「途中から置いてけぼり」国宝 Futti-さんの映画レビュー(感想・評価)
途中から置いてけぼり
映像、俳優陣の演技には文句の付け所がない。
特に歌舞伎シーンは少なくとも素人である自分を騙しきるだけの説得力があった。
演出面で言うと歌舞伎にBGMを被せるのだけは辞めて欲しかったかな。
個人的に感情を震わされたシーンは2つのみ。
東一郎の曽根崎心中を見つめる半弥のシーンと
曽根崎心中を演じる半弥の右足が壊死していたシーン。
これ以外、特に後半は無理やり物語を進めるために奇々怪々な行動を淡々と見せられるだけで置いてきぼり。
東一郎の演技を見て逃げ出す半弥とその姿を見て駆け落ちする春江まではわかる。
花井白虎他界後、後ろ盾を失い台詞のある役すら貰えない中で白虎の残した借金まで抱えて数年間耐えてきた東一郎に対して「春江の顔も見てやってくれ」と言える半弥の厚顔無恥さ。
それを平然と受け止める東一郎。
そして、その後追い出される東一郎を止めることすら出来ない半弥と春江。
引き上げる発言には自分も失笑せざるを得なかった。
土下座して詫びろ。
その後、人間国宝の万菊に引き上げられた東一郎が半弥との二人道成寺を引き受けた理由はわかる。
「歌舞伎を憎んでいても〜」という台詞が事前にあったから。
その後、息子に稽古をつける東一郎。
意味がわからん。馬鹿なんじゃねーの?こいつら。
どの面下げて頼める。なんでそれを引き受ける。
仮にこの映画が人間味皆無な化け物東一郎が国宝に邁進する中でその周囲の人間を描く作品なのだとしたらギリギリ理解できるが、
東一郎は極力感情を表に出さないものの白虎が吐血した際に息子の名前を口にしているのを見て「しんじまえ」と口に出したり、戻ってきた半弥がすぐに役を貰えそうなのを見て慌てて強攻策を取る程度には感情のある人間なんだから尚更それ以外の行動が理解出来ない。
白虎の死後、あっという間に干された筈なのに後先長いように見えなかった万菊に引き上げられた後は特に何もなく異例の早さで国宝に選ばれた東一郎。
常にスポットライトが当たり続けたというインタビュアーの台詞には自分たちは今まで何を見せられてきたのかというクエスチョンマークしかない。
ちょくちょく謎のカットインがあったものの
唐突に最後の最後に出てきた意味不明な「見たい景色」と言う発言と感動要素で娘を出して無理やり終わらせた感じしかない映画でした。
説明し過ぎなのは良くない。
映像から汲み取るのも映画の見方だというのはわかるがそれが突拍子無さすぎると話にならない。
3時間の一本で纏めたのが失敗だったのだろう。
無理やり纏めるならせめて芸姑と娘はカットすればよかったものの。
俳優陣の努力に☆+1で☆3つ。
白虎が倒れるまでのクオリティで最後までやりきって欲しかった。
観てしばらく経つが、賛辞のレベルがどんどん上がってくるのを、不思議な気持ちで見ていました。
人として、いまひとつ理解できない行動や感情表出を、5年後…みたいにポンポン飛ばされると、まさに私は置いてけぼりに。
歌舞伎のシーンは、詳しくない分とても楽しめました。
もやもやしてた気持ちを感想にまとめてくれて助かった。
本当にこれ。
結局のところ、(人間)国宝とは何だったのか?
という点に関してはまったくもって分からなかった・・・。
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