「民の為に使わずして何の為の税か?」室町無頼 たあちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
民の為に使わずして何の為の税か?
「SRサイタマノラッパー」の入江悠監督が東映京都撮影所に乗り込んで撮った大型時代劇で室町時代の大飢饉後に起こった「徳政(債権放棄)」を求める土一揆を題材として垣根涼介が2016年に出版した本屋大賞小説が原作。東映の須藤泰司プロデューサーが何故か入江監督にオファー(まだほとんど実績の無い時期である)してスタートしたのだがコロナで一旦頓挫し2023年から再び動き出した足掛け9年の大作で入江監督の表現を借りれば「東映が少し狂っていた」おかげで出来上がった。白石和彌監督の「十一人の賊軍」から「侍タイムスリッパー」そして本作と東映京都はここのところイケイケで攻めていて日本のハリウッドとも呼ばれた京都太秦の復活を目指すのだろうか。入江監督が述べているように本作は若者や子どもにも時代劇の面白さを知ってもらいたいという魂胆がありひねりの無いシンプルな構成で誰一人おいてけぼりにしないよう分かりやすく丁寧に作られていて原作にない北村一輝演じる超悪キャラも対決のカタルシスがために加えたという(そもそも一揆が勝利しても足利義政将軍は涼しい顔なのだ)。「分かりやすさ」ゆえにちょっと許せないシーンもいくつかあるのだが、何といっても大人の階段上るなにわ男子長尾謙杜の棒術修行と成長物語が若者ならではの身体を張った演技で素晴らしくクライマックスでの「みんなぶっ飛ばす」から屋根に駆け上がり地面の書状を拾いの超長回し1カットアクションに昇華していて心の中で拍手喝采、全てのダレた部分を帳消しにして余りある映画史に残る傑作シーンとなった。
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