「眩」ぼくのお日さま +さんの映画レビュー(感想・評価)
眩
作中で説明が無くとも、各登場人物の表情や画面の光によってそれぞれの感情が鋭いほど伝わる映画だった。
「さくらのスケートに視線を奪われたたくや」
「スケートが上達して喜ぶたくやと先生」
「初めてペアの姿勢になった時の恥ずかしいたくやとそれに微笑むさくら 」
「湖の上で笑顔でいる3人」
それ以外にも全ての描写が真っ直ぐに感情を伝えてくれて、眩しくて、涙が出た。
前半での3人が楽しく笑顔でいる場面とは反対に、後半では突然現れる終わりに、誰も何も悪くないからこそ誰のせいにも出来ないもどかしさと、ずっとあの笑顔を見ていたかった悲しさが止まらなかった。
先生の恋人の「俺にはここしかないけど、ここにいていいの?」といった言葉は先生のことを想う優しさに溢れていたし、スケート選手という華々しい過去を持つ彼の未来を案じていたのだろう。
他の人も言っていたが、これはハッピーエンドとは言えない。 いつかくる終わりが早く来すぎてしまっただけである。
彼女は先生に恋をしていたのかもしれない、作中に何度か先生を目で追いかけたり、たくやを見ている先生に自分を見て欲しそうにしていた。
いやただ単純に、3人でいるのが好きだったのかもしれない。さくらが何を感じていたのかはさくらにしか分からない。
しかし、偶然見てしまった同性の恋人に見せる先生をしている時とは別の表情は、彼女が先生に対して抱いていた感情を拒絶や混乱に変化させるのに十分過ぎてしまったのだろう。
たくやとさくらの人生の中で一瞬しかない貴重な思春期に起こった 「3人でいた冬」は彼らの成長の糧となる。
彼らがまた共にリンクで滑っていたらいいな 先生の優しい眼差しと一緒に。
ずっと綺麗で暖かくて光に包まれた眩しい作品だった。