ハロルド・フライのまさかの旅立ちのレビュー・感想・評価
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痛みと優しさが押し寄せるロードムービー
世界的ベストセラーの原作を、作者が自ら脚色した本作。まずもって引き込まれるのは、ジム・ブロードベントが手紙を投函するタイミングを失って、次のポスト、また次のポストと彷徨い歩き、気づくと旅がもう始まっているところだ。最初の前提条件や理由をすっ飛ばし「歩く」という行為へ踏み出させるこのナチュラルさ。歩くことはどこか祈りに似ている。また、歩を重ねることは思考や記憶の反芻にも通ずる。心や感情が動くことで、これまで断片的にしか考えられなかったこと、直視するのを避けていた現実とも、自ずと向き合えるようになっていく。そしてサウス・デヴォンからイングランドとスコットランドの境界近くにあるベリック・アポン・ツイードまで、移りゆくリアルな景色の雄大さ、美しさが、活字を超えた映像作品ならではの情緒となって感動を深めゆく。ロードムービーが生まれにくい英国の地で、またひとつ、痛みと優しさが同居する旅映画が生まれた。
歩かなければ見えぬ物
妻と穏やかな老後生活を送っていたハロルドのもとに昔の同僚女性から「もはや余命僅か」という手紙が届きます。ハロルドは彼女と嘗てなんらかの曰くがあった事が伺えます。すると、ハロルドは彼女を励ます為に、800キロ先の彼女のホスピスまで歩いて訪れる事を決意するのでした。
彼女に残された時間が決して多くある訳でないのに何故800キロを歩くのかについて具体的な説明がある訳ではありませんが、その意味がこの歳になるとよく分かります。彼はとにかく歩きたかったんだよ。自分自身の老いを意識する様になると、歩く速さでないと丁寧に折り畳めない苦い思い出があるのです。車の速さだと、それらはまた未決棚に押し込まれて誤魔化されてしまうんだよね。
僕も無性に歩きたくなりました。
自分のための旅
誰かの旅であるようで
本質的には自分の旅という感じだった。
ストーリーはシンプルでわかりやすいが
ハロルドの心境は複雑。
前に進みながら
気持ちは過去をみている。
彼自身の人生を振り返るための
懺悔のためのような旅なのかと。
鑑賞前にうけた印象とはかなり異なる印象になった。
意外と最後も、すっきりハッピーという感じでもなかったのが意外。
予想に反して、結構シリアス
一番好きだっったシーンは、冒頭。
手紙を出そうとポストまでいく、けど何か迷いがあって。
歩いて行こうと決心するところ。
ネタバレギリギリですが。
日本でいう「お百度参り」の要素=願掛けっぽい内容。
そして道中思い出す、昔のこと。
歩くってのは、無になるからね。
予想していた展開と真逆の、結構シリアスだったのが。
意外性があって、最後はシュッと綺麗に終わったのも良き良き。
ま正直、おうち映画でも良かった気もします。
⭐️今日のマーカーワード⭐️
「一歩が大事」
理想的なロードムービー
映画とはかくあるべし
・プロローグはいらない。背景は全て本編で語りきる
・主人公以外は引っ張らない。メインに見えた登場人物も30分以内に退場する
・最初は淡泊に始まり、エネルギッシュな中盤に入り、消沈しながら静かに終わる
・凡人が英雄になり、英雄は浮浪者となり、最後は俗人として家に帰る
もう一度観たい。本当にお手本だった
希望は人を生かすのか?
