国宝のレビュー・感想・評価
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【”積恋雪関扉、二人道成寺。そして曽根崎心中、鷺娘。”任侠一家に生まれながら歌舞伎に魅了された男と名門の家に生まれた男の歌舞伎と心中した如き人生を描いた作品。吉沢亮さんの女形の舞は壮絶な美しさです。】
■任侠一家に生まれた喜久雄(長じてからは、吉沢亮)は組長の父(永瀬正敏)を、正月の宴で自分が”関の扉(積恋雪扉)”を舞った後に、討ち入りで射殺される。
その後、上方歌舞伎の名門の当主、花井半二郎(渡辺謙)の部屋弟子になり、歌舞伎役者の道を歩み出す。半二郎の鬼の様な指導の元、喜久雄と半二郎の息子、俊介(長じてからは、横浜流星)と芸を磨く日々。
喜久雄は東一郎を襲名し、俊介は半弥を襲名し、女形コンビで”二人道成寺”で人気を博す。だが、半二郎は糖尿病の悪化で襲名披露の際に吐血し、入院。半二郎が代役に息子半弥ではなく、東一郎を指名した事から、半二郎の妻(寺島しのぶ)の怒りは炸裂し、喜久雄と俊介の関係もこじれて行く。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作は、2時間55分のマアマア長尺な作品だが、二人の男と複数の女達の30年の関係性を描いているために、脳内フル回転で観たためか、体感2時間であったし、結構疲れた。
疲れた理由は、喜久雄と俊介に絡む女性が複数居て、描き方が少し粗い気がしたからである。
■だが、俊介を演じた横浜流星と、特に喜久雄を演じた吉沢亮の白粉を首筋から上に刷毛で塗した女形の所作と舞は見応え充分であり、且つ二人の毀誉褒貶の人生の描き方が凄く、魅入られたのである。
更に言えば、二人の毀誉褒貶の人生の節目節目に、”積恋雪関扉”、”二人道成寺”、”曽根崎心中”、”鷺娘”といった歌舞伎の有名な演目が、彼らの人生を表したかの如く嵌められている、作品構成の秀逸さも、凄いのである。
俊介は名門の跡継ぎながら喜久雄の芸には劣るが故に(と言っても、今作でも頻繁に舞台になる京都の南座で数度歌舞伎を見ただけの素人には、違い分からず・・。)喜久雄の晴れ姿を観た俊介は長きに亘り姿を消し、喜久雄も又、舞妓(三上愛)との関係や、他の一門の統領の娘(森七菜)と良い仲になった事と、背中に彫った刺青が暴露されたスキャンダルにより、歌舞伎の表舞台から姿を消し、ドサ回りの日々を送るのである。
■花井半二郎の死により歌舞伎界に戻った俊介は、再び花形になり、喜久雄はヒラの役者として、歌舞伎界に戻るのである。
俊介は父と同じく、糖尿病のために片足を失い、残った一本の足と義足で”曽根崎心中”で再び共演するシーンは凄い。俊介の残った片足の足先も壊疽しつつある中、”お初”を演じる、その足先を全身で支える喜久雄の姿・・。
・劇中、二度出演する人間国宝の女形を演じた田中泯さんの演技は凄かった。一度目は人間国宝として堂々たる女形の声音と所作が、二度目は零落れてボロイアパートで煎餅布団に横たわりながらも”ここは、綺麗なモノが無いでしょう。だから、ホッとするのよ・・。”と呟く姿は、今作の陰のMVPだと思ったな。人間国宝の称号の光と影を表した人物だと思ったな。
・そして、喜久雄と俊介が出会って30年が経ち、俊介はもういない。
