「気持ちの良い理想的な日本人像が描かれた秀作でした」雪の花 ともに在りて komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
気持ちの良い理想的な日本人像が描かれた秀作でした
(完全ネタバレなので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
(レビューが遅くなりました、スミマセン‥)
今作の映画『雪の花 ともに在りて』を大変面白く観ました。
ここには、かつてあった理想的な美しい日本人像が描かれていると思われました。
主人公・笠原良策(松坂桃李さん)は江戸時代の末期に、痘瘡(天然痘)の治療のために奔走し、ついに予防的な種痘(予防接種)に出会います。
現在のワクチンにつながる種痘の普及に、困難を超えて尽力した主人公・笠原良策は、日本の一般人々を感染症から守った始祖とも言えると思われました。
今作は、もちろん主人公・笠原良策に対決する悪人的な人物も出て来るのですが、すぐさま主人公・笠原良策に打ち負かされ、藩に成敗されたりと、全体に流れる基調としては、静謐で凛とした、かつてあった美しい日本人の理想の姿が描かれていたと思われます。
それは、対峙するのは、悪事を働く人間ではなく、病気を含めた大きな自然的なものだとの考えが、今作の根底に流れているのも理由と思われました。
もちろん、現実は人間の酷さが問題になる場合が多いのですが、人間の酷さを描いた作品が数多ある中で、かえって今作の映画『雪の花 ともに在りて』は、特異な作品として現在に光っていると思われました。
それぞれの俳優陣の皆さんの演技も、美しい日本の風景の中で、作品にリアリティの厚みを加えていたと僭越思われました。
かつては数多くの作品の中に宿っていたとも思われる、美しくも理想的な日本人像に懐かしさも感じながら、今作を大変面白く観ました。
(※今作の撮影監督の上田正治さんが今年の初めに亡くなられている事を知りました。
上田正治 撮影監督は黒澤組の生き残りの一人で、これまでも数多くの美しい撮影をして来られたと思われます。
今作の雄大で美しい日本の風景の映像も、上田 撮影監督の力も加わっていると思われました。
改めてご冥福をお祈り致します。)