もなくそもそも興味もなかったのでどうなんだろうと鑑賞前は思ったけれど、それはあまり関係なかった。
楽しい場面はほぼなくて全編を通じた重厚な空気にヤラれました。
一言でまとめれば吉沢亮演じる歌舞伎役者の半生を描いたもの。
血筋がモノを言う世界において彼は完全な外様で、それでも歌舞伎に魅せられて持ち前の才能プラス日々芸を磨くけれど、磨けども磨けども。
親代わりの渡辺謙がいなくなれば、どれほど芸で抜きんでようとも血は芸より強し。
そもそも渡辺謙だって内心はね、尽くしたところで結局はわが子の方が愛しいと死の際になって分かり。(あの時の吉沢亮の絶望の表情がよかった)
なにかで読んだのですが、歌舞伎の世襲は魅力の1つなんだとか。
あのお父さんの名前を息子が襲名して、そのまた息子が育って、ああ目元がお父さんそっくりね~立ち振る舞いも似てきたね~と、一門の成長を応援するのが楽しいんだそう。
個人的には、この少子化の時代に皇族の方々以外で世襲にこだわるってどうなのよという気もするけど。
継ぐものもない身軽な庶民の自分が言うのも余計なお世話ですが。
この映画を「すごいもの」にしている1つはなんといっても俳優陣の演技。
吉沢亮、よくこの役を引き受けたよ笑
もし他の作品とギャラが一緒だとしたら割に合わないわ。ギャラ、はずんであげて!笑
こういう「一芸に秀でた」役は難しいと思う。
上手な素人レベルでは失格でプロとしてその芸が染みついてるでも足りず観客がうなる域に仕上げなきゃならない。
歌舞伎のシーンは少なめにしてお茶を濁す手もあったろうに真っ向勝負してるし!
正直、歌舞伎を見たことのない私には上手なのかどうなのかもわからないのが本音だけど、見たことがないからこそ圧倒された。
みなさん演技達者な役者さんばかりで、安心して没頭できました。
ひとつ☆ー1なのは、横浜流星が死んじゃったこと。
渡辺謙が死ぬことは想定していたけれど、親子2代でかぁ。
これは好みの問題だけど、死ぬことで物語を展開させるのは私はあまり好きじゃない。
簡単な方法に逃げたな、と萎えてしまうので。
そしてそこから場面が変わって吉沢亮人間国宝!の流れはいささか唐突だったかな。
上映時間のシバリでしょうがなかったんでしょうけれど。
ともあれ、真摯に歌舞伎に精進して、それが報われてよかった。
芸者との間に当然のように隠し子がいて、そのへんもなんだかリアルでした。
3時間の長丁場、気持ちがダレたことはほぼなくくいいるように見入ったまま終わりました。
前日にはフロントラインを見て余韻に浸って、なかなかこの余韻は超えないだろうと思ったけれど、どちらがどちらを超える超えないではなくて、まったく違う味わいを持った作品で、連日良い映画が見られました。
ただ、もう一度見たいかと考えると、フロントラインは見たい!と即答できます。
国宝は自分に余裕のある時にまた見たい。向き合うのに体力のいる作品だと思いました。
探していた景色
壮絶、感動。
タイトルなし(ネタバレ)
ものすごい業を見た
でもわかってしまう、共感してしまう
一度魅入られたら切望してしまう気持ち、痛いくらい伝わった
ラストの一言が、本当に全てなんだと思った
"どうしてそこまでしてやるんだ?"と問われても、ただ、あの景色が見たい
それだけなんだと思う
歌舞伎は1ミリもわからなくても、演技に美しい舞に何度も涙がでた
「血をがぶがぶ飲みたいくらいだ」って言葉あたりからみるみる引き込まれて、涙が止まらなくて、そこからずっっと心を捕まれつづけてしまった
血は抗えない、でも才能にも抗えない
ラストが本当に本当に美しくて、2度の曽根崎心中もどちらも本当に心にくるものがあって、あの瞬間を味わえたこと、この体験がまた自分も奮い立たせる一つの火花になるんだと思う
凄かった
道を極める人の境地とは
唯一無二な作品
やっとレビュー書きます
これは観るべき映画でした。。。
映画で滅多に泣かないわたしですが、吉沢亮の演技で泣いた。しかも号泣。
ストーリーで泣くのはよくあることですが、演技で泣いた。こんなことは初めての体験で自分でも驚いている(わたしは横浜流星ファンである)
ヤクザの組長の息子の喜久雄。抗争で父を亡くし、歌舞伎役者の当主である渡辺謙に拾われて、歌舞伎の世界に飛び込むとこから始まる。渡辺謙の息子である横浜流星演じる俊介。将来を約束されている歌舞伎界のプリンス。俊介と喜久雄は同じ家で、同じ学校で、同じように稽古をして、良きライバルとして歌舞伎の芸を磨いていく。その姿がバチバチのライバル関係ではなく、お互いを認め合い、時には必要として、一緒になって成長するんです。おもってたのと違った。。。ここが私的、一番よかった、好きな点なんです。
歌舞伎が好きで、稽古はきついがそんなの全然苦じゃない、そんな2人の姿が眩しかった。
青春を捧げて歌舞伎に打ち込む。
そして、父渡辺謙の代役として選ばれた喜久雄。舞台に上がる直前に、震える手で化粧するシーン、ここはほんとに2人の演技に震えた。
そこから歯車が狂い出す。だけども、2人の関係性はそのまま。そして、お互いが苦しみながら時が立ち、最後の曽根崎心中。
俳優2人のとんでもない演技を観せられて、、、、、。
流星くんファンではあるものの、この映画は完全に吉沢亮だった。。。。
そしてエンディングがまた最高。
とんでもない映画を観てしまい、鑑賞から一週間。やっとの思いでここに記録を残すことにします。
芸か血か?
