ルックバックのレビュー・感想・評価
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あるがままの姿で認め合うことの素晴らしさ
静謐で、プロ顔負けの背景画を描く京本の絵と、ダイナミックだが、絵はどこか荒削りな藤本の絵。藤本は京本に強いコンプレックスを感じ、猛烈に絵の勉強を始めるのですが、京本のレベルに達することはついに一度もなく、漫画を続けることを断念し連載を中断します。そんな藤本もやがて卒業のときを迎え、先生から欠席した京本に卒業証書を届けるように言われ、イヤイヤながら初めて会うことになるわけですが・・・・
「何故連載をやめたのですか?」実は、京本は、藤野の漫画の熱烈なファンであったことがそのとき、判明するのですが、そのことを知った藤本が、心を躍らせながら、自宅に帰るまでの描写が大変素晴らしく、世界が一気にばら色に輝いてみえるような感じが良く伝わってきて、この体験が藤本にとっても全ての原点なのだろうと思いました。
「アメリカン・ドリームは、単に物質的な豊さの夢ではない。(中略)自動車を持ち、高給取りになる夢でもない。むしろすべての男女が生来備わっている能力を使ってそれぞれが持つ最も大きな可能性を実現できる夢であり、生まれや地位によらず、あるがままの姿で他人から認められる社会の状態だ」昨日の日経に掲載されたフィナンシャルタイムスの論説では、ある米歴史家の1930年代のこの言葉を引用し、崩壊している米国中道政治の再構築のためには、今は廃れてしまっているこの考え方をいかに蘇らせるかを論議することが大切だと主張していました。翻ってみるとアメリカほどではありませんが、日本も相似形になっている現実があるように思うのです。
大ヒット漫画「チェーンソーマン」の原作者の半自伝だそうですが、45分の中編ということもあり、タイパを重視する最近の若い人に受け、回転率がよいということもあって、10億円超えの大ヒットだそうで、120分もの中心の日本の映画の製作方針に変革を迫ると報道されていました。でもそうした戦略だけでなく、「ありのままの姿で認め合う」原点回帰の要請が高まっていると思われる現代日本の深層に、よく届く中身の素晴らしさもあったのだろう。そんな風に思いました。
メタ構造を超してキュビスム
作品全体が、
メタ構造を通り越して、
もはやキュビスム。
説明しよう。
絵の中の必要な物、
ちょっと必要な物、
不要だけど無いと成立しない物、
の濃淡、太細が鮮やかだ。
解体して構築でもなく、
現実世界をそのまま写し取っているのでもなく、
作中人物の頭の中にある抽象的なイメージを視覚化している。
抽象アニメの傑作
「かぐや姫の物語」
先日公開されたフランスの
「リンダはチキンが食べたい!」
は、
あくまでもレイアウトや構成が抽象的なアニメーション作品。
本作は、
抽象画、日本画でいうと、
東山魁夷の作品を観てるようでもあるが、
抽象的レイアウトと、
ビビットではない配色、彩色との、
アンビバレントなあり得ない構造、
薄紫と薄緑、
緑とオレンジ、
濃紺と水色、
まさに色々だが、
配色は的確。
背景の、
森の木々が、
紫で、その影がまたパープル、
あり得ない、
いや、
美しすぎた。
藤野にも京本にも負けられない、
スタッフや原作者の意地だろう。
配色は配置レイアウトにも影響し、
その配置は演出や、
ストーリーとも共犯というか、
相互関係でもある。
その大胆過ぎる構成の取捨選択は、
ストーリーの構造にも影響されていて、
時間軸にも違和感がないというか素晴らしい展開だ。
そして脳内の記憶ファイルの一枚だけ一行だけ上書きキック・・・
(参考作品、タランティーノがジェシカ・テートにやってたやつ)
上書きできる・・・上書きできない・・・消去・・・できない・・
できた・・・できない・・・できた・・・
藤野自身は上書きしない、
別名保存で再起動、
そして時々ルックバック。
キュビスムの十分条件を満たしていると言えないだろうか。
以上、
誇張しすぎているのか、
そうでないかは、
今後の作品や若い人たちが証明するだろう。
紫と緑が、
バズ・ライトイヤーを思い出した。
無限の彼方へさあいくぞ。
原作未読者ですが
いい映画だ!
