国宝のレビュー・感想・評価
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関の扉に始まり鷺娘で幕が閉まる
歌右衛門(六代目)から玉三郎までの代表的な美しい女形を辿る芝居だった。田中泯演じる万寿はおどろおどろしく、闇の底から出てくるみたいで大昔に見た歌右衛門みたいに怖かった。美しい女形は年取ると性別を超越する、それを田中泯は素晴らしく演じていた。
話の中で特に重要な芝居が「曽根崎心中」なので、近松を復活させた上方歌舞伎の坂田藤十郎の息子の雁治郎が歌舞伎指導&出演で関わり、その息子である女形の壱太郎くん(吾妻徳陽)も日舞指導を担当していたのはよいと思った。壱太郎くんは踊りも鼓も上手いし、同世代の若い人達同様に広範囲に活躍している。今回も歌舞伎役者としての肥やしになったろう。
吉沢亮の顔の美しさに陶然とした。白塗りに紅があれほど映えるのは天性(レスリー・チャンと同じ)、顔アップの多用に納得する(国宝になってからの鷺娘では、首の縮緬皺や手の甲の皺が積み重ねた年月を表してよかった)。因縁の「お初」を横浜流星、徳兵衛を吉沢亮が演じる舞台は涙なくして見ることができなかった。お初が徳兵衛の覚悟を自分の足で確かめるのが見せ場の芝居。文楽では女形のお人形に足はないが、お初の人形には足がつく。そのお初を左脚がない半弥(流星)が演じるだけで凄かった。道行きではお初が主導する。お初が先に進み徳兵衛を引っ張るような感じなのに、右足も壊死しているお初・半弥が花道で倒れ前に進めなくなった時、どうなるのか心臓がバクバクした。にも関わらず、心中場面も続けてやると言う徳兵衛・吉沢亮、師匠に続けてライバル・親友も失うことは分かっていたろう。
「壊死」で、幕末から明治まで活躍していた美貌の女形の三代目田之助について読んだことを思い出した。田之助は壊死で四肢切断しても舞台に出続けていたが廃業し33才の若さで亡くなったという。血の繋がりは顔かたちや体型や声だけでなく、病も遺伝するとしたら堪らない。芸は血の繋がりというより、生まれた時から親と全く同じ環境の中で生活し呼吸し見て聞いて育つことを言っているのだと思う。血筋があっても芸や踊りが下手な役者さんは沢山いるし、部屋子さんで素晴らしい踊り手でいい芝居をする美しい歌舞伎役者も沢山いる。歌舞伎の世界で血筋のことばかりいうようになったのは、一体いつからなんだろう?
歌舞伎興業を担当する竹野を演じた三浦貴大は、ぽろっと口にする台詞の一つ一つがよかった。彼と吉沢亮が絡むシーンがもっとあったらと思った。
汗と涙で顔のお白粉と紅がぐちゃぐちゃになるシーン。こんなことは歌舞伎役者はできないし、やってはいけないだろう。私達が歌舞伎役者に求めるのは、儚くて現実離れした風景なのだから。
おまけ
1)父親=大旦那が亡くなった途端に跡継ぎを孤児状態にする歌舞伎の世界ってなんなんだ?と思う(大きな○○屋の血筋の跡取り息子であっても大旦那=父親を亡くしたら先輩方に頭を垂れて教えを請わなくては・・・)。年老いた大旦那の課題は一つ:歩くことも踊ることも立つことも座ることができなくなっても生きながらえること、自分の息子&孫息子の為に。そんな家庭内興業の歌舞伎、いつかは滅んでも仕方ない。「血筋」幻想が日本の芸能界や政治の世界で幅をきかせている以上。
2)原作を読んでいないのでごめんなさい。歌舞伎役者は踊りの稽古が何より大事。加えて鳴り物や三味線、「阿古屋」を演じることが嘱望されている女形(でなければ女形の国宝にはなれないと思う)ならお琴と胡弓のお稽古場面も見たかったと欲が出た。
3)半蔵門にある国立劇場の楽屋入口が映った。正倉院を模した美しい建物をなぜ壊すのだ?建て替え工事を請け負う業者も決まらず使わないままでいたら、建物によくないと思います!エレベーターもエスカレーターもある劇場なのだから、楽屋と舞台関連だけリフォームすればいいのでは?文楽、通し歌舞伎、踊りや長唄の会、落語会に多大な損害を与えています。文化と歴史と教育に無関心でお金を使わない国に嫌気がさします
