ルックバックのレビュー・感想・評価
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ディエゴ・ベラスケスの 『ラス・メニーナス』みたいな感じで始まった...
ディエゴ・ベラスケスの
『ラス・メニーナス』みたいな感じで始まった。4コマ漫画と言う事で、手塚治虫先生のある街角の物語の中のポスターの様なタッチが変化するアニメかと期待したら、別の方へ暴走したようだ。
閑話休題
『バック』をどの視点で解釈するかと言う事だが『振り返る』とか『背中を見る』とかだと思う。確かにそれも含まれていると思うが、少なくともこのアニメでは『背景』をさしていると感じた。
つまり、楽屋落ち的な内容だと思う。
背景とは非常に地味な部分で日頃日の目が当たらない。作者は『そこを見て』って言ってんじゃないかなぁ?
しかし、反面、日本のアニメの素晴らしさは背景にあると思う。それは世界的にも群を抜いて凄いものがあると僕は思っている。
つまり、このアニメはその自己主張とあの事件で命を落とした人達への鎮魂と思われる。
次回作に期待したい。
LGBTな解釈はどうしても男目線な所がある。全体的にも男目線だ。小学校六年から中学校の第二成長期が女性にとってどんな時期かを全く無視している。物理的に男には絶対に分からない神秘的な時期なんだと思う。
とにかく、次回作に期待する。
もはや文学。1週間経っても余韻が覚めない。気付けば考えてる
昔は自分にもこういう純粋でひたむきな気持ちがあったなって、観てて思い出した。
でも大人になるってちょっとずつ諦めていくことだから。忘れてた感情を色々思い出した。
60分ほぼ泣きながら観てた。めっちゃいい映画だった。
劇中の藤野のセリフ。「漫画書くのは好きじゃない。楽しくないしめんどくさいし地味だし漫画は読むだけでいい」藤野は虚勢はって本音を隠すキャラ。
「じゃあなんで描いてるの?」と京本が問う。
いつも藤野が描いたネームを最初に読むのが京本。処女作のメタルパレードの時は弾ける笑顔を見せ、その後もある時は泣き、ある時は笑い転げ、藤野にとって京本は最も身近にいる最高の読者で最高のファン。
つまり自分の漫画で京本を楽しませる。それが藤野の原動力だった。最もリスペクトしてるライバルが自分の漫画を楽しみにしてくれている。これほど嬉しい事はないはずだから。
だから京本が美大に行きたいから連載手伝えないって言った時、「美大なんか行っても就職出来ない、私に付いてくれば全部上手くいく、一人でやっていけるわけない」って、感情的になって京本をディスって引き留めようとした。
裏を返せば、京本が居なくなったら楽しくないってこと。ずっと一緒にやってこうよって、泣いて縋ってでも引き止めるべきだったと思うけど、強がりの藤野にはそれが言えない。
だから京本の意志が固いのを見て、ただ黙って絶望して諦めた。
悲惨な事件で京本を失って
「私のせいで京本が死んだ」「漫画描いても何の役にも立たなかった」って自分を責める藤野。
2人が出会わなかった別の世界線は藤野の後悔が生み出した世界。
でもその世界でも結局2人は出会う。漫画を描かなくても結局出会う。京本は藤野の漫画をずっと覚えていて、藤野の方も覚えていてくれてた事が嬉しくて、つい虚勢はってまた描き始めたって嘘をつく。何で嘘かって、だって漫画忘れるために空手続けてたんだろうから。
藤野は京本に出会ったら嫌でも漫画を描く運命なんだと思う。
なぜなら学校の友達も家族も漫画描くことを理解してくれない中で、唯一京本だけが藤野の漫画を理解して肯定してくれる存在だったから。
京本はずっと藤野の漫画のファン。別の世界線でもそれは変わらない。現実の京本の部屋も藤野の単行本がずらりと並ぶ。
物語前半、藤野が賞に出す漫画を描くって言った時、「見たい見たい見たい!」って興奮して食いついてきた京本の顔がものすごく象徴的でこれが全ての始まり。
京本の思いはその時からずっと変わっていない。そんな京本との思い出が藤野の背中を押してくれる。
藤野がいたから外に出れた京本。京本がいたから死ぬほど練習した藤野。お互いに刺激しあって高めあってプロになれた。
目の前の現実から京本はいなくなっても、振り返ればそこには京本との思い出が変わらずにある。
だからタイトルがルックバック。
60分の短編だけど、緻密に作り込まれた完璧なストーリーだった。子供の頃は自由に夢想してただ楽しいだけでやっていけた。でも大人になったら楽しいだけではやっていけない。
どんなに深い傷を負っても、漫画家だからやっぱり漫画を描かないといけない。そんな内面的な葛藤をきっちりストーリーに落とし込んだ傑作。
悲惨な事件を経験して自分を責めるのではなく、幸せな思い出に支えられて描き続けてほしい。京アニ事件で生き残ったアニメーターたちに対するエールのようにも感じられた。
※追記(11/14)
別の世界線で藤野が犯人に飛び蹴りしたシーン。足を骨折したって事はしばらく入院生活で運動は出来ない。⋯って事はやること無くて暇だからもう漫画描くしかない。
犯人に思いっきりグーパンチしたのに右手は無事だったわけだし。藤野はどの世界線でも京本に出会ったが最後、漫画を描く運命なんだと思うw
この映画って主人公の主観描写中心でほとんど説明がないけど、ストーリーの背景とか設定はしっかり作り込まれてる。原作の藤本タツキは間違いなく天才だと思う。
奴らは何も奪えない。何も変えられない。Don't Look Back !!
