劇場公開日 2025年1月17日

「長尾のアクションは観る価値がある」室町無頼 コショワイさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0長尾のアクションは観る価値がある

2025年1月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

1室町時代の京を舞台に、無頼の素浪人が悪政と飢饉に喘ぐ民衆を束ね、一揆を起こす様を描く娯楽時代劇。

2本作では時代背景として、現代の市中経済の素となる仕組みが、室町時代に形成され、ヒト・モノ・カネ・クチコミの移動が活発となったことを示した。そしてこのことで、民にお
ける自由経済とそこに目を付けた官による税や通行料など取れる所から取るという徴収理念が出来上がった。貧富の格差が増し、金貸しや権力者は肥え、持たざる民衆は疲弊した。このことは今日の世情と相通じるところがあり、製作意図が見えてくる。

3主要人物は三人。素浪人・兵衛が大泉、その弟子となる才蔵が旧ジャニーズの長尾、大泉の昔からの悪友で市中警護を任せられている暴力組織の頭目・道賢が堤。
前段は兵衛と才蔵の出会いから才蔵の修業が描かれ、その中で才蔵が成長していく様が面白いがはしょり気味で食い足りない。兵衛はスタイリッシュないでたちで、登場場面での音楽がマカロニウエスタン調なのが新味があって良い。

4後段は借金苦の民衆が証文を無きものとする一揆が描かれる。リーダーに担がれた兵衛は警護をかい潜る一計を案じる。洛中に進入した一派は、ド派手にやり合う。虐げられた人々の怨嗟と群集のエネルギーが一気に爆発し、歓喜のモブシーンとなる。この一揆は、史実に記録が残されているとエンディングで説明があったが、ショー化する過度な演出は不要に思えた。一揆に成功した兵衛は、御所に印しを残し、徳政令を勝ち取るが、傷つきながら道賢と相まみえる。

5本作は、民衆が権力に立ち向かうという図式は良いが、全体的に大味な作りになってしまったように思う。観ていて長尾のアクションシーン以外にワクワク感が少なかった。役者では、長尾の一連のアクションが秀逸で、大泉の立ち回りを上回った。

コショワイ