「無常な人生を愛と優しさを貫いて生きた夫婦」35年目のラブレター みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
無常な人生を愛と優しさを貫いて生きた夫婦
2025.3.20 趣旨を変えずに微修正
本作は、文字の読み書きのできない夫と、そんな夫を優しく支える妻の心温まる姿を綴った愛の物語である。実話に基づいているので派手さはないがストーリー展開に説得力があり素直に感動できる作品である。
西畑保(笑福亭鶴瓶)は戦時中に極貧で殆ど学校に行けなかったため文字の読み書きが出来ずに大人になる。結婚後になって漸く妻・皎子(原田知世)に真実を告げるが、妻は夫の手になると健気に答える。保は皎子の支えで懸命に働き、定年を機に妻にラブレターを書くために夜間中学校に通い始める・・・。
笑福亭鶴瓶と原田知世の夫婦役は意外だったが、歳を重ねた二人は豊富な人生&役者経験を活かした演技で違和感なく熟年夫婦役を見事に熟している。それにしても原田知世の年齢を感じさせない美しさには目を見張る。二人の何気ない軽妙な会話が心和ませる。二人の若い頃を演じる重岡大毅と上白石萌音も同様であるが、愛と優しさを貫いた夫婦という言葉がピッタリ当てはまる自然体の演技だった。
夜間中学で保は奮闘する。文字の読み書きを覚えたいという意志は強いが、なかなか上達しない。時に自暴自棄になりながらも、それでも懸命に初志貫徹していく姿に皎子への熱い愛を感じる。自然に涙が溢れてくる。ここだけでも十分感動的な作品にはなっただろうが、後半は更なる試練が二人を待ち受ける。
降り始めた雪が皎子の手のひらに舞い落ち瞬時に消えていくシーンが秀逸である。皎子の行く末を暗示している。切ない。巧みな演出である。
皎子もまた保への想いを打ち損じができないタイプライターでラブレターに綴っていた。お互いの想いを伝える手段は他にもあるが、手紙には格別な重さがある。強さがある。
二人はラブレターによって互いの想いをしっかりと受け止めて幸福な晩年を・・・とならないのが無常の人生である。そんな無情な人生であっても、二人は愛と優しさを貫いて生きた。人生は結果ではない。どう生きていくかというプロセスが大切だと強く感じさせる作品だった。
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