理不尽な暴力は何も奪えない
愛も情熱も絆も何もなくならない
なくなってたまるか。
苛烈な悲劇を通して、愛の実在を問いかける作品は幾多もある。
「ルックバック」はこう答える。
証明しないことが証明だ。
なぜなら、それがそこにあることは当たり前のことだからだ。
物語は二人の少女の小学生時代から始まる。
絵が大好きな藤野(河合優実)と京本(吉田美月喜)の二人は学級新聞の4コマ漫画を通じて知り合い、友達になる。
二人は協力して漫画を描くようになり、高校3年で連載デビューが決まる。
だが、京本は絵の上達のために大学進学を選び、藤野ひとりがプロ作家として上京を果たす。
数年後、藤野は京本の訃報を受け取る。
大学に現れた殺人鬼にツルハシで殺されたというのだ。
数年ぶりに訪れた京本の部屋の前で、藤野は立ち尽くす。
自分が京本を絵の道に誘ったりしなければ、京本は死なずに済んだんじゃないかと苦しみ悶える。
そもそも漫画を描くことだって一度は諦めていた。
何の気無しに再開して、京本を巻き込んで、京本の数年間を漫画に費やさせて、あげく喧嘩別れのようになって、絵の道に進んだ京本は死んでしまった。
「描いても何の役にも立たないのに」
藤野はかつて自分が描いた4コマを破り捨てる。
それは引きこもりの京本を部屋の外に出した4コマだ。
自分が4コマを描いたりしなければ、京本は死なずに済んだ。
この4コマさえなければ……、
その4コマの切れ端が、時間を超えて、引きこもりだった頃の京本に届く。
仕掛けの説明はない。
ただの奇跡だ。
こちらの世界を世界bとする。
世界bの京本は部屋の外に出ることはなく、藤野に出会うこともなく、大人になる。
だが、絵の道には進む。
藤野と出会おうと出会うまいと絵の道に進む。
いっぽう京本と出会わなかったことで、漫画を諦めたままになった藤野も大学へ進む。
そこで京本が殺されそうな現場に出会し、殺人鬼を撃退する。
なぜ藤野は美術大学に進学していたのか?
結局、漫画への夢を諦めきれず、また、描き始めたからだ。
二人は一緒に漫画を描く約束をした。
時間はズレたが、二人は出会える。
時間はズレたが、同じ夢を追えるようになる。
それはもうただの夢想でしかないではないか。
4コマ漫画が時間を超えて届くなんてあり得ない。
心を慰めるための癒しに過ぎないじゃないかと。
違う、と本作は言っている。
奇跡の部分は「殺人という理不尽な暴力」に対するカウンターであって「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の火炎放射器のようなものだ。理不尽と同じぐらいの乱数をぶつけ返しているだけだ。
京本は藤野と出会わなくても、絵の道に進んだ。
藤野は京本と出会わなくても、漫画への情熱を取り戻した。
説明はない。
なぜ? どうして? の説明をしない。
説明がないのが説明だ。
理不尽な暴力は何も変えられない。
二人は出会っても出会わなくても、自分の夢を失わない。
多少の回り道をしても、進むべき道を選ぶ。
4コマが時間を超えようと超えまいと、二人は出会う。二人は漫画を描く。二人の絆は変わらない。
理不尽な暴力は何も変えられない。
奴らが何をしようと、心にあるものまでは奪うことはできない。
できないんだ!!!
