ルックバックのレビュー・感想・評価
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日本の漫画、アニメがなぜ世界を動かすのか
私は原作も未読でアニメや漫画をそんなに読まないですが、勧められた作品はかじる程度の人間としての感想です。
この作品も他人の勧めにより鑑賞。
いやぁ震えましたわ。
あまりこういうアニメや漫画に疎い人こそ見てほしい作品。
静止画の画力、写真では写らないモノがありました。絵が演技してるというか。
そして躍動感のあるアニメーション。心や一瞬一瞬の時や匂いまで再現するかのような演出。
何でもないシーンになぜか感情が揺さぶられ、ただただ美しいと思いました。
その背景であり、漫画やアニメなどの道を歩いてる人、歩いた人の背中を見せてもらったように思います。
エンドロールでは一人一人の製作者らの名前がいつもの違って見えました。体験した事のない感覚。私、オレ、僕、俺たち、私たち、まるで声が聞こえるようなそんなエンドロールでした。
このカルチャーはもはや日本の伝統になる過程にあり、多くの方が時間と生命、全てを捧げてここまできたんだなと部外者である私は感じました。
そしてらそれはハリウッドが映画界のトップであるのとおなじように、日本がアニメと漫画界の不動のトップであり続ける理由でもある様に思います。
「道」をこれからも楽しみにしてます。
大変感銘をうけました。
海外の方にもぜひ観てもらいたい作品です。
毎回、誰と観にくか?を最後に書くのですが、今回は日本人全員にオススメです!
私達が見下しや反発や偏見や誤解、希望や憧れや嫉妬、熱狂や救い、多くの時を経て私達の文化は何を産んだか。
普段あんまりこういうのを見ない方に特にオススメです。
鑑賞動機:藤本タツキ10割
原作読んでません。が、入場者特典のストーリーボードもらった、わーい。
向こうを向いて机に座って貧乏ゆすりしてると、『耳をすませば』を連想する。
カメラの動かし方(というべきかわからないけど)好き。雨の中帰るところとかね。無音のシーンもとても効果的に使われている。
自分の全てを投げ打ってのめり込む原初的な衝動が迸る。思いの強さ、年月の重ね方を画で見せる見せ方とか、細かいところまで気を配られている、と思った。あ、アレ『チェンソーマン』の表紙でしょ、パワーちゃんでしょ。
途中でこのままハッピーエンドになったら、それはちょっと違うんじゃないかと思ったが。どこか違う世界でそんなことがあるかもしれないけど、この世界で起こってしまったことはなかったことにはできない。それがどんなに苦しくても、自分の中でカタをつけて前に進んで生きていかなきゃいけない。そんな強い決意を感じとった。
「生きることについての物語」という点では直前に観た、『九十歳。何がめでたい』と共通しているなあ、と妄想した。
久々にパンフレット買う気になったが…売り切れって…。公開3日目でお高めの価格設定されてたのに…くっ。
2回目。
『時をかける少年』はまあわかりやすいとしても、『ビッグ・ウナギ』(??うーん『ビッグ・リボウスキ』あるいは『ビッグ・フィッシュ』?)、タイトル書いてないがベンチと少女のデザインのやつは直感的には『フォレスト・ガンプ』なんだけど。まあどうなんですかね。
オーディオコメンタリー聞きつつ3回目。とはいえBGM大きめのところは全然聞き取れず。あんまり音量上げると音漏れしても困るし。
貧乏ゆすりの他にもお腹かいたり色々と…なるほどね。
目、床、その他映り込みに、教室や職員室、2人の部屋&スケッチブックなど細部の作り込みも、言われてみるととんでもないです。タメになるなあ。
ああ、確かに『バタフライ・エフェクト』っぽいレイアウトのポスターあるね。
逸作。
これ程素晴らしい映画だとは思ってもみなかった。せいぜい「好きでもない女友達に“面白かったよ!”と紹介して数日後には忘れている映画」だと思って劇場へ赴いた。50分間本当に鳥肌が止まらなかった。鑑賞後数日経った今でも、ルックバックを思い出すと、また鳥肌がたつ。まさに「こんな映画は初めて」だ。この映画は生涯忘れない、私の青春である。
心と体で受け止め、涙があふれる
ファイアパンチで心掴まれた、藤本タツキ。
今、自分の中で一番はまっている、河合優実と吉田美月喜。
期待しかなく、ハードル爆上がりのなか、正座(する気持ち)で観る。すべてが完璧だった!
