「70年代、80年代、90年代」国宝 ぱぴえるさんの映画レビュー(感想・評価)
70年代、80年代、90年代
人間国宝になった男の半生記。
前提として自分は歌舞伎をTVでしか見た事がないです。あまりにも話題なので一度は見ておこうと思い鑑賞。
【良かった点】
❶それぞれの時代の風景が懐かしかった。
メイクが現代風だったのが唯一残念でしたけど。
車、洋服、アパートの階段、カーテン、ランプシェード、灰皿、折りたたみテーブル、扇風機。
小物類へのこだわりが時代を表現していてとても良かった。
架空のワイドショー番組なんかも昭和感あって良かった。
❷伝統古典芸能、血縁だけが相続してきた技術。サラブレッドの息子 vs 才能があると見込まれて住み込みで弟子入りする事になった元ヤクザ組長の息子。
この対立構図は世界的にも普遍的なテーマであり、誰もが共感しやすかったと思う。
殴り合いするシーンはかなり面白かった。面白いというのは少し変だけど…。
それまで表面的に取り繕っていたのが決壊して腹の中の気持ちをぶち撒けてたのは良かったと思う。
❹スポンサー社長の付き人を殴る所
凄く良かった。キクオの個性が良く表現出来てた。
❺舞台&衣装が美しい。歌舞伎座の中を見れたのが良かった。思っていたより狭くてびっくりしたけど。
【良かった脇役陣】
いや本当に脇役が素晴らしかった。
✦ヤクザ新年会
全員素晴らしかった!
このシーンのみでご飯5杯いけます
永瀬正敏、宮澤エマ夫婦が絵になること。
✦主役の子供時代演じた2人。
この頃は見た目にも2人のキャラクターがしっかり撮れていてちゃんと区別がついていた。
✦キクオの最初の相手男役徳次
この子、もっと見たかったな…。こういう男らしい顔の少年俳優は今貴重だと思う。
✦人間国宝の万菊姐さん
最後まで女形の人間国宝の妖怪っぽさをよく表現出来ているなと思いました。
✦歌舞伎スポンサー三友社長、嶋田久作
いや〜この人の存在感、まだ健在ですね!大好き。一気に空気が昭和になる。居るだけで画面が映画になる、数少ない俳優さん。この方の演技が見れて凄い嬉しかった!貴重な映像。
✦俊坊の母幸子、寺島しのぶ
いや最高!
面倒くさい子供連れてきてまぁ…仕方ないわね、という梨園の妻の顔と自分の息子をもっと贔屓してよ、という母の顔をとても分かりやすく自然に演技されてて素晴らしかったです。特に墓参りのシーンは全方位にキレ散らかしてて笑ったけど「ごもっとも!」と拍手したかったわ。
✦キクオの最後の女アキコ、森七菜
梨園育ちの世間知らず、よくいるダメンズに引っかかる天真爛漫お嬢様。90年代の流行りである自立した女に憧れを持つタイプ。
凄く分かりやすくて3人の女の中でも一際輝いて見えました。彼女だけは見間違い起こさなかったw
アキコの父役も良かったです。
彼女が父にタンカ切って駆け落ちしたものの、最終的には彼女から「もうやめようよ」と冷静に判断したのは感動的でした。
【あまり良くなかった点】
✦メインキャラ4名見分けつかない問題
主役の2人が似過ぎててどっちがどちらかわからない。メイクしたらなおさら。もう少し顔の違いや背丈の差がある俳優が良かったかな。
藤駒、春江も見分けが難しく、春江はもっとヤクザの女です!っていう個性強めの顔を持った女優さん使ってほしかった。昔の土屋アンナ的な人が良かったと思う。
藤駒と付き合っていた事も知らず、突然子供出来てて驚いた。
これ恐らく外国でも言われると思うわ…、絶対あちらの人々は見分けつかないだろう。
全体的にこのような急な時間スキップが多くて、観客に説明する気はないんだなーと思い、最終的には歌舞伎CM、PVとして見てました。
✦娘との再会
キクオと芸姑・藤駒との間に出来た隠し子、綾乃との再会シーン。
このシーンもう少しなんとかならなかったのかな〜…とモヤモヤ。
若い頃は海老蔵みたいだったキクオが晩年は中村勘三郎みたいな落ち着いた大人になってるのも微妙に違和感。
でも原作がそういう終わり方なんだろうし、そこは映画に求めても仕方ないかも
【総評】
キクオの50年間を一気に振り返るムービーで楽しめました。
しかし映画としての構成は期待した程ではなかったです。まぁまぁかな。
しかし、歌舞伎という伝統芸能を世界へ紹介するには丁度よかったと思う。
ドキュメンタリーに近い感じに楽しめました。
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