ルックバックのレビュー・感想・評価
全592件中、541~560件目を表示
自己慰安の作品
キャラクターの息づかいが伝わってくるような作品だった。
初め、冒頭、闇の中からまるで夜空の星のように幾つもの光が見え、そのひとつに降りてゆくと、そこには藤野がひとりで四コママンガを描いている部屋へと移る。
夜空へ向かっていったように見えた先には地上があったことになる。
これは創作の、創造の、インスピレーションが、星の先にも有り、また、ひとりのペンの先にもあるように思えてくる。
僕はこの作品は自己慰安の作品だと思った。
自分で自分を慰める話だと思う。
創作や創造の、原始のようなところは、それでいいようにも感じた。
それを改めて気付かせてくれる作品のように思った。
四コママンガを得意とする小学生の藤野は、同級生で引きこもりではあるものの、風景画が得意な京本という存在を知り、意識をしながら絵の上達を目指す。努力の線が張り詰めた先で藤野は自分の絵と京本の絵と比較し、四コママンガを描くことを辞めてしまう。卒業式の日、来なかった京本へ卒業証書を渡す頼みを担任の先生から引き受けてしまった藤野は京本の家を訊ねる。出てこない京本の部屋の前に幾つも積まれたスケッチブックの上にひとつ置かれた四コママンガの紙を見た藤野はふと、京本に呼びかけるように四コママンガを描くと、それがうっかりドアの下から向こうへ入ってしまい、慌てて藤野は京本の家を出る。先ほどの四コママンガを見たのか、京本が家を飛び出し、「藤野先生」と呼び止めて、サインを求め始める。引きこもりの京本は藤野のマンガの大ファンだったのだ。京本に話を合わせながら、長編を考えていると述べる藤野。藤野は京本の半纏の背にサインをし、降り出した雨の中歓喜して帰ってゆく。
中学生になった藤野は京本と共同でマンガを作るようになり、やがて作品が入選し始める。
マンガ家としての軌道に乗り始めた藤野はある時、京本から絵の大学に行きたいことを告げられる。共にマンガ家になることを促す藤野に「もっと絵が上手くなりたい」と京本は告げ、二人はそれぞれ別の道を行く。
ある日のこと、マンガを描いていた藤野はテレビのニュースで美術大学で人が襲われる事件があったことを知る。藤野は母から京本が事件で亡くなった連絡を受ける。
葬式の帰り、京本の部屋の前へ行き、自分が外の世界へ誘い出さなければ京本の命は失われなかったのでは、と考える藤野。
卒業式の日、小学生の京本はドアの向こうから入ってきた四コママンガに、「出てこないで」と書いてあり、こわくなって、表へ出なかった。時は経ち、美術大学へ進学した京本は作品制作に打ち込でいたある日のこと、凶器を振り回す男に襲われる。そこへ突如、空手を習っていた藤野が男を蹴り倒し、京本を助け出す。そこで京本はふと気づく。もしかして昔マンガを描いていた藤野さんではありませんか、と。お互い偶然の出会いを果たしたのだ。
藤野は、そんな妄想を、葬式後の夜の部屋で、気づくと四コママンガにしていた。京本の部屋を見る藤野。その窓にはまるで藤野の妄想に呼応するかのように、京本が描いたと思われる四コママンガがあり、凶器が藤野の背中に刺さったオチで「後ろを見て」と書いてある。後ろを振り返る藤野。そこには京本の背に書いた藤野のサインのある半纏がかけられてるのだった。
ざっと書くと、こんな感じだが、途中なかなか複雑な所がある。
自分としては、引きこもりだった京本が美術という世界を頼りに社会へ出る、ということが、偶然とはいえ、社会に潜む狂気にふれてしまうことだったのではないか、と感じた。その象徴として、凶器をもった男というモチーフが扱われたようにも、ひとつ思った。
男が口ずさむ、〝パクられた〟という言葉から、社会事件や問題の一端をも、個人としても想像する。
僕はこれが自己慰安の作品だと書いた。
そして初めには、それが夜空の星のような部屋のひとつひとつ、とも書いた。
個人的に感じたことだが、これは個々人のクリエイティビティが普遍的に求められる時代になってしまったのではないか、ということだ。
それはつまり、個々人の自己慰安が個々人自身に求められていることでもあるように思う。