タイトルの通りで、背中を見て
天狗になっている主人公が、素晴らしい才能を見せつけられて努力する、それが1年以上、全てを投げ出してる事もよくわかる。
それでも、超えられない壁でプツリと糸が切れて挫折する。
しかし、才能者が自分を認めてくれている事をしり、また漫画を描き始める。
順調に進むキャリアをテンポよく端折るのも良かった。読み切り漫画。
手をつなぐを象徴的に使えている、背中を追いかけている。その手が離れるときが、二人の決別。
決別で背中を向けて泣いているが強がる事で観客が主人公を嫌いにならない。目を見せずに頬をつたう涙で表現しているのが素晴らしい。
読者投票と単行本が増えて行くことで、努力や人気になった事もよく端折る事が出来ているのが素晴らしい。
アシスタントの催促の電話も作画を続けながらで、多忙感とどこかで離れてしまった相方(京本)と比べてしまっているのがよくわかり、台詞が上手い。
部屋前の4コマ漫画からの妄想で、主人公を救うのも素晴らしい。
第三者を介入させずに、主人公藤野がまた漫画を続けられるようにできている。
サインと4コマ漫画は、キーアイテムが2つになってしまっているが、ショートの端折り方として悪くないなぁと思う。
漫画の映画で、エンドロールが作画からスタートするのも粋だな。
良作。
原作を
ルックバック感想
嵐みたいな映画だった。
嵐すぎて、シナリオを追ってどうこう感想を書くような気持ちじゃないので、嵐のような熱量で私も感想を書きたいのと、主人公の藤野が良すぎたので藤野に焦点を当てて書きたいことを書いてみる。脱線しつつほぼ書き殴り。
藤野、人間すぎる。
小学生の頃の漫画、絵の稚拙さはあるけどもとの漫画力はかなりある。くだらないが普通におもろいし。これは多分藤野の天性の人間力によるもので、で、天性のものって、磨くことは出来るけど、全くない素質はなかなか育てようがないわけで、
京本はそれを自然とわかっていたから藤野に憧れたと想像。
(理由として、小学生の頃の4コマで、藤野は自分のイメージ、架空のものを描いていて、(この頃から超漫画家。)不登校の京本は過去に観たであろう風景を描いている。ただまぁ京本ももう何年も見ていないであろう景色を何かの資料があったにしてもあそこまで描けるのはすごい。4コマならではのメッセージもあるし。)
藤野の京本への劣等感が出会いの最初にあるから藤野の実力はそこまでな描かれ方をされているけど、前提として二人とも分野が違う最強系主人公の物語だと私は思った。
藤野、自分でも自分の実力と魅力に気づいていて、でも気付ききれていなくて(だから一度絵を辞めたと推測)、そんな自信あるのに無いような藤野が魅力的すぎた。
藤野が京本に初めて会った土砂降りの帰り道のシーンが一番好きで、正直あれで大号泣した。感情移入したのもあるし、あの藤野が可愛すぎて。あの時の嬉しいんだけどむず痒くてもどかしい、くすぐったくて舞い上がって涙が出るような、多分喜怒哀楽のどれにもはまらないもっと本能的な「興奮」。涙出るほど良い。あの瞬間、“生きてる”なんだよな。
結果二人とも成功したのに、あれだけ小学校時代のことが劇中で描かれているにも関わらず、小学校の先生や同級生の、シャークキックに対するコメントシーンがない描かれ方が良かった。創作に対して世の中の見方ってあの描かれ方と近いものあると思うし、それでも、創作や表現にどっぷりではなくても、関わる人生は良い。
なんでかって、
純粋さで繋がった縁は多分そう簡単に切れないし何かを生む。もっとみんな純粋でいい。創作はそういう世界だと言ってくれてるような気がして、しんどいけど、京本は藤野に描いてくださいって言うと思うし藤野は描くしかないし、そうなんだよ、やるしかないんだよ。
見終わったあとにキャッチコピー調べたら、「描き続ける」で、さらにずーん。良すぎたな。
やはりアニメはいいですね
アニメは最高なんだけど切ない物語でした。
藤野と京本の出逢いと別れ、そして永遠の別れ
しかし出逢った事はお互いに最高の幸せだったと思う。
前にあった京アニの事件を思わせる話ですが、通り魔の台詞が原作では色々変更されてるようですね。
この作品を観る前の日に実写邦画を観ましたが、アニメや漫画ならこれでいいけど役者さんに演技させると残念な事になるような演出がチラホラありました。
やはり日本のアニメーションは最高ですね。
追記