圧巻
自分の位置からは見えぬ景色を目指した壮大なドラマ
原作は未読ですが、昨年から吉田修一の最高傑作が映画化されると聞いていて、かなり注目していた映画です。原作は全く知らないので、あやふやな個人的な感想です。
全編にわたって、歌舞伎の場面がかなり入っているので、けっこう長いなあという印象でした。
極道の子として生まれた喜久雄が、歌舞伎の名門の花井家に引き取られるが、歌舞伎の跡取りとして間違いないと思われていた俊介を差し置いて、歌舞伎を継ぐことになるとは、ゆめゆめ思っていない景色だったと思います。時折、差し込まれる紙ふぶきの風景が効果的でした。
日本の世の中は、政治家等もほぼ世襲制ですが、本当に実力のある人が跡を継ぐのが望ましいと思います。
俊介もこの跡継ぎを恨むのではなく、俊介なりに
歌舞伎を努力していく姿はとても好感が持て、良き友であり、良きライバルだなと感心しました。途中で私は、俊介が喜久雄に報復するのではないかと思っていましたが、見事にはずれました。
『国宝』級映画
【あらすじ】
幼い時任侠の世界で育った喜久雄は、父の死をきっかけに歌舞伎の世界へと足を踏み入れる。そこで出会ったのは花井家の御曹司・俊介。歌舞伎界の伝統─血筋─を覆すべく、孤軍奮闘する喜久雄であったが、任侠の出ということもあり...
3時間もある映画であるが、無駄なシーン、削ぎ落とせるシーンが見当たらないほどに完成されていた。最近公開され、同じく3時間弱あったミッションインポッシブルは終始アクションのための映画という印象であったが、本作は完成されたストーリーの上に歌舞伎の美しさがあり、双方が互いを生かしあっているような映画であった
まず、登場人物の心情が事細かに描かれている。歌舞伎界に生きる人々の"人間らしさ"、そしてそれに巻き込まれていくスポンサーや舞妓の人たちまで、全員の感情が入り乱れている様が生々しくも感じられた
また、キャストの人たちの圧巻の演技。
渡辺謙や吉沢亮、横浜流星らは言わずもがなであるが、特に黒川想矢の演技には目を見張るものがあった。是枝監督の『怪物』の時から、その表情や眼力には光っているものがあったが、それが今作でも存分に発揮されていた。
そして、歌舞伎のシーン。
吉沢亮ら演じる女形の美しさには、ついうっとりしてしまった。演目も無造作に選ばれているのではなく、きちんとストーリーと関連しており、歌舞伎初心者の私でも注目すべきポイントなどが分かりやすい作りになっていた
残念だった点は2つ。
1つ目は、最初俊介が喜久雄をライバル視していた後に急に仲良く練習していた点。普段の稽古を経て仲良くなったのだろうと想像することは簡単だが、せっかくだからそこも描いて欲しかった
2つ目は、女性キャラクターが多い点である。舞妓の見上愛、スナックで働く高畑充希、そしてご令嬢の森七菜という所謂"ヒロイン(この映画においては、そのような扱いではないが)"にあたるキャラが少し多かったように感じる。そのせいで、似たストーリーを繰り返してる様な印象に若干なっていた部分があった
だが総じて、演技力、ストーリー、歌舞伎の美しさなどが絡み合った『国宝』級映画だったとは間違いなく言えるだろう
映像から伝わる、本物の気迫と美しさ
歌舞伎版、ガラスの仮面
乱暴な言い方をすればこんな感じ。
マヤが喜久雄(吉沢亮)、亜弓さんが俊介(横浜流星)ですね。
2人の実力は拮抗していて、互いが光と陰のように対になり、幾度となく立場を替えながら話は進みます。
大切なのは芸なのか血縁なのか、というテーマは梨園ならではでドラマチック。
跡目争いから男2人のドロ沼愛憎劇になるのかと思いきや、そこは回避してそれぞれの信念のもと、芸道を極める境地に着地。(そんなところもガラスの仮面ぽい)
3時間近くの長丁場でしたが、全く退屈しませんでした。
