「喜久雄の観たかった景色は……。」国宝 といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
喜久雄の観たかった景色は……。
8月下旬に鑑賞しました。6月6日の公開から2か月以上が経過した8月下旬でも、この映画の人気は衰えを知りません。平日昼過ぎの回で、4割程度の座席が埋まるくらいには観客がいました。私の住む秋田県では、平日昼間の映画館は観客が自分一人という貸し切り状態になることも少なくありません。公開から2か月以上経ってるのに、この盛況ぶりには正直驚きました。
色んな映画レビュアーさんが大絶賛して、レビューサイトではとんでもない高評価を獲得している本作。ハードルがこれ以上ないくらい上がり切った状態での鑑賞です
結論ですが、観に行って良かった。3時間近い上映時間があっという間に感じられました。映像の美しさ、役者陣の演技の素晴らしさ、長尺のストーリーを見事にまとめた脚本と構成の巧みさ、目を奪われる美しい映像の数々。どれをとっても最上級の作品でした。話題になるのも納得のクオリティで、年間ベスト級の作品でした。
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ヤクザの組長の息子だった喜久雄(吉沢亮)は、15歳の時にヤクザ同士の抗争によって父親を喪った。その後は歌舞伎役者・二代目花井半二郎(渡辺謙)に引き取られ、半二郎の息子であり同い年の俊介(横浜流星)とともに、歌舞伎の稽古に励む。そこで喜久雄は女形の才能をめきめきと開花させていくのだった。
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この映画、何より歌舞伎のシーンがめちゃくちゃ良かったです。
私は歌舞伎を観たことはありませんが、吉沢亮さんと横浜流星さんの歌舞伎の演技は、直感的に「めちゃくちゃ上手い」と感じられるものがありました。準備に時間をかけ、そして相当な情熱を持って演じられているのだということが分かります。この映画を鑑賞した歌舞伎役者の市川團十郎さんは、ご自身のYouTubeチャンネルで本作の感想動画をアップしており、劇中の歌舞伎の演技について「違和感なく観ることができる」「すごく練習されたんだと思う」と言及されていました。プロの歌舞伎役者から見ても「違和感ない」というのは本当にすごいことです。
個人的な話になりますが、私は小学低学年から高校卒業まで剣道部に所属していました。そのため、映画やドラマで剣道をするシーンが出てくると、その所作を見て「上手いな」「下手だな」とかを感じてしまうんですよね。上手ければ問題ないんですが、下手な剣道をしているのを見ると、どうしても気になってしまって、作品を楽しむノイズになってしまうんです。そのため、本作の歌舞伎の演技がプロの歌舞伎役者である團十郎さんから見ても違和感のないものだったというのが、いかに凄いことかというのが良く分かります。
本作の歌舞伎の演技は撮影の1年半前から練習が開始されていたらしいです。横浜流星さんは吉沢さんよりも3か月ほど遅く稽古を開始したのに、あっという間に吉沢さんに追いついてしまったと、吉沢さんがおっしゃっていました。「そのまま歌舞伎役者になってしまうんじゃないか」と思うくらい歌舞伎にのめり込んでみるみるうちに上達していく横浜さんを見て、「負けてられない」と奮起した吉沢さん。二人が切磋琢磨したおかげで、この圧巻の歌舞伎シーンが生まれたのだと思います。
そして、主演の二人以外にも、本作の制作陣には一流のスタッフが揃っています。監督の李相日さん、脚本の奥寺佐渡子さん、撮影のソフィアン・エル・ファニさん。作品制作を主導した監督は言わずもがな、3時間という長尺の映画で、最初から最後まで全く飽きることなく退屈なシーンなどなく集中して鑑賞することができたのは、間違いなく奥寺さんの引き込まれる脚本と、ソフィアンさん撮影するの美麗な映像によるものだったと思います。
語りたいことはまだまだありますが、長くなるのでこの辺で。
本作は今後何年も語り継がれる大傑作映画だと思います。今年はまだ4ヶ月残っていますが、おそらく私の今年の年間ベスト映画になると現時点では確信しています。素晴らしい映画でした!オススメです!
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