劇場公開日 2025年1月24日

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「脚本と演出が酷すぎ。こんな映画づくりしたらあかんでしょ。」雪の花 ともに在りて 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0脚本と演出が酷すぎ。こんな映画づくりしたらあかんでしょ。

2025年5月26日
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鑑賞方法:映画館

時は黒船来航の十数年前、
天保の飢饉に見舞われ、
大阪で大塩平八郎の乱が起こり、
水野忠邦による「天保の改革」が行われようとしていた頃。

疱瘡――天然痘が、
日本各地で猛威を振るっていた。
それを防ぐべく、
種痘を日本に定着させようと苦闘した
福井の町医者の物語。
史実に取材した吉村昭原作の映画化。

種痘の最大の問題は苗の維持、
というのは初めて知った。
紛れもない偉業だし、
歴史の勉強になる。が、
映画としては、気になる点が多い。

まず、予告の段階から、
「疱瘡」のアクセントが気になった。
放送や包装と違って「ほ」にアクセントがあるはず。
実際、新明解国語辞典ではそうなってる。
なのにこの映画では「そ」にアクセント。

アクセントに揺れはあるし、
地方によっても異なるが、
他の台詞はほとんど標準語のアクセントで、福井弁も全然ない。
(なぜか京都の医師の娘だけが京都弁だった――親はそうじゃないのに)
だからやっぱり、いい加減なんじゃないの、と思わざるを得ない。

そしてなぜか
主人公が夫妻そろって武道の達人なのだが、
これはエンタメのためにアクション要素を入れたかったんだろうね。
ま、いいけど。

最後は、祭のシーンで盛り上がる。
なんだか1960年代の娯楽時代劇か?っていうパターン。
そういやこの監督って、
黒澤明&市川崑の弟子なんだっけ。

やたら声を張って不自然な台詞の言い方をさせていたのは演出の問題だけど、
台詞の中身がやたら説明的なのは、
映画の最初の方とくに輪をかけて説明台詞が多いのは別として、
吉村昭の原作そのままだから。

説明的な台詞ばかりの小説も、どうよ、と思うけど、
時間を短縮すれば文脈も変わるだろうに、
単にツギハギしただけなので、さらにおかしなことに。
登場人物の考えが1分も経たずにコロッと変わったり。

酷かったのが、雪中の峠越え。
案内人は先にやっておいて同行させないなんて
雪降ったら道もわかんなくなるだろうに――
と思ったら、原作でもそうしてた。

吉村さんがトンチンカンなのか、
それとも本当に
主人公がそんなバカだったのか。

* * *

ともあれ、
脚本と演出が酷すぎて、
最後まで観るにはかなりの忍耐力を要した。

料理の仕方はもっといくらでもあっただろうものを、
こんな映画づくりしたらあかんでしょ。

島田庵