Cloud クラウドのレビュー・感想・評価
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物語ではなく〝行為‘’でシーンをつないでいって映画を成立させている...
老若男女が楽しめるエンタメ映画になっているが…
Cloud、そのタイトル通り最初から最後まで不穏な暗雲が垂れ込めているような映画だ(屋外のシーンはすべて晴れのシーンであるにもかかわらず…)。室内・小道具のマットなブルーの配色がそれをさらに助長させている。その不穏さを際立たせるための効果音はやや安直な感じもするが…
以下、ネタバレあり。
ラストのシーンで女性が主人公に対峙する場面は、ボリス・バルネットの『諜報員』のラストシーンを思い起こさせたが、そのシーン手前の倒れた男のそばに落ちているピストルのクローズアップのショットはなくても良かったのではないか…
「転売の被害に遭っているサイド」VS「転売しているサイド」の構図になっているが、どちらの“反社度”が高いかと言えば当然「転売しているサイド」だ。大量に安く仕入れるためには(そして相手にNOと言わせないためには)それ相応の“力”が必要だ。怪しい組織とつながりのあるアシスタントが主人公に車その他を手配したりするのも、単なる親切心からではないだろう。
その“反社度”の高い側にイケメン俳優をキャスティングして美しいクールなイメージを付加し、犯罪の被害者側に対しては「不気味」かつ「気持ち悪い」演出を施していることには若干のモヤモヤ感が残る(かつてのヤクザ映画のように善悪がはっきりしている場合は誰が見ても分るので良いが、元締が雲(Cloud)の上にいるかのような現代の犯罪では、善悪のボーダー、犯罪者と一般人のボーダーが見えにくく (Cloudyに)なっているので、意図せずして犯罪を美化していることにもなりかねない)。ただ、その鑑賞後のモヤモヤ感(Cloud感?)も、初めからあらかじめ製作サイドが企図していたことなのかもしれないが…
いずれにしても、2時間飽きさせない面白い映画になっていることは間違いない。
高濃度の黒沢清ワールド
怒りすら湧いてくる
集団狂気のリアルゲーム
転売屋が生み出す利益のカラクリ。
心の奥底からおかしいと思うけど、そのような
システムが成り立っている。
その仕事って、人間として仕事として
どう思ってるのだろうか?
そして、個人が悪いのか社会のせいなのか……。
出てくる登場人物が、歪んでイカれていてまともな人物が見当たらない。
視聴していて誰が何が正しいのか、誰が悪いのか
善悪の境界線が揺らぐ。工場のおじさんの気持ちだけ理解するけど。
菅田将暉さんの無気力でその価値も分からず
転売する表情と姿は上手。
素人集団のリアルゲームの集団狂気。
誰もが陥るかもしれない、不思議な転売とネット
の地獄の入り口を見せられた気がした。
黒沢ワールドではなかった
黒沢清監督のサスペンス作品といえば、
独特の雰囲気とサスペンス要素が特徴的な【黒沢サスペンスワールド】が想起される。
しかし、本作においては、
その概念を覆すような異質(一般的にはノーマル)な世界観が展開されている。
どこが変わったのか?
従来の黒沢作品では、観客を不気味な空間に引き込み、
予測不能な展開で翻弄することが特徴であった。
しかし本作では、舞台となる主人公のアパート、
工場や警察署など、極めて現実的な空間が丁寧に描かれている。
エキストラの多さや、セット、ロケセットの緻密さなど、
リアリティを追求した作り込みは、
これまでの黒沢作品とは一線を画すものと言える。
このリアリティの追求は、
一見すると黒沢作品らしからぬアプローチのように思える。
しかし、よく考えてみると、このリアリティこそが、
本作における新たなエンターテインメント的な恐怖を生み出す要因となっているのではないだろうか。
黒沢監督のスタイルとは?
