国宝のレビュー・感想・評価
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何がこの映画を特異にしているか
2回目の鑑賞(前回は8月1日)。1回目は主人公の喜久雄に感情移入していたようで、最初の道成寺で泣き終えて、そのあとはやや感動の押し売りの感がしたが、今回はシュン目線でも観れたせいだなのか、後半も泣けた。
>>『国宝』は若いアイドル的な俳優が主演とあって、若い観客層を動員している
そういう地域もあるらしい。わたしが見た回は2回とも間違いなく50代以上がほとんどだった。(ブログの書き手にとっては50代は若いんだろ、との忠告も頂いた。確かに。)
嘘つきや裏切り者に罰があって観る側は満足するわけで、裏切りがあるとすれば万菊と春江になる。2人への罰を望むむきはまずないだろう。この作品の何が観客に満足を(満たされない現実生活の救いとなるものを)与えているか。そこを考えるときに、ワイドショーの観客インタビューにあるような映像の美しさとか役者の芸達者ぶりということを書くつもりはない。
自分が役を獲るために、息子に役を与える為に、権謀術数をめぐらしライバルを蹴落とすことがない。登場人物にさまざまな障害が降りかかるが、陥穽にはまるわけではない。おかみさんは菊ちゃんをキタナイと言うが息子に対してもキタナイと言う。
この映画は、嘘も策略も皆無ながら観客を飽きさせないという意味で、清廉潔白だと言えるだろう。「てな感じで言ったら(怒ったら)オモロいんやけどな」の台詞のとおりに、僻むにしてもありきたりな僻みはない。勧善懲悪を目指すドラマティックな展開と一線を画している物語の清浄さが多くの人を魅了して飽きさせないモトなのかもしれないと思った。
人生、決める瞬間や変わる瞬間が 何度もあるんだという学びでした。 ...
血と芸と犠牲と惚れと…
跡取りとすべきなのは血か芸か?
母性で考えると圧倒的に血一択。
父は死ぬ間際に息子の名前を連呼していたので、やはり本音では血が本命であるものの、糖尿病を患い敢えて、血を選ばなかったのか?
万菊も血が本命ではあるが、糖尿病の遺伝を見越して3代目を呼び戻したのか?
物事を極める時、周りの人は犠牲になっても仕方ないのか?
圧倒的に極める時、犠牲になった人さえ惚れてしまうのか?
極めたものにしか見えない景色がここにある。
人生こそ見世物のようで
原作未読のまま、ようやく観た。
原作者と監督のこのコンビは「悪人」や「怒り」いらい信頼している。
芸道にまい進する主人公の、憑りつかれたような尋常ならざる生き様を追う、ともとれるが、主人公はそもそももう帰るところがないのだ。退路を断たれているのなら何があろうと進むしかなく、様が鬼気迫るものだとしてしかるべしと観た。
その道が芸道という特殊さが本編の華であり、映像美も相まってヒットにはうなずくほかない。
その二転三転するような道筋はのっけから観る者にとって非日常の連続で、劇中劇形式であればこそ作中の現実さえ芝居の一部のように見え、いやこれは主人公にとっての現実なのだと思えばまるで主人公の人生こそ見世物のようで、翻弄されるままの彼はまさに観客を沸かせる悲壮が滑稽なピエロ、そう感じられてならなかった。同時に、一部始終が芝居のシナリオかと疑うようだった市川猿之助さんの事件を思いだしている。
多くの人の前に立ち、惹きつけ、とてつもないプレッシャーの中でこなす時、何か尋常ならざる領域を出入りするのか。深淵をのぞくのか。常人には理解できない行動のとっかかりを、もしかしたらありうるかもしれない、という感覚を作品の中に見たような気がしている。
年齢ごとに役者が変わると途中、すっ飛んだ風に感じることが多い中、本作はうまくスライドしていて違和感がなかった。年を追うごとに全員、老けてゆくのだが、時間経過も分かりながらわざとらしくなくて、これまたよい。
もし2度目見たなら、冒頭の学生服の主人公二人にこれからのことを思い、泣いてしまうかもしれない。
血の話、実力の話、ない物ねだりは合わせ鏡が切ない。
