劇場公開日 2024年6月7日

  • 予告編を見る

ハロルド・フライのまさかの旅立ちのレビュー・感想・評価

全72件中、1~20件目を表示

4.0痛みと優しさが押し寄せるロードムービー

2024年6月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

世界的ベストセラーの原作を、作者が自ら脚色した本作。まずもって引き込まれるのは、ジム・ブロードベントが手紙を投函するタイミングを失って、次のポスト、また次のポストと彷徨い歩き、気づくと旅がもう始まっているところだ。最初の前提条件や理由をすっ飛ばし「歩く」という行為へ踏み出させるこのナチュラルさ。歩くことはどこか祈りに似ている。また、歩を重ねることは思考や記憶の反芻にも通ずる。心や感情が動くことで、これまで断片的にしか考えられなかったこと、直視するのを避けていた現実とも、自ずと向き合えるようになっていく。そしてサウス・デヴォンからイングランドとスコットランドの境界近くにあるベリック・アポン・ツイードまで、移りゆくリアルな景色の雄大さ、美しさが、活字を超えた映像作品ならではの情緒となって感動を深めゆく。ロードムービーが生まれにくい英国の地で、またひとつ、痛みと優しさが同居する旅映画が生まれた。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
牛津厚信

3.5広大な自然と美しい街並みを舞台に描かれる“贖罪”の旅

2025年2月23日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

知的

幸せ

世界累計発行部数600万部(2024年6月)を誇るイギリスのベストセラー小説『ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅』を原作に、アカデミー賞俳優ジム・ブロードベント主演で映像化したロードムービー。脚本は、原作者でもあるレイチェル・ジョイス自身が脚本初挑戦。

イギリス・イングランドのデヴォン州サウス・ハムズ郊外に住む、定年退職した老人ハロルド・フライ。妻と共に平穏な暮らしを送っていた彼の元に、かつてビール工場に勤めていた際の同僚の女性・クイーニーから一通の手紙が届く。末期癌によりホスピスに入院中の彼女は、彼の住む場所から800キロ離れたスコットランドとの国境の街ベリック=アポン=ツイードに居た。当たり障りのない内容の手紙を書き、ポストに投函しようと家を出たハロルド。しかし、彼にはクイーニーに対する“ある想い”があり、中々手紙を出せずにいた。ふと立ち寄ったガソリンスタンドの若い女性店員に「私も伯母が癌になった。でも、祈る事で救いたいと思った。大事なのは、信じる心」と背中を押されたハロルドは、手紙ではなく直接会って想いを伝えたいと、彼女の元へ歩いて向かう事を決意する。

イングランドの広大な自然と美しい街並みを舞台に、旅を通じて一人の老人が自分自身と向き合う過程を描いている。始まりこそ美しく希望に満ち溢れていた旅も、次第に険しさを増し、クライマックスではゴールを目前に心が折れそうになってしまう。それは、旅を通して断片的に語られてきた、ハロルドの過去に対する後悔によるもの。一人息子であるデイヴィッドの自殺を食い止める事が出来なかった過去だった。本人が語るように、「今までの人生で何もして来なかった」ハロルドは、子育てにおいても決して良い父親ではなかった様子。幼い頃から息子との間には距離があり、またそれを埋めようとする努力もしてこなかった。思春期を迎え、博識になった息子との会話に着いていけず、失望される。息子はケンブリッジ大学に合格するも、挫折を味わい家に帰ってきてしまった。だが、ハロルドはそんな息子にどう接していいか分からない。やがて、酒とクスリに溺れた彼は、自ら首を吊って命を絶ってしまう。
息子の自殺、妻との衝突を前に、自暴自棄になった彼は、ビール工場で暴れ回る。しかし、そんな彼の姿を見兼ねたクイーニーは、自らが責任を被って解雇され、去ってしまう。だから、この旅はハロルドにとって、亡き息子と死の淵に立つ親友への贖罪なのだ。

先に述べておくと、私はハロルドの行いにあまり感情移入は出来ていない。私自身、未だ何者にもなれずに燻り続けているが、彼のように「何をすべきか・何をしたいか分からずに、ただ生きてきた」人間ではないからだ。私は、この人生において自分が何をしたいのか、何をすべきかを既に見つけているし、その為の行動も起こしてきた。未だに何の成果も上げられず仕舞いだが、少なくとも“やらなかった事”を後悔した事はない。だから、彼のように“何もしなかった”という後悔と、“まさか”という偶然から旅を始める事はないし、彼が旅を続ける中で向き合う事になる“自分自身”には、毎日向き合っている。

