「重岡&萌音コンビの、熱演だけではカバーできない断絶」35年目のラブレター ソビエト蓮舫さんの映画レビュー(感想・評価)
重岡&萌音コンビの、熱演だけではカバーできない断絶
公開週の3日目日曜。客入り上々。
予告編から想像し得る、感動系夫婦愛を描いた、
ストーリーのイメージ通りに進み、鑑賞終了。
良かった点は、笑福亭鶴瓶が演じた主人公の、
青年期にあたる時期を演じた重岡大毅が、思ってた以上に熱演だった点。
前作「ある閉ざされた雪の山荘で」では、今が旬の若手俳優が一堂に介す、
豪華キャスト映画の、まとめ役的な主人公だったが、
いかんせん、作品のストーリー自体が期待ハズレだったせいか、
主人公を担った重岡にも、良いイメージが全く残っていなかった。
劇団の配役オーディションが本筋の物語だったのに、
事務所の力でなった主人公置くのは、流石にキツかった。
しかし今回は、生い立ちのせいで読み書きができない、
苦労と苦悩を抱える修業中の寿司職人、
という難しい役をちゃんとこなしており、
相手役の上白石萌音に、引けをとらない存在感を示していた。
一方、良くなかった点は、
1つ目は、重岡→鶴瓶、萌音→原田の人物ラインが、
いくら重岡と萌音が熱演だったとはいえ、
やっぱりどう見ても、鶴瓶と原田とは別人にしか見えなかった所。
どう考えても無理がある配役。
終盤になればなるほど、結婚前後期1つ1つのエピソードと、
現在パートとの間に、くっきりと断絶が見え隠れした。
私もオジサンゆえの弊害なのかもしれないが、
鶴瓶の若い頃の容姿を知っているから、どうしても無理だ。
それならば、いっその事、「アフロ田中」に扮した、
松田翔太を配したほうが、まだ繋がって見えた。
または、バッテリィズがM-1で1年前倒しで売れていれば、
「エース」くんを俳優に大抜擢しても、
鶴瓶の青年期は成立してたかもしれない。
原田知世に関しても、「時をかける少女」の、スラッとした佇まいが、
脳裏にこびりついてるから、そこを上白石萌音にしてしまうと、
どうやっても、ちんちくりんにしか見えなくなる。
原田に似てるからと言って、「光る君へ」で、
まさかの10代役を演じた吉田羊にすべきだと、極論述べるつもりもないが、
せめて門脇麦辺りの、「スラッと女優」を配すくらいの配慮は欲しかった。
もう1つ気になったのは、主人公鶴瓶が通う事になる「夜間中学」に関わる箇所の描写。
どうしても私らの世代で夜間中学となると、
山田洋次の「学校」シリーズを連想してしまう。
あの学校シリーズの田中邦衛が凄すぎるだけに、
鶴瓶にもそれに匹敵し得る、スパイス的な何かが欲しかったが、
意外にあっさりと読み書きを習得してしまい、嘘くさくなってしまった。
全体的に、感動エピソードがそこかしこに詰まっている物語の性質上、
うまくまとめさえすれば、良い作品が出来上がりそうな題材で、
実際、良い作品に仕上がっていたけれど、
この映画ならではのインパクトとか、驚きだとか、暮れに映画界の1年を振り返る場面の際、
この映画の事を熱く語りたくなるかと言われると、
そこまでではなかったかなあ、という感じだった。
良かった演者
重岡大毅
上白石萌音