国宝のレビュー・感想・評価
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みなさんは、どう思いましたか?
このお話は、人間国宝小野川万菊が、自らと同じ境地の人間(次の「国宝」)を生み出すまでの話だったのではないでしょうか?
映画のはじめの方で喜久雄少年が、万菊の歌舞伎を見て「怪物(だか化け物だか)」と言っていた。その怪物万菊に憧れた喜久雄が、万菊と同じ「怪物(だか化け物)」になっていくまでの物語に見えました。
そして、俊介と喜久雄の人生に要所で手を差し伸べ(いや、いたずらに狂わせ)、両者を追い込み、突き放し、切磋琢磨させ、次の怪物(「国宝」)を生み出そうとした万菊が影の主役だったのではないでしょうか?
万菊にとっては、俊介でも喜久雄でもどちらでもよかったのではないか?自身と同じ境地に立つ人間(「怪物」=「国宝」)が育ちさえすれば。
二人に対して残酷な手引をした万菊の人生も、映画の中では語られていなかった(と思う?)が、相当なものだったのだろうと推察されます。
それぞれの生い立ちや才能の違い、人生の流れ(や万菊の手引に)翻弄され、清濁を併せのみ到達された境地、自分を恨んでいるであろう娘にさえ拍手を送らせるほど圧倒的高みにのぼった芸の力、を「国宝」という言葉で表現しているのだと感じました。
一点の曇も許さいない風潮がある現代社会に対するアンチテーゼにも思えました。
「好きだから続ける」だけで極めたらどうなるの?という疑問に答えてくれる
ドキュメンタリーのように見えてぜんぜん堅苦しくない。
何を見せられるかというと「役者とはどういう生き物なのか?」という業の話。
稽古熱心な主人公で、才能を開花させ努力もして認められてもいるが、お家の血筋が通っていないという理由から様々な苦難を強いられる。
育った環境のせいか人付き合いも下手みたいで、純粋に歌舞伎が好きでそれだけやっていたいんだろうな、と。
歌舞伎についてのウンチクを学ぶようなシーンはゼロ。映像と心理描写だけで魅せてくる凄み。
そして普段見られない舞台裏が映っていて「簡単に良いもの見られた感」がある。
間口が広い。
あとカメラが良かった。なぜか飽きのこないカメラワーク。
この角度で撮ったら新鮮だろうとか、
ここは皺が見えるくらいズームしても見ていられるだろう、といった巧さを感じる。
おじいさんの皺がずっと映っていても「すごい人の皺だからいいか」と納得させられてしまう。
バッドエンドではないが「怒り」と同じ監督で心を抉りにくるのでそこは要注意。報われなかった人もいる。自殺や他殺は無いが出血はある。
少なくとも主人公は報われて良かったねと思える最後だった。
伝統芸能の美しさと狂気さに魅了されたあっという間の3時間
歌舞伎シーンがすごい。
歌舞伎を見るのは初めてでしたが、指先まで細部にこだわる美しさに魅了されました。
吉沢亮さん、横浜流星さんをはじめとする、出演者が稽古に費やすことができた準備期間はわずか1年半です。
本来なら幼少期から数十年に渡り習得する歌舞伎を、1年半でここまで仕上げたのは、圧巻です。
本当に幼少期から歌舞伎をやっていたのではと、疑ってしまうレベル。気迫と努力が滲み出る歌舞伎シーンでした。
綺麗なお顔に喰われちまいました
「その綺麗なお顔は役者にとって邪魔も邪魔。お顔に喰われちまいますからね。」とは、人間国宝の万菊が喜久雄にかけた言葉。しかしこの台詞て吉沢亮本人を連想した方も多いのではないか。
駆け出しの頃は顔が目立ちすぎるとエキストラに選ばれず、端役を得ても顔が良すぎるとメガネをかけさせられ、オーディションは顔が役に合わないと落とされ、キラキラスイーツ系映画なのに下手したら共演アイドル女優より美しい始末。
吉沢本人も、演技を見て欲しいのに顔のことしか言われないと吐露することもあったようだ。
そして作中ではたびたび前髪を伸ばし、メガネをかけ、視線を落とし、背中を丸めた。まるで自らの美貌にリミッターをかけるように。今回「この世ならざる美貌の歌舞伎役者」という役を得たことにより、それらのリミッターは完全に取り払われた。