和楽器と重なる劇中BGMの効果も、歌舞伎を極力親しみやすく変えていたと思う。
これで若い人も歌舞伎に興味を持ってくれたならいいのにな。
原作が良すぎる分どうしても…
原作を読む前に一回鑑賞をし、原作を読んでから二回目の鑑賞をしたレビューになります。
どうしても、モヤモヤが消えないのが正直な所です。やっぱり徳次がいない、彰子がいなくなる、客席との境界が消える、喜久雄が俊介のような時期を過ごし、歌舞伎から離れているような描写がある、そこから復帰、足の切断までが早すぎる、喜久雄の辿り着いた先が違うなど、原作との相違点が多すぎてしまい、作品に没入出来ませんでした。
やっぱりNetflixなど、資金を投じてドラマで見たい、それか原作のように上下で分けて欲しかったです。徳次がいたから喜久雄はやっていけていましたし、彰子さんは喜久雄を支え続けていますし、何なら綾乃との関係も無くなっていません。原作のネタバレになるので控えますが、喜久雄はもっと歌舞伎に身を捧げて、ずっと躍り続けます。それが無くなってしまっているのが一番寂しかったです。
色々と書きましたが、それでも歌舞伎のシーンは素晴らしいです。徳次のセリフも、他のキャラが言っていたり、暖簾にも徳次の名前があったりということはありましたし、三時間で徳次は無理だったんだろうなとは思いました。
本当に演技なりセットなり音楽なりと、様々な熱量が素晴らしい分、脚本が気になってしまうというのが正直な今の感想です。
ネットよりもリアル
人生の縮図
1.運命と犠牲
人には変えることのできない運命があるが、抗うことはできる。
ただし、何かを得るには何かを犠牲にしなければならないこと。
喜久雄は家族を捨てる選択をするが、国宝という名誉を受け取ることができた。
その後、娘と再会。
娘は、父としては認めないが、歌舞伎役者としては認めた。
倫理的に家族を捨てることは間違っているが、喜久雄がとった選択は間違っていなかったとも言える。人生において、あなたは何を選びとりますか?と問われているようだった。
2.友情
喜久雄と俊介は意気投合するも、互いに嫉妬をする。
喜久雄→俊介の血筋、家族の存在
俊介→喜久雄の演技の才能
途中は蹴落とすようなシーンもあったが、最後にまた同じ舞台に立つことができた。
互いに憎むこともありながら、リスペクト故と感じた。
3.圧倒的演技力
吉沢亮と横浜流星の作り込みに驚嘆。
どれだけ練習したんだろうかと思うほどの圧倒的演技力だった。
もう一度観たいと思える良作。
監督の勝利
平日朝8:40からの回なのにほぼ満席。公開から二月経つのに!
吉沢亮の隣室侵入事件があれくらいで済んで良かった。暴れて暴行事件からの逮捕とかになってたらこの素晴らしい映画がお蔵入りになってたかも。
吉沢亮と横浜流星の演技は本当に自身最高というだけありました。
でも一番はやっぱり監督。原作はものすごく面白いけど、どうしても馴染みのない歌舞伎の世界をここまで胸にせまる感動的な芸能として見せてくれたことに感謝。
この日本の伝統的芸能世界を画いてくれた監督が在日三世の李相日監督。
この間の選挙で話題になった極右政党の方々はこの映画をどう評価してるんだろう?
吉沢亮に圧倒され森七菜ちゃんの可愛いさに参りました
吉田修一さんの小説は苦手ですが、李相日監督作品好きで期待していました。
期待以上!「悪人」や「怒り」のような社考えさせられる作品でなないのですが、主演二人の歌舞伎シーンに終始圧倒されました。鑑賞後しばらく動けなかったくらい(笑)
吉沢亮の屋上シーン、俊坊の血がほしいと言われ絶句するも涙を流しながら紅を塗ってあげる横浜流星。田中泯の底がなく吸い込まれそうな眼、高畑充希の悟ったような表情、寺島しのぶの内なる怒り、子役二人のまっすぐな瞳、どのシーンも圧倒され、脳裏に焼き付きました。しかし森七菜ちゃんは可愛いですね!フロントラインから思いましたが、あんなに小柄で可愛い小顔なのに存在感が半端ないですね。可愛いのにナチュラルで、作品に溶け込んでいます。秒速5センチメートルが楽しみです。
もう一回観にいこうと思います!!
熱?圧?