雑に言えば、〝一億総クリエイター社会〟のようなものになりつつあるのではないか、なっているのではないか、という示唆を、僕はこの作品から感じた。
僕の解釈は個人的な所があると思うが、
そうした自分自身を救う、ということが、もしかしたら誰かをも救うことにつながれば、という祈りのようなものを、勘違いかもしれないが、僕は「ルックバック」から感じた。
こう文を綴ることも、まるで夜空の星のひとつのような、インスピレーションの何かなのかもしれない。そう思いながら、ひとり部屋で書いている。
原作未読でも是非
原作は未読で内容も知らないまま鑑賞。
これ1時間しかないのかって思う、ギュッと詰まった作品。
でも1時間しかないのが良いのかもな。
「実力差に心折られる」
主人公藤野は京本との画力の差を痛感しているわけだけど、1回目は腐ることなくナニクソな気持ちで絵を描きまくるけど、描きまくった結果、画力向上したとて相変わらず差があり、見事に心折れてしまう。
自分の経験上ナニクソな気持ちで励むのも、心折れるのもすごくよくわかる。
でも1回目で腐らなかったの本当すごいなと。テキトーに漫画飽きたとかでいくらでも言い訳もできたのにね。素晴らしい。
「もしあの時…」
とある事件をきっかけにメンタル追い込まれ、もしあの時と考える藤野だけど、想像のその世界線でも結局2人が出会っている展開はすごく良かった。
そして京本が藤野のことを先生と呼ぶくらいの対象であった事も。
想像、妄想の世界線だからそんなのご都合だろうけど、そうであって欲しいし、想像した本人が何よりどの選択しても京本と出会いたいという気持ちが溢れてて良かった。
「ルックバック」
原作知らないのでタイトルのどういう意味かと思ってたけど、なるほどな感じ。
キレイに物語を締めつつ、物語や見ていた映像などいろんなところに掛かってくる素晴らしいタイトルだった。
「とにかく描け」
画力上げるためのアドバイスとしてとにかく描け的な文が出てくるけど、それはホントそうだし、そして何より藤野はある意味宿命のようにもうとにかく描くしかないんだろう。
それが良いのか悪いのかはわからないけど。
上映前は60分しかないし、どんなもんだろと思っていたけど、ホント素晴らしい作品でした。特に何かクリエイティブな仕事、それを目指している人にはおすすめしたいかも。
人は歩みを止めることが出来ない
通常の映画が90分から120分であることから1時間の作品とはどういう風に感じるのか、物足りなさを感じるのかと思いはしましたが稀有でした。上映後にまず思ったのが「本当に1時間だったのだろうか…」
あっという間にも感じたし、作品の重厚感からやはり2時間映画を観た感覚も確かにある。
原作は配信開始当時読了済みで単行本も持っているが劇場化が発表されてからあえて読み返さずこの日を迎えて本当に良かったです。
残念ながら現代社会に出ている人は中々立ち止まって自分の人生を振り返る暇はありません、個人的には顔だけ出して水の中を歩き続けているような感覚です。足を動かさないと息が出来ない。
地道な日々を地道に生きるしかない。
私はこの映画を人生に携えて生きれることがラッキーだと思います。そしてそれだけじゃなくもっといろいろなものを持ちながら背負いながら生きている。そんな事に気付かされる作品でした。
良くも悪くも原作通り
藤本タツキの読切漫画が原作
ウェブ読切に公開されていたものを読んだだけなので
あまり細かくストーリーを覚えていない
良くも悪くも原作通り
京アニ事件をモチーフにしたような事件が描写されるので
初見だと賛否両論がありそう
完全ハッピーエンドにならないストーリーで
さらに1時間程度の映画で鑑賞料金1700円だったので
原作者のファンでないとハードルが高い
学級新聞の4コマを描いていた藤野が
不登校の京本の絵で画力の差をみせつけられたことで
劣等感を感じたり
逆に虚勢をはったりするところは
イラストやマンガを描いたことがある人にとっては刺さるのかな?
京本はアニメだと
話し方がなまりがかなり強く感じる
余談だが入場者特典のネーム本で
登場人物の名前が違っていたが
それには理由があったのだろうか?