本作は主人公喜久雄の少年時代から始まる。子役の黒川想矢の演技で最も印象的だったのは、人間国宝万菊が踊る鷺娘を見つめる目であった。「美しいバケモンや」と言いながらも、その目は輝いており、視線は舞台に釘付けで、芸という魔物に魅入られてしまっていた。後の「悪魔はんと取り引き」の伏線になっている。
そして月日が流れ、お待ちかねの吉沢亮と横浜流星が登場。化粧前も化粧中も化粧後も絵になるのは流石。
二人道成寺では、舞台に立つ二人に対して、二代目半二郎から声がかかる。俊介は血が守ってくれる、喜久雄は踊りが骨に染み付いていると。本作にも出演している寺島しのぶのインタビューでは、舞台に立つ前に、自分には受け継がれてきた血があると己を奮い立たせることがあるとのことであった。実際に血とは大きな心の支えなのだろう。二代目半二郎の精一杯の優しさは、図らずしも、喜久雄に血を持たざる者という烙印を与えてしまった。
舞台では喜久雄が恋の手習いを、俊介が振り笠を用いた舞を披露するが、歌舞伎においては、演技巧者の方が恋の手習いを踊るのが通例だとか。ここも後の伏線になっていたのかもしれない。
物語は二代目半二郎が怪我により舞台出演を断念し、代役に俊介ではなく喜久雄を指名することで、大きく転換していく。184cmの堂々たる体躯の渡辺謙が曽根崎心中のお初役というのはかなり無理があるが、そこには目を瞑ろう。
二代目半二郎の病室で稽古が始まる。まずは喜久雄の発声に驚かされた。素人の耳にはいかにも歌舞伎の女形らしい発声で、吉沢亮はこんなことができるのかと驚かされる。
しかし二代目半二郎からは叱責される。死への恐怖も、愛する男と死ねる喜びも感じない。お初として生きていない、と。歌舞伎とは単なる様式美ではなかったのか。しかし稽古を経て、喜久雄はお初を掴んでいく。
舞台当日、喜久雄は楽屋で一人重圧に震える。直前まで酒を飲んでいても、楽屋に来れば甲斐甲斐しく世話を焼いてもらえる俊介との違いが切ない。楽屋を訪ねた俊介に対して、喜久雄は目にいっぱい涙を溜めながら、俊介の血が欲しいと訴える。血がありながら芸で選ばれなかった俊介の心には思い至らないのが喜久雄らしい。
俊介は複雑な思いが入り混じる中、「芸があるやないか」と優しく語りかける。ここで俊介に大きく心を掴まれた。
そして舞台に現れた喜久雄お初は、遊女としての色香と退廃的な美貌で観客の度肝を抜いた。愛する徳兵衛が奸計に落ち、最早自死でしかその汚名をそそげないと理解したお初。その覚悟があるのかと問うお初の気迫は、先日の病室で初めに見せた芝居とは全く別物であった。技術の巧拙ではない。役に生きるという点で、俊介は完全に喜久雄に負けたのだ。堪えきれずに席を離れた俊介を追ったのは、なぜか喜久雄の恋人の春江。この展開は予想できなかったが、伏線らしきものはある。
本作は映画であるため、当然時間と予算に限りがある。そこで喜久雄の一代記という点に焦点を当て、長編の原作を再構築している。喜久雄を取り巻く女性達の心情を丁寧に説明することは難しい。
吉沢亮は、以前のインタビューで、ナンパをするならどうやって声をかけるかと問われ「『顔見て』って言います笑」とジョークで返していた。まだ10代の春江が「喜久ちゃんがいないと生きていけない」と大阪まで追ってきたのも、藤駒が「2号、3号でも」と子を成したのも、説明はいらない。顔を見れば良いのだ。だって吉沢亮だから。何という割り切り。
しかし喜久雄の美貌に魅せられ、愛情を一身に注ぐ女性達は、いずれ気づく。ただでさえ言葉少なである喜久雄の心は芸で占められており、どんなに愛しても、喜久雄とは心が通わないと。もちろん喜久雄に愛がないわけではない。自分を追ってきてくれた春江とは結婚すべきだろうと考えている。しかしそれは愛というよりむしろ義理である。恋人として暖簾に腕押しするような愛を注ぎ続けることより、ご贔屓として応援することを春江は選んだ。だから俊介にも「わかっとうよ」と言えたのだろう。
この辺りから物語の構成は原作と大きく異なっていく。演目も大胆に変更されているが、これにより歌舞伎の知識がない観客でも「さっきの演目だ」と理解できる。数を絞ることで、一つの演目に時間と予算をよりかけることができる。映画化に当たっての英断である。
後半で驚いたのは、森七菜演じる彰子の登場だ。突然「喜久にいちゃん!」と馴れ馴れしく現れた女の子が、程無くして大開脚で喜久雄と絡むのだから。