という断固たるメッセージだ。
今度は世界bの京本が描いた4コマが、世界aの藤野に届く。
ただの奇跡だ。
しかも今度は時間を超えるだけでなく、別の世界に届いている。
奇跡だから説明をしない。
4コマのタイトルは「背中を見て(Look back)」
京本が最後のコマの藤野の背中にはツルハシが刺さっている。
それは漫画のオチでもあり、
別の世界で救われた京本がいるという夢を藤野に与える仕掛けでもあり、
自分がそばにいなくても藤野に漫画を描き続けて欲しい京本の願いそのものだ。
藤野は、京本との会話を思い出す。
「じゃあ藤野ちゃんはなんで描いてるの?」
藤野の答えは説明されない。
きっとトボけた答えをしたに違いない。
映像はただただ京本と一緒に過ごした日々を、京本と一緒に漫画に打ち込んだ情景を、淡々と淡々と積み重ねていき、最後に完成した漫画を読んだ京本の笑顔で終わる。
その笑顔の、なんと嬉しそうなことか。
藤野の目には、京本の笑顔が、そんなふうに映っていたのだ。
小学生のとき、漫画を諦めた。
漫画をまた描こうと思ったのは、京本が喜んでくれたからだ。
自分の描いた漫画で、喜んでくれる人がいる。
京本がそれを教えてくれた。
京本がいたから自分を信じることができた。
自分ですら信じることができないでいた自分に水を注いでくれた、光を与えてくれた。
京本の出会えた世界の藤野は、京本がくれた愛情を背中に受けて、漫画を描く。
京本と出会わなかった世界の藤野も、別のかたちで夢を取り戻し、漫画を描く。
何も変えられやしないんだ、この野郎!!!
「ルックバック」は、運命に対する人の無敵さを証明する。
証明しないことで証明する。
プラスしか受け取らない。絆の力、思い出の力、愛情の力しか受け取らない。
マイナスは断固として拒否し、プラスがなくても、己自身の力で人生を進む。
勝利宣言の物語なのだ。
*
漫画を描くのは大変だ。
「メンドくさいだけだし、超地味だし、一日中ずーっと絵を描いていても全然完成しないんだよ? 読むだけにしといたほうがいいよね。描くもんじゃないよ」
それはアニメも同じだ。
「じゃあ、なんで描いてるの?」
京本の言葉に藤野が思い浮かべたもの。
それは監督脚本絵コンテキャラクターデザイン作画監督を務めた押山清高をはじめとするアニメスタッフの答えと同じものだろう。
説明なんていらない。
この作品に込められた愛情が何よりの証明だ。
少なくとも原作未読には響かない
凄い盛り上がってるから見てみれば、平凡な映画。
あれが、全てアナログ絵での作製とかなら凄いってなるかもだけど…
京アニ事件を彷彿させると言われてるけど、動機が同じなだけで、手口や状況は全く違うから…私はそうは思わなかったな。
恐らく面白いのは、原作である漫画の方で長編読み切りなのにあの内容は濃くて、作者の絵が凄いって話なのだろう。
普通に二人の少女が漫画家を目指す物語かと思いきや、、、後半からは泣...
普通に二人の少女が漫画家を目指す物語かと思いきや、、、後半からは泣けてくるシーンもあったりで、なかなか良かった。
あのドアを挟んだ、やりとりをどう解釈すればいいのかわからなかったけど、別の世界線からやってきた四コマをガラス窓に貼り付けて頑張ろうとしてたから、あの世にも不思議な物語は事実として起きた事であって並行宇宙って事なのかな?
