「仏俳優は柴咲コウへの依存性を上手く表現し、ルンバも十分に不気味。ただ柴咲の怖さが期待以下。」蛇の道 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
仏俳優は柴咲コウへの依存性を上手く表現し、ルンバも十分に不気味。ただ柴咲の怖さが期待以下。
黒沢清 監督による2024年製作(113分/G)のフランス・日本・ベルギー・ルクセンブルグ合作映画。原題:Le chemin du serpent、配給:KADOKAWA、劇場公開日:2024年6月14日
「バトル・ロワイアル」 で殺戮しまくっていた柴咲コウの目力と恐怖与える笑みが忘れがたく、この映画を視聴した。ただ期待が大きすぎたせいもあってか、少々物足りない印象であった。
黒沢監督のセルフ・リメイク作品ということだが、前作は見ていない。
舞台はパリで、柴咲は在仏の精神科医師新島小夜子を演じ、現地の方々とは特訓したらしいフランス語で会話。小夜子の協力を得て、娘を殺した人間への復讐を果たそうとするのがダミアン・ボナール。いざとなったら怖気付く彼を、冷静に復讐実行に導いていく小夜子。そして、その中で、精神的に次第に彼女への依存性を強めていくボナール。それをさり気なく示していく演技は、実にしっかりとしている印象で流石。
彼らに捕まり、袋詰めにされて運ばれ、鎖に繋がれてままの酷い扱いを受けるマチュー・アマルリックも印象に残る演技であった。そして、糞尿垂れ流しをさせられた彼に、冷徹な表情で放水をかけまくる柴咲コウの姿は、かなり不気味であった。
彼女は、ボナールに内緒で、でっち上げ犯人の提示を鎖に繋げた囚人たちに持ちかけ、挙げ句の果てに彼らを裏切り、殺し合いに追い込む。なかなかに怖く、不気味なストーリー展開。ただ、無表情すぎる柴咲に、あまり魅力は感じなかった。監督の演出力が、深作欣二に及ばないということかもしれない。
ずっと彼女の意図するところば謎であったが、最後の方でそれは明らかにされる。彼女も娘を殺され、その復讐を果たそうとしていたと。ただ、彼女の娘への思いが、演出のせいか演技のいたらなさかは不明だが、あまり伝わってこなかった。娘を売ったのは実は、妻おもいに見える優しげの夫(青木崇高)という意外性も、ネット上でのやり取りのみであったせいか、取ってつけた様に感じてしまった。
他の出演者では、精神科医小夜子の患者として、西島秀俊が登場。精神を追い詰められた患者を上手く演じていた。ただ解決策としての自殺を教えた様にも見えた小代子だが、スートーリー展開との繋がりは、自分には良く理解出来なかった。彼女が復讐心の蓄積で、もはや正常ではないことを暗示?
与えられた使命(清掃)をたんたんと実施していくルンバ映像は、不気味で印象に残った。小夜子が、娘の敵たちを冷徹に一掃(殺害)していくアナロジーには思えた。
監督黒沢清、製作ダビド・ゴキエ 、ジュリアン・デリス 、小寺剛雄、原案高橋洋、脚本黒沢清、撮影アレクシ・カビルシーヌ、編集トマ・マルシャン、音楽ニコラ・エレラ。
出演
新島小夜子柴咲コウ、アルベール・バシュレダミアン・ボナール、ティボー・ラヴァルマチュー・アマルリック、ピエール・ゲラングレゴワール・コラン、吉村西島秀俊、ビマラ・ポンス、スリマヌ・ダジ、宗一郎青木崇高。
トミーさん、コメントありがとうございます。
言われてみれば確かに、私も「鎌はお気に入り」という台詞があったことを思い出しました。黒沢監督にとっても、柴咲コウは「バトル・ロワイアル」のイメージなんですね。
共感ありがとうございます。
ルンバにもそういう不穏さが! バトルロワイヤルは鎌を振り回して凄かったですね、鎌はお気に入りという台詞が有ったのを思い出しました。