恍惚の表情で「お嫁さんにしてね」と囁く彰子に「覚悟は決めてんで」と返す喜久雄の表情はどこか冷たい。喜久雄の決めた覚悟とは、愛する人を生涯守るという覚悟ではなく、役に繋がるなら籍くらい入れてやるという悪魔との契約だったのだろう。だから、大物役者である彰子の父親の激昂にも、喜久雄と出て行くという彰子の宣言にも、激しく狼狽する。
そこからの二人は多くの屈辱を経験する。しかしどんなに辛くても、喜久雄の体には何千回、何万回と稽古した踊りが骨まで染み付いている。喜久雄が見たい景色も生の実感も舞台の上であり、喜久雄は舞台でしか生きられない人間なのだ。屋上での狂気の舞はそのことを痛感させる。
周囲の手助けにより、喜久雄は再び俊介と舞台に上がる。しかし糖尿病という血の病により、俊介は片足を失う。それでも再度舞台に立ちたいと選んだ演目は、あの曽根崎心中であった。初の立役姿もまた美しい。
かつて喜久雄が演じたお初は、恋の業火に身を投じる激情を纏っており、仇敵九平次に向ける視線に込められた殺気からは、喜久雄の任侠の血が感じられた。一方俊介のお初は、残る片足にも壊死が見つかったことと相まって、自分の運命を受け入れるような諦観を感じる健気なお初であった。
出色は心中の場面。お初の表情からは、既に悩み苦しみ恐れを通り越して、あの世で徳兵衛と一緒になれるという喜びすら感じた。そこに「喜久ちゃんに引導渡してもらえるなら本望や」という俊介の声が聞こえてくるようであった。徳兵衛の落涙には、愛する女に手をかけなければならないという辛苦を感じた。そこに「俊ぼん…なんちゅう顔で見とんねん…」という喜久雄の声が聞こえてくるようであった。
歌舞伎役者に歌舞伎を演じてもらうのではなく、俳優に歌舞伎役者を演じてもらい、その上で歌舞伎を演じる。李監督の采配がピタリとはまった名場面である。
最後に人間国宝となった喜久雄が踊るのは、少年の日に魅せられた鷺娘である。大量の紙吹雪の中、恋に身を焦がし舞う白鷺。その目は何を見ているのか。悪魔と契約した人間は、次第に人ではいられなくなっていくのだろう。長い睫毛に留まった紙吹雪が動きと共に舞い落ち、やがて白鷺は力尽きた。
目を開けた喜久雄が見たものは、空っぽの客席とあの綺麗な景色。喜久雄はどこへ行ったのだろう。
この作品で吉沢亮は、自分の綺麗な顔に食われてしまう役者から、自分の綺麗な顔で見るものを喰いちぎる役者へと飛躍を遂げた。
初めて鑑賞したときは、ただただ何か凄く美しいものを見たと圧倒され、なぜか勝手に涙が流れていた。きっと私は吉沢亮の綺麗な顔に喰われちまったのだ。
一つのことを極めるためには
原作未読で尚且つ歌舞伎をよく知らない状態で鑑賞。
歌舞伎の演目のシーンは、観客席からのショットのみならず、役者の後ろ姿を捉えたショットなど様々な方向から演目を見ることができる。そのため、歌舞伎を平面的ではなく立体的、多角的に見ているという感覚に陥った。また、役者の顔や指先、足先などのクローズアップを多用することで、動き一つ一つのしなやかさや、美しさが強調され思わず見入ってしまうと同時にこんなにも歌舞伎は面白いのかと感動を覚えた。
そして物語においては、一つのこと(この映画で言えば歌舞伎)を極めるためには多くの犠牲が必要であり、その犠牲を顧みず、一つのことに全身全霊をかけて向き合った者だけが見ることのできる景色があるということを伝えたいのだろうと私は解釈した。そして私は一つのことを極めた経験がないため、あらゆる物を犠牲にする喜久雄に共感できなかった。しかしその共感しにくさが、喜久雄を孤高な存在へと押し上げると同時に彼に尊敬の念を感じざるを得ず、物語終盤の歌舞伎の演目では雲の上の存在を間近で見ている感覚に陥り、鑑賞後高い満足感と幸福感に包まれた。
非常に美しい作品だった。
原作の人間模様が好きだったんだ。
原作を読み歌舞伎と人間国宝をどう表現するのか気になって視聴。
前半30分で徳次が切られて気持ちが切れた、花ちゃんが徳次ポジにすげ替えられてるけどお前居なくなんじゃん!と思いながら苦痛を堪えながらの3時間だった。
主人公が紆余曲折あって人間国宝になりました終わり。中身薄すぎて無感情でした。