続編があるのかも知らないんですが、あのドア挟んで、また不思議なやり取りが続いて二人が交わる世界線を見てみたいな
ドント・ルック・バック
この作品を見終わると、無性にボストンの「ドント・ルック・バック」が聴きたくなった。最近、音楽というものに夢中になってきたので映画鑑賞欲が遠のいてしまった私をお許しください。ということで、久しぶりに映画(アマプラだけど)を観たので投稿します。
あー、なるほど。タイトルの「ルックバック」には過去を振り返ることと、単純に背中を見ろというダブルミーニングが隠されていたのですね。裏を返せば、実は過去を振り返るなという前向きなことを訴えているようでもあり、奥が深いです。
今の時代にしては手描き風の要素もあり、時代の流れとともにパソコンを使った漫画制作の現場がよく伝わってきます。冒頭のヘタウマアニメなんかもセンスあるし、デッサン画の勉強シーンからはアニメーションの動きに目を奪われてしまいました。
とにかくストーリーが秀逸!京アニの事件をも想起させる事件によって藤野と京本の人生が大きく変わる瞬間に感情を揺さぶられ、その後のパラレルワールド展開を想像させておきながら現実の厳しさを訴えてくるのですよ。もう涙が止まらんやん・・・人生振り返りっぱなしのおっさんにはきつい。単に短めだから鑑賞リハビリにはもってこいだと短絡的に考えてたので、後頭部にガツンとキックを食らった感じ・・・てな感じで、ぼちぼち映画を観ていきます。
モチベーションとか影響
まず藤野が描いた漫画に影響を受けて自分も発表しようと思ったっぽい京本。
その京本が描いた漫画に影響を受けてさらに上手くなろうと頑張る藤野。
さらにその京本が描いた漫画におそらくマイナスの影響を受けて漫画を描くのをやめる藤野。
その京本に直接めっちゃ褒められたことでおそらくプラスの影響を受けて、一緒に45ページの短編漫画を描く藤野と京本。
賞貰ったり一緒に遊んだりしながらもお互いにおそらくいい影響を与え受け合って漫画を描いてく藤野と京本。
お互いが影響する中で連載デビューと大学進学を決めた藤野と京本。
おそらく藤野の漫画を読んで影響を受け続けながら、自宅や大学で絵を描いていく京本。
そこにおそらく誰かの絵からマイナスの影響を受けた男がやってくる。
もし自分が誘ってなかったら、京本は事件に巻き込まれずにすんだと思う藤野。
もしも京本に出会ってなかったら、の世界で京本を助ける藤野。
それでも小学生のときに描いてた漫画が、京本に影響を与えていた藤野。
一緒に漫画を描いていた中で、京本がモチベーションになっていたかもしれないと思う藤野。
色々思い出してそれがまた影響を与えて漫画を描き始める藤野。
どうやっても漫画を描いて発表した瞬間から影響を与えちゃってるのがおもしろかった。
漫画に限らず、創作でもなんでも、影響って勝手に与えるし受けるもんだと再認識してなんか感動した。
この映画を作った人も作ってない人もありがとう
相互触発…背中を押す
Amazon Prime Videoで鑑賞。
原作マンガは未読。
マンガへの熱い想いが引き寄せたふたりが実は互いに触発し合っていたことが分かる序盤で、「これはすごく面白い青春物語が始まるぞ!」と云う予感に胸が高鳴ってしまった。
褒められるとすぐ調子に乗る藤野と、引きこもりの京本のキャラの書き分けが明確でしかも強烈なので、基本このふたりだけの画面だが、凄まじい牽引力で物語を引っ張っていく。
ふたりが交流を深めていく様子を、ただ映像のみで見せていく手法も良かった。セリフは無いが、表情などからどんどん仲良くなっていくのが分かるし、季節の流れも情緒があった。
ここまで仲良くなると、青春モノあるあるとして別離があって、紆余曲折を経てまた一緒にマンガを描く流れを予想したがその斜め上と云うか、かなり悲劇的な出来事が起きて呆然。
京本の悲劇は、事件の内容と京本と云う名前から「京アニ放火殺人事件」を想起させ、心が苦しくなった。才能あるクリエイターの命が失われると云うのはこう云うことなのか、と…
それからの展開が劇的。藤野のif妄想と京本の想いが藤野の背中を押す流れは冒頭の伏線が効いていて涙腺が緩んだ。仕事部屋に帰って早早、マンガを描く藤野の背中は、クリエイターの業や「それでも描くことをやめない」情熱など、いろいろなものを背負っているように見え、複雑な余韻だった。
[余談]
藤野の声を担当する河合優実氏だが、本当に作品に恵まれた俳優さんだなと思う。と言うか、河合優実氏よ。声の演技まで抜群に上手いだなんて、あなたに弱点はないのか!?