私に高評価を与える作品ではなかった。
レビューの評価が4点を超えている。そんなに高いなら、鑑賞してみようかと思った。アニメは年に一本ぐらいしか観ない。映画ファンとして申し訳ないから、評判のアニメは鑑賞義務にしている。
観客席を見渡すと10代・20代の若者ばかり。たぶん、私が最高年齢(68歳)ではないか。
映画料金に割引が適用されず、映画館の人に尋ねたら、この映画は全国一律料金だそうだ。まぁ、内容が良ければ良いかと思い、鑑賞した。結果はタイトル通りだ。
今の若者はこのような作品を好むかとひとつ勉強になった。音楽がうるさい場面が多々あった。背景猫写が美しい。
来場者特典として、原作の冊子が貰えた。一律料金も仕方がないかと考え直し、0.5点加点した。
すばらしいアニメ化でまた観たいと思わせる傑作に
すばらしかった…
原作がいいのはわかっていて、あまり期待していなかったけど、アニメならではの表現でさらに原作の魅力を伝えていくことができてると感じました。
2人が初めて会う場面、雨のなか走り回る場面、4コマ漫画が扉に吸い込まれていく場面、どれもがアニメだからこその表現になっています。
とにかく原作への愛を感じました。押山監督が企画を出したそうで、キャラクターデザイン、脚本、絵コンテ、作画監督も兼任しています。
原作の藤本タツキが、「自分が原作を描いたのに、自分の絵より上手いのが悔しかった(笑)」と言ってしまうくらい、原作の世界観を活かしながら、アニメとして表現できている作品だと感じました。
「努力」の功罪
原作既読でもなければクリエイター側に回ったこともなく、感受性が豊かな訳でも無いので、1時間という短さもあってか正直なところ泣くほど感情を揺さぶられたわけではなかった。
けれど、少しばかりのエネルギーを貰えた気がする。
周りになにか言われるかもしれない、途中何か辛くて悲しいことだってあるかもしれない。
それでしばしば心が折れてしまうこともあるかもしれない。
それでもただひたむきに前を向く姿は美しいし尊い。
ある事件を彷彿とさせるシーンはあれど、見る価値のある作品だと思います。
何かをひたむきに続ける尊さ
ひたむきに漫画づくりを続ける2人の少女の姿を描く青春ストーリー。
久しぶりの映画館でのアニメーション映画鑑賞でした。
周りからどう思われようとも、何かをひたむきにやり続けることの素晴らしさを教えてくれます。“好き”なことが“夢”になり、“生きる”ための理由になる。辛くても苦しくても、それが好きだから。
家族も友人も含めて、自分以外の他人が、自分の“好き”を笑ったりバカにする権利はないから、これからも自分の“好き”を続けていこうと思います。
小学生、中学生、高校生の頃にこの映画を観ていたら、人生変わっていたかも知れないほどの感動がありました。
京本役の吉田美月喜さん、藤野役の河合優実さん、声優初挑戦とのこと。息づかいとか、間とか、声だけじゃない魅力が感じられて良かったです。
描いたマンガの事であって欲しい。
学生新聞で4コマ漫画を連載しクラスメイトから人気のある小4藤野と、不登校同級生の引きこもり漫画家京野の話。
ある日、先生の使いで京野家で出会った2人、「1枚のひらりと落ちた4コマ漫画」を機に、憧れでもあった藤野とアシスタントとして共にする事となった京野、2人の漫画家として動き出した時に…。
ある事件を機に友達でもあり、仕事パートナーでもあった彼女が突然いなくなりで、自分の書いた4コマ漫画がせいでと悔やむも前へ進むしかないと机に向かい、座り作業を始める姿は「前へと進め!」的な作品メッセージと受け取った!そうだよね?そうだ!
てか、この作品って人気作品なんですか?
鑑賞者多いし、なのに劇場側のチョイスで部屋は小部屋だしで観る環境があまり良くなく作品に入り込めなかった…、てかパーソナルスペースって大事ですよね(笑)
もうちょっと落ち着いて観れたら評価はきっと上がってると思ふ。
素晴らしかったが原作は越えない
うーん、★4にするか★4.5にするか悩みました。
原作ファンとしては、本当に丁寧にアニメ化してくれてありがとうの気持ちと、それでは原作は越えられないぞの気持ちの両方があります。
京本にほめられて、雨の中ルンルンで田舎道を帰宅するシーンとか、アニメがいくら頑張っても、数ページの漫画表現に届いていないと感じました。
後、音楽は、don't look back in angerが使われると予想してましたが、残念ながら使われず…
ともかくアニメになっても名作であることに間違いはないので、皆さん観てください!
ルックバック=出てくるな!
原作をジャンプ+で読んでいたにも関わらず
肝心なところは忘れていて、
新鮮な気持ちで鑑賞しました。
主人公藤野の軽薄そうに見えて実は努力家なところや
京本のことを自身がマンガを描くことをやめるほど
認めていて(リスペクトしていて)
京本と本当に一緒にマンガを描きたくて
そして京本をとても大事に想っているのが
観客にもよくわかります。
そんな藤野は感情を表出させないのですが、
京本の私を目の当たりにしたときには、
自分のせいだとして、自分を責めるほどに
思いがあるんですよね。
ひきこもりの京本との出会いのマンガでは
「出てこい!」が真のメッセージだったのを
ルックバックしたときには「出てくるな!」として
その後の世界を想像したのち、
ちゃんと自分を見つめて、
京本の生き様を理解して、前を向く藤野。
実にグッときました。
まさか本作で涙ぐむとは思ってもいませんでした。
それほどに心に刺さるものがありました。
藤本タツキの作品はどれも大好きですが、
本作は映画を観たことで、さらに好きになり
パンフレットはもちろん、原作単行本まで
購入してしまいました。
帰宅して、しばらく本作の世界観に浸ろうと思います。
素晴らしい
原作読了済み。でも話はほとんど忘れていたので、新鮮な気持ちで鑑賞できた。主役の二人の声優がとても雰囲気に合っていて、素晴らしかった。
最初のシーンから引き込まれたが、漫画や小説、絵など何かを創作したことがある人なら、心に深く刺さる作品だと思う。主人公の感情の動きがリアルに描かれていて、心にビシビシ刺さってくる。
君たちはどう生きるか
人生、生きていく中で誰しもが
好きなことができたり
夢を抱いたりすることがあるはずで、
でもその過程は簡単ではなく
順風満帆にはいかず
つまずき諦めたりしたことでしょう。
いまどう生きているかが大切なのはわかるけれども
わたしも人生後悔してることは多々あります。
本編の主人公も例に漏れずまさにそれで
絵を描くことが誰よりも上手くまわりに褒められ
なんなら運動神経も良いらしく?