私は、黒沢監督の作品に二作品で携わる機会を得たが、
監督の最も特徴的な点は、
観客の予測を裏切る巧妙な手法にあると感じる。
シナリオ、演出、撮影、美術など、あらゆる要素を駆使して、
【論理的な世界観の中にわずかなズレ】を生み出す。
このズレは、観客の意識下で徐々に大きくなり、
最終的には強烈な恐怖感へと繋がっていく。
例えば、ある場面では、論理的に説明がつくはずの出来事が、
わずかに不自然な形で描かれる。
このわずかな違和感こそが、観客の不安を煽り、不気味な雰囲気を作り出す。
リアリティを追求した舞台設定の中に、
わずかな非現実的な要素を散りばめることで、
観客を困惑させ、不安感をあおる。
観客は何かがおかしいと気づいたときには、黒沢沼にはまっている証拠だ。
この作品における恐怖は、
単に怖い映像を見せることによって生み出されているのではない。
それは、【観客の論理的な思考と、映像によって提示される非論理的な要素との間のギャップ】から生まれる。
このギャップが、観客の不安を煽り、恐怖感を増幅させる。
まとめると、
本作は、黒沢清監督が新たな境地を開拓した作品と言えなくもない。
今までの作品のような異質な空間の設定ではなく、
リアリティを追求した舞台設定と、
わずかな非現実的な要素を組み合わせることで、
観客に異様な恐怖感を与える。
この作品は、従来の黒沢作品とは異なる魅力を持っている、
新たな黒沢エンタメワールドの始まりなのかもしれない。
クラウド
どんよりとした世界観
転売屋の青年が集団狂気に狙われる恐怖を描いたサスペンススリラー。菅田将暉主演ということで楽しみに鑑賞したがどうやら期待外れ。ハラハラドキドキするような展開やシーンが一切なくて面白みに欠ける印象。どんよりとした世界観も苦手でした。
2024-162
映画ではなく演劇
これは映画というより演劇なので、リアリティというものは無いに等しい。なので肌に合わない人には全く合わないだろうし、私もその一人である。
それでもタイトルから意味を自分なりに考えてみるとまず、心にモヤモヤと雲がかかって生きている人たちの話なのは間違いない。
人と距離を取って生きている主人公(菅田将暉)とその彼女。未だにSSDにもなりきれないHDDようなスタンドアローンな2人。それでもネットオークションを使い転売ヤーとしてお金持ちになる事を夢見ている。
一方で同じく曇りがかって生きているが、主人公や世の中への不満をインターネット(クラウド)上で共有していた人達が、徒党を組んで主人公とバトルを展開する。
ってことなのではないかと想像できた。でないと「HDDさえあればばやり直せる」的な描写が度々出てくる意味が説明できない。リアルなら、今時HDDのデータが無くなったら一巻の終わりなんてことには基本的にならないわけだし。監督がITの知識がかなり古いのならば説明はつくけれど‥‥
主人公側に仲間が現れるが、スタンドアローンの象徴的な集団であるのが、ヤクザということなのだろうか。
主人公の彼女が一度出て行き、クレジットカードを奪う為に帰って来るのだが、なぜか外用の棚を漁っている。他にも急に知らない登場人物やライフルが出てきたり、オークションサイトを立ち上げるとか、めちゃくちゃな事を挙げたらキリがない。
一番残念だったのは、窓ガラスが割れるところ。私が映画で一番嫌いなのは音で観客を脅かすこと。
演劇好きなら楽しめるのかもしれないが、長いダラダラとした銃撃戦の何が面白いのか、改めて考えてみてもやっぱり分からない。
喰らうど
前半★★★後半★
やっぱりなあ・・・
菅田将暉主演の割には,宣伝等地味な公開。
黒沢清作品という点で不安を感じたが,菅田将暉に期待して観賞。
【物語】
町工場に勤める吉井良介(菅田将暉)は真面目な勤務態度で、社長・滝本(荒川良々)にも認められていた。恋人・秋子(古川琴音)とも安定した関係を築いていたが,吉井はネット転売屋というもう1つの顔を持っていた。ハンドルネーム「ラーテル」としてネットで商品を売りさばいているのだが、ときに相手の弱みに付け込んで、非情な価格で買い叩いたり、如何わしい商品を買い付けたり、 手段を選ばず人気商品を買い占める等、かなり危ない手段で商品の仕入れては高値で売りさばいていた。うまく行くときは数時間で数百万円の利益を稼いでいた。
あるとき勤務先のから管理職への昇進を打診されるも断り、工場を辞める。郊外に事務所兼自宅を借り、転売1本で食っていくことを決意して秋子と共に転居。なんとか転売業が軌道に乗ってきたとき、ネット上でラーテル襲撃メンバーが公募されていた。
【感想】
黒沢清監督,俺にはどうしてもこの監督は合わないようだ。一般にはこの監督を評価する向きもあるようだが,過去作において俺はどうにも許せないほど,嫌いな作品から,「ちょっとなあ」いう作品まで。個人評価としては★1から最良で★3しかこれまで無い。今作は菅田将暉主演ということで,今度こそ良いと思える作品に出合えるかと少しだけ期待したけれど・・・
黒沢作品としてはマシな方ではあったが。
冒頭から入りこめこめなかったし,最後まで何と言うか,何を描きたいか伝わって来ない。前半と後半では空気が全く違う意外性のある展開とは言えるけれど,面白いとは思えなかった。
恋人秋子の位置づけも良く分からなかった。
強いて良い点を上げれば,菅田将暉,窪田正孝,荒川良良はさすがの演技を見せてくれたくらい。
テーマは良かったのだが現実離れの展開が!
現実に闇バイトとかで見知らぬ者同士が犯罪に加担したり知らん内自身が水面下で話題になり恨みを買って報復されるなんて事はあり得る事だが
オッサンならともかくあんな若いお兄ちゃんが裏社会の中軸?
米国的な銃撃戦に!?
もっと日本的な結末にして欲しかったし今後2人は裏社会ビジネスへ!?