喜久雄は人間国宝に史上最短で成り、その記念の舞を披露をする前に彼の写真を撮る女性カメラマン(瀧内公美)。彼女は、喜久雄が若い頃に慕って来た舞妓の娘であり”貴方は、悪魔だわ。周囲の数々の人達を足場にしてのし上がって・・。けれども、貴方の舞には引き込まれるのよ・・。”と呟き、涙を流すのである。
<人間国宝になった喜久雄こと、東一郎は再び舞台下の”奈落”から華やかな舞台にせりあがり、紙吹雪の舞う中、一人”鷺娘”を舞い、亡き父と同じように雪の中で静に横になり、息絶えるのである。
今作は、任侠一家に生まれながら歌舞伎に魅了された男と名門の家に生まれた息子の、歌舞伎と心中した如き人生を描いた作品なのである。>
■付記
多くの作品で、歌舞伎をテーマにした秀でた耽美的世界を描き、私に届けてくれた故赤江獏さんに感謝いたします。
ちょっと震えた
凄すぎるものを目の当たりにした
役者の凄さに圧倒されまくり
どうしても初日に観たいため、
時間をこじ開け、映画館に足を
運ぶ。
役者の凄さに圧倒されまくり。
歌舞伎役者の喜久雄と俊介に。
役を演じる吉沢亮と横浜流星に。
芸に生きる厳しさ、喜び、怒り、
哀しみ、苦しみ、妬み、嫉み、
そして別れを渾身の力で魅せて
くれる。
初めての大舞台での二人道成寺
には緊張感がこちらまで伝わり、
拳を握りしめて見入ってしまい
じわじわと胸が熱くなる。
喜久雄の曽根崎心中、切々と語
るお初の心情が沁みてくる名場
面、さらに拳に力が入る。
極めつけは、左脚の切断をもの
ともせずに曽根崎心中のお初を
演じた俊介と、徳兵衛を買って
出て演じた喜久雄。
鬼気迫る迫真の演技は、スクリ
ーン越しでなく、舞台を間近に
観ているかのような錯覚に陥り、
観客と一緒に拍手しそうになる。
くどいようだが、役者の凄さに
圧倒されまくり。
3時間があっという間。
この臨場感をぜひ劇場で味わう
ことをおすすめする。
2533
古典芸能に限った話ではなく
大作です。圧倒されました。
本作は歌舞伎の世界が舞台ではありますが、
何かに懸命に打ち込んで「悪魔と取引してでも」何事かを成し遂げたいと願うことは
誰にもあるのではないか。
その気持ちになってみると、
不遇の時期の喜久雄が目指すものを見失って狂乱するシーンは
胸に迫ってくるものがありました。
吉沢亮さん、素晴らしい演技でした。
原作を読んでから(というか、某サービスで尾上菊之助さんによる朗読で鑑賞して=これがまた凄い完成度でした)観たのですが
作中で2度演じられる「曽根崎心中」の扱いが映画ならではの構成になっていて、
これには大きな拍手を送りたいです。
横浜流星さんのお初、泣けました。
惜しむらくは、映画の尺に収めるために削られてしまった
原作で描かれたチャーミングな登場人物のことです。
長崎で喜久雄ぼっちゃんのお供役だった徳次が
放浪の果てにシンガポールで大成功して凱旋する様子は、
映像で見てみたかったなあ~~~。
「百年に一本の壮大な芸道映画」
決してオーバーな表現ではないと思います。ぜひ劇場でご鑑賞を。
あなうつくしや、あなおそろしや
吉田修一原作、李相日監督とくればそれだけで「観たい!」と思えるというのに、主演は吉沢亮。これで期待するなと言う方が無理だ。