原作未読。
画面から演者の熱と言うか、圧を凄い感じる。ほぼ、狂気と言うのを吉沢亮が発してる。
ただ、原作未読なので何とも言えないんだが、コレ凄い原作カットしてるんだろうなぁ。
俊介と春江の駆け落ち(で良いのか?)のくだり、俊介が逃げ出すのは分かるんだが、春江はなんで?でっ、何年の経って帰って来たら、即復帰出来る。多分、この辺の二人と喜久雄の葛藤って(原作で)凄い大事に書かれてるんじゃないかなぁ。
しかも、半二郎が死んだ途端に、喜久雄が干されるって。いや、ホンマに血の世界だよなぁ。
人間国宝の万菊が木賃宿みたいな所に住んでるって・・・・・この人も血の外の人だっけ?
でっ、その人の前で踊ったら、突然に(彰子利用した事)許されて復帰。
高畑充希も、えっ、その役ですか?って感じがする。嫌いじゃないし、むしろ好きな役者だけど、その役ですか?
寺島しのぶはなんか・・・・ガチ過ぎて怖い。
倒錯的な色気
ようやく観ました
納得の高評価 ストーリーはあえて単調で良い
公開から2ヶ月以上経ってしまったが、映画館で鑑賞できて本当に良かった。配信されてからでいいと思っている人は、できれば映画館の音響と大きなスクリーンで観てほしい。歌舞伎を観るという観点からも、観客席に近い環境が大事だと思う。
一見、「わかる人にはわかる」系の映画かと思うが、意外にも理解しやすく、一般の視聴者でも場面ごとのテーマを感じ、考察しやすいのも大ヒットの理由の一つと考える。それが物語に空白がないとか、ストーリーが単調だという一定の低評価にも影響しているが、個人的には歌舞伎という馴染みがなく難しい題材だからこそ、良いバランスだと考えている。
また色も重要なテーマの一つで、真っ白な雪の庭の中、真っ赤な鮮血が流れる父が撃たれるシーンと、女方の真っ白な肌と真っ赤な唇・隈取はリンクしている。父が撃たれた悲しみを感じながらも、あの光景は喜久雄にとって最も鮮烈な記憶であり、どこか美しさも感じていたのではないだろうか。
血統に守られ苦しめられた俊介についてや、喜久雄に打ちのめされた俊介と春江が共鳴し合ったこと、二代目半二郎の役者としてと父としての苦悩、女性たちを敢えて深く描かないこと、など多く考察されている点については、概ね他の人の意見に同意する。
ただ、前述したようにストーリーが単調だという意見に対しては、ドロドロした人間模様や騙し合い、あっと驚く展開は作品をチープにしてしまうと思い同意しかねる。逆に登場人物全員が悪意を持って行動していないのが、この作品の長所だと思う。
歌舞伎に対しての知見は全くないことを最初に断っておくが、吉沢亮と横浜流星、また子役の2人の演技は圧巻だった。
吉沢亮さん、ただの超絶イケメンだと思っててごめんなさい。万菊さんの言う通り、顔があまりにも良すぎると芸を見てもらえないこともあるんですね。
そういえば、喜久雄(キクオ)と万菊(マンギク)の音が共通していることは何か意味があるのか。少ない登場人物の中、音を重ねず名づける方法はいくらでもあると思うが...
魅入られし者
凄かった。
吉沢亮は天才なのか?