幸か不幸か、現代では目的もなく、ただ“死にたくないから生きる”事が可能である。しかし、人間は言語によってしか考えられず、言語によって自らの人生を構築する生き物である。だからこそ、誰しもが本質的には自分の人生に
意味を見出したいはずだし、意志と意識を持って生きる事を望んでいるはずなのだ。ただ、自らの目的を明確に持つ人はごく少数派である。ハロルドもまた、目的も分からず生きてきた中で、息子の死という消えない痛みを抱いてしまったのだろう。そして、そこから抜け出す手助けをしてくれた同僚を犠牲にした後悔を背負っている。その事に対する罪悪感を払拭するかのように、ハロルドは贖罪の旅を始めたのだ。一方的に取り付け、しきりに「約束だ」と口にする姿は、ともすれば単なる独り善がりにも映る。だが、これまで目的を持たずに生きて来た彼は、ようやく自分のすべき事を見つけられたのだ。

そんなハロルドの旅に興味を持ち、同行する事になる青年ウィルフに、ハロルドはかつての息子を重ねる。夜の森に怯える彼を抱きしめるハロルドの姿は、かつて息子にしてやれなかった事を果たすかのようだった。息子と同じく、酒とクスリに溺れ、立ち直りたいと願うウィルフ。最初の数日間こそ上手くやっていくが、次第にハロルドの旅を“巡礼の旅”と称して参加する人々が集まり、一団となった頃には再びクスリに手を付けるようになってしまう。手癖の悪さからハロルドがクイーニーの為に買ったガラス水晶のネックレスを盗もうとし、それが原因で仲違い。翌朝には姿を消してしまう。ハロルドは再び、悩める若者を救う事が出来なかったのだ。

そして、ウィルフから始まった、ハロルドの旅に同行する人々。彼の行いを“巡礼の旅”と称し、メディアもそれに追随して囃し立てる。彼らは皆、何処かお祭り状態で、お揃いのTシャツを作ったりする。最初はなるがまま流れに身を任せていたハロルドだが、そもそもが贖罪の意志によって始めた旅を美談にされる事に次第に疑問を抱く。1日に進む距離は、1人で歩いていた時より遥かに短くなり、ペースダウンしてしまう。そんな旅の一団の姿に同じく疑問を抱いたケイトに促され、ハロルドは道中で出会った野良犬だけを連れ、夜明け前に一団を去る。そして、その後誰一人としてハロルドの後を追いかけて来る者はいない。彼の行いを“巡礼”と持て囃していた彼らは、“手早く他人の美談に乗っかり、自分に酔いたいだけの人々”だったのだ。彼の行いを連日取り上げていたメディアも、すぐに彼の姿を追う事を止め、立ち寄る街の人々も次第に声を掛けなくなっていく。
本作には、明確な“悪”は存在しない。ハロルドを手当てした女性医師や、道中のカフェでお菓子やレモネードをご馳走した人々、彼にエールを送り、食料を渡す人々に至るまで、皆ハロルドの無謀な旅を馬鹿にすることも邪魔をすることもしない。しかし、他人の行いに勝手に意味を見出し、無責任に乗っかる事で、自らも“何か意味のある事をしている”気になるのは、とても醜悪な事のように思えるのだ。ハロルドにとって彼らは、“悪意なき足枷”だったに違いない。

道中で拾った野良犬が、ハロルドの唯一の理解者かのように感じられる。しかし、途中立ち寄った街で、犬は見ず知らずの女性に懐き、彼女と共にバスに乗って去ってしまう。ハロルドは再び一人となって、最後の行程に挑まなければならなくなる。好意的に解釈するならば、この野良犬はハロルドが息子の死に向き合う為の心の準備期間を支える役割があったのだろう。だからこそ、その準備が出来た彼に、もう犬は必要ない。犬は、新たに自分を必要としていそうな孤独な女性の元へと向かい、新しい役割を果たすのかもしれない。