期待しすぎるとむしろ物足りなく思えてしまうことも多いのだが、「国宝」は期待を超えて余りある最高の映画だった。
まず、歌舞伎のシーン全てが良い。
「国宝」を成立させるために、絶対に歌舞伎のシーンは外せないのだが、その全てで想像を超える演技を見せてもらった。
まだ役者になる前である喜久雄の「関の扉」。
歌舞伎役者の家に生まれた運命を内包する「連獅子」。
喜久雄と俊介が二人切磋琢磨して踊る「二人藤娘」「二人道成寺」。
芸の道に生きる覚悟と重なる「曽根崎心中」。
ともに人間国宝である万菊と喜久雄の「鷺娘」。
特に序盤、万菊の「鷺娘」で圧倒的存在感に打ちのめされた。楽屋のシーンが万菊の初登場シーンなのだが、後々まで田中泯だと気づかなかったくらい、所作からして徹底的に「小野川万菊」という稀代の女形として存在しているのである。
手まねき一つで「女」を感じさせる柔らかさ。作中で三浦貴大演じる竹本のセリフに「あの婆さん、いや爺さんか」というのがあるが、本当に性別を超越して存在しているように思われた。
次に、映画の圧が凄い。
李相日監督の映画は、人物にどんどん寄っていってその人生に深く切り込んでいく。それがカメラワークにも出ていて、今回アップのショットがとても多かった。
化粧や衣装の下に隠された「役者」を撮る、という強烈な意志がショットに表れていたのだと思う。
目の潤み、息遣い、唇の震え。そういうものに、喜久雄や俊介の生き様を感じさせる。
それもまた演技のはずなのに、ギリギリを攻めて剥ぎ取り過ぎない絶妙な塩梅で表現されている。
約3時間、長丁場の映画であるのに、全く長さを感じさせず、むしろ矢継ぎ早に展開していって喜久雄の人生が芸事に圧縮され、何もかもを犠牲に昇り詰めた先に、誰も見たことのないものを求める美しさと恐ろしさ、恍惚と孤独に胸を打たれた。
とにかく、演技陣の力がこの作品を名作足らしめていたと思う。
主演の吉沢亮は言うに及ばず、俊介を演じた横浜流星は血の残酷さを様々な面で見せてくれた。俊介のお初が、俊介自身と重なる。歌舞伎と、役者と添い遂げるには「死ぬしかない」と。言わば俊介の心中相手は歌舞伎だったのかもしれない、と思わせるに充分だったと思う。
歌舞伎監修としても参加されている中村鴈治郎さんのインタビューで、「歌舞伎に興味を持って頂けたら」というのがあったが、観終わって一番最初に思ったのが「歌舞伎観に行きて〜!」であったことを考えると、鴈治郎さんの思いは確実に届いている。
少なくとも私には。
役者魂を間近で感じられる大画面で堪能したい、美しくも物悲しい最高の一本だ。
"ただのエンタメでは済まされない"
塞翁が馬
映画の告知で地上波が賑わってましたね
公開日を楽しみに待っていました。
人生山あり谷あり
努力なくして頂点に立つことができる
人はいるのでしょうか?
限られた人にしか
与えられない場所
世襲で、将来が決まっているか?
と、思わせて……
努力の天才が
跡取りとして師匠の名前を継承し
更に悪魔と契約し
将来安泰かと思わせて
身から出たサビや
過去を掘り返され奈落へ落ち
また這い上がる。
途中、生き残る事ができれば
何とかなると
思ってしまいました。
吉沢亮さん、横浜流星さん
渡辺謙さん、三浦貴大さん
素晴らしい役者さんばかり
寺島しのぶさんがいると
なんかあるんじゃないか?
