劇場公開日 2025年6月6日

「原作のタイトルだが『国宝』には違和感がある。と言いつつ、じゃあ何が相応しいのかは解らない」国宝 LukeRacewalkerさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5原作のタイトルだが『国宝』には違和感がある。と言いつつ、じゃあ何が相応しいのかは解らない

2025年6月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

いや、驚いた。
ビッグネームの渡辺謙はともかく、以前から吉沢亮と横浜流星の上手さは知ってはいたが、ここまでとは。
この映像づくりに、凄まじい情熱と鍛錬を注ぎ込んだことがわかる。
日本映画も、最近はものすごいものを観せてくれる。

なまじ歌舞伎ファンじゃないほうが楽しめるのかもしれない。何でもそうだが、特定の領域にマニアックな人たちは、その領域が映画化されると、作品の出来自体よりも見当違いなディテールやらご自身の違和感やらでディスりがち。それはちょっと見苦しい。

しかし僕のような「素人」からすると細かいことなんか気にならない。むしろ、本当のようなウソを見せるべき壮大な「物語」というのは、まさにこういうものなんだろうと驚嘆至極である。
二転三転する物語の脚本も巧みだし、演出も優れていると思う。カメラワークも良い。

金曜平日昼からの部でほぼ満席。
ただし、ここ渋谷のTOHOシネマズは今いち劇場環境が良くない(ドアのすぐ外が通路だったり売店が狭くて異常に混んだりする)ので、改めて日比谷で観てみたいとも思うが、さすがに丸々3時間というのが昨日の『地獄の黙示録ファイナルカット』に続いて満腹感が半端ない。

とは言え、この作品もやっぱり映画館の大スクリーンと良質な大音響でないと堪能できないだろう。

喜久雄、俊介の少年時代を演じた黒川想矢、越山敬達がともかく見事だった。その後の成長した姿である吉沢や横浜に自然に繋がるほど良かった。
てっきり歌舞伎界のあまり有名ではない御曹司を使っているのかと思ったが(それほど所作がすごい)、まるきり未経験者、というより役者とモデル。それも15歳と16歳とは。
僕はほとんど事前情報を見ずに観に行くし、顔をぱっと見てすぐに名前や出演作がわかるタイプではないのだが(「どこかで見たことがある」程度w)、そうか、黒川は『怪物』の、越山は『ぼくのお日さま』の主人公だったか。
黒川も越山も、前作では内向的な子どもを演じていたので印象ががらりと変わってしまい、まったくわからなかった。

ところでこの作品はカンヌで上映されたらしいが、どうも向こうではあまり高い評価を受けていないように漏れ聞こえる。
恐らくエキゾチシズム(ゲイシャ、フジヤマのレベル)で通じたかもしれないけれど、日本人のわれわれが知る歌舞伎界の「世襲」「血」という凄絶でおどろおどろしい呪縛がこの映画の大きなモチーフなので、そんなことは欧米人にはまったくわからないだろうし、到底この作品の深みには触れられない。

それがわかるとすれば、たぶんマッカーサーの副官だった「歌舞伎を救った男」フォビオン・バウワーズと、稀代の日本通ドナルド・キーンくらいだろう。

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LukeRacewalker
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