原作を予習したのが良くなかった。が原作を見なかったら観たのかと言われれば多分観なかった。本読まずに観たら多分星3位なのかなと。
語彙を失う
今度は、およそ3時間を長く感じさせる事はほぼ無かった。
あらすじに惹かれ観てみたが、想像とは異なる形で
魅力を存分に魅せられた。
本当にこのタイトル通り、どう表現したらいいのか
分からんくらいの気持ちになる。
あえて言葉にしておきたい事を書き起こすならば…
壮絶なる嫉妬と憎愛、生き様、ヒトの両面性
大画面に耐えうる美しき顔立ちと表情、目力や所作
ハッと正気に戻ったような瞬間も、それさえ芸の内
歌舞伎は見た事なかったけど、ずっと景色と音楽と
ヒトの舞が美しく、こんなに観てられる(魅入られる)
ものかと、すごい贅沢な擬似体験を味わった気分。
エンドロールの井口理の歌声さえも最後の最後まで
味わい尽くした174分であった。
これは、観てよかった。
因みに泣いた箇所は、前半と中盤の2箇所。
白く塗れ
歌舞伎にほぼ関心のない私には、この映画をどう面白がればいいのか、よくわからなかった。
まず背中に刺青があっても歌舞伎界に入れるのかなあと疑問に思い、白塗りで隠せるからいいのかと怪訝に思っていたら、渡辺謙扮する花井半二郎が急逝したタイミングでスキャンダルが噴出して、突如失脚する。それまでも楽屋の周辺に出入りする者にはバレていたはずなのに、今さら?その後の場末のどさ回りへの急展開も不自然で、輝かしい名声は世間の誰も覚えていなかったみたいだ。
歌舞伎界の重鎮の万菊が安アパートに蟄居しているのもナゾだし、その後喜久雄がいきなり表舞台に復帰するのも唐突感が否めない。
主人公の出世の節目で、近しい人物が都合良く怪我したり病気になったり死んだりする。おそらく原作小説をそれでも3時間程度の尺に収めるために、かなり物語を急ぎ足でつまんでいるのだろうと推測する(原作未読)。
舞台の場面が適宜挿入されているのでメリハリがついているが、それ以外の場面はやたらと怒鳴ったり殴りあったりの手垢のついた描写が多くて、閉口する。
役者が天才的な歌手というキャラクターを演じる場合、歌だけプロの歌手が吹き替えるケースがあるが、歌舞伎の所作となるとスタントも無理と見えて、主役の二人は1年半をかけて習ったという。ただ、ラスト“国宝”に擬せられた演技となると、1年半の修業で培った成果がほかの何十年と修業してきた本当の歌舞伎役者より上首尾ということになり、そのあたりが微妙だ。
交通事故で舞台に上がれなくなった半二郎の代演で喜久雄が演じた「曽根崎心中」は、それまでの「藤娘」や「道成寺」が舞踊だったのに対し、本格的な台詞入りの演目ということでなかなか迫力があった。一方で、かつての梶芽衣子の面影も甦ってきた。
「からかい上手の高木さん」の西片くんが達者な芝居をしていたのにはびっくりした。
同じ「国宝」のタイトルで、今度は五街道雲助師匠のドキュメンタリー映画を作ってほしい。
映像美
せめて2部作に
原作を読んでさらにオーディブルで聞いていてもたってもいられずに観に行ったが。
新年会のシーンから始まって時々の端折りは仕方ないかなって思いながら観てると、辻村の射撃シーンが出てこない?ということはそのエピソードは描かれないのかという残念さから始まり、原作とは全く違う喜久雄の敵討ちのシーン、大阪での徳治の不在や万菊役ビジュアルの原作の描写との乖離(二代目半次郎もだけど)、なぜか突然キレる千五郎など引っかかることばかり。
映像の美しさも売りなのだろうが、桜の下を二人乗りで駅に向かうシーンのVFXは合成感不自然さがすごい。
長編の原作を3時間とはいえ1本の映画に入れてしまうのは無理だったのではないか。
せめて青春篇・花道編の2部作にするとかできなかったのだろうか。
歌舞伎役者役は本職を使ったほうがよかったのではないか。とくに小野川万菊、二代目半次郎。
素人の吉沢と横浜が歌舞伎を頑張ったのは本当にすごいと思うけど、原作「国宝」はその類の話ではない。才能を持った者と名門の血筋を持つ者の歌舞伎のレベルの高いところの話。
ネタバレレビューに書いても仕方ないけど、この映画は絶対に原作読むより映画観るのが先。もしくは映画観たら原作読まないほうがいい。
人生の覗き見
見終わったあとしばらく言葉が出てこなかったし、観るのにものすごくエ...