この映画に出会えて良かった
藤野と京本、二人のキャラクターが本当に素晴らしい。
藤野はプライドが高く、負けず嫌いで、画力を上げるための努力を惜しまない姿がとても魅力的だ。一方で京本は、藤野に対する純粋な憧れを抱きながらも、藤野に見合うアシスタントになるために、敢えて彼女から離れる強さと美しさを感じさせる。
京本の人生が不条理に絶たれるやるせなさと苦しさ。二人が夢中で漫画を描いていたシーンが何度も頭をよぎる。引きこもりだった京本が、憧れの藤野を前に顔を真っ赤にしてサインを求めたり、藤野のお気に入りの話を熱心に解説したり、新作を見たいと何度もねだったりするシーンがとても愛おしい。
物語が「if」の世界に移行し、京本と藤野に新たな接点が生まれたときには、どうかこれが現実であってほしいと祈りながら観ていた。そして、描く目的を見失っていた藤野に、自分の夢が詰まった部屋を見せ、再び描く喜びを思い出させた京本。その藤野への深い愛情に、涙が止まらなかった。
きっと藤野は、京本との思い出や友情を抱きしめながら、これからも2人で漫画を描き続けていき、そして更に面白い作品を生み出すんだろうと思うと苦しい中にも小さな嬉しさを感じた。
もっと早く観ておけば
アマプラ配信されたので早速。映画館で観れば良かったな。。原作読んだから良いかと思って舐めてた。
藤野が漫画を描き続けるのも立ち止まるのも京本がいるからで、京本が部屋を出て美大へ行くのは藤野がいたからで、画力は京本に勝てないけど学校や友達との何気ない生活という経験から漫画を描ける藤野と学校に行かないからこそひたすら風景画を描き続けて時間と画力はあるけどストーリーは描けない京本。どちらもお互いが必要で、時に足枷になるなんてこんなに苦しくて尊い関係があるのかと前半は思った。
後半は京アニ事件を思い出した。実際の京アニ事件だってあそこにいたのは努力をし続けて夢を叶えている人達だったんだろう。理不尽だ。藤野が京本を助けるあのifシーンは時間は掛かってもそれでも2人が出会って漫画を描く未来なのかな。
外が暗くなってもひたすら藤野が漫画を描き続けるエンディングロールは観ているコチラ側へのルックバックだったように思う。
映像の美しさと細かく設計された背景、セリフよりも画でわからせる映画だった。
緻密な構成がすばらしいヒリヒリする名作。
すばらしかった。
東北地方と思われる田舎が舞台。
小学四年生の藤野は学年新聞に四コマ漫画を連載している。周囲に才能を認められていたが、彼女が描いていたスペースを登校拒否をしている京本にも分けることになる。
京本は高い画力を持っており、藤野は驚愕する。そして必死に練習をしているうちに六年になった。そこでついに心が折れて描くのをやめる。
小学校の卒業式の日、担任に頼まれて京本に卒業証書を届けに行く。
そこではじめて京本に会い、ファンであることを告げられる。
そしてふたりはプロを目指して合作をはじめる。
といったもの。
「チェンソーマン」がヒットした藤本タツキということである程度のヒットは見込めたと思う。
58分という短さで、DS作品として1,700円均一料金が設定されたのも話題になった。
また、デジタル全盛の現代にあえて手描き感を出したことも評価されている。
もちろんそれだけではヒットしない。
本作はマンガを描きたい、という初期衝動と、藤野と京本の友情がエモーショナルに描かれている。
今はネットがあり、誰でも漫画を描いて発表できる時代になった。
そのハードルの低さは、本作の主人公藤野が学級新聞の漫画を描いているところにも通じている。もちろん、そこから藤野のようにプロデビューする人はほんの一握りだ。それでも自分の漫画を発表して認められたいという欲求に共感する人は多いだろう。
「ルックバック」というタイトルについて。
以下はネタバレになる。
「過去を振り返る」「背中を見ろ」といった意味。
作者の藤本タツキ自身が過去を振り返るという意味での「ルックバック」でもあるだろう。
本編の話をすると、小学校を卒業する日、はじめて会った藤野に京本はサインをねだる。色紙がなかったので自分の着ていた半纏の背中にサインをしてもらう。これが後の伏線になる。
藤野と京本は一緒に漫画を描くようになる。新人賞に応募して準入選となる。懸賞金が入り、2人は町に遊びに行く。藤野は京本の手を引いて歩く。藤野はいつも京本の後ろにいる。これも伏線になる。
2人は読み切りを7本描き、高校卒業後に連載をすることになる。しかし京本は美大にいく決意をして、コンビは解消される。
藤野はシャークキックという漫画を連載する。サメ人間が戦う話でキックが得意のようだ。これも伏線になる。
