劇場公開日 2025年2月28日

「三木監督こだわりの映像美が光るピュアで優しい世界観」知らないカノジョ ももさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0三木監督こだわりの映像美が光るピュアで優しい世界観

2025年3月2日
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三木監督らしいピュアで優しいストーリーとどの場面を切り取っても絵になる映像美、加えて「歌の力」が魅力の本作。ラブストーリーとは縁のない、現実社会に疲れた大人にこそ観てほしい作品だと感じた。
まずこの作品には完全な悪者は出てこない。そしてラブシーンもどこか御伽噺のように可愛らしく、生々しさやいやらしさがない。しかし夫婦の擦れ違いや様々な不幸がドミノのように押し寄せて空回っていく様子はリアルだ。リアルとファンタジーの境界線の柔らかさによって、あり得ない設定であってもすんなりと物語に馴染むことができた。
中島健人演じるリクは人間的な未熟さと誠実なひたむきさのバランスが素晴らしく、思わず応援したくなる魅力的な主人公だった。milet演じるヒロインのミナミは素朴な可愛らしさとカリスマ的な美しさのギャップに注目してほしい。桐谷健太演じる親友の梶原は物語を成り立たせる重要人物であり、一見都合の良いキャラクターのように思えるが、後半に明かされる背景によって説得力のある人物として成り立っていた。
とにかくクライマックスの「I still」の歌唱シーンは圧巻だった。このシーンを観るためだけに映画館に足を運んでほしいと思うくらいに。この歌唱シーンによって、リクの「最後の決断」に説得力が生まれていた。
ラストは人によっては都合が良すぎると感じるかもしれない。しかし、これほどまでに幸せな結末の映画が、今の世の中には必要なのではないだろうか。
最後まで観ればきっと温かくて幸せな気持ちになれるはず。ぜひ大切な人と一緒に観ていただきたい。

もも