「色んな要素満載の痛快時代劇」室町無頼 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
色んな要素満載の痛快時代劇
1月17日公開と銘打っている本作ですが、1月10日から結構大々的に先行上映といういことで、早速観に行って来ました。
言うまでもなく”時代劇”を基調にした作品でしたが、色々な要素を感じさせる仕上がりになっていて、そこが面白い作品でした。具体的には、時代劇としては「用心棒」に代表される黒澤明監督作品が土台になっていると感じられました。ただ世界観としては「マッドマックス」っぽい世紀末的で無法で非道な時代を背景とした放蕩な権力者と圧迫される庶民のコントラストを描いており、それでいて一瞬で勝負がつく斬り合いはガンマン同士の早打ち合戦であり、また強風が吹きまくる風景や、時折流れるちょっと軽い感じの音楽には西部劇(というかマカロニウエスタン的と言った方がいいかも知れないけど)の味がしました。さらに、主役・蓮田兵衛(大泉洋)の一番弟子・才蔵(長尾謙杜)が船着き場で修行するシーンは、手漕ぎボートで修行する「ベスト・キッド」を想起しました。
このような理由から、従来の時代劇っぽい要素も多分に含みながら、新しい時代劇像を構築しようという制作者の意図が垣間見られ、その実験は一定の成功を収めていたように思えました。
俳優陣も、主役・蓮田兵衛を演じた大泉洋は、相変わらず安定の演技を見せてくれましたが、ライバルである骨皮道賢を演じた堤真一や、悪役を引き受けた北村一輝が非常に光っていました。惜しむらくは、大泉洋と堤真一の殺陣のシーンが意外にあっけなく、もう少しじっくりと見せて貰いたかったかなと感じたところです。北村一輝は、ちょっと頭がイカれた役をやらせるとピカ一で、本作でも絶品の嫌らしさを見せた上で最後はキチンと蓮田兵衛に成敗されており、期待通りの活躍でした。
また、才蔵を演じた長尾謙杜は、個人的に初見でしたが、アクションの動きもよく、今後のさらなる躍進が期待出来そうです。
以上、本作で感心した点でしたが、逆にちょっと物足りなかったと感じたのはストーリーでした。2時間15分とやや長めの作品でしたが、話を色々と詰め込んだためかそれぞれのパートが短くまとめられており、譬えるなら大河ドラマの総集編を観ている感じでした。ストーリーが淀みなく進み、飽きが来ない創りになっているものの、どんどん次の展開に行ってしまうため深く脳裏に刻まれるような仕上がりにはなっていませんでした。まあこの辺りはトレードオフの関係にもあるので、バランス的にはちょうど良かったのかも知れませんが。
そんな訳で、本作の評価は★4.2とします。