藤野はアシスタントがうまく使えないらしく、1人で描いている。
テレビでニュースが流れてくる。山形の美大で通り魔殺人があったと言うのだ。通り魔に殺されたのは京本だった。
葬式に訪れた藤野は京本の部屋を訪れる。
廊下にはデッサン帳が積み上げられており、シャークキックの掲載誌が置かれていた。そこには藤野が京本に出会った日に描いた四コマが挟まれていた。
もしその時自分が京本を部屋から出さなければこんなことにはならなかったと後悔する。
藤野が部屋から出てこなかった場合を思い浮かべる。妄想の中でも京本は美大にいく。そして通り魔に襲われそうになるのだが、藤野があらわれて飛び蹴りで助ける。
藤野は連載しているシャークキックの主人公と自分を重ねているのだった。
部屋の前でためらっていると、扉の下から4コマ漫画が描かれた紙が滑り出てくる。あたかも京本が投げてよこしたかのように差し出された。
漫画の内容は、通り魔に襲われそうになった京本を藤野がキックで助けるというという藤野の妄想を形にしたようなものだった。四コマ目で、立ち去ろうとする藤野の背中に凶器となったツルハシが刺さっている。
タイトルは「背中を見ろ」。
このタイトルは背中にツルハシが刺さっているのに気がつかないというギャグではある。英語にすると「ルックバック」だ。
「背中を見ろ」という言葉は現実の藤野にそのまま当てはまる。京本の部屋で振り返ると、あの日藤野が背中にサインした半纏がかかっていた。
京本は藤野をずっと見ていたのに、藤野は気づいていなかったのだ。
その四コマ漫画を持ち帰った藤野は自分の前にその4コマの紙を貼って漫画を描く。それがエンディングになる。
おそらくここで描いているのが「ルックバック」なのだ。
エンドロールのショットで、物語が円環を為す。
本編は作中の藤野が描いている「ルックバック」だから、京本の親が出てこないのも、京本の部屋に自分の未来を予期したような4コマ漫画があるのも辻褄が合う。ちなみに京本の家に親が全く出てこないのは、藤野の両親と姉がいる藤野の家と対照的だ。これは本当に親がいないわけではなくて、抽象的に家族の中で暮らしている藤野との対比でそのような演出にしてあるのだと思う。
この映画は、夢を叶えて成功したけれど身近なところで自分を愛してくれている人のことを理解していなかった、という後悔の物語なのだ。緻密な構成をひとつずつ読み解いていく面白さも含めて素晴らしかった。
描いて 苦しくて 描いて 食って 描いて 寝て 描いて 描いて 描いて…
藤野は、京本にとっての友だちであり、道じるべ。
京本は、藤野にとってのファンであり、道標。
互いに互いを道(標)しるべとしている。
ふたりの4コマ漫画は、絆であり北極星。
素晴らしいです!そして色々反省です。
正直ノーマークでした。朧げな記憶をたどると書かれている方もちらほらいらっしゃいますがイオンシネマの回数チケット1,000円でちゃっかり鑑賞している身としては同チケットが使えないことが第一障壁だったような気がします。あと1時間弱の上映時間も。でも激しく反省です!
そんなこんなで観落としていたことぼんやり思い出しながらふと「早くもprime videoで配信開始」の謳い文句につられ週末金曜日の定時後、疲れた目を擦りながら観た時の衝撃は今でも忘れません!(まだ一昨日のことですし!)日にちが変わって土曜日深夜(明け方?)に2回目の鑑賞。素晴らしいです!今後時間単価で考えるのはバイトを雇う時だけにします。
全編通して何故だか涙が出てたまりませんでした。確かに京アニのことをイメージしてやるせない気持ちになりましたが鎮魂歌(レクイエム)としてもの凄く胸に刺さりました。
自信過剰、井の中の蛙、負けず嫌いの藤野が京本のおかげでそのことに気づいて奮闘努力する姿はこの歳になっても見習うべきと痛感しました。京本から憧れの藤野先生って呼ばれ雨の中スキップ、さらにはガッツポーズまでする姿、大好きなシーンです。お返しじゃないけれど京本も同じく雪景色の中嬉しそうに歩く姿も印象的でした。
長編作品を読んだ雑誌社の編集者(?)から中学生の作品としては面白いんだけど‥みたいなダメ出しされるんじゃないかとうがった見方をしてしまった自分にも反省です。
小学生から中学、高校を経て大人になる成長の流れをなんの違和感なく吹替えたた河合優実さん、吉田美月喜さん、天晴れでした。ここのところ出すぎとも思える河合さんの活躍ぶりには目を見張ります。個人的には思わず「いいこと言っちゃった」ユニクロの彼女が輝いています♪
とにかくみなさん、老若男女觀てください。いい映画です。私の生涯ランキング上位に入る作品になりました。