かつての同僚から手紙が届いた主人公。そこには病気でもう命がないってことが!返事を書いて送ろうとしたがある想いがあってポストに投函出来ず。
そのままの歩きで800キロ離れた病院を目指して行く。自分が着くまでは生きて欲しいと病院へ連絡して。
道中に会う人たちやこの人がなぜ歩いてまで会いに行きたかったのかとか良い内容でした。人の嫌な部分も書いてあるのも良かった。
「彼はやり遂げる」
今年155本目。
ヒューマントラストシネマ有楽町で。
長い距離を歩く映画。
彼はやり遂げる。
そこで出会う人も人生を写す。
日常で1日10分でも歩く距離伸ばしたい。
思い立った日にすぐ行動に移すも大切。
最後が本当にいい。
800km歩いてみようかと・・・
イングランド南西のサウス・デヴォンで、定年退職後、妻モーリーンと平穏な日々を過ごしていたハロルド・フライのもとに、北の果てベリック・アポンツイードから手紙が届いた。差出人はかつてビール工場で一緒に働いていた同僚のクイーニーで、ホスピスに入院中の彼女の命はもうすぐ終わりを迎えるとのこと。励ましの返事を書き、近所のポストから手紙を出そうとしたハロルドだったが、ガソリンスタンドで青い髪の少女に言われた事から考えを変え、800キロ離れた場所にいるクイーニーのもとを目指してそのまま歩き始めた。さてどうなる、という話。
サウス・デヴォンからベリック・アポン・ツイードまでどのくらい有るのか、Googleで調べたら、遠いところでも800kmまでは無かったが、750kmくらいは有ったので、まんざら誇大でもないのか、と納得した。
1日30kmくらい歩いたら休みながらでも3週間も有れば着きそうだが、家から車までしか歩かないって言ってたからちょっと無理なのかもしれないし、途中のどんちゃん騒ぎで1日2kmとか言ってた日も有ったから、62日は妥当な所かも。
ハロルドの突拍子もない行動によって妻モーリーンとの冷たい関係が改善されたり、息子を亡くした事のケジメも付けれたようで、凄く良かったと思った。
スロバキアから移民の医師がイギリスではトイレ掃除くらいしか仕事が無いと言ってたのも衝撃だった。能力が有ってもやはり異国では制度も違うだろうし、医師免許とかは簡単に取れないのだろうと。
あと、青い髪のタトゥー少女はすごいビジュアルだった。作品の中であれだけのタトゥーを入れる理由は無さそうだから、本物なのかな?
元に戻って、800kmだが、東京から西に歩くと広島県くらいらしい。
いつか東京まで歩いてみようかと、ちょっとだけ思った。
ありえないけど、素晴らしい。
ストーリーは、ありえないと思える徒歩の旅と、
25年前への巡礼の旅の二本立てで進む。
説明的でなく、とても自然に、主人公とその妻の後悔と懺悔が、
観ている私たちの身に沁みる。
旅の最中で出会う人たちの配合も素晴らしい。
得心の行く、観て良かったと思える映画です。
それでも世界は変わりはしない
大げさなお涙頂戴が無い所が良い
信じる心があろうと
奇跡なんか起きないし
誰かを救う事なんてできないし
人なんてそう簡単に変わらない
けど
信じて行動する事で
確実に変わるモノもある
そういう作品
徒歩のロードムービー
私が通っていた小学校は家から4kmくらいあって、小学生は毎日往復徒歩で通学。
通学路の最後の1/4が大きな川の土手で、カンカン照りの夏場、日差しを遮るものもないところ、干からびたミミズを踏ん付けながら、吹きっさらしで真冬の風をまともに受けながら、雨なんか降ると傘をさす手の感覚がなくなって、それでも学校へ行くにも家に帰るにも歩くしかないので黙々と歩くんだけど、その時に子供ながら悟ったことは、足を前に出し続けさえすれば、いつかは目的地に着く、ということ。
そして、ひとりでなら歩いている時間はそっくり「思考」の時間になる。
ハロルドは自分の中でもやもやしているものをひとりでじっくり考える時間を得た。
「歩く」ことの肉体的苦痛は、息子のこと、クィーニーに自分の罪をかぶらせてしまったこと、その恩返しもできていないことなど絡めて、そのまま自分への「罰」だったのかも
思考が進むにつれ彼は便利な持ち物を全て奥さんに託し、本物の巡礼の修行僧のようになってしまった。
ハロルドがひとりで勝手に出ていって大分自分勝手だとは思ったが、車で追いかければすぐ見つかるのに、なんだかんだ言い訳して追いかけようとしない奥さんの方にも、ひとりになることでたっぷり思考の時間ができた。
ふたりとも、半端にくすぶっていた様々な葛藤を自分の中で十分に熟成、あるいは発酵させて、ある程度の「真理」に行きついたよう。
ハロルドの行動は確かにクイーニーを助けることはできなかったが、死の直前の彼女に生きることへの張りをもたらしたし、道中で出会った若い同性の恋人がいる紳士、移民の元医師の女性、ガソリンスタンドのお姉さんに、クイーニーへのプレゼントのガラス玉の反射のように、人生に些細なきらめきは残してくれたようだ。
小さい「いいこと」がある人生は、ないより100倍も良いと思う。
息子に似ていると思って目をかけていた若者に裏切られ、しょぼい犬にも捨てられ、がっくり気力をなくして、妻に泣き言の電話を掛けてしまう気持ちは分かる。そんな日もある。
年寄りだからと言って何でも達観しているわけではない。
生きている限り、人生の「途上」なのだ。
隣人も含め、出会った人々が親切で良い人が多くてほっとした。
メディアで取り上げられた途端に有名人になり、勝手に一緒に「巡礼」してTシャツなんか作るミーハー集団なんかも現れたが、よくある「持ち上げて落とす」マスコミの餌食にはならなかったようで良かった
ゴールについた彼は、相当臭ったと思う。
クイーニーに会う前にお風呂に入って身だしなみを整えられるくらいのお金やモノは取っておけばよかったのに、と思った。
こういうので泣ける人間で居続けたい
病院との二回目の電話ですーぐ泣けちゃう。
王道、お約束、ありきたり、そういうので良いのよねー!