更に映画が面白くなる。
ドキュメンタリーを見てるような
感覚になりました
是非映画館で見てください
得体の知れない尊いモノ
…血筋
…女形歌舞伎
喜久雄(吉沢亮)は
花井半次郎(渡辺謙)の息子
俊介(横浜流星)の血を飲みたいと
言っていたほど憧れる血筋
世襲として受け継がれる世界である
喜久雄は役者として踊りは一級品
半二郎に見出だされ三代目に
襲名もできたが…
吉沢亮の端麗な顔だちが女形が似合う
襲名されても血筋が一番の歌舞伎の世界で
生きていくのは並み大抵なことではなく
何をもってここで踊り続けるのか
"国宝"となってからもわからない
静まった
舞台の上から"まばゆい"光を浴びながら
光の奥を見つめる半二郎
舞台に立って"極"めようとする
人だけが見ることができる"光"
人生をかけて芸に生きた証し
三時間近い作品にも関わらず
吉沢亮、横浜流星のそれぞれの苦悩
と女形の見事な演技
他、渡辺謙さん
俳優さんたちの見応えある
重厚な時間でした
早着替えはテンションが上がります
吉沢亮の顔の表情と踊りに…感服です
古さを思いっきり感じてしまう作品ですが・・・
ぱっと見、やっぱ古くさッ!っていう印象で、長いし、ヤバイ持つかなーなんて危惧したんですが、内容も質も見事な作品で、想像通りそのまんまで特に好きでもない古典芸能のお話しド直球であったのに、かなり見入って感動致しました。劇中劇ありきだったので、こんな尺になってしまうのも納得できたし、むしろ素晴らしくコンパクトにまとめたものだと感心すら覚えます。
特に歌舞伎を賛美する作品でもなく、むしろ自分が違和感や退屈を覚えるところをそのまんま表現していたように感じました。苦手な分野をストレートに描いていたので、嫌気を覚えてしまうのかと一瞬危惧したのですが、特殊環境下での人間模様を実に巧みに描いていて、それにまんまと嵌まってしまったというところです。
歌舞伎という舞台劇を非常に尊重しつつも、あくまで映像作品だというポリシーを感じるカメラワークや編集が非常に良くて、普段感じることがない歌舞伎への華やかさやダイナミックさなどを感じることができて、劇そのものにも感情移入することができた気がします。だからといって歌舞伎への興味とか思考は強まることはありません。あくまでこの映画が素晴らしいと本当に感じた次第です。
それでも彼は舞台に立つ
その舞台に立つことで自分自身を表現し、自分を輝かせることが出来る
自己表現であり己という存在証明であり喜びであると同時にそこには深い業とそれゆえの責任、そして計り知れないほどの犠牲が潜んでいる
人間国宝、そう称され讃えられる裏でどれだけの血の滲む覚悟が潜んでいるのか
そしてどれだけの狂気を持たねばならないのか
それを妥協なく丁寧に丹念に描ききった一作だった
主演の2人は経験もない中舞伎を演じる ということで、ともすれば作品全体の説得力すら失いかねないにも関わらず、果敢にその重圧に挑み見事な表現力を見せていた
細部に至るまで表現されたビジュアルや音響の重厚さ、見事な迫力と繊細さで映し出すカメラワークとスタッフ陣の洗練された技術も作品の価値を二重も三重も引き立てている
洋画においては教皇選挙が重厚かつ深いテーマ性と一片の隙もない徹底的な美術に対する拘りを見せつけ映画というものの価値を改めて見せつけているが、今作もまた日本に根付く文化を掘り下げることで邦画という角度から映画とは、劇場作品の価値とは というものを示してみせたと思う
本年度ベスト級であろう邦画作品になることは間違いない
歌舞伎は見たことないですが、凄さは伝わってくる
堂々たる邦画大作
冒頭から、観ながら「邦画的な快楽」という言葉がずっと浮かんでいた。人間の業と情念を描くようなものこそ「邦画らしい」と思っちゃうんだけど、そういう映画になってると思う。
昔で言うと五社英雄作品を思い出した。本作はあれほど外連がある訳ではない至って生真面目な作品だが、題材の歌舞伎が外連味たっぷりだしね。
撮影も良く、演者のみなさんも素晴らしい。主要キャストで歌舞伎界に関わる方が寺島しのぶだけ、というのも驚き。意図したキャスティングなのだと思うが。(指導と脇にはもちろん関係者が入ってます。)
主演の吉沢亮は渡辺謙、横浜流星を向こうに回して堂々たる主演ぶり。また、人間国宝の女形を演じた田中泯がスゴい。ああいうのは初めて見た。
森七菜も従来の殻を破るような体当たり。高畑充希もさすが。
そんな風に個々の演者に注目してみたくなるのも邦画的かな。とにかく久々に昭和っぽい堂々たる邦画大作。是非劇場で!
