「美しさと、残酷と、」ぼくのお日さま 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
美しさと、残酷と、
ドビュッシーの「月の光」に纏われて、
美しいフィギュア・スケーターが舞う。
ヒソヒソ声の多い静かな映画中で、そのシーンは
三上さくらの決意を告げるように激しい。
“微塵も許さない“
私のスケーティングに荒川先生の
“訳ありな人生“の介入を、
私のスケーティングは、
“アイスダンスなんかではない“
半分お遊びの、吃音リハビリのような、
タケシのスケート
に、“組み込まれたくない“
繊細な映像表現の情景詩のような映画です。
時にソフトフォーカスして焦点が広がりぼやける。
美しい少女スケーター。
吃音の少年は、何をやっても下手っぴ。
唯一、荒川先生の教えてくれたアイスダンスの基礎。
「滑れるようになったタケシ」
さくらとの幸せな時間、
荒川先生の掬い上げてくれる優しさ、
さくらは心構えも既にプロで、
彼女はある意味で完成しているし、
心に“遊び“がない、
だから潔癖で汚れや妥協を許さない、
タケシは流されただけ?
でもタケシの自信になったと思う。
小さな小屋の芝犬、
雪中の真っ赤なポスト、
高い橋を走る電車、
置いてかれる荒川先生の恋人、
車に積まれた思い出品の段ボール、
(なんで捨てないんだよ!!)
この町を出て、また次の町へ流れていくフェリーボート、
捨てたもの、捨てられたもの、
残したもの、
タケシの心に荒川先生が灯した明かりが、
タケシのこれからをを支えることを、
私は心の中で、
願っている。
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