漫画をリスペクトしつつ、映画の魅力がとても出ていた。
■映画独自の、動き
ワンカット目から、漫画を大事にしているのがわかるちょっとしたコマ送り。
動画の中でも、2人の関係性同様、キャラクター手書きで、背景だけがきれいな作画。
大事なシーンでの、アップの画角。
漫画らしさを損なわず、逆に表現が増幅されていた。
■映画の中で大事な、音。
声優は、自分が好きな女優だからか、最初は本人たちの顔が浮かぶものの、すぐに藤野と京本になりきっている。
それぞれ違う、まっすぐさが表現されていた。
音楽はここぞというところで感情を溢れさせてくる。
絵に、作品に、そっと寄り添いつつ、壮大で、雄大にさせてくれた。
映画における音楽の良さを再認識した。
■避けては通れない、上映時間
映画でしか表現できないところをしっかり描き、いたずらに時間を延ばさず、1時間に収めている。上映するうえで異例になる60分という短さを恐れなかった製作陣を讃えたい。
結果的には回転がよく、コンテンツがショート化している今の時代にはドンピシャである。
目で、耳で、そして感情で。
心と体で受け止めて、涙があふれてきた。
何回でも観たい作品だ。
いろんな感情
原作を読んだ時も、京都アニメーションの事件のこと、自分自身が子どもの頃描いたマンガや友達が描いたマンガの記憶、そこへの思い、才能への憧憬、理不尽への怒り、いろんな感情が渦巻いた。
この作品を観て、明らかにそれは蘇ってきたしなんなら色と声が鮮やかについてきた。
なにかを描きたくなる。つくりたくなる。
少し前を向きたい。
素晴らしい映像化
藤本さんの漫画は好きで読んでいるが、今作は未読。まず、手描き?の背景から美しく、キャラも作者のキャラがそのまま動いているかのよう。気合いの入り具合が伺えます。やはりなんでも、3DCGでなくてもいいよね。
ストーリーは漫画を描くことへのひたむきさが良く伝わる話です。タイトル「ルックバック」はお互いの背中を見て進むってことだろうなあ。その二人のやりとりも良く、声あててる人(知らない俳優さんでした。ごめん)も上手い。劇伴も良い。
短編作品を下手に引き伸ばす、過不足なく映像化し、かつアニメの良さを活かした良作でした。
追記。私は1700円でも十分だと思いました。フルプライスでもいいくらい。
原作通りの映像化
トップクラスの画力を自負する藤野は、引きこもりの同級生の京本が自身を遥かに凌駕する画力を持っていることを知り…。
藤本タツキ原作映画。多少のセリフの追加はあるもののほぼ原作そのままの映像化。青春作品に見せかけてエグい落とし方をする物語は改めて辛かったです。
青春の光と、製作者としての想い
上映時間に対して、濃密な映画体験をする事が出来た。
まず、原作143ページを無駄に引き伸ばすことなく、魅力を最大限に引き出してくれたこと。製作サイド全ての方に感謝したい。
ルックバックは原作漫画の頃に衝撃を受けたが、
映画化にあたり、より鮮明に、よりリアルに、よりドラマティックに作品を送り出してくれた。
押山清高監督の手腕には脱帽です。
haruka nakamuraさんの音楽も感動的かつ効果的だった。
個人的には弦楽で徳澤青弦さんの名前があった事が嬉しかったです。ツボを押さえた人選。
また、本作の主演の藤野・京本を演じた河合優実・吉田美月喜の両名の演技は、近年の俳優声優とは違い、演技の空気感を良く捉えており、監督の指導の良さが伺えた。
……近年のゲスト声優も見習って欲しい限りである……。
本作のテーマは
・青春の光の輝き
・製作者が何故モノを作るのか
・悲しみとの心の向き合い方
と私は感じている。
漫画原作で伝えたかった事を、更に最大限に引き出してくれた。
本作に最大限の賞賛を贈りたい。
本作の感想は、結局原作に準ずる形になってしまうので、割愛するが、
個人的に書いておきたい感想である、
藤野が破いた「出てこないで」の1コマが、京本の元へ届くシーンからの感想を書いておきたい。
このシーン(京本のifストーリー)だが、
・過去の京本に「出てこないで」の1コマが届く
・京本は藤野と出会わないが、美大への憧れから美大へ入学
・京本が事件に合うところを藤野が助ける
・藤野の元へ「背中を見て」の4コマが届く(現実の時間軸へ戻る)
と言った構造だが、
