「気づかなかったんですか? 彼の正体…」正体 humさんの映画レビュー(感想・評価)
気づかなかったんですか? 彼の正体…
追い詰め、追い詰められていく緊迫感。
見開いた目の充血した白眼からそれぞれの役柄の〝精神〟が飛び出してくるかのような山田孝之と横浜流星の圧倒的な目力だ。
主人公が陥った窮地からの脱出劇には、冷静な頭脳と持って生まれた運動能力、信じてもらえる人格と信じる人と巡り会う運が重なった。
ではそのミラクルが揃わず、ある日冤罪をかけられたら…
「証拠が無いなら決まりでしょう?」
「このまま静観です。いいね?」
権力者の言葉に身震いした。
身震いしながら、過去の事件が頭をよぎる。
人が人を裁くから間違いが起きる。
間違いは正さなければならない。
それなのに…
冤罪のからくりに愕然とさせながら
映画はその先をみせた。
良心の呵責に対峙していく又貫刑事の表情の変化と行動、父にかけられた容疑と重ね疑念のなかにも優しく真面目でピュアな鏑木を見極めて守る沙耶香の姿、あの時鏑木だけがみせた思いやりを忘れられなかった野々村、鏑木の本気の努力を知り本心を偽る虚しい時間を過ごしていた舞の気づき。
信じることをやめることは、その正体と向き合わずに断つこと。
それは時に、心に嘘をつく自分をよしとする自分が生きる自分の正体。
信じてくれる人の存在を諦めなかった主人公に光をさすラストは、信じようとする者と間違いを認め正した者たちを同じ光で包み返していた。
重く張り詰めた判決の手前の瞬間
私は、
あなたは、
何を思ったか。
共感ありがとうございます。
主人公は自分を信じて逃げきった(この表現には語弊がありますが)、じゃあ痴漢冤罪お父さんは?あの時心を折っていなければ・・今も苦しいんでしょうね。
おはようございます。
相変わらずの素晴らしいレビュー拝読。鳥肌でした。
みなさん高評価。実の所私はイマイチだったのですが、humさんはじめ皆さんのレビューを拝読し、この作品の観方がわかったような気がしています。
でも本作よりもhumさんのお書きになったこの作品が観たくなりましたw
すごいレビューで、鳥肌が立ちました。
「信じることをやめることは、その正体と向き合わずに断つこと。
それは時に、心に嘘をつく自分をよしとする自分が生きる自分の正体。」
これらの言葉が、タイトルが「正体」である意味の一つの解答としてストンと胸に落ちました。
自分は、鏑木の「正体」というミスリードを誘いながら、世の中の「正体」を描き出そうとしている作品と思っていたのですが、humさんの言葉の方がずっとしっくり来ます。
いいレビューに出会えて幸せでした。ありがとうございました。