個人的には、ハロルドよりも彼の妻モーリーンの姿の方がリアリティがあり、共感出来た。ハロルドの突然の行動に戸惑い、人々から賞賛される彼を快く思えない姿は、最も人間味に溢れているように思える。街を去る際、自暴自棄になっていたハロルドを励ます言葉を伝えに来たクイーニーの言葉を、「何故、彼だけが同情されるのか?」と伝えないでいるのも理解出来る。息子と向き合う事を避け、最悪の結果を防げなかった彼の無力さ、そして自分自身の無力さに怒りを覚えずにはいられなかったのだろう。ましてや、そんな自分を置き去りにして、恩人を救おうと無謀な旅に出る姿を、到底肯定出来るはずもない。
そんな、「取り残された」モーリーンに寄り添う隣人のレックスの姿も印象的。彼もまた、失った側の人間であり、妻を病で亡くした過去を持つ。そして、無駄な抵抗だとしても死にゆく彼女を励ます事をすれば良かったと後悔を抱えている。これは聞いた話だが、人が最期の瞬間に最も後悔するのは、“やった事”ではなく“やらなかった事”なのだそうだ。だから、レックスはハロルドの行いを肯定し、やらせてあげるべきだとモーリーンを説得する。

やがて、モーリーンは旅の途中のハロルドを訪ね、カフェで帰ってくるよう懇願する。しかし、ハロルドは自らがそうしたように、彼女に動き出すよう促す。取り残されたまま、新しい一歩を踏み出せずにいるモーリーンにとって、旅の中で不要なものを削ぎ落とし、剥き出しの状態となって目的を持って突き進んでいくハロルドは、途端に遠い存在になってしまったのかもしれない。だが、遠い存在となってしまったかのように思えるハロルドも、モーリーンと同じく弱い“人間”なのだ。ゴールを前に、息子の死の記憶が鮮明に甦り、挫けそうになって堪らずモーリーンに電話をする。そんな彼の背中を、「ここで止めたら、あの人は一生後悔する」からと、今度はモーリーンが押す。旅を終え、海辺のベンチに座るハロルドの隣にやってきて、「無意味だった」と吐露する彼を励ます。やり遂げたその行いは、誰かの心に変化を齎したと。

この「簡単に奇跡など起こりはしない」というシビアさを含んだラストが良い。それは、奇跡とは程遠い、しかし1人の人間が意志を持ってやり遂げた行いに対する“結果”。クイーニーの為に選び、ウィルフから「ただのガラス玉だ」と言われたガラス細工のネックレス。病室の窓辺に飾ってきたそれに、太陽の光が乱反射して、話すことさえ困難となったクイーニーに笑顔を齎す。一見無意味なように思える事も、動き出せば何処かで誰かが見ているかもしれないし、誰かの心を変える事もあるかもしれない。だから、とりあえず「動き出せ」。本作は、そういうほんの僅かな希望の物語だったのかもしれない。そこに奇跡はなくとも、行動による結果だけはあるのだから。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
緋里阿 純

3.0タイトルなし

2025年1月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

知的

贖罪の旅なんだろうな
歩くにつれ、どんどん過去の辛い事がよみがえり、耐えられなくなって一度帰ろうとしたもの。
800kmの道のりは途方もなく、野宿しながら、おそらく70才を越えた方が歩き通すとは…。その時間、自戒しながらは辛いなぁ(自分は)

コメントする (0件)
共感した! 0件)
とも

4.0徒歩の旅には願いと贖罪が込められていた。

2024年11月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

あらすじをチラッと読んだときは、「手ぶらで、ふらっと歩き出した・・・」
それって、単なる思いつき!?なのかな
と思ったけれど、それは違いました。
交通機関を使わない、
バスも電車もそしてヒッチハイクもしない・・・
それはハロルドが決めた事だった。

イギリス映画らしい手触りの、心に沁みる名作でした。
定年後を妻のモーリーンと2人で暮らすハロルド・フライ。
ある朝、旧友で元同僚のクイーニーから、手紙が届く。
800キロ離れた北部の町で癌のためホスピスに暮らしているとの
知らせだった。
短い手紙を書き、「ポストまで行ってくる」
そう妻に告げて家を出た。
しかしポストに投函できない。
郵便局まで行ってもやはり出せない。
ハロルドは、着のみ着る のまま歩き出していた。

お金は少し持っていました。
しかし携帯も着替えも歯ブラシも何一つ持たない。
「歩く事」それはクイニーへの
「生きていて‼️」
「死なないで‼️」
一歩一歩の苦行に、その願いが込められている。
ハロルドは先々で妻に電話をします。
妻のモーリーンは“置いてけぼりの妻“
寂しさを隠せません」
それともう一つ、ハロルドとモーリーンのひとり息子デヴィッドの
回想シーン。
オックスフォード大学に受かるほど頭の良かったデヴィッド。
なのにドラッグと酒に溺れて行った息子のこと。
もう一つの悔いはクイーニーへの借りを返してないこと。