おもんな。
笑いの怪物の岡山天音風に言うと、おもんな、の一言。
柴咲コウがフランス語喋ってた映画と同じく期待はずれ。(期待が大きすぎた)
これだけのキャストが揃っててつまらないってのは脚本が悪いんだろう。主役以外無名の役者さんばっかりでも充分堪能できた侍タイムスリッパー観た直後だったから余計に残念でした。一番大きなスクリーンで上映してたのに。
全く魅力のない主人公、誰にも共感できない登場人物、リアリティのないドンパチ。
流石の菅田将暉でも。
笑いの怪物の菅田将暉はわずかな出番だったけど、あの居酒屋のシーンだけでも、今作の菅田将暉よりも百倍、いや一万倍くらいよかった。
吉岡さん今年何作目。矢柴さん何やっても様になる。
窪田正孝イッちゃってるな。松重さんあんだけか。
ほんとに豪華なキャストなのに。
アカデミー賞の日本代表だって。
選んだ人たちが狩られないか心配。
転売みたいに内容見ずにポチッとしたのかな。
ベビわるの次回作のターゲットは奥平大兼とその組織だな。(ベビわる日本代表にすればいいのに。海外の人の好きなクールジャパンが詰まってるよ。)
転売いやーん。
映画的言語で語られる黒沢流ハードボイルド
かって山根貞男は「映画はスクリーンに写っているものが全て」と喝破した。思いが画面に写ってなければ映画として成り立たない(いくら監督や出演者が思いを心のなかに持っていても)こと、さらにTVドラマなどから派生した作品が観客が持っているイメージを利用して、いわば楽して作り上げられることへの批判である。「面白いこと」と「映画として成り立っているかどうか」は別問題なのである。面白ければそれでいいじゃん、という反論もあろうが、やはり映画は150年近い歴史があり、それなりの方法論が積み上げられている。それをなぞったほうが面白いものができる可能性が高い。実際、2003年に山根が批判したのは「映画でなく面白くもない」TVドラマ由来の作品である。2024年の今、またぞろスピンオフが公開されるらしいが。
さて「Cloudクラウド」は実に映画らしい映画である。かつ面白い。練り込んだ脚本、鍛えられた俳優陣にきちんと趣旨を伝えた演出、光と影と空気感を捉えて奥行きのある撮影、合理的なカット割り。技術的なバックボーンが前提としてある。そして黒沢は写し取ったものだけで勝負する。
テーマとしては「転売ヤーの災難」といったものであり目新しくはないが、素晴らしいのは菅田将暉が演じる吉井を取り巻く人々が彼に抱いている悪意をくっきりとスクリーンに焼き付けているところである。いつもの黒沢の映画と同様、彼らのバックボーンは最低限しか表現されない。彼ら(古川琴音演ずる秋子も含まれる)はスクリーンの滲みの如くどこからともなく表れ、そして空気のような悪意だけを残していく。
そして、あと、この映画が非凡なのは、吉井が徹底的に無神経なところである。それなりに対人関係とかには気を使っているものの、人に対して関心がなくマイペースである。荒川良々演ずる滝本や窪田正孝演ずる村岡が異常なほどの敵意をもつのはこの吉井の性向のために違いない。
かくて、悪意と無神経が致命的に対立し、行き着くところまでいくことになる。無機的ではあるがハードボイルドな帰着であると言ってよい。
だから最後の吉井と佐野が乗る車の車窓に見える光景は、ハードボイルドな西部劇のエンドロールで進む馬の背景として流れる風景や、ハードボイルドな探偵もののエンドロールで車窓に流れる風景をイメージしたものだと思う。ハードボイルド劇が終わったサインとして。ただ本作のそれは大西部やサンタモニカの風景ではなく、地獄のアブストラクトな描写であろう。これから彼等が向かう先の光景として。ここがなんとも黒沢清らしい。
ものすごい映画を観た!!無国籍と不穏が漂うクラウド
見終わった後、興奮冷めやらぬうちにゾクゾクする感覚があり、ものすごい映画を観たなと感じました。
個人の感想なので、正確ではないかもしれません。
クラウドは和訳すると「雲」ですが、色で表すとグレー、主人公の吉井達の気持ちや立場が明確でなく、雲で覆われているような状態だと思います。
前半は転売を軸とした話で、後半は主に銃撃戦になります。この銃撃戦は、白対黒ではなく、グレー対グレーの戦いになるのが実に面白いです。どちらも警察のように正義でないグレーの存在だと思います。銃撃戦は長いかなと初めは思いましたが、常に何かが起こるような不穏な空気が漂っており、いつの間にか時間を忘れるような緊張感でした。
登場人物は、吉井も秋子も佐野も謎のあるグレーの存在で、実に面白いです。秋子も佐野も吉井の転売の優れた能力を見抜いていたのだと思います。特に秋子は、お金目的だと感じる行動が最後に出ていました。
ラスト、車のフロントウインドウに写し出された雲がそのまま吉井の気持ちを表しているようで秀逸でした。
ストーリー展開に違和感、ゾワゾワ感なく期待ハズレ
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