「500マイル歩き通す「動機」が重すぎて…」ハロルド・フライのまさかの旅立ち Haihaiさんの映画レビュー(感想・評価)
500マイル歩き通す「動機」が重すぎて…
監督:へティ・マクドナルド
原作・脚本:レイチェル・ジョイス
原題は『The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry』、
俳優として活躍していたレイチェル・ジョイスが、2012年に発売した小説処女作『ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅』が、世界600万部を超えるベストセラーとなった。
今回、映画化に合わせタイトルを『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』に改題して再販するという。
いうなれば、老いらくのロードムービーだ。
デビッド・リンチの『ストレイト・ストーリー』を思い出す。
妻とふたり、静かな老後を過ごすハロルド・フライは、元同僚のクイーニーから手紙を受け取る。
彼女はホスピスで終末医療を受けていて、別れを告げる内容だった。
ハロルドは返事を書いて投函しに出掛けたその足で、
クイーニーがいる病院まで800km(500マイル)の道のりを歩いていくことを決意する。
なぜ、歩きでいくの?
映画の中で明快な説明はなかったが、
歩いてくるハロルドを待つことで少しでも長生きして欲しかったのか?
あるいは、歩く(苦難を選ぶ)ことがクイーニーへの罪滅ぼしになると考えたからか?
ロードムービーならではの、
「一期一会」や「人との触れ合い」が豊富に用意されている。
出演しているキャストがみなさん、なかなか個性的で魅力的だ。
◆向かいに住む妻を亡くしたレックス
◆ガソリンスタンドの若いレジ係(なかなか重要)
◆駅で朝食を共にするゲイのビジネスマン
◆農道でクルマに乗るか声をかけてくる女性
◆スロバキアから来た女医
◆妻モーリーが相談にいく医師
◆カフェで相席した中年
◆ホスピスのシスター
◆記念に写真を撮るヒゲ面(たぶん記者?)
◆カフェのウェイトレス(2か所)
◆巡礼グループのリーダー格・ケイト
道行きのウィルフに一人息子・デヴィッドを重ねるハロルド。
クイーニーへの想いで始めた旅は、
日が経つに連れ、デヴィッドへの想いがまさりはじめる。
新聞に美談として紹介されたハロルドには、
多くの人々が連れ立って移動するようになる。
このあたりは、『フォレスト・ガンプ』だ(笑)。
冗談はさておき、
老人を800km歩かせるには、「強い動機」が必要だった。
本作は、良くも悪くもこれに尽きる。
旅の途中の人々との出会いを、すごくチャーミングに表現できていただけに、
この「強い動機」がリアルに強すぎて、
すべてを覆い尽くしてしまった。
「そっちなんだ〜」となってしまったので、☆3.0