よくやった!
映画で使う部分だけとは言え、歌舞伎役者に見えるレベルまで習得したのは、感服しました。東宝の作品ですが、歌舞伎の世界の話で舞台裏の話がいろいろあるから、松竹制作では却ってやり辛いのかも知れません。舞台のシーンで大向こうがあればもっと実際の歌舞伎に近づけたと思います。
ひとつ気になったのは、ガタイが良く立ち役専門に見える二代目がお初をやる予定だったことですね。
追記
舞台での演目については、どこが使われるか分からないので、部分的ではなく一段通しで踊れるように稽古したそう。ここまでしたことは、この映画だけでなく、彼らの今後の演技ためにも大きく役立つでしょう。
オールタイムベスト級
興味深い作品が多い今週公開分から、迷わず「初日はコレ」とチョイスした本作。大きな劇場であるTOHOシネマズ日比谷SCREEN1は、平日にもかかわらずかなり多くの客入りです。
ちなみに私、吉田修一氏による原作は未読。また、歌舞伎そして梨園について知識がないばかりか、(歌舞伎の)観劇経験も皆無で完全なる門外漢。とは言え、作品を重ねるごとに凄みが増していく李相日監督ですし、劇場でトレーラーを観て今回も間違いないだろうと楽しみに。ただ、一点気になるとしたら約3時間ある上映時間。ところが、観終わればそんなことは全くの杞憂で、175分は一切長いと感じないばかりか、無駄と感じるシーンは一つもありません。特に歌舞伎を演じる「舞台シーン」は複数回あってどれもしっかりと長尺で、撮る側と撮られる側双の方に一切の妥協が感じられず、そのあまりの凄まじさに度肝を抜かれて震えが止まらないほどの迫力です。そのためこれからご覧になる方は、吉沢亮さんと横浜流星さんの素晴らしい演技を堪能するためにも、是非とも劇場へはお早めにお越しいただき、しっかりと備えて作品に集中してください。(勿論、無理は禁物です。)
と、冒頭から抑えきれない絶賛が駄々洩れして止まりませんが、本作、(全ての俳優の)演技、演出、脚本、撮影、照明、音響、美術、音楽、編集などなど、どこをとっても素晴らしい「プロたち仕事」の集積が正に「映画」として仕上がっていて、「非の打ち所がない」と言う言葉すらおこがましいと感じるほどに完璧。作品全体の構成から見れば「中弛み」しかねない中盤のドラマシーンも、キャラクターそれぞれの心境がこれ以上ないほど伝わってきて、だからこそその後の展開に更なる感動が生まれます。
或いは、昨今当たり前となった「キャンセルカルチャー」の目線からみれば、作品冒頭の出来事(事件)に始まり、その設定や更に劇中に起こるアレコレに昭和後半の時代感も強く感じて、全く理解や共感が追いつかない方もいて当然かと思います。そして勿論、その時代を生きてきた私だって、現代(いま)それを肯定することは憚られますが、自身も少し前に世間をザワつかせた吉沢亮さんに対し、恐らくは多々あったであろう難しいことを乗り越えられたことと、今作における見事な演技を心から賞賛するとともに、今年度の映画賞を席捲してくれることを切に願ってます。
それにしても、本当に素晴らしかった。当然に配信ではなく劇場鑑賞を強くお勧めする一本です。私にとってはオールタイムベスト級の作品で久々の満点評価に。いやぁ、感動しました。
歌舞伎の真髄に挑戦した映画
吉沢亮・・・天性の歌舞伎の女形
藤娘の扮装をした吉沢亮のあまりの美しさと日本舞踊の上手さ。
16歳時には仮面ライダーだったのに、その変身(ヘンシーン)が、
