「文化を越えた先に彼が見た景色とは…。」国宝 こけさんの映画レビュー(感想・評価)
文化を越えた先に彼が見た景色とは…。
伝統や芸能と聞くと皆さんはどういった事を思い浮かべるだろうか?比較的若年層であれば、「堅苦しいもの」や「難解なもの」という捉え方が多いのではないか。
「歌舞伎」とは4世紀ほどの歴史を経て、庶民演劇としては最古の歴史をもつ日本文化の宝である。かく言う私も歌舞伎にはあまり馴染みのない部分も多いが、純粋に面白いと感じ、3時間弱という最近の映画の中ではそこそこ長い上映時間でも飽きることなく、非常に満足度の高い作品であった。
寧ろ、上下巻の原作をよく3時間ほどであそこまで上手にまとめられたものだなと感心さえした程である。
物語の基本はもちろん、歌舞伎を追い求めた男の行く末とは…的な部分が主軸だが、その中にも役者がその歌舞伎という夢に対してがむしゃらに喰らい付いていく部分の中に、愛憎の縺れ、人間関係の汚さなど、歌舞伎以外の面での面白さもあり、単なるエンターテインメントを超えたドキュメンタリーチックな部分もある。なので、歌舞伎にあまり触れたことのない人にも観て頂きたいのである。
とある場面で三友の社員の「竹野」が「歌舞伎はどうせ世襲だ」と言う場面があるのだが、素人の私も歌舞伎を世襲であり、どうせ血がものを言うものなのだ、と思っていた節があるので、そんな中でも一人必死に喰らい付く、「喜久雄」の様には感涙した。
もう一つ面白い?不思議?と感じたのは、人間は「美」というものに対して、自分が感じられる以上の「美」を目にしたとき、なぜか「怖い」という感情が芽生え、人が出せる限度を越えた「美」というものの恐ろしさを体感し、不思議な感覚に陥った。正に「喜久雄」、「俊介」が言っていた通り、「美しい化け物」であると私も思った。
私は原作→映画と入ったので、もし原作、映画どちらも目にしたいのであれば、順序は映画→原作の方がおすすめだなと個人的には思った。もちろんどちらの順序でもこの作品の面白さは感じられるが、原作の方は「喜久雄」と「俊介」の闇の中での模索を詳細に書かれているので、映画を観賞した後に原作を見ることで更に二人の歌舞伎に対する思いの丈を感じ取れるだろう。
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