最近見たアニメでは一番絵が美しい
映画.comの評価が高かったので見る前にかなり期待していた。
そのせいでもあるのかもうちょっとって感想。
絵に関して言えばクオリティは相当なものだったと思う。
最近のアニメの中では群を抜いて美しいと思った。
とはいえアニメはほとんど見てないからもしかしたらもっとすごいのあるのかもしれんが。
ストーリーが1時間と短く集中しやすいしまとまっていたとは思うのだけど、
前半の青春ストーリーと後半のツルハシによる惨殺、それに続き並行世界とのリンクはちょっと唐突過ぎて違和感この上なかった。
前半の藤野の漫画への思いや周りからの反応、思い上がりや落ち込み、京本の友情の構築は少ない時間にも関わらず美しい映像ですごい説得力があった、そして京本の自立なんかは、でも誰も責められないよね、、と二人の別れに涙していたのに、後半はあまりにも日常から逸脱し過ぎて前半からの流れを無視し過ぎていると思った。
まあ、現実として京アニの事件みたいなこともあるのでありえないとは思わないけど、
あくまでも青春ストーリーの中に出すものではないと感じる。
そのため藤野が漫画を辞めてしまった後の立ち直り、タイトルにもあるシーンが
自然というよりは強引に感動に持っていく感があって多少興醒めしてしまった。
ルックバックの意味に込められたものがあのワンシーンにだけに込められたものがあるのならちょっと弱いかなと思う。藤野が立ち直るシーンに使われるのならば、後ろを見て、私はいつもあなたを応援しているよ的な意味がもっと含まれていて欲しい。いや、もちろんあのはんてんにその意味もあるとは思うのだけど、ルックバックという言葉はあんまり前向きな言葉じゃないからね。。ドントルックバックアップならまだわかるけど。
同じ死ぬにしても藤野が人気が出て自分のスタジオに招待した時に自動車事故に遭って死ぬとかの方が自然かなと思うし。立ち直るのにも京本の部屋を訪れて自分の漫画が揃っているのを見て私を見ていてくれたんだという思いと過去の友情から、京本が前を向けと言っていることを感じ取る方が自然じゃないかと思うけどね。まあ素人の安直な案ですけど。
ちょっと批判的なことも多くかいちゃったけど、良かった分ちょっと不満も大きかったかなという意味合いで。つまんない映画だと批判も何も出ないからね。
喜怒哀楽、心をいっぱい揺さぶられました。
アマプラから新作のお知らせで上がってきて調べてみたら、アニメを観てファンになった『チェンソーマン』の作者藤本タツキ先生原作で、1時間に満たない作品だったので夕食までの時間潰しに観てみようと軽い気持ちで観始めました。
小学校卒業文集の「将来の夢」に「漫画家」と書いたことを思い出しました。
あの頃は得意分野で自分以上の才能と出会ったらなんかイラついてたなぁ~、でも認めてもらったらとんでもなくうれしかったなぁ~、それが会話の中の何気ない一言だったとしても。
すげぇ気持ちわかる…とドンドン引き込まれていきました。
声優初挑戦という主人公2人の演技の素晴らしさに心揺さぶられます。
その反動で、事件が起こった後のBGMだけでセリフ無しの2人の思い出がスライドショーみたいに流れるシーンが余計に際立ち、涙が溢れて溢れて止まりませんでした。
とにかく2人のキャラがそれぞれ引き立ち、愛おしくてたまらなくなります。
最初から最後までシチュエーションや時間軸、背景が変わっても全編を通して描かれる執筆中のずっと変わらないひたむきさが伝わる右肩下がりの後ろ姿、タイトルと相まって印象に残ります。
作画、音楽、演技、短い時間内に全てがうまくシンクロして、軽く観るつもりがだいぶ心を持っていかれ、いいモノみせてもらったという気持ちになれる満足感の高い作品です。
感情、表情の細部まで表現されてる...!凄い!
アニメでこんなに泣いたのは久しぶりです。
細かいモーションや表情から登場人物の感情がリアルに伝わってきて、心を動かされました。
2人の何気ない会話の中で京本さんが「もっと絵が上手くなりたい」と話していたことを
思いますシーンがめちゃくちゃ泣けました。
芸大にいきたかった理由がそこにあったんだって、
京本さんの想いに気付いた瞬間の描画が素晴らしかったです。
こういうことは現実にもあって、表現しづらい部分や忘れてしまいがちな感情をこのアニメではリアルに表現していて、これはアニメを超えて芸術のような感じすらしました。
京本さんが通り魔に襲われているシーン、犯人は「パーフェクトブルー」に出てきたストーカーを連想させられました。またトラウマになりそうな位怖かったですw
とにかく素晴らしかったー!!