そして62日以上歩いて、歩いて、ハロルドの心も身体も清められていく。
息子の死から25年。
夫を責め続けていたモーリーン。
ハロルドの不在がモーリーンに気づかせる・・・
ハロルドの存在がどんなに大事だったか。

人生の苦しみを乗り越えてきたハロルドとモーリーンの絆が
より深くなるラスト。
味わい深い良質な映画でした。
(途中で参戦した“四角い顔のワンちゃん“
(気儘な途中退場に、笑ってしまいました)

コメントする 2件)
共感した! 17件)
琥珀糖

4.0人生見つめ直す作品

2024年9月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

幸せ

オレも歳をとり主人公の気持ちわかるようになってしまった。
笑えて泣けてしんみりする良い作品だなぁ。
60過ぎた人は必見だなと。人生見つめ直す良き作品。
役者が上手いわ。

コメントする (0件)
共感した! 3件)
koo

3.0良かった。

2024年8月27日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

けど、リリコさんが半泣きで紹介してたけど、あんまり感情移入出来なかったな。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
キチ

歩かなければ見えぬ物

2024年8月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 妻と穏やかな老後生活を送っていたハロルドのもとに昔の同僚女性から「もはや余命僅か」という手紙が届きます。ハロルドは彼女と嘗てなんらかの曰くがあった事が伺えます。すると、ハロルドは彼女を励ます為に、800キロ先の彼女のホスピスまで歩いて訪れる事を決意するのでした。

 彼女に残された時間が決して多くある訳でないのに何故800キロを歩くのかについて具体的な説明がある訳ではありませんが、その意味がこの歳になるとよく分かります。彼はとにかく歩きたかったんだよ。自分自身の老いを意識する様になると、歩く速さでないと丁寧に折り畳めない苦い思い出があるのです。車の速さだと、それらはまた未決棚に押し込まれて誤魔化されてしまうんだよね。

 僕も無性に歩きたくなりました。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
La Strada

3.5自分のための旅

2024年7月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

誰かの旅であるようで
本質的には自分の旅という感じだった。

ストーリーはシンプルでわかりやすいが
ハロルドの心境は複雑。

前に進みながら
気持ちは過去をみている。

彼自身の人生を振り返るための
懺悔のためのような旅なのかと。

鑑賞前にうけた印象とはかなり異なる印象になった。

意外と最後も、すっきりハッピーという感じでもなかったのが意外。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
nana

3.5予想に反して、結構シリアス

2024年7月23日
PCから投稿

一番好きだっったシーンは、冒頭。
手紙を出そうとポストまでいく、けど何か迷いがあって。
歩いて行こうと決心するところ。

ネタバレギリギリですが。
日本でいう「お百度参り」の要素=願掛けっぽい内容。
そして道中思い出す、昔のこと。
歩くってのは、無になるからね。

予想していた展開と真逆の、結構シリアスだったのが。
意外性があって、最後はシュッと綺麗に終わったのも良き良き。
ま正直、おうち映画でも良かった気もします。

⭐️今日のマーカーワード⭐️
「一歩が大事」

コメントする 2件)
共感した! 1件)
ゆき@おうちの中の人

5.0理想的なロードムービー

2024年7月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映画とはかくあるべし
・プロローグはいらない。背景は全て本編で語りきる
・主人公以外は引っ張らない。メインに見えた登場人物も30分以内に退場する
・最初は淡泊に始まり、エネルギッシュな中盤に入り、消沈しながら静かに終わる
・凡人が英雄になり、英雄は浮浪者となり、最後は俗人として家に帰る

もう一度観たい。本当にお手本だった

コメントする (0件)
共感した! 0件)
僧ヶ鍬崎

3.5希望は人を生かすのか?