個人的には、京本のifストーリーが
①並行世界(「出てこないで」によって生まれたもう一つの世界)
②現実世界の妄想(藤野が4コマから想像した世界)
のどちらかになると思うのだが、
私はやはり、素直に①であって欲しいと思う。
ifの京本が描いた4コマと、現実世界の4コマの内容が、
風で飛ばされ扉をくぐった際に、入れ替わったのだと思いたい。
「出てこないで」の1コマは確かに時空を越えて、現実世界から無くなっていたのだから。
そして、現実世界で救えなかったとしても、
やはり、創作・製作は自分の為であり誰かの為であって欲しい。
だれかの救いや癒し、喜びになって欲しいと思うのだ。
だからこそ、
辛く苦しい事のある世界でも、
前を向いて、背中を見せていけるようになりたい。
そう思わせられた。
最後に、
本作でも重要な意味の言葉となった、オアシスの曲名で締めたいと思う。
Don't Look Back in Anger
怒りで過去を振り返らないで。
絵を描いている人みんなに見てほしい
読み切りもネットで見たことがあるし、
1時間だけの映画だし、
お金も勿体ないかも……と
期待半分で見に行ったら3回くらい泣きました。
昔、アニメや漫画が好きでオリジナルキャラを作ったり、同じ趣味を持つ友達を作ってわいわい話していたことを思い出しました。
絵を描いている時間は有限で何かを保証するものなんて何も無い。
じゃあ、なんで描いているの?
この映画を見た後なんだか救われた気になりました。
セリフのないシーンで流れる生活音とダイジェストのシーンで流れる音楽のギャップが秀逸で。
エンドロールが流れる時に一緒に流れる主人公が漫画を描いているシーンまで魅せてくれる。
正直、非の打ち所のない映画です。
1時間がいい意味であっという間で満足感がすごい。
2人で町に行く時に見ていた映画のシーンも別の読み切り作品のワンシーンでくすっと笑えます。タイトルのルックバックを至る所で回収してくれるのも気持ちが良い。
最近アニメ映画のレベルはどんどん上がっていると思っていましたがキャラクターや事前知識無しで満足できるこの映画はかなりレベルが高いものだと思いました。
マンガとアニメと・・。
よくマンガの制作において「マンガはキャラクターだ!」とか「キャラを立てろ!」とか言われるのが、どうにも好きになれない。
確かにヒットしているマンガのほとんどの主人公は個性的であり、また現在のように多種多様なマンガがあふれる中、デビュー、連載を勝ち取るためには大事なことだと理解はしてるつもりだ。
でも絵に魅力がなかったり、話がお粗末だったり、演出がヘタクソだったら、どうなんだろうと思ってしまう。
それより「こんな話、思いついちゃった!」とか「こんな絵を描きたい!」みたいな衝動のあるマンガが好きだ。
『ルックバック』の原作者にも、そんな衝動がある気がした。
さて、そんなマンガをアニメにするわけだけど、当たり前だけど動きがつき、色がつき、音がつき・・、となる。
これって、けっこう大変じゃないか、と思う。
マンガなら読み手の想像力に投げちゃえる部分まで考え、計算して作っていかなきゃいけないから。
アニメ映画『ルックバック』、正直、いくつか気になる部分もあった。
マンガだったら、気にならないかな、なんて思った。
絵と音楽が良かったから、いいかな。
原作を読み返す延長で
無料公開された原作が素晴らしくて、課金したいので紙媒体のコミック買って、さらに映画も観たって感じです。
映画化アニメ化は無理をせず、動きと声でディティールを追加して、原作の良さを生かしてると思います。尺もこれでOKでしょう。アニメとして質も高いし、これで十分、これで良いです。
お客さんが多くて人気の高さがうかがえます。
入場料のことで話題になってますが、集客にはあまり関係ないようですね。自分は普通の値段でいいので割引とかきくようにして欲しかったなぁとは思います。子供と行くと割高なんですよね。
原作読んでない息子も満足してました。早速原作コミック持っていかれました。
はい、間違いなく星5です。
※追記
そう言えばデビッド・ボウイの命日とかオアシスの曲名が隠れてるところとか、再現されているのかチェックし忘れました。もう一回行く?でも割引きかないしなぁ…笑
ぜひ劇場で浸ってほしい!