見終わったあとしばらく言葉が出てこなかったし、観るのにものすごくエネルギーを使ったのか帰ってきて3時間寝てしまった。
好き嫌いは置いておいて、これは映画館で観て良かった。
スクリーンで観る歌舞伎の舞台の熱量がすごくて、どえらいものを観たなという気持ちになった…役者陣がすごすぎる…
ただ、正直ストーリーについてはいろいろ詰め込みまくっているので、ぶつ切りで荒かったりあっさりしてるなと思う部分もあり、ダイジェストを観てるような感覚だったけれども、
吉沢亮演じる喜久雄にとって歌舞伎の舞台がすべてでそれ以外はもはやどうでもいいという喜久雄の人生そのものがこの映画だと解釈すればいいのかな。
歌舞伎についての知識はあまりないけれど、そんな私が観ても吉沢亮のぞっとするような残酷な美しさと、横浜流星のたおやかな人間味のある美しさどちらも素晴らしかったし、田中泯さんは本当に化け物だと思った…
あと子役の2人が「怪物」の黒川想矢と「ぼくのお日さま」の越山敬達で、この2人も見事だったし、将来どんな役者に成長するのかますます楽しみになった。
役者冥利につきる作品
まわりの異性達とともに
上映時間が約3時間なのですが、あっという間でした。
貸し切り的な環境で鑑賞するのが好きなのですが、いまだに映画館が満員で、かなり前の席だったのに両脇に知らない異性が座って、ひじ掛けも使いにくい窮屈なシチュエーションは久しぶりで、それだけでもドキドキしていました。
席に座ったからには、大ヒット映画の醍醐味だと思って覚悟を決め、楽しむことにしました。
~序盤~
BGMに癒されます。音楽のテイストは最後(エンディング)まで一貫していました。
背中の刺青も美しく、喜久雄の父親の最期のシーンも印象的でした。
ティーンズたち、喜久雄(黒川想矢)と俊介(越山敬)の二人が結構可愛いくて、もっと彼らの青春時代を観ていたかったのですが、わりとすぐ大人編になってしまいました。
~大人編~
そうそう、吉沢亮さんと横浜流星さんを観に来たんでした。「ここからが本番だ」と、氣持ちを引き締めなおします。喜久雄(吉沢亮)の名前が東一郎になったり、さらに変わったりします。
喜久雄と春江(高畑充希)のロマンティックなkissの場面は、氣まずさを感じたのもつかの間、長すぎなくて安心しました。
神社で悪魔にお願いしたと言う場面、好きです。
森七菜さん可愛い役で登場した時から、喜久雄と恋仲になりそうな予感した通りになりました。今度の濡れ場が、長いというか激しいというかエロかったです。
喜久雄が妻子いることを隠してるのか、そもそも結婚してなかったのか、避妊しているかどうかなど、頭の中は氣になることが山積みでした。
ちょくちょく数年後になるため飽きません。
短いエピソードを休みなしで続けて連続で観ている感覚です。
~終盤~
伏線回収はありますが、語られていないことがあって、最後まで目が離せませんでした。しかし、結局、いろいろ想像するしかありません。それが2回目の鑑賞をしたくなる理由ですね。
演出も工夫していて良かったです。
エモーショナルな場面がありますが、驚きのほうが勝っていて涙が出ませんでした。私はまだ1回しか観ていません。今作は“2回目が泣ける”と聞きました。次の鑑賞時、泣けたらいいなと思っています。
4時間30分の長尺バージョン(詳細不明ですが、ディレクターズ・カット版?)が氣になります。
喜久雄の観たかった景色は……。
8月下旬に鑑賞しました。6月6日の公開から2か月以上が経過した8月下旬でも、この映画の人気は衰えを知りません。平日昼過ぎの回で、4割程度の座席が埋まるくらいには観客がいました。私の住む秋田県では、平日昼間の映画館は観客が自分一人という貸し切り状態になることも少なくありません。公開から2か月以上経ってるのに、この盛況ぶりには正直驚きました。