それを待ってるのよねー!
こちとらねー!!
半生の振り返りは暗いし冗長だし、蛇足もあるし、無駄に長いような、欠点もある映画だとは思いますが、見たかったものは見れた。
歩き続けなければ。
歩いて歩いて真のゴールへ
平凡なおじいちゃんが余命わずかな元同僚に会いに行く為ひらすら歩く歩く歩く
イングランド横断というあまりにも無謀過ぎる800キロの旅…普段着にデッキシューズと過酷な旅に不似合いな姿で挑む予告編を見ちゃったら
道中も結末も気になるよなぁって事なのに
上映館が少なくないかい💦?
あたふたしながら皆さんの高評価レビューを読んだらもう劇場へGOするっきゃないだろ!!
頑固者にしか思えずそこまでして何故?同僚との間に何が?憶測からのスタートでしたが
スクリーン越しのハロルドと並歩するうちに徐々に彼の過去が明かされていく
過酷過ぎる一歩一歩が巡礼の様にさえ見えた
あくまでハロルドが軸の物語ですが
妻モーリーの存在は大きい
彼女自身の葛藤哀しみは計り知れないが
箇所箇所で引き目に言葉少なくハロルドを見守る姿には切なさと愛しさを感じました
原作者も監督も女性だからだろうかラストの優しく淡く煌めく水晶光の演出が繊細で素敵でしたね
あの光を仰ぐハロルドと関わった人達の表情も皆柔らかく穏やかに見えました
スマホだけをながめ下ばかり見てる現代人に
顔を上げてみて…と伝えている様でした
お向かいのおじ様もいい人過ぎた⭐️
鑑賞料を上回る電車代を払っても本当に出会えて良かった作品です!
皆さんの推しレビューのお陰です!
ありがとうございました⭐️
大分とっ散らかって
ますが、この手の“救われる”映画はとても欧米には敵いませんね。神は信じないと言い、絶望的な薬物依存が出ても、どこか宗教的なものが感じられる。
お金を持って出てたのがナイス! でも途中でカードとか戻したのは巡礼者だから? (フライ)は翔ぶとかけてたの? 又イヌが!
想起作=フォレストガンプ、白血病少女のお遍路のやつ(題名忘れ)、TheWhoの“TOMMY”。
最初は少々身勝手な男性の旅立ちにも思えるお話ですが、実は妻とのパートナーシップが肝になっているのも素敵なところです。
イギリスの作家レイチェル・ジョイスによる累計発行部数600万部を誇るベストセラー小説「ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅」。日本でも2014年の本屋大賞翻訳小説部門第2位に輝いた傑作です。それを、イギリスを代表する「アイリス」のオスカー俳優ジム・ブロードベント主演で映画化したのが本作です。原作者ジョイスが自ら脚本を担当。本国イギリスで新作映画初登場No.1の大ヒットを記録した必見の一本です。
イギリスの南西から最北端まで、800キロに及ぶ息を吞むような美しい風景が贅沢にスクリーンに広がる、新たな感動の物語です。
●ストーリー
英国南西部の郊外で、長年勤めた工場を定年退職。穏やかな老後生活ながらも妻と冷え切った日々を過ごしているハロルド(ジム・ブロードベント)のもとに、ある日、北の果てから思いがけない手紙が届きます。
差出人は、かつてビール工場で一緒に働いていた元同僚の女性クイーニー(リンダ・バセット)ホスピスに入院中の彼女の命はもうすぐ尽きるというのです。
クイーニーが余命わずかだと知ったハロルドは、「お大事に」と書いた返事の手紙を手に家を出たのですが、途中で心変わりするのです。彼にはクイーニーにどうしても会って伝えたい“ある想い”がありました。
彼女がいるホスピスに電話し、職員に「今から歩いて会いに行くから、それまで生きていてくれ」と伝言を依頼。妻の反対を振り切って普段着、革靴のまま彼女が収容された北部のホスピスをめざして歩き出しはじめます。