原作の存在も知らず、劇場アニメならとりあえず観ておこうという軽い気持ちで公開2日目に鑑賞してきました。窓口で特別料金1700円と告げられ、一瞬ひるみましたが、その価値は十分にある、すばらしい作品でした。
ストーリーは、学年新聞で4コマ漫画を連載して好評を博して得意になっていた小学4年生の藤野は、担任から頼まれて譲った枠に掲載された不登校の京本の漫画の画力の高さに圧倒され、彼女との実力差を埋められないことに心が折れた6年生の途中で連載をやめてしまうのだが、卒業式の日に卒業証書を渡すために京本の家を訪れたことをきっかけに二人は初めて出会い、京本からずっとファンだったと告げられ藤野は、京本と組んで執筆を再開し、やがてその作品も世に認められるまでになるものの、少しずつ二人の思いはズレ始めていくというもの。
たった58分という上映時間の中に、藤野と京本の10年以上に及ぶ時間を凝縮して描いている点が秀逸です。コンパクトとかダイジェストとか簡潔とかいう言葉は適当ではなく、二人の傍で同じ時間を共有したような実感を得られる濃密な内容となっていることが、ただただすばらしいです。
子どもらしいプライド、ライバル心、才能への嫉妬、承認欲求、挫折、虚栄心、称賛される喜び、協力の心強さ、友情の温かさ、確執の苛立ち、別れの悲しみ、孤独の寂しさ、無情の後悔…など、人生におけるさまざまな感情が、東北ののどかな自然を背景に二人の等身大の姿として描かれます。一つ一つの出来事が、藤野と京本の心にどのように刻まれたのかが、スクリーンを通してひしひしと伝わってきます。中でも、京本と初め会った日の帰り、藤野が雨降る田舎道を踊るように駆けていくシーンは、本作屈指の名シーンだと感じます。
固く結ばれたかに見えた二人が袂をわかち、そのままになってしまったのはとても悲しかったですが、それでもいつも気にかけ、応援していたことは伝わってきます。京本のどてらの背中に書いたサイン、私の背中を見て成長しろと言う藤野、京本が描いた4コマ漫画の中で背中に傷を負う藤野、その漫画を窓に貼って仕事に打ち込む藤野…、その背中を追いかけ、背中を押され、背中で感じ、二人は支え合って成長してきたのでしょう。そんな二人の強く熱い思いは、あり得たかもしれないもう一つの世界線できっと成就したに違いありません。終盤で描かれる、初投稿に向けて二人が寝食を忘れて執筆に打ち込む姿、二人が過ごしたかけがえのない日々に、自然と涙が込み上げてきます。
「ルックバック」、素敵なタイトルです。
主演は河合優実さんと吉田美月喜で、声優初挑戦とは思えない演技が素敵です。普段はプロを起用しないことにはやや否定的なのですが、本作では内容やキャラデザにもよく合っていて、藤野と京本の等身大の姿を描くには適役だったと感じます。
生きている
めちゃくちゃいいよ!って聞いて、漫画を作る話だということは知っていたから「あ、ハケンアニメみたいな情熱に溢れたスポコン的青春ドラマなんだろうな」と想像していたら、ぜんっぜん違った。
いや確かに、漫画に対する熱も描かれてはいるんだけど、本筋はそこではない。センセーショナルでもエモーショナルでもない。漫画好きの藤野が自分の画力を大きく上回る京本と出会い、漫画に対する愛、それ以上に互いの愛を深めていく、ごくありふれた2人の、リアルで胸にグッと刺さるシンプルながらに心に残る人間ドラマだった。
評判めちゃくちゃいいから、色々と想像膨らませちゃって思いっきり楽しめなかったのが正直なところ。やはり、映画とは上がり幅である。ハードルを下げておいて損は無い。だから、この映画は特にだけど、前情報は入れずに劇場へ足を運んで欲しい。
もちろん、ストーリーは面白いけど、ぬるっぬるでリアリティのある映像を求める、求められる昨今のアニメ業界において、このようなアニメーションはかなり見ものだと思う。ぐちゃぐちゃの感情が顔に思いっきり表れる。主人公たちのボロボロな姿に、見る者の心もボロボロになる。