なんか悲しくて現実を変えられないという現実に非力さや儚さを感じて凄く泣いてしまいました。
チェンソーマンも大好きだから、タツキさんのこれからの作品が楽しみだし、応援したいです...!
子供の頃の夢中だった感情を思い出す作品
藤野と京本の表情や声から、感情表現がとても伝わってくる映画でした。子供のキラキラした純粋さや、好きなことに熱中する事の素晴らしさが描かれています。
特に藤野が雨の中の帰り道、感情が溢れ出してスキップするシーンが素晴らしかったです。
子供はいつだって自分を褒めて、認めて欲しいと思っています。藤野にとって漫画を褒められる事は、自己の存在意義になっていたのでしょう。一度は諦めたそれを、自分が認めたライバルだった京本に褒めてもらえた事は、天にも昇る気持ちだったと思います。
自分にも絵を褒められた経験があり、その時の嬉しかった感情が蘇るようでした。
ハッピーエンドとは言えない最後でした。ですがそれは、作者の"漫画を書く"という事に対しての無力感から、行き着かざるを得ないラストシーンだったのではないかと思います。
しかし、ラストシーンの讃美歌が、京本の死と藤野の背中に祈りを捧げるような優しい曲でした。それにより、苦しくても哀しくても、前を向く良いラストとなったと思います。
4コマのオチ
マンガと映画のいいとこ取りの素晴らしい作品。
短いながらもストーリィはお互いの青春と友情、サクセスストーリィを詰め込んだ見応え。
見どころは本当にたくさんあるので困る。
お互いがお互いの背中を見て走る
キョウモトの絵の上手さに描くことを諦めたフジノに見せるのは再びマンガへとひきも引き戻すキョウモトの背中。
引きこもりだったキョウモトを外の世界へと引っ張るのはフジノの背中。
ラスト、マンガに後悔し絶望したときに見たのはあの日のキョウモトの背中。
そこには「藤野歩」
再びマンガと向き合うフジノ
事件のテロップが入るあたり京アニの事件の鎮魂も思わせる。
キョウモトに対して描いた4コマのオチは死
フジノに対して描いた4コマのオチも死
冒頭のフジノが描いた4コマも小学4年であのネタはすごいと思ったよ。面白い。
単行本の表紙とかほぼチェンソーマンでサービスも多い。
嬉しい時には雨の中でステップを踏むのである。
その背中を見て
「ルックバック」言葉の通りその背中を見てという事になる。主人公の女の子は、小さい頃から自分の描いてる漫画が上手い上手いと周りに褒められてきて、自分自身もなんだかそれを真に受けて生きてきた。
それでもある日同じクラスの生徒で、同じく漫画を描く作品を見た時に自分の作品がどれだけ滑稽に映っていたのかを自分自身が驚愕する事になる。
この作品ですごいと感じたのは、その自分の力のなさに一度は、漫画を描くを諦めた事。
それは、自分の限界がここまでなんだとボーダーを引いて下がろとした。
でも、同じく漫画を描いてる家に踏み入れた時に自分は、【頑張っても才能のあるやつなんかに勝ってないよね?】という自分の考え方を後ろから殴りつけられる程にその子は、頑張っている事を知った。
そこでその主人公は、諦めるのではなく、さらに漫画を描き始める事になる。普通ならそこでまたも諦めそうな気もするのにそれでも続けていくのは、自分がやりたい事がこれだ!といえるくらいに自信があったからなんだろうと思う。
【自分が好きな事】と【自分が得意な事】は、似ているようで違う。それは、努力を続けるのに価値があるのかとも言えるかもしれない。得意ならそれ以上に頑張らなくてもなんとなくこなせてしまう気がするから。
でも、頑張っている人にしか見えない光景があるはずだと僕自身は、信じている。
頑張ることが正しいと言うことを言いたいのではないけど、頑張らないとダメな自分に向き合えないと考えているから。
この作品は、色んな観点から見てもものすごく示唆に飛んだ作品で見る度に自分の考え方を変えてくれるような気がする作品でした。
とても面白い作品で短いながらも濃縮な1時間でした。
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