「極めることの凄まじさ、孤高さ、尊さ」国宝 とろろさんの映画レビュー(感想・評価)
極めることの凄まじさ、孤高さ、尊さ
遅ればせながら鑑賞。
6月初旬公開にも関わらず、どでかいシアターを今なお満席にする異常な事態が続いています‼︎
それもそのはず、余韻を感じられる素晴らしい作品でした。
任侠の一門に生まれ、芸の道に人生を捧げる喜久雄の50年の物語。
あらすじを見ただけでは想像できない人生を歩み、"国宝"まで辿り着きます。
国宝までたどり着くまでの人生の中で、幸福に見えたのは少年時代、ライバルであり親友の俊介と芸に勤しんでいるとき、共に舞台に上がっている時、春江と過ごす時間。
長い人生の中では束の間の時間だったと思う。
私は、自分の人生に置き換えた時に、「ここまでやれない」と思ってしまった。
誰かといる幸せや、心休まることを全て犠牲にして、芸に向き合う。
芸術としては素晴らしいものを産み出しているけれど、これは幸せな生き方なのか。
だけど、ラストシーンでそれは払拭されます。人生の全てを芸にかけたからこそ見れる景色がある。
同じ、国宝であった万菊さんの言葉。
「でもそれでいいの。それでもやるの。」
どんなに苦しくても辛くても憎くても。
歌舞伎に向き合った。
だからこそ、誰もが見られない景色が見れた。
本当に何かを成し得ようとするならば、全てを投げうる覚悟が必要。
吉沢亮さん、横浜流星さん、渡辺謙さん、田中たみさん、みなさん素晴らしい演技です。
吉沢亮さんと横浜流星さんは、複雑な関係性を見事に表現されました。
本音と建前と思いやり。
ぐちゃぐちゃになって、葛藤する思いがすごす伝わりました。
半二郎さんの代役で「曽根崎心中」を演じる前の2人の極限のシーン。
色んな感情の中で、喜久雄を鼓舞するあのシーンはグッときました。
俊介も素晴らしい歌舞伎役者だった。
では、何が結果を変えたのか。
それは、"なりたい"ではなく、
"なにを失っても必ず成し得る"という、
あくまと取引きできる覚悟だったんじゃないかと思う。
観た人が、思い思いの感情を持てる素晴らしい映画だと思います。
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