向かうとこ敵なしな状態だったのに
まさかの不登校の生徒にうちのめされる
(相手はそんなつもりないわけだが)
しかし彼女は打ちのめされ諦めるのでなく
それ相応の努力をした
周りに何を言われても努力をやめなかった
けれどやるだけやったけど勝てなかったからやめた。
完全にやめた。
でもその後まさかの勝てなかったと思ってた相手から
先生といわれ尊敬のまなざしをむけられて
また彼女は歩き出す
そしてそれは二人三脚で。
最後道はわかれてはいたけれど
ふたりは繋がり合い感化され生きてたとおもう。
そういう努力などもひとつの暴力で全て失われてしまう壊されてしまう儚さ。
人生順風満帆に行く人なんてほとんどいないし
つまずいたり転んだりばかりでとても辛いものかもしれないけど
きっと先にある誰かの背中(家族、友人、恋人、夢)をみて追いかけて走っていくんだと思う。
ルックバック アゲイン
君たちはどう生きるか
観終わったあとそんなことを問われたような気がした
漫画原作の映画として、完璧な作品
藤本タツキの世界観を完全に映像化している。
完璧。
セリフも雰囲気も絵も、原作通り。
これこそが「漫画原作の映画」における到達点だと思う。
昔から、監督のエゴでクソのようなを改変したり
原作者を自殺に追い込むようなテレビ局すらあるらしいが、
この作品は、最高です。
次回「さよなら絵梨」も絶対映画化して下さい。必ず見ます。
誰かの背中を見るためには自分は前を向くしかない
京都アニメーションの事件はもちろんのこと、理不尽な事件、近年脅威の規模が増している数々の自然災害。
被害者やその関係者の方々の胸中はいかばかりか。いくら想像しても当事者の心痛は共有できないし、いつも無力感に苛まれる。
生き残った者がしなければならないことは、いつまでも立ち止まっていることではなく、もしそこに彼や彼女がいたとしたらきっと笑顔で喜んでくれたり、褒めたりしてくれそうなことを続けていくこと。
とても大切なことをこれ以上なくシンプルに伝えてくれる素敵な作品でした。
※入場特典として配られた緑色の漫画冊子が原作なのでしょうか?
小学校の教室と疾走する少女のダサい腕の振りがリアル!
素晴らしい作品だった。間延びしていないというところを鑑みても、58分という上映時間は適切だったと思う。
まず職業柄いじっておかないといけないのは、小学校の教室のリアルさである。4年生の頃だけ習字の枚数が少なかったのは気になったが、学習机の質感、ロッカーにしまわれたランドセルの無造作感、掲示物の押さえるべきところをしっかり押さえている感。原作未読の自分からすると、この時点で『真摯で丁寧だ』という期待値を跳ね上げて臨めた。
冒頭酔いそうだったけど、没入感を持たせるには最高の滑り出し。
原作未読なのでタイトルのルックバックの意味の多層性に驚いた。主人公はそれでも後ろを振り返らず前に進む過程の丁寧さ。
映画内漫画(原作では漫画内漫画)の切り替えも面白い。アニメーションでしかできない表現が連発される。
青春映画には必須の疾走するシーンが何度かあるんだけど、特に雪道を走るシーンで手の動きがリアルなんだよな〜。とにかく手の振りがダサい。でも、これが漫画にかけてきた女の子の走り方とも言えるし、少し空手をかじった女の子の走り方とも言える。きれいに走らないからこそ全力さが伝わってくる。
特にこの映画の好きなところは、音の静と動の緩急。劇伴をしっかり鳴らすところと無音にするところのコントラスト。漫画をめくる音しか聴こえない時、満員の観客の息を呑んで見守る様子が伺えた。これぞ没入感。
もはやキャラクターの顔面も河合優実に見えてきた。声優さえ水準以上の出来でこなしてしまう彼女は、日本映画界の宝だ。
全592件中、541~560件目を表示