「※ネタバレ考察※」国宝 ヘルセーさんの映画レビュー(感想・評価)
※ネタバレ考察※
まず軽く感想。
これは今年1番の映画になりそう。
演技、映像、ストーリー、どれをとっても素晴らしくあっという間の3時間でした。
ということで考察です。原作は読んでいません。
①刺青
きくおの刺青はミミズクで、恩を返すという意味が劇中でも語られましたが実は春江も一緒に刺青をしており、おそらく睡蓮の刺青でした。
花言葉は、「清純な心」、「信仰」、「信頼」、「優しさ」、「甘美」です。
どれも当てはまる言葉だと思いますがきくおに対する愛するが故の「信仰」は春江にぴったりな花言葉だと思います。
②春江の行動
春江はなんでしゅんすけに行ったのか?が議論されています。
そもそもしゅんすけに行ったと思う人が多いですが違います。
結果から見るとあそこでしゅんすけが春江と消えたことによって、きくおは半次郎の名を襲名できています。
その後戻ってきてしまいますが戻ってきたことによって名前を奪ったことから解放されて結果しゅんすけと17年ぶりの共演をして復帰。
しゅんすけの足の壊死も「ただのアザだと思った」事により膝下の切断につながっています。
そして最後のしゅんすけとの共演を後に国宝へと進んでいきます。
春江がしゅんすけと戻ってきた時ごめんも言わなければ何も言い訳のセリフもなく、ただきくおを見守る描写しかありません。
映画最後の演目でも春江は舞台を見に行っています。
春江が自分で言った通り外から支えている、と思うと繋がりが見えてきます。
春江は最初から最後まできくおを想って、芸を極めさせるため、成功させるために行動しているのです。
③社長と継いだ人
社長がきくおとしゅんすけの2人に初めて挨拶した際に一緒にいた人(名前忘れた)が歌舞伎はエンタメだ、血が繋がっていないから苦労しますよと言ってきくおに殴られました。
ですがきくおが半次郎のおっちゃんの代役として出た際、明らかに感動してました。たぶん。
そこから歌舞伎を下に見るような発言をしていないことと、社長を継いでいること、きくおに歌舞伎に戻ってこないかと会いに行ったことからも、きくおの演技から歌舞伎の魅力に気付いたということがわかります。
つまりきくおのファンなんです。
最後のカメラマンの言った、「気づいたら拍手をしていた」1人なのです。
④きくおの襲名式
半次郎は白虎に、きくおは半次郎に襲名する式で、半次郎(渡辺謙)が血を吐き倒れてしまいます。
意識がもうろうとする中、しゅんすけの名前を呼び続けていました。
それを聞いたきくおは「ごめんなさい」と呟いていたのです。
ここのシーンの前にお墓参りで襲名の話をする場面があります。
半次郎の奥さんは「半次郎」の名はしゅんすけに残すべきだと言いますが、半次郎は「戻って来ないんだからしょうがない」ときくおにする事を変えません。
奥さんは「これだから芸能の人間は!」と非難しますが、最後に息子の名前を呼ぶ事からしゅんすけに名前を譲りたかった「父親」の部分が垣間見えます。
襲名式で血を吐き倒れる事になるくらい、半次郎はしゅんすけに名前を譲るために長年息子を待ち続けていたのです。
きくおも「半次郎」の名前を奪ったという罪の意識から謝罪の言葉が漏れ出てしまったのです。
④きくおの見た景色
きくおが最初に国宝を見た時と代役で出た時、最後の演目が終わった時に黒バックの桜吹雪が散っている描写が挟まります。
これはなんなのか。
しゅんすけと一緒に大舞台に立った後のインタビューで「景色が違った」とコメントしています。
これは大舞台に立ち、芸が極まって来て出た言葉だと思います。
最後のインタビューで「探し物をしている」とコメントしています。
これはもちろん最後のシーン。演目が終わった後に見た景色のことです。
つまり、きくおが国宝を見た時に見た、目の裏に浮かんだ景色。
これを追い求め、探し求める事が実は映画のメインストーリーだったのです。
国宝のおじちゃんが「どこにいたんだ?私には分かる、踊ってみなさい」と言ったのは「あの景色を見たいんだろ?踊りなさい。芸を極めなさい。」という意味なのです。
そして最後、芸を極めたきくおは「綺麗だ。」と言います。少年時代に夢見た景色を見ることができたのです。
⑤最後のカメラマンとのシーン
印象に残るシーンでした。
「拍手を浴びるためにどれだけの人を片付けたのかわかってる?」
これに共感している人が多いようですが、この映画で言いたいのは、芸ごとを「極める」事は何かを捨てること、悪魔と契約するような事を表現しています。
どの女性もきくおを応援していました。その恩返しはきくおにとっては「芸を極める」ことだったのです。
最後きくおは自分の娘の事を忘れていませんでした。きくおは誰の恩も忘れていません。きくおなりに全力で恩返しをしているのです。
「悪魔に感謝せんとな?」
このセリフの後きくおが衣装の準備をするシーンに切り替わり、「はい」と言いながら準備します。
ここではシーンが切り替わるので娘に返事をしていませんがここの「はい」というのはきくおの気持ちだと思います。
なので娘には返事をしませんが悪魔に感謝している、後悔をしていないということなのです。
「拍手をしていた」
憎んでいるのに極まったその芸に拍手をしてしまった。というシーンです。
きくおは決して傷つけた人たちを忘れてはいません。
拍手を受けるための代償を十分理解しています。
まんぎく国宝のように、きくおは今後も国宝として、死ぬまで舞台に立ち続けるでしょう。
もしかしたらそれは恩返しもありますが、責任や償いの意味もあるのかも知れません。
以上です。
うろ覚えな部分があるので間違っていたらすいません。
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