ステージ裏話ものって劇中劇が面白くないと興醒めしますが、今作は歌舞伎の舞台のシーンが大変美しく臨場感があり画面に釘付け。
何より、俳優さんたちがホンモノの歌舞伎役者にしか見えない。
主演のお2人は撮影前に一年半かけて稽古をしたそうですが、たった一年半で発声も舞踊も完璧な女形になるとは…すごすぎませんか。
吉沢亮さんも横浜流星さんも素顔が美しいので、これはハマり役ですね。
特に吉沢さんは一見好青年なんですがちょっと暗い目つきで何考えているかわからないところがあるので、任侠倅の闇を抱えたこの役にぴったりだったと思います。
劇中で演じられる演目。
(歌舞伎シーンにタイトルのキャプションが出るのが親切)
連獅子
二人藤娘
二人道成寺
曽根崎心中
鷺娘
当方、歌舞伎に関しては素人のため華麗な舞台を楽しむだけで終わってしまいましたが、内容がわかればもっとストーリーを深く味わえたかもしれません。
曽根崎心中のシーンとか、内容を後で調べたら号泣必至じゃないですか…
これを機に、伝統芸能に親しんでみようかな。
どうでもよいですが、梨園の妻を演じた高畑充希さんが故・小林麻央さんにしか見えなくて困りました。
絶対、狙ってキャスティングしてますよね…
3時間が長く感じなかった。
良かった😎
吉沢亮さん、横浜流星さんの演技も良かった。歌舞伎見たことあまりないけど、演技であそこまで出来るのは凄いのかな😀
血の繋がりか 技術か
悪魔に魂売らないと一流にはなれないのかな
主人公は人間的には褒められる人間やないけど
技があれば上り詰められるんかな
まあ凡人の私には無縁の世界ですが笑
天才にしかみえない景色があるんかな
歌舞伎だけやるってまあストイックやな。
寺島しのぶさんや高畑充希さん見上愛さん達女優陣の演技も良かった。
個人的には、万菊役が印象に残りました😎
ちょい時間長くは感じたけど楽しんでみれました。
顔は才能で血は地位の表れ、透明な涙と紅い血流す
2025年劇場鑑賞35本目 良作 64点
冒頭の掴みが4年前に2.3回劇場鑑賞し、その年ベストのヤクザと家族の様で心躍る
藤井道人ならここ天空ショットやズームのスピードお得意のあーゆーの使うんだろうなってシーンがちらほらあるが、内田英治のミッドナイトスワンとはまた違う惹きつけ吸い込まれるシーンの数々に、李さんで正解だったと言わざるおえない
演技力や顔の説得力含め、誰がプロデューサーでも現代の日本の役者でこの二人を選ばない人はいないほどに、最善の回答であった
インファナルアフェアの青年期の二人やスマホを落としだだけなのにの成田凌と千葉雄大など、綺麗な中世顔がタッグを組むと、それこそカンヌ出展故に免疫ない人は見分けつけづらそうですね
黒川想矢くんと見上愛の二人が、いつぞやの菅田将暉と小松菜奈みたいでした
何回か○○年後と続いていたので記憶が確かじゃないが、宴会での初対面から神社?に参拝し3代目就任のパレード?のシーンまで主人公は黒川想矢くんから吉沢亮に変わっていたのに対して、見上愛側は継続して演じていたので、高校生前後(はたまた成人済み)から15年後くらいの35歳前後となるのが、ギリ二人で並んで歩いてた時違和感を覚えた
片岡礼子や瀧内公美は少ない出演ながら確かな存在感でしたね、流石です
取り急ぎなので、改めて続き書きます
要るべき場所。
1964年の長崎、…劇終わりに乗り込んできた組織との抗争で組長でもある父を亡くし、その敵対組織に復讐から1年後、歌舞伎の名門当主・花井半二郎に以前に見てた劇で才能を買われ世話になることになる16歳立花喜久雄の話。
半二郎から花井東一郎と名付けられた喜久雄、半二郎の息子・俊介(半弥)と日々稽古をするなか半二郎と半二郎の妻・幸子はこの2人を女方へと考え、…後に女方で開花する東一郎と半弥だったが。
歌舞伎=市川海老蔵イケメン、尾上右近=レトルトカレー好き、尾上菊之介=グランメゾン東京に出てた黒服シェフ位の知識しかなく歌舞伎知識は全くない私でしたが楽しめた!