歌舞伎の役者で、しかも大成功の変身でした。
吉沢亮の、
女形の声音の美しさ、張りは10年鍛錬した本物の歌舞伎の女形を
軽々と超えて見えます。
(恥ずかしながら、銀座の歌舞伎座にはたつたの一回行きました。
(滞在は6時間ですから、全くの素人ですが、
(たまにテレビの中継を見るる程度です)
でもですが、吉沢亮さんの、なりきり振り、その上手さは素人目に
完璧に見えます。
3時間の上映時間もまったく緩みがなくて、あれよあれよの瞬く間。
喜久雄(15歳は黒川想矢)が、藤娘を新年会の余興で踊るのを
見ていたのが、歌舞伎の大御所・花井半二郎(渡辺謙)。
半二郎は一目で喜久雄の日舞に圧倒されるのですが、
ヤクザが押し入ってきて、父親(任侠の親分=永瀬正敏)は、
その場で殺されてしまうのです。
そして一年後。
半二郎に引き取られて実子の御曹司の俊介(横浜流星)と、相弟子のように
半二郎の厳しい稽古を受ける事に。
めきめき力をつける喜久雄。
運悪く半二郎が交通事故で大怪我をします。
その代役に半二郎が指名したのは、なんと喜久雄だったのです。
そして30歳の時、3代目花井半二郎の襲名をしたのは、
実子の俊介ではなくて、喜久雄だったのです。
(ここに因縁の喜久雄と俊介の確執が生まれるのです)
★★一説には喜久雄のモデルは坂東玉三郎、ではないか?
とも言われていますが、もちろんフィクションで、原作者の
吉田修一さんが、
「歌舞伎役者で人間国宝」に上り詰める
血筋のない人物・・・というコンセプトのもとに
描かれた小説と推測します。
近年、片岡愛之助さんは実家が工場だと聞きますし、香川照之も
離婚して女優の母に育てられ40歳過ぎから実の父親の
超有名歌舞伎役者に弟子入り歌舞伎界に入られています。
中村獅童なども実の父親が歌舞伎役者を嫌い廃業したので、
正統的な世襲とは言えないかもしれません。
歌舞伎役者が、ミュージカルに出る、
アニメの声優をする、映画では異彩を放ち、
演劇(芝居)に出る・・・などなどクロスオーバーの活躍が目立ちます。
音羽屋(尾上菊五郎など)の娘である寺島しのぶは、
渡辺謙の女房役を演じていますが、
近年、女性ですが、歌舞伎座に出演しています。
新しい波は確実に押し寄せていますね。
父親・半二郎の代役を立派に務め上げる喜久雄の凄さに、
ショックを受けた俊介は、そのまま舞台の座席から去り、
姿を隠してしまいます。後を追う喜久雄の恋人の春江の姿が。
しかし父・半二郎の死後、俊介も歌舞伎の世界に戻ってくるのです。
横浜流星も良いです。
ちょっと驚くようなショッキングな見せ場があり、歌舞伎役者に
適正の薄いようでやる気のない俊介も、晩年で
凄い執着心を見せてくれます。
横浜流星もさすがの花形役者!!
「曽根崎心中」のお初は鬼気迫る圧巻の演技でした。
ファンを楽しませてくれます。
芸を極める、
(私生活を犠牲にしても、
(悪魔に魂を売っても、
などの台詞が出てきますが、
凡人には見ることのできない景色を見る喜久雄は
人間国宝という頂きに上り詰めた
稀有の天才、
努力の人でした。
一芸を極めた人は、やはり感動的で
ラストは込み上げるものがありました。
雪吹雪のなか「鷺娘」を舞う喜久雄の姿は
芸に生きる喜びとつよさに溢れていました。
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