劇場公開日 2025年6月6日

「芸道は修羅の道」国宝 シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 芸道は修羅の道

2025年7月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

個人的に目の手術を行い一ヵ月以上劇場で映画を見れなかったのですが、その間ずっと見たかった作品がこれです。
しかし公開されてかなり日が経つし、平日にも関わらずそれなりの満員なのに驚きました。
更にはネットの映画友だちも普段感想を書かない人達まで本作を見て珍しく感想をUPしているのにも驚きました。
それも早く読みたいというのも手伝って早く見たかったのですが、もう既に書き尽くされていて出がらしの様な感想になってしまうと思います。

なので、思いついたことの箇条書きの様な感想になりそうですが、まずは鑑賞後の印象ですが「これは日本を代表するような作品だったなぁ~」ってのがまず思った事です。
“日本を代表する映画”って、勿論ジブリのアニメもそうだし「鬼滅の刃」でも「ゴジラ-1,0」も間違いなくそうなんですが、私の本作でそう思ったのは何十年に一本位出るか出ないかの特別な作品の意味合いであり、映画の出来だけの話でもなく“日本”を象徴するような意味合いでの印象です。
例えばアメリカ映画で言えば「風と共に去りぬ」とか「ゴッドファーザー」の様な作品ですかね。

そして、レビュータイトルの「芸道は修羅の道」は、前のレビューで書いた『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』の「娯楽映画は修羅の道」のモジったものです。
上記で日本を代表する作品と言った事と相反する感じですが、本作については日本だけではなく世界でもエンタメ・芸道等を目指したり職業の人達に共通するテーマも多く含んでいたので、世界中の(特に)そういう職業の人々にも共感を得られる作品に仕上がっていましたし、恐らくトム・クルーズが見ても大いに感じる事がある作品だと思いますよ(笑)

更に監督は在日韓国人、撮影は西洋人、主役二人は映画俳優、国宝役は前衛ダンサーと歌舞伎とは別の世界の人達が歌舞伎という特殊な伝統文化を描いているのには恐らく明確な理由があったのだと思います。

何時ものように原作は未読ですが、長編小説の映画化という事はすぐ理解出来て、かなりの部分省略しているのも分かるし様々なテーマが内包しているのも分かり、そのどの部分に観客が興味を持つのかも人それぞれという感じではありますが、お喋り好きなオバサマ達や落ち着きのないシニア層が大半だった客席が、冒頭から固唾を呑んで見守っていたのは肌で感じられ、それだけでもお見事って拍手を送りたくなりました。

そして私が一番興味を惹かれたテーマは「悪魔との取り引き」の部分ですかね。
これはゲーテの『ファウスト』ですよね。手塚治虫という天才もこのテーマで何作も漫画を描いていますが、己の魂と引き換えに一つだけ欲しいものを手に入れるというテーマと、所謂「ギフテッド」を授けられた者は、その才能を神に為に捧げなければならないという概念とが組み合わさり、利己的と利他的とのせめぎ合いと諦観というのが、創作や特殊技能に携わる人達の共通した絶対的な関心事であり、生きる事の意義そのものという世界観。
それは、日本の特殊文化の“歌舞伎”であっても、世界中の同じ種類の人達には十分過ぎるほどに共感できる普遍的テーマであるし、本作はそれを見事に伝えていた作品であった様に思えました。

だから「俺たち凡人が見ても…」ではなく、その芸や作品に羨望・喝采・陶酔し狂うのも凡人、妬み嫉み嫉妬し狂うのも凡人、その世界を支えているのも実は凡人(大衆・観客・普通人)達であり、彼らがその能力全てを捧げているのは、己や芸(作品)の為のようであって実は我々凡人達の為にであることを忘れてはならないというお話だったのだと思います。
それは、主人公が見たいが見えない場所であり、そこは結局“大向こう”であり、そこは凡人(普通人)の世界なんだと私は解釈しました。

追記.
この作品の子役達も良くて、なんか見覚えがあると思って調べたら「怪物」に出ていた子と「ぼくのお日さま」に出ていた子だった。この子たちも吉沢亮や横浜流星の様な役者になるのでしょうね。今の役者ってホント(上手いではなく)凄いよなぁ~、っていうか本能(感覚?)的に役を掴む能力に長けているのかな?これも“ギフテッド”?

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