ザックリ書けば日々の稽古で身に付けた技術で前に進む東一郎、歌舞伎一家の家に生まれ敷かれたレールで生きる半弥って感じですかね、半二郎の事故で巡ってきた半弥を差し置きの半二郎の代役となった東一郎、…その事で崩れた関係性、代役で時の人となるが雑誌スキャンダルで転落と見せていくけど。
天と地を繰り返しながらも、自分の居場所、“歌舞伎”の道で生きる東一郎と半弥の生き様と歌舞伎俳優の裏側(稽古)を見たようで面白かった。
歌舞伎ならではの発声と所作、この難しい役をこなした吉沢亮さん横浜流星さんが凄いの一言!「流浪の月」から知り好きになった李相日監督の見せ方の技術は流石だね!
ともかく規格外れの作品であることは間違いない
原作は朝日新聞掲載時に毎日楽しみにして読んでいた。吉田修一に他に芸道を素材とした小説はないのでは?上方歌舞伎の御曹司と部屋子が主要登場人物であることも珍しく、話の方向がどこに向かっていくのか全く予想できずワクワクさせてくれた。毎日、新しい世界に接することができる、珍奇で、でも美しい箱庭を覗き込んでいるような印象を受けたのを覚えている。
さて、本作でこの吉田修一の大長編はほぼ完璧に映画化された。いくつかの点で規格外れと思われる作品なので挙げておく。まず、なんといっても、歌舞伎役者を取り上げた作品であり、それも踊り中心の女形が主役でありながら、歌舞伎役者でない一般の俳優が演じているところ。そして歌舞伎の暗部である、やくざ者との付き合いであるとか花柳界の女性の扱いであるとかにやや踏み込んでいること、そして興行サイド、松竹がモデルである会社との持ちつ持たれつの関係も描かれている。(制作、配給が東宝であることは興味深い)
ただ後者の方は、時間の制約もあるし、自主規制などの兼ね合いもあるのだろうがやや中途半端に終わっている。喜久雄の原点となる長崎時代のエピソードはもう少し尺を使って掘り下げて欲しかったし、喜久雄が興行師として生涯つきあうことになる竹野(映画では三浦貴大が演じる)についても二人の出会いが原作通りであるだけにもう少し踏み込んで描いて欲しかったとは感じた。
恐らく、映画だけ観た人は、お坊ちゃんでわかりやすい俊介に比べれば、喜久雄の人となりは最後、国宝になるところまで観てもよく分からなかったのでないか。でもこれは原作でも同じであって巨大な人物というのは外からは掴みづらいといった価値観で原作も描かれているようだ。
映画ではなんといっても規格外れなのは喜久雄と俊介の「半々コンビ」の共演であろう。特に最後の共演となる「曽根崎心中」の場面は凄まじい。これ一つ見届けるだけでも3時間を費やす価値はある。
となりの人間国宝‼️❓
そもそも人間国宝は国宝級の技術があるとゆう証では無く、絶滅危惧種のような職なんで国宝レベルに保護しようとゆう制度なのだが、いかんせん数ヶ月の鍛錬で、数十年の芸を現すのは無理があり、ある意味痛々しいのだが、さすが大河主役の二人、それなりにまとまりがある。それと、三時間の初めの1時間、子役の3人の演技と演出が凄すぎて、残像の中での後半、停滞感は否めない。だが、2人の演技は凄い、それと、周りの演技も凄い、芸者の見上愛、高畑充希、もさすが朝ドラヒロイン、その他の俳優も惚れ惚れする。でも、女型のドサ回り踊りに需要はあるのだろうか、原爆遺族とはいえ少年の犯す殺人未遂が一年で放逐されるだろうか、いや、瑣末なことか。ただ、原作の意図はなんだろう、世襲をぶち破る芸の生き様なのか、芸を極めたら見えない景色が見えるのだろうか、最後までわからなかったが、とても良い演技の景色がみえました、ありがとうございました😊😭
海外の人に観てもらいたい
圧巻の演技。
映画館で観た方が良い
歌舞伎シーン、圧巻でした。絶対に映画館でみたほうがいいと思います。
吉沢亮の演技が凄かった。他の作品をみてもいつも思うけど、同世代で頭ひとつ抜けていると思う。
何百年もこうやって文化を守り続けてきた歌舞伎役者さん達は特別なんだと思う。
本物の歌舞伎を観に行こうと思いました。
主題歌の井口さんもとても良かった。
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