劇場公開日 2024年6月7日

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「おしまいに出てきた窓辺のクリスタルは「最後の一葉」を思わせた!」ハロルド・フライのまさかの旅立ち 詠み人知らずさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0おしまいに出てきた窓辺のクリスタルは「最後の一葉」を思わせた!

2024年6月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

最初は、何という荒唐無稽な話かと思った。ホスピスにいる昔の恩人から連絡があったとは言え、イングランド南端の海辺の街から、波の荒いスコットランド東岸まで、500マイル(800km)も歩いて英国を縦断し、彼女に会いに行くなんて。500マイルと言えば、PPMやブラザース・フォアによって歌われて日本のフォーク・ブームを決定づけた「500マイルもはなれて」が思い出される。しかし少し我慢して観ていたら、主人公のハロルド・フライは、歩くことによって、うまく行かなかった息子とのことや、不仲であった奥さんのことを含め、初めて自分の人生と本当に向かい合っているのだと思ったら、納得できた。黒沢明の「生きる」の英国版が、また一つできたということか。
最後の方で、旅に出て歩き続けることを支援してくれた、食堂で同席した紳士、スロヴァキア出身のドクターで、イングランドでは掃除婦しか仕事のない女性、病と闘うことを教えてくれた青い髪の若くて美しい女性、が光を見上げるところがとても良かった。
不安が強く、自信が持てないでいる日本人に、一人でも多く、この映画を観て欲しい。やはり、体を動かすことが大事なのだろう。それにしても、強い身体をもっている(スコティッシュのショーン・コネリーのような)アングロ・サクソンにしか、あんな無茶なことはできないが。

詠み人知らず