色んな映画レビュアーさんが大絶賛して、レビューサイトではとんでもない高評価を獲得している本作。ハードルがこれ以上ないくらい上がり切った状態での鑑賞です
結論ですが、観に行って良かった。3時間近い上映時間があっという間に感じられました。映像の美しさ、役者陣の演技の素晴らしさ、長尺のストーリーを見事にまとめた脚本と構成の巧みさ、目を奪われる美しい映像の数々。どれをとっても最上級の作品でした。話題になるのも納得のクオリティで、年間ベスト級の作品でした。
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ヤクザの組長の息子だった喜久雄(吉沢亮)は、15歳の時にヤクザ同士の抗争によって父親を喪った。その後は歌舞伎役者・二代目花井半二郎(渡辺謙)に引き取られ、半二郎の息子であり同い年の俊介(横浜流星)とともに、歌舞伎の稽古に励む。そこで喜久雄は女形の才能をめきめきと開花させていくのだった。
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この映画、何より歌舞伎のシーンがめちゃくちゃ良かったです。
私は歌舞伎を観たことはありませんが、吉沢亮さんと横浜流星さんの歌舞伎の演技は、直感的に「めちゃくちゃ上手い」と感じられるものがありました。準備に時間をかけ、そして相当な情熱を持って演じられているのだということが分かります。この映画を鑑賞した歌舞伎役者の市川團十郎さんは、ご自身のYouTubeチャンネルで本作の感想動画をアップしており、劇中の歌舞伎の演技について「違和感なく観ることができる」「すごく練習されたんだと思う」と言及されていました。プロの歌舞伎役者から見ても「違和感ない」というのは本当にすごいことです。
個人的な話になりますが、私は小学低学年から高校卒業まで剣道部に所属していました。そのため、映画やドラマで剣道をするシーンが出てくると、その所作を見て「上手いな」「下手だな」とかを感じてしまうんですよね。上手ければ問題ないんですが、下手な剣道をしているのを見ると、どうしても気になってしまって、作品を楽しむノイズになってしまうんです。そのため、本作の歌舞伎の演技がプロの歌舞伎役者である團十郎さんから見ても違和感のないものだったというのが、いかに凄いことかというのが良く分かります。
本作の歌舞伎の演技は撮影の1年半前から練習が開始されていたらしいです。横浜流星さんは吉沢さんよりも3か月ほど遅く稽古を開始したのに、あっという間に吉沢さんに追いついてしまったと、吉沢さんがおっしゃっていました。「そのまま歌舞伎役者になってしまうんじゃないか」と思うくらい歌舞伎にのめり込んでみるみるうちに上達していく横浜さんを見て、「負けてられない」と奮起した吉沢さん。二人が切磋琢磨したおかげで、この圧巻の歌舞伎シーンが生まれたのだと思います。
そして、主演の二人以外にも、本作の制作陣には一流のスタッフが揃っています。監督の李相日さん、脚本の奥寺佐渡子さん、撮影のソフィアン・エル・ファニさん。作品制作を主導した監督は言わずもがな、3時間という長尺の映画で、最初から最後まで全く飽きることなく退屈なシーンなどなく集中して鑑賞することができたのは、間違いなく奥寺さんの引き込まれる脚本と、ソフィアンさん撮影するの美麗な映像によるものだったと思います。
語りたいことはまだまだありますが、長くなるのでこの辺で。
本作は今後何年も語り継がれる大傑作映画だと思います。今年はまだ4ヶ月残っていますが、おそらく私の今年の年間ベスト映画になると現時点では確信しています。素晴らしい映画でした!オススメです!
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