2024年7月18日
iPhoneアプリから投稿

泣ける

幸せ

かつての同僚から手紙が届いた主人公。そこには病気でもう命がないってことが!返事を書いて送ろうとしたがある想いがあってポストに投函出来ず。
そのままの歩きで800キロ離れた病院を目指して行く。自分が着くまでは生きて欲しいと病院へ連絡して。
道中に会う人たちやこの人がなぜ歩いてまで会いに行きたかったのかとか良い内容でした。人の嫌な部分も書いてあるのも良かった。

コメントする (0件)
共感した! 3件)
KID君

5.0「彼はやり遂げる」

2024年7月16日
iPhoneアプリから投稿

泣ける

知的

今年155本目。

ヒューマントラストシネマ有楽町で。
長い距離を歩く映画。
彼はやり遂げる。
そこで出会う人も人生を写す。
日常で1日10分でも歩く距離伸ばしたい。
思い立った日にすぐ行動に移すも大切。
最後が本当にいい。

コメントする (0件)
共感した! 3件)
ヨッシー

3.5800km歩いてみようかと・・・

2024年7月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

知的

幸せ

イングランド南西のサウス・デヴォンで、定年退職後、妻モーリーンと平穏な日々を過ごしていたハロルド・フライのもとに、北の果てベリック・アポンツイードから手紙が届いた。差出人はかつてビール工場で一緒に働いていた同僚のクイーニーで、ホスピスに入院中の彼女の命はもうすぐ終わりを迎えるとのこと。励ましの返事を書き、近所のポストから手紙を出そうとしたハロルドだったが、ガソリンスタンドで青い髪の少女に言われた事から考えを変え、800キロ離れた場所にいるクイーニーのもとを目指してそのまま歩き始めた。さてどうなる、という話。

サウス・デヴォンからベリック・アポン・ツイードまでどのくらい有るのか、Googleで調べたら、遠いところでも800kmまでは無かったが、750kmくらいは有ったので、まんざら誇大でもないのか、と納得した。
1日30kmくらい歩いたら休みながらでも3週間も有れば着きそうだが、家から車までしか歩かないって言ってたからちょっと無理なのかもしれないし、途中のどんちゃん騒ぎで1日2kmとか言ってた日も有ったから、62日は妥当な所かも。
ハロルドの突拍子もない行動によって妻モーリーンとの冷たい関係が改善されたり、息子を亡くした事のケジメも付けれたようで、凄く良かったと思った。
スロバキアから移民の医師がイギリスではトイレ掃除くらいしか仕事が無いと言ってたのも衝撃だった。能力が有ってもやはり異国では制度も違うだろうし、医師免許とかは簡単に取れないのだろうと。
あと、青い髪のタトゥー少女はすごいビジュアルだった。作品の中であれだけのタトゥーを入れる理由は無さそうだから、本物なのかな?
元に戻って、800kmだが、東京から西に歩くと広島県くらいらしい。
いつか東京まで歩いてみようかと、ちょっとだけ思った。

コメントする (0件)
共感した! 6件)
りあの

4.5ありえないけど、素晴らしい。

2024年7月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ストーリーは、ありえないと思える徒歩の旅と、
25年前への巡礼の旅の二本立てで進む。
説明的でなく、とても自然に、主人公とその妻の後悔と懺悔が、
観ている私たちの身に沁みる。
旅の最中で出会う人たちの配合も素晴らしい。
得心の行く、観て良かったと思える映画です。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
ぜん

4.0それでも世界は変わりはしない

2024年7月13日
Androidアプリから投稿

大げさなお涙頂戴が無い所が良い

信じる心があろうと
奇跡なんか起きないし
誰かを救う事なんてできないし
人なんてそう簡単に変わらない

けど

信じて行動する事で
確実に変わるモノもある
そういう作品

コメントする 1件)
共感した! 2件)
龍神

3.0徒歩のロードムービー

2024年7月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

私が通っていた小学校は家から4kmくらいあって、小学生は毎日往復徒歩で通学。
通学路の最後の1/4が大きな川の土手で、カンカン照りの夏場、日差しを遮るものもないところ、干からびたミミズを踏ん付けながら、吹きっさらしで真冬の風をまともに受けながら、雨なんか降ると傘をさす手の感覚がなくなって、それでも学校へ行くにも家に帰るにも歩くしかないので黙々と歩くんだけど、その時に子供ながら悟ったことは、足を前に出し続けさえすれば、いつかは目的地に着く、ということ。
そして、ひとりでなら歩いている時間はそっくり「思考」の時間になる。

ハロルドは自分の中でもやもやしているものをひとりでじっくり考える時間を得た。
「歩く」ことの肉体的苦痛は、息子のこと、クィーニーに自分の罪をかぶらせてしまったこと、その恩返しもできていないことなど絡めて、そのまま自分への「罰」だったのかも
思考が進むにつれ彼は便利な持ち物を全て奥さんに託し、本物の巡礼の修行僧のようになってしまった。

ハロルドがひとりで勝手に出ていって大分自分勝手だとは思ったが、車で追いかければすぐ見つかるのに、なんだかんだ言い訳して追いかけようとしない奥さんの方にも、ひとりになることでたっぷり思考の時間ができた。