ピアノとバイオリンだけのシンプルな音楽もいい。かかるタイミングもいい。何より、無音になるところが最高にいい。感情が爆発するところを、あえて無音で、あえて窓越しだとか遠くからだとかで見せてくる。この卓烈した映像表現にやられる。
1時間とは思えないボリューム。でもあっという間。すごく贅沢な時間を過ごさせてもらった。ただぁあ!(一人賛否の粗品)(ここからは戯言)面白いし、いい映画だけど、評価高すぎやしませんか!?!?「THE FIRST SLAM DUNK」も「BULL GIANT」もそうだったけど、こういった独特なアニメ映画って、世間の評価が自分の思ってるより何倍も高くて驚く。4.5はエグい。
ルックバック。そのタイトルの意味が綺麗で秀逸で好き。それでも生きている。
背中が語るもの。※追記※
※原作を読んで、もう一度観て、元の文章の下に追記しました(7月1日・5日)
いつものように原作未読で鑑賞した。
原作や原作者のファンらしき若い世代の観客が多く、少々away感を持ちつつ着席。
面白い4コマギャグ漫画を描く小4女子、藤野。クラスの人気者。少々鼻が高くなっている。
そこに突然、小学生とは思えない写実的な画を描くライバルが現れる。不登校の京本。
圧倒的な画力を見せつけられた藤野は、京本に負けまいと画の特訓にのめり込む。そして、2人が初めて出会う卒業式の日。京本は、藤野が持つ「ストーリーを創る」才能に憧れ、藤野を「先生」と呼び、半纏の背中にサインを書いてもらう。ここから2人の二人三脚での悪戦苦闘の漫画の創作、サクセスストーリー、人生の岐路、そして別れの物語が始まる・・・。
ルックバック。
窓の外の季節が移ろっても、部屋の様子が変わっても、来る日も来る日も机に向かい漫画に挑む藤野の背中。
京本が見ていた、いつも手を繋いで引っ張ってくれる藤野の背中。
本人不在の部屋で藤野が見た、京本の半纏の背中。
遺された京本の4コマ漫画を見た藤野が歩いて自分の仕事場に戻る背中。
それぞれの背中が語るもの。
創作と成長への執念。
自分に新しい世界を見せてくれる唯一無二の親友の存在。
後悔と喪失感。
亡き友にもらった力。決意。
京本に褒められて家へ帰るときの藤野の身体の内から喜びが溢れ出る動き。
手を繋いだ2人が走りながら、お互いを見つめる場面の腕のシーン。
漫画では表現できない躍動感。アニメーター達の画面作りへの拘りと想いを感じる。そこかしこに。
キャラクターに命を吹き込んだ河合優実と吉田美月喜の声も役にピッタリだったと思う。
苦しくて、しんどいときもあるけど、画を描くことが好きだ!という原作者と監督、アニメーター達のメッセージが凝縮された58分。
創作表現に挑む人々、そして今を生きる全ての人に。
(2024年映画館鑑賞18作目)
※ここから追記※
入場者特典の原作ネームを読んだ。映画が、原作に寄り添って、漫画では表現しきれなかった隙間を埋めるように、丁寧に丁寧に作られたものだということが痛いほど分かった。
翌日。原作漫画を買って読んだ。これは映画だと思った。行間が多い。余計な台詞がない。でもちゃんと画で、溢れんばかりにメッセージが伝わってくる。
原作はもう既に映画だった。だが、私は、この原作漫画は、形としてアニメ化、映画化されてその真価が発揮されたと思った。映画化が運命づけられていたように思う。
・藤野が漫画を描くとき、机上の鏡に、彼女の顔が、彼女の動きに合わせて映る(他のレビュアーさんも書かれていたが、鑑賞時に釘付けになり、名作だと確信した)
・街へ繰り出した藤野が京本の手をめいっぱい引っ張って走り、お互い笑顔で見つめる。
・ゆっくりと苗を植えながら動く田植え機。秋の夕暮れを飛ぶ白い雁行陣の鳥たち。ifの世界の大学前の溶けかかった雪の残る道路。
・無音の京本の部屋で藤野が「ジャンプ」の紙面を音を立ててめくる。
上記は原作にはなかったシーンだ。他にも挙げればキリがないだろう。これら全てが、原作の世界観を表現するために創られたとしか思えない。原作者と、その心にピッタリ寄り添ったアニメーター達の共同作品がこの映画なのだと思う。