重厚なドラマに圧倒された。3時間という上映時間なので、集中力が保てるか自信がなかったが、喜久雄の波瀾万丈な人生に目が釘づけになった。天涯孤独な喜久雄は精進するしか道はなかったと思うが、やっぱり俊ぼんには甘さがあったのだと思う。春江の行動は理解を超えていたが、同情なのか、喜久雄を遠く感じたせいなのか私にはわからなかった。歌舞伎の世界は特殊なので、そこのところを少しでも垣間見させてくれたのは興味深かった。後ろ盾がないと役につくことができないともよく聞く。だから中村獅童は苦労したそうだし、香川照之も息子のために歌舞伎をやっているとも聞く。ビルの屋上で舞う喜久雄の絶望的な姿が見ていて辛かった。それにしても、歌舞伎役者ではない吉沢亮と横浜流星2人が、よくがんばったと思う。忙しい中、1年以上の準備期間を設けて、幼い頃から積み上げて身に着ける動作、舞、しかも女形だ。いろいろな歌舞伎役者が絶賛しているところを見ると、そんなに変ではなかったのかなと思う。2人には剣道と空手の素養があったから、根性で励んだのかしらん? 関係ないか?
役者それぞれの存在感
歌舞伎がわからなくても大丈夫!
藤娘や鷺娘の早着替えのシーンや、有名処の連獅子・曽根崎心中のシーンは歌舞伎がわからない人でも楽しめると思います!
特に藤娘や鷺娘の早着替えは、ただでさえおーー!!っとなるのに、この映画は視点がとても良いですよね!
役を演じている人側から見る舞台が見れて、とても面白かったです。
可憐でかわいらしい女形と、艶やかであやうい女形なら貴方はどちらが良いですか?!
どちらも良いですね!!
何だか無性にシネマ歌舞伎が見たくなってきました…纏めて上映してくれないかしら。
血統書付きコーギーと保護された野良狐
コーギーは王国でも愛された由緒ある犬種というイメージがありますが、遺伝的に椎間板ヘルニアなどになりやすいと聞いたことがあります
また特徴としてしっぽがないことが挙げられますが
もともとは牧羊犬であり、衛生面や安全面、そして「狩猟の際に狐と間違えて撃たれないように」という理由でしっぽを切ってしまうんですよね
そんな狐
とくに保護された人に懐いた狐、みたことありますか?
そりゃもうベリーキュート、キュウキュウ鳴いてしっぽふるふる
コーギーと見間違うか、それ以上の愛くるしさ
ところが欧米でのfoxは”狡猾さ”を意味する言葉だったり、日本でも虎の威を借る狐なんていいますよね
余談はさておき
本映画の印象的なシーンとして
喜久雄が願うことなら俊介の血をガブガブ飲みたいわと涙ながら訴える場面があります
(吉沢亮がババンババンバンバンパイアで吸血鬼役をやるので若干ノイズが走りますがBLでは全くないです笑)
そんな血を求め、芸を極める話。
そういえば
寺島しのぶと吉沢亮は映画さくらで親子役をされていて、本作も親子ではないが近い関係での再共演
さくらでも感じたが
寺島しのぶの演じる母親はしみじみと良いなあ
俊介へのありのままの愛情とか、喜久雄への同情と冷酷さをリアルに演じていて、二人の境遇のコントラストをグッと深める効果があると思った
とても面白い映画でした
丹念に丁寧に紡がれた一代記
歌舞伎の世界の架空の人物の一代記を三時間かけて丁寧過ぎるくらい丹念に描き切った良作
しかし自分には感情移入しづらくて感動ポイントを見い出しずらい映画だった
一代記を時系列で静かに傍観してゆく流れの中、ハラハラドキドキするスペクタクル要素が自分にはやや不足気味で少し間延びしたのは否めない
神田伯山師匠の講談で聴いた江戸時代中期、血筋がものを言う歌舞伎界で、裸一貫から大スターに登りつめた伝説の歌舞伎役者・初代中村仲蔵のように逆境をはねのけ、自身の才覚と努力だけでどん底から這い上がった、わかりやすい物語にはせず
芸道の為に犠牲になる男女の機微をしっかりと描き出していた
ただ、自分には残念ながら最後まで激しく感情を揺さぶられることはなかったのが正直な感想
全2150件中、1501~1520件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。