「映像の質感、役者陣の演技」ぼくのお日さま romiさんの映画レビュー(感想・評価)
映像の質感、役者陣の演技
正直、ストーリーはドハマリってほどではなかった。脚本だけなら星3~3.5くらい。
設定や世界観は好きなんだけど、ストーリーは少しまとまりがなく散漫な印象を受けた。説明を極限まで省いたのは分かるのだが、突拍子もない印象を受ける言動がいくつかあった。
ただ、とにかく映像が美しい。終始夢の中にいるようだった。
個人的には映画の雪といえば『私の男』の映像が一番衝撃的で何年経っても忘れられないんですが、あの命あるもの全てを根こそぎ奪おうとするような暴力的なまでに激しく息苦しく冷たい雪、あれとは全く別の、優しい優しい雪景色だった。
スケートリンクのシーンも本当に美しい。淡く儚い光に満ちた氷の世界。
『ぼくのお日さま』というタイトルがぴったり合う映像だと思った。
あとは何より、キャスティングがあまりにも素晴らしかった。
子役(と呼んでいい年代かは分からないけど)のふたり。こんな顔つきも体つきも完璧な子ふたり、どこから見つけてきたん??と思わずにはいられない、立っているだけで説得力のあるキャスト。
サクラちゃんは、幼い頃からずーっとフィギュアスケート一筋にストイックにやってきたことを感じさせる、綺麗な姿勢と、しっかりした体幹、無駄なく引き締まった体型。そしてスケートもジャンプも見事だった!この子は役者さんなの?選手なの?役者さんだとして1からスケート練習したんだとしたらとてつもなく頑張ったんだろうし、選手だとしたらあまりにも女優さん的な魅力・オーラと透明感があって驚く。
中学生、大人の入口に立った年頃。そうそう、このくらいの女の子って確かにこういう、大人に対して常にちょっと気まずそうな態度とるよね〜と思った。演技うまい。
一方タクヤくんは、小学生、まだ身体ができあがっておらず、しかも運動はそんなに得意じゃなくてちょっと鈍臭い、そういうタイプの子そのものの体つきで、これもキャスティングすばらしい。あとひたすら可愛い。喋る口調もまだちょっと幼く、笑顔はあどけなく。仲の良い友達とじゃれてるときとかまさに小学生男児!って感じ。
まだ大人の入口に立ってない子ども子どもしてる感じだからこそスケートにハマったらとことんハマって。先生に対しても、サクラちゃんみたいにちょっと線を引いてる感じなく、一気に懐に入ってなつき、無邪気にはしゃぐ。ちょっと無愛想だったサクラちゃんの心まで溶かすくらいの天真爛漫さ。
それと若葉竜也さん。『愛がなんだ』は正直ストーリーも他のキャラクターもうろ覚えだけど、若葉さんだけ衝撃的に印象的ですぐに顔と名前を覚えました。以降出演作はほぼ全て視聴しています。
今回の役柄は、それほど顔がはっきり映るシーンもセリフも多くないんだけど、役としての説得力がありすぎてびっくりしました。若葉さんはもはや、演ずるに当たってセリフはおろか表情すらいらないんだな、佇まいや仕草、存在感のみで演じることができるんだなと感服しました。
あとはやはり池松壮亮さん。追っているというほどでもないですが出演されてると観たくなる俳優さん。この方は大衆向けのドラマや娯楽映画的な演技もお上手なのに、こういう作家性の高い芸術映画でもそれに合わせた演技ができるんですよね。すごいよなあ…役者としての嗅覚というか、作品の展望を嗅ぎ取る能力が突出してるんだと思う。今後どんな作品に出ていかれるのか楽しみ。