素人目には全くもって歌舞伎役者のしかも女形の逸材に見える。首の角度から指先に至るまで、全身に纏う所作事に見事なまでに隙がない。
横浜氏もいい仕事してた。
最後の曽根崎心中には家系の血統を感じた程で、才能でも凌駕できない何かを見たような気にもなった。
晩年の白虎を演じた謙さんは仲代さんを彷彿とさせるし…なんか色々凄まじかった。
それを演出した李監督の凄まじさよ…。
魂でも焼き付けろと言わんばかりの構成だった。
3時間の長丁場なれど、生き様を描くわけだからそれでも足りないぐらいであろう。
世襲制の歌舞伎界に、稀有な才能を有する逸材が取り込まれていく。花井家の御曹司とそこに引き取られた養子の話だ。よく出来てた。
御曹司の劣等感も、養子の狼狽も。
節目の曽根崎心中で魅せた吉沢氏…アレを作り上げるのにどれ程の稽古をしたのだろう。役作りって言葉を当てるのが申し訳ない程で、それこそ劇中にもあったけど骨格から変えていったと言われても納得してしまう。
曽根崎の初演…そりゃ御曹司も居た堪れなくなるわ。
舞台に立つ吉沢氏は、役に必要なもの以外何も見えてないくらいの没入感があった。
海外の役者のソレとは違い、内に内に掘り進めるような没入感だった。
2人とも挫折と葛藤を繰り返すも歌舞伎から離れようとはしない。御曹司は離れられないような部分もあったけど、吉沢氏の方はしがみついてるようでもあった。
ストイックって言葉を使いはするが、そんな類いのものではなく、何かを我慢するのがストイックだとは思うのだけど、それしか要らないはストイックとは言わないんじゃないかと思う。
他に欲しいものがない。
「神様に頼んだんやない。悪魔と約束したんや」
抜群に的を得た台詞に思う。
またこの2人が仲が良いのが小憎らしい。
名代を奪われるって「死」と同義な世界だろうとも思うのだ。が、飲み込む。
吉沢氏に朱を差す横浜氏は…どんだけいい奴なんだと思う。押し潰されそうな吉沢氏から始まるこのシークエンスはとてもお気に入りだ。
作中の時間はどんどん過ぎて、吉沢氏が人間国宝に認定される。ホントに見事だなぁと思うのだけど、吉沢氏の衣装を直すカメラマンが娘さんならいいのになぁなんて事を思う。彼に触れる指先がなんかとても優しかった。そしたら、娘さんだった。
「あんたの事、お父ちゃんやと思た事は一度もない。色んな人傷つけて何が人間国宝や。せやけど、そんなあんたの舞台を見て気がついたら無茶苦茶拍手してた。お父ちゃん、ほんまに日本一の役者にならはったんやなあ」
こんな台詞が、楽屋から舞台袖にスタンバる吉沢氏とカットバックされる。
「隔世」って言葉を思い出した。
仏教用語だったか、現世とは違う冥界だったり幽界だったりを差す言葉だったか、また神の視点から見る現世を示す言葉だったか定かではないし、こんな漢字だったかも覚えてない「幽世」こんな感じだったかもしれない。
が、舞台に向かう役者の心情ととてもリンクしてて、舞台の上には一切を持ち込まない覚悟なのか礼儀なのか、そんなものを感じてた。
国宝と呼ばれるに相応しい佇まいをその姿から感じてた。
いや、ホントに凄かった。
題材が題材だけに、説得力が必要不可欠で、踊りもそうだし、発声もそうだし、何より芝居が誤魔化せない。
舞台であるならばUPがないからソレを表現する事は出来る。が、客に目の奥まで覗き込まれるようなアングルでは逃げようがない。
逃げる気も更々無いんだろうけど、地力が問われるというか、真価を量られるというか…今後の役者人生を左右される程の現場ではなかったのだろうか。
今までJOKERを演じたホワキン・フェニックスが鳥肌立つくらい圧巻だったんだけど、日本の芸能界にもそこに並び立つ逸材がいたと思えたわ。
あと…田中泯さんの悍ましさが群を抜いてて、彼1人で歌舞伎界の因習だったり系譜だったりを一身に背負ってて、闇が深かったわー。
やー、あてられっぱなしだったなぁ。
最後のインタビューん時の吉沢氏の肩幅とか、もっと撫で肩になってる方もいるけれど骨格を制御しなきゃ出来ない姿だったもんなあ…凄かったです。
吉沢亮さんや横浜流星さんの演技に圧倒されました。
3時間という長い時間が、あっという間に過ぎ終始見入ってしまいました。特に歌舞伎の舞台での演技が、本物の歌舞伎役者さんかと思うほどでした。
内容は小説の本筋とおおよそ同じなのですが、映画の中での俊介の母の性格、中間部分の喜久雄が一般の人から受ける暴力シーンなど小説にはない部分に少し残念な感想を持ちました。また、その暴力のきっかけとなる事柄については、ラストの喜久雄に関わる大切な部分となる事柄だと思っていたのであの様な形のシーンに変えられたのは本当に残念な感想を持ちました。
それでも、全体的にとても素晴らしく映画のラストでの喜久雄の舞いは見ているだけで涙が出そうなくらい感動しました。
時間があれば、もう一度劇場に観に行くつもりです。
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