この映画には、原作者、監督やアニメーター達の熱い想いが込められている。そう感じる。そう感じるだけで涙が溢れてくる。藤野が、京本が、愛おしくなる。
ありがとう。もう一度、観に行きます。
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7月5日夜。もう一度、観に行った。
劇伴の素晴らしさに気づかされた。この音楽は、鎮魂歌であり、賛美歌であり、応援歌だ。
主のいなくなった部屋で見つけた何冊もの単行本。読者ハガキ。
そして、大音量の音楽と共に流れる京本との回想シーンの後、藤野が涙を落とした漫画のページに書かれていたのは、「このつづきは12巻で!」。
立ち上がった彼女の目の前には、藤野「歩」の文字。
藤野は、一番のファンでいてくれた京本から、画を描く喜びを思い出させてもらい、前に歩む力を貰い、描き続けると決意したに違いない。
何という密度で、濃度で、重層的に込められた想い・・・
圧倒されて、涙が出て、幸せな気分になった。
間違いない。傑作だ。
映像が語りかけてくる
世間的にはチェンソーマンで名を馳せた藤本タツキ先生の原作漫画の映画化ですが、個人的に長年のファンである自分には待望の映画化でした。
原作をあくまで忠実に映像化し、無駄な付け足し要素も無く最小最適な補完に留めてるところが好感が持てます。登場人物の台詞もそれほど多くないのに映像で語りかけてくる。藤本ワールドを凝縮した非常に濃い、なのにあっという間に終わる58分。この上映時間もいい。
主演の藤野と京本の声を担当した河合優実さんと吉田美月喜さんの演技もナチャラルで違和感なかったです。
自分は先に原作を読んでましたが、どちらが先でも楽しめると思います。映画を見れば原作を読みたくなり、原作を読めば映画を観たくなる。そんな作品です。
あと藤本タツキのファンなら思わずニヤリとしてしまう箇所が多々あります。それもお楽しみのひとつですね。
漫画家達へのRequiem
冒頭からのカメラアングル、音楽に魅力されました
原作はもちろん良いのですが
動く彼女たちはとても可愛らしく、面白い。
引きこもった廊下に山積みにされたスケッチブック、人生を捧げた漫画家さん達の苦労や報われなさを身近な過去として感じました。
自分も小学生低学年頃までは
夢中で絵を描き、褒められ嬉しかったのに、いつからか描かなくなっていった過去を思い出させてくれました。
漫画を書く方々の動機も背景も様々だと思いますが
描く楽しさ、辛さ、
多くの悲惨な事件が起こる世界で
描いて何になるのか?という無力さ、
そんな中でも
大勢の人を感動させ、作品達は未来に残る
そして後世への希望に繋がる
クリエイター達の気持ちをたくさん載せた素晴らしい作品でした
この作品を観て、
多くの報われなかった方々のRequiemになりますように。
勝手にそう感じました。
ありがとうございました
良い映画だが、違和感も残る
原作未読だったが、予告を前に見てからずっと楽しみにしていた。
そして、予想通りすごく良い作品だった。
漫画の絵がそのまま動いている感じがして、序盤から作品の世界に引き込まれた。
そして何よりも、儚い二人のエピソードが1時間の中に凝縮されていたように思う。
藤野が描き続ける理由に涙する映画。
雨の中で妙な走り方をするシーンは、いつか真似してみたい。
ずっとライバルだと思ってた京本にあんなこと言われたら、そりゃスキップしちゃうよね。
ひたすら京本に会いたくなる映画だった。
ただ、何とも言えない違和感は残った。
理由は京アニの事件をモチーフにしている点である。
果たしてその必要があったのだろうか?
普通に、京本が不慮の事故にあってしまう展開で十分だったのでは?
あの犯人の動機を聞く限り間違いなく京アニの事件を元にしているはずだ。
その必要性が感じられず、単純に実際の事件を消費エンタメにしているだけなのではないだろうか。
そこだけは非常に残念な作品だった。
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