公開劇場が追加され私の街の劇場でも公開されましたので再度鑑賞しました。
藤本タツキさんの作品、チェンソーマンは知っていましたがコミックもアニメも観ていませんでしたので、コミックを購入して読みました。最高にハマってます。
アニメも配信で拝見しましたがコミックほどイマイチ魅力を感じません。
しかしこのルックバックはコミックもアニメも魅力的です。
アニメのチェンソーマンに足りなかったもの、この劇場版アニメにあったものは藤本先生の絵がそのまま動くアニメーションになってることですね。
監督の押山清高さんが藤本タツキ先生の絵の魅力をアニメーションに昇華されています。
チェンソーマンの劇場版が製作されるそうですが、ジャンプに連載されてる藤本先生の絵が動く作品にして欲しいと感じました。
制作はMAPPAらしいですのでそのあたり期待したいですね。
現代の「君たちはどう生きるか」
『チェーンソーマン』の藤本タツキさんによる140頁の読み切り漫画を原作としたアニメーションです。チェーンソーマンを読んだことはないし、藤本タツキさんのお名前も知らず、原作漫画がある事も全く知りませんでしたが、この絵に惹かれる物を感じ映画館に向かいました。小学校の新聞に連載四コマ漫画の連載を持ち、周りからその実力を認められ、自分でも漫画に自信を持っていた少女・藤野が、同学年で抜群の画力を持ちながら登校拒否になっている京本の存在を知るお話です。
近年は多くの作品で上映時間が伸びて来て、だらしなく長いと感じる作品も増えましたが、僅か58分でこんなに繊細な思いをこんなに大胆に描けるとは!「自分には何ができるの?」「私は一体何者?」と考えてしまう十代の子供達には一層響くものがあるのではないでしょうか。現代の「君たちはどう生きるか」と言っても良いと思います。
藤野が思わず駆け出す場面と、ドアの下を往復する四コマ漫画は2024ベストシーン賞候補に早速ランクインです。今年のアニメはデデデデで決まりと思っていましたが、58分作がそれを軽々と超えて来ました。
また、若手女優さんの中では今や圧倒的な存在感を放つ河合優実さんが、声優としても確かな魅力を放つことを知らしめて下さいました。
言葉にできないぐらいいい映画
知り合いに勧められて鑑賞!
学年新聞で4コマ漫画を連載している小学4年生の藤野
クラスメートから絶賛され、自分の画力に絶対の自信を持つ藤野だったが、ある日の学年新聞に初めて掲載された不登校の同級生・京本の4コマ漫画を目にし、その画力の高さに驚愕する
以来、脇目も振らず、ひたすら漫画を描き続けた藤野だったが、一向に縮まらない京本との画力差に打ちひしがれ、漫画を描くことを諦めてしまう
しかし、小学校卒業の日、教師に頼まれて京本に卒業証書を届けに行った藤野は、そこで初めて対面した京本から「ずっとファンだった」と告げられる
漫画を描くことを諦めるきっかけとなった京本と、今度は一緒に漫画を描き始めた藤野
二人の少女をつないだのは、漫画へのひたむきな思いだった
しかしある日、すべてを打ち砕く事件が起きる…
というのがあらすじ!
原作は読んだことないのですが忠実に映像化されてるみたいです!
京本からファンだと告白された帰り道のシーンは躍動感や嬉しさがこちらにも伝わってきましたね😊
2人の漫画家の道が丁寧に描かれてる印象でした!
そして観てて思ったのが実際にあったあの事件を思い出させるような感じ…
4コマ漫画がきっかけで2人は漫画家になるんですけど京本が亡くなる事件はほんと理不尽…
原作は読んでいなかったので展開にびっくりしました😳
そしてその後の展開も驚き!
破った4コマ漫画が違う世界線にいくとは…
違う世界線でも2人は漫画を描いていくことになる感じがまたよかったですね☺️
違う世界線ではちゃんと生きてる…
観終わった後はルックバックのタイトルにはいろんな意味が込められてるなと思いました!
あと2人の声優さんもすごくよかったです!
短い時間でしたがとてもいい映画でした!
素晴らしい映画をありがとうございました!
それでも、だからこそ、描き続ける
見に行ってよかった
◾️前提
泣ける映画は好んで見ない。原作者の短編は基本「女体や女性への興味」が強すぎて気持ち悪いと思ってしまっているので見に行くつもりはなかった。
友人知人各位にオススメされまくったので行きました
◾️感想
見に行ってよかった〜〜〜〜!!!
