劇場公開日 2024年6月28日

「小学校の教室と疾走する少女のダサい腕の振りがリアル!」ルックバック わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5小学校の教室と疾走する少女のダサい腕の振りがリアル!

2024年6月29日
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素晴らしい作品だった。間延びしていないというところを鑑みても、58分という上映時間は適切だったと思う。

まず職業柄いじっておかないといけないのは、小学校の教室のリアルさである。4年生の頃だけ習字の枚数が少なかったのは気になったが、学習机の質感、ロッカーにしまわれたランドセルの無造作感、掲示物の押さえるべきところをしっかり押さえている感。原作未読の自分からすると、この時点で『真摯で丁寧だ』という期待値を跳ね上げて臨めた。

冒頭酔いそうだったけど、没入感を持たせるには最高の滑り出し。

原作未読なのでタイトルのルックバックの意味の多層性に驚いた。主人公はそれでも後ろを振り返らず前に進む過程の丁寧さ。

映画内漫画(原作では漫画内漫画)の切り替えも面白い。アニメーションでしかできない表現が連発される。

青春映画には必須の疾走するシーンが何度かあるんだけど、特に雪道を走るシーンで手の動きがリアルなんだよな〜。とにかく手の振りがダサい。でも、これが漫画にかけてきた女の子の走り方とも言えるし、少し空手をかじった女の子の走り方とも言える。きれいに走らないからこそ全力さが伝わってくる。

特にこの映画の好きなところは、音の静と動の緩急。劇伴をしっかり鳴らすところと無音にするところのコントラスト。漫画をめくる音しか聴こえない時、満員の観客の息を呑んで見守る様子が伺えた。これぞ没入感。

もはやキャラクターの顔面も河合優実に見えてきた。声優さえ水準以上の出来でこなしてしまう彼女は、日本映画界の宝だ。

わたろー