「人間の一生を描くには短すぎる時間。」国宝 おけんさんの映画レビュー(感想・評価)
人間の一生を描くには短すぎる時間。
歌舞伎を見る映画ではなく歌舞伎役者の人生を見る映画。歌舞伎を全く知らなくても楽しめた。
類い稀なるセンスに努力を重ね、血筋が全ての世襲制で守られてきた歌舞伎界に食らいつく喜久雄と、恵まれた血筋を活かして幼い頃から稽古を重ねてきた俊介。お互いにないものねだりのように嫉妬し合い、歌舞伎に翻弄されながらも歌舞伎に生きる。2つのジェットコースターのような人生が交互にうなりながら駆け巡っていく重厚な3時間。
実際に歌舞伎を演じるシーンがやはり特に圧巻。画角が横長なことによって引きの絵なのに没入感があるという不思議な感覚。人生で一度だけ歌舞伎座で見たことがあったが、その時とはまた違って舞台を客席の上に浮かんで俯瞰して見ているかのような贅沢な体験だった。
ストーリーからは俊介の芸能人生どころか人生そのものの栄枯盛衰を血筋によって支配されてしまうという残酷さに痺れ、喜久雄からはどんなに順風満帆な人生だと思われている人でも血と汗の滲む努力があり、地獄の底を這いずり回るような絶望を味わったり、理不尽な現実に嫉妬を燃やしたり、人生とは絶対に一筋縄では行かないものだと改めて感じさせられた。
映画としては長いのかもしれないが、人間の一生を描くには短すぎる時間。一瞬の儚さがギュッと詰め込まれている作品なので、フラッと見に行くというよりも、しっかりと集中力を確保して見に行ったほうがより楽しめるかも。
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