歩き続けることに、クイーニーの命を救う願いをかけるハロルド。目的地までは800キロ。彼の無謀な試みはやがて大きな話題となり、イギリス中に応援される縦断の旅となっていきます。
●解説
ハロルドの過去に何があったか――それは少しずつ観客に開示され、次第にこれが贖罪の旅であることが判ってきます。彼はなるだけ手ぶらで、長距離の歩行には不向きなデッキシューズを履いたまま、自ら苦行を受け入れるように足を痛めながら歩き続けるのです。原題には“巡礼”という言葉が入っています。確かにこの旅は宗教的な儀礼のイメージを帯びたものです。
なぜハロルドは無謀な旅に挑むのか。それを解き明かすキーワードは「信じる心」で、清らかな「光」のイメージが随所にちりばめられていますが、宗教的な映画ではありません。
ハロルドが裸足で歩く聖者のようにカリスマ視されるくだりは「フォレスト・ガンプ/一期一会」に似たパートがありますが、彼はあくまで個的な回復に向けて歩みを進めていただけなのです。
ハロルドが道中で出会う名もなき人々との交流、彼の痛ましい過去、冷えきった妻との関係、息子との断絶など多彩なエピソードを通して、人生の喪失や悔恨、そして再生の物語が展開していきます。それらの多くは観客の想像の範囲内に着地するかもしれませんが、俳優陣の哀感にじむ演技、美しい丘陵や田園風景をカメラに収めた映像に魅了される一作です。デボン州の「美しく、狭い田舎道」や工業地帯、スコットランド近くの「沼っぽく、野性的な場所」など、英国の様々な原風景を堪能できることでしょう。
●感想
ロードムービーの魅力を醸造する要素が詰まっている作品だと思います。旅が進むにつれ、徐々にハロルドの人生の悔恨悲しみが次第にあらわになってきて、無謀な旅に出た理由が立ち上がってくる仕掛けです。信じる心を持ち続ける大切さも伝わってきて、冷え切った関係にあった妻とのラストシーンは涙を誘われました。
ハロルドの毎日はルーティン化していたのです。それゆえに冷え切った夫婦でもやってこられたんでしょう。しかしそんなルーティンの積み重ねで、彼の心は閉ざされてしまったのです。それが、歩いているうちにだんだん解放されていきます。自分で築いた壁が壊れていくことに、彼自身が驚いているんだと思いました。
ビム・ベンダース監督はあるインタビューでロードムービーを「道は人生の暗喩」と位置づけていましたが、本作もハロルドの人生の悲しみや後悔、愛が行路とともに表出してくるのです。そして「暗喩」より、もう少し素直に心に染みこむゴールが用意されていました。
最初は少々身勝手な男性の旅立ちにも思えるお話ですが、実は妻とのパートナーシップが肝になっているのも素敵なところです。
監督や撮影、原作者など、女性メインのチームによる、優しさにあふれた作品であることにも注目してください。
晩年の素晴らしい旅路
主人公のハロルドはイギリスのどんよりとした気候の中、美しい田園風景や都会、田舎を延々と歩いて行きます。足のマメが潰れてぐちゃぐちゃになってもいろんな人に応援してもらいながら歩きます。ほんと素晴らしいロードムービーでした。奥さん役はどこかで見たと思ったらダウントンアビーの奥様じゃありませんか!相変わらず高貴な演技で素晴らしいです。ただ残念なのは今年度のワースト邦題としてNo.1候補です、残念な邦題です(涙)
地図も無ければ コンパスも無い そりゃ無理だっつーの。(゙ `-´)/
でもいいの 映画だも゛ーんちっちと。
最初は 自然の美しさに感動してたりしてさ
気ままに歩いてたけど 普段歩いて無い人が
そー簡単には 歩けませぬ。(笑)
冷え切った夫婦関係 見事に収まって 良しとします。
それがしも 若い頃 寝袋だけでバイクツーリングして
橋の下や お墓の横で寝たのを思い出しました。(^-')v
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