演出も表現も演技も音楽も全部素晴らしい。
感情の没入感がすごい。展開を知っているためか、京本に会いに行くシーンからずっと涙が止まらず。
感情の波幅は
1共感性周知
2努力する姿に号泣
3努力しても壁に敵わないことを自覚した姿に号泣
4不法侵入に恐怖
5好きと言われ高揚する姿に号泣
6主人公の頑張りに号泣
7青春に号泣
8ジャンプ本社に過去の己を思い出す
9アニオリに関心
10号泣
11号泣
12号泣
13嗚咽→放心
みたいな感じでした。
割と序盤から感情のパラメーターが振り切れています。
声優さんがたの演技がアニメ独特の声の出し方じゃなくて自然体なのもすごくよかったです。映画オリジナル展開も、原作の補完になっていてよかったです。
生き生きとした描写
深淵な58分間
事前情報ゼロだったので、冒頭のヘタウマな感じのアニメからぐいぐい引き込まれ、「なんだこれは!」と驚きました。新海監督のアニメもとても写実的で鮮やかな美しさがありますが、それとはまた違ったテイストで、とても身近な生活感のある描写に引き込まれました。天候が晴れから曇り、雨から雪へと変化に富んでいたり、朝、昼、夜という時間経過が風景の変化として丁寧に表現されていて、時の流れが無意識のうちに伝わってきたように思えます。そうそう、「となりのトトロ」(88)のあらゆるシーンがいきいきと描かれている感じとも似ている気がしました。劇中に主人公の藤野(河合優実)と京本(吉田美月喜)が描く四コマ漫画が出てくるせいか、それを描いている二人の世界がリアルに感じられました。構成に全く無駄がなく、緩急のバランスも絶妙で、58分間とは思えない濃密で深遠な映画体験でした。台詞もよく考えられていてハッとさせられるものが随所にあり、声の演技も「声優」とは違うトーンが作品の雰囲気を独特なものにしているように感じました。音楽も彼女たちの心情にしっくりくるものばかりで、あらゆるシーンが心の奥深くに染みてきました。先の展開が全く読めなかったのもよかったです。アニメ史に残る名作ではないでしょうか。
濃い内容なんだけど物足りなかった
ノーマークな作品だったんですが、たまたまテレビでおススメされているのを見て、尚且つこちらの評判も良いので遅ればせながら鑑賞しました。
小学校の学級新聞で4コマ漫画をそれぞれで担当していた藤野と京本が、合作で漫画を描きながら仲良くなっていきます。
冒頭、あっ苦手かも…と思ったのもののストーリーにどんどん引き込まれていきました。不登校の引きこもりだった京本を藤野が街に連れ出すシーンはキラキラで幸せに満ちていて、なぜか逆にウルウルしてしまったのは私の親心だったのかも?
保護者気分に勝手になったせいか、2人の後半シーンを物足りなく感じてしまいました。
現実の世界で起こった事件を思い出すようなセリフは悲しすぎです。
幸せが凝縮している人生か穏やかに長生きする人生か?答えは出ないけど考えちゃいます。
原作、読んでみたら終わった後の気持ちを消化できるのかな。
レクイエム
京本の世界を開いたのは藤野だった。藤野をてっぺん大将にしてくれたのは、京本だった。掛け替えの無いふたりが、京本の藤野のいない世界で生きてみたい 美大に行ってもっと上手くなりたい
と言ったとき、じーんと胸が締め付けられた。良かったね闇を抜けたね に対し藤野の大将でいられなくなる嫉妬も痛い程伝わった。ふたりで完成品だったから。その後京本が亡くなった経緯わー経て 如何なる理由があったにせよやっぱり出会う親友だったと思わせるものと お互いに通じあうものが切なすぎて半身が失われたような痛みを覚えた。涙が止まらなく会場が明るくなるまで皆席を立てずにいた。大作と思う。
本来なら5.0です!
ドストライク過ぎて、ちょっとだけ物足りなかった。。
でもドストライクではあって、あと2回は観るつもり!!
本当に、バクマン。とか僕線とか物作りや上達を目指して頑張る系の映画やドラマが好き過ぎて。
ワンスアポンアタイムも好きでして。
その期待は充分にあり楽しんで観ましたが、
期待し過ぎたかなぁ。と思わざるを得ない。
でも友達には絶対観てって言うくらい良かったです。
藤本タツキ臭を存分に残しつつアニメに昇華させた傑作
同じく藤本タツキ原作のアニメチェンソーマンに代表される、近年のcgグラフィックを用いた作画は原作の良さを封じ込めてしまうことが往々にしてある。
しかし、この作品はアニメの良さと、原作の良さを相乗させた傑作であると確信する。
特に、cg作画最大の欠点である心理描写をあえて漫画的な作画を用いて完璧に表現したところに感動した。
そして、ストーリーの変更をほぼせず、潔く一時間以内にまとめたのも英断だった。漫画自体が読切りとして出版されたもので、その風のように読者を突き抜け過ぎ去ったが故の感動を、うまくアニメに残した。とにかくテンポが良かった。
僕は高校生で普段より高いお金を普段より短い時間にはらうことになりましたが、全然気になりませんでした。素晴らしい作品です。アニメを見て感動して泣いたのはいつぶりだろうか。
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