ふたりとも、半端にくすぶっていた様々な葛藤を自分の中で十分に熟成、あるいは発酵させて、ある程度の「真理」に行きついたよう。

ハロルドの行動は確かにクイーニーを助けることはできなかったが、死の直前の彼女に生きることへの張りをもたらしたし、道中で出会った若い同性の恋人がいる紳士、移民の元医師の女性、ガソリンスタンドのお姉さんに、クイーニーへのプレゼントのガラス玉の反射のように、人生に些細なきらめきは残してくれたようだ。
小さい「いいこと」がある人生は、ないより100倍も良いと思う。

息子に似ていると思って目をかけていた若者に裏切られ、しょぼい犬にも捨てられ、がっくり気力をなくして、妻に泣き言の電話を掛けてしまう気持ちは分かる。そんな日もある。
年寄りだからと言って何でも達観しているわけではない。
生きている限り、人生の「途上」なのだ。

隣人も含め、出会った人々が親切で良い人が多くてほっとした。
メディアで取り上げられた途端に有名人になり、勝手に一緒に「巡礼」してTシャツなんか作るミーハー集団なんかも現れたが、よくある「持ち上げて落とす」マスコミの餌食にはならなかったようで良かった

ゴールについた彼は、相当臭ったと思う。
クイーニーに会う前にお風呂に入って身だしなみを整えられるくらいのお金やモノは取っておけばよかったのに、と思った。

コメントする 6件)
共感した! 15件)
かばこ

4.0こういうので泣ける人間で居続けたい

2024年7月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

幸せ

病院との二回目の電話ですーぐ泣けちゃう。
王道、お約束、ありきたり、そういうので良いのよねー!
それを待ってるのよねー!
こちとらねー!!

半生の振り返りは暗いし冗長だし、蛇足もあるし、無駄に長いような、欠点もある映画だとは思いますが、見たかったものは見れた。
歩き続けなければ。

コメントする (0件)
共感した! 3件)
せった

4.0歩いて歩いて真のゴールへ

2024年7月12日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

単純

知的

平凡なおじいちゃんが余命わずかな元同僚に会いに行く為ひらすら歩く歩く歩く
イングランド横断というあまりにも無謀過ぎる800キロの旅…普段着にデッキシューズと過酷な旅に不似合いな姿で挑む予告編を見ちゃったら
道中も結末も気になるよなぁって事なのに
上映館が少なくないかい💦?
あたふたしながら皆さんの高評価レビューを読んだらもう劇場へGOするっきゃないだろ!!

頑固者にしか思えずそこまでして何故?同僚との間に何が?憶測からのスタートでしたが
スクリーン越しのハロルドと並歩するうちに徐々に彼の過去が明かされていく
過酷過ぎる一歩一歩が巡礼の様にさえ見えた

あくまでハロルドが軸の物語ですが
妻モーリーの存在は大きい
彼女自身の葛藤哀しみは計り知れないが
箇所箇所で引き目に言葉少なくハロルドを見守る姿には切なさと愛しさを感じました

原作者も監督も女性だからだろうかラストの優しく淡く煌めく水晶光の演出が繊細で素敵でしたね
あの光を仰ぐハロルドと関わった人達の表情も皆柔らかく穏やかに見えました
スマホだけをながめ下ばかり見てる現代人に
顔を上げてみて…と伝えている様でした

お向かいのおじ様もいい人過ぎた⭐️
鑑賞料を上回る電車代を払っても本当に出会えて良かった作品です!
皆さんの推しレビューのお陰です!
ありがとうございました⭐️

コメントする 4件)
共感した! 13件)
ねもちゃん

3.5大分とっ散らかって

2024年7月10日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

ますが、この手の“救われる”映画はとても欧米には敵いませんね。神は信じないと言い、絶望的な薬物依存が出ても、どこか宗教的なものが感じられる。
お金を持って出てたのがナイス! でも途中でカードとか戻したのは巡礼者だから? (フライ)は翔ぶとかけてたの? 又イヌが!
想起作=フォレストガンプ、白血病少女のお遍路のやつ(題名忘れ)、TheWhoの“TOMMY”。

コメントする 7件)
共感した! 5件)
トミー

3.5良かった。

2024年7月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

けど、パリタクシーの方が好みかな。
リリコが番組で半べそで作品紹介してたけど、